軽工業・食品加工業分科会  

 

 

 

ジエンベコフ特別代表:分科会ではキルギスのビジネスマンから自社について具体的にお話いただきます。まず、企業家連盟会長のスラバルディエフ氏をご紹介します。企業家連盟は政府機関ではなく民間の企業家経済団体で、あらゆる産業分野の企業の代表者が加盟しています。

 

Mr. SURABALDIEV (President of Enterpriser’s Soyuz “Novyi shag”)

本日のセミナーを開催していただき、キルギスの企業家を代表して感謝申し上げます。さきほど大統領からもお話がありましたが、これほど大きなビジネスマンの団体がキルギスから日本へ来たのは初めてのことです。これまで我が国では様々な改革が行われてきましたが、最近になり民間ビジネスマンにとってビジネスを行う良い環境、安定した経済成長が我が国において見られるようになりました。

 私が代表となっている団体の名称についてご説明しますと、昨年までは企業家協会、アソシエーションと呼ばれていましたが、企業家連盟、ロシア語で言えばソユースになりました。現在300人以上の企業家が加盟しており、本日のテーマである食品加工業、軽工業の企業家も含まれています。

 最初に軽工業について申し上げますと、主な原料は綿花です。我が国南部では綿花が多く栽培され繊維産業が発展しそれに基づいた製品は輸出され諸外国でも販売されています。従って、この分野は日本と協力できるものと考えています。我が国および近隣諸国には軽工業の原材料が十分あります。問題は生産設備がないことで、この面で日本からの協力を望みます。農作物の加工、食品加工においても同じで、国の地形に見合った生産が行われているものの加工する技術が不足しています。

 今回、企業の代表が来日しています。それぞれ具体的な課題を抱え、日本からの支援を望むという企業家もいます。両国のビジネスマン同士で話し合いが行われることを期待します。

 

ジエンベコフ特別代表:続いて食品加工会社代表のトゥルスンベコフ氏です。

 

Mr. TURSUNBEKOV (Chairman of the Board of Directors JSC ”Akun”)

ジエンベコフ氏からもお話がありましたようにキルギスタンは基本的には農業国です。私も企業家連盟に加盟していますが、企業家連盟に加盟している企業分野で一番多いものは軽工業と食品加工業です。穀物を使った製粉業やそれにもとづいた製造業の企業も多く加盟しています。つまり、食品加工業がキルギスでは主要な産業分野のひとつとなっており、次々に新しい企業が興っています。キルギスにはビシュケク以外にも中小の都市が多くありますが、どの町にも大きな粉の貯蔵庫(サイロ)があり小麦を原料とする食品加工業が町ごとに展開されています。

 問題点は、サイロの機械設備が全て老朽化していることです。食品加工分野は重要であることから世銀、EBRD、アジア開発銀行等の国際機関より支援を受けています。我が社は小麦をもとに様々な製品を製造しています。最近ドイツ製の設備を導入し、マカロニ、スパゲッティといったパスタ類製造生産ラインを作りました。私は日本に来てパスタに対する高い需要があり、欧州、トルコから輸入していることを知りました。ぜひ、我が社の製品も日本に売りたいと思います。我が社はマカロニ以外にもミネラルウォーターの販売も行っており、現在菓子製造ラインの据え付けが行われています。キルギス国内の食品加工業の消費市場は限られていますが、良い製品の大量生産が可能となれば、ウズベキスタン、タジキスタン、さらにはアフガニスタンといった近隣諸国への輸出が可能となります。

 キルギスの穀物総収穫量は約100万tであり、このうち約20万tから30万tは輸出されています。また、製粉した小麦粉の生産量が約100万tです。我が社も近隣諸国へ粉を輸出しています。

 以上のように幅広く事業を行っていますので、日本からの資本投下、設備投資をいただければともに利益を上げることが期待できます。

 

芝元・ジェトロ課長:ありがとうございました。次に日本側から、素形材センターのテクニカル・アドバイザーでいらっしゃいます長谷川様にお話していただきます。長谷川様はジェトロの製品改良指導専門家事業プロジェクトで昨年キルギス、ウズベキスタン、カザフスタンを訪問していただき、そこで繊維関係の工場を廻って指導していただきました。

 

長谷川アドバイザー:昨年末に中央アジア3ヵ国を訪問した際の経験をお話させていただきます。隣接するカザフスタン、ウズベキスタンに比べてキルギスタンでは自由な空気を感じたことが大きな特徴です。もうひとつの大きな特徴はゴルドイ・マーケットという非常に大きな市場(いちば)の存在していることで、近隣諸国への輸出の拠点になっています。この市場で商品を見ますと、同じ商品が日本の十分の一または八分の一の価格で売られています。その商品の商標(ブランド)の真贋のほどは定かではありません。多くの商品が中国から入り、多くの繊維関係の企業はこの市場をマーケットとして大きく依存しており、例えば今日縫製工場で作られた商品が、次の日には市場に出ているというように迅速な流通が行われています。キルギスの繊維産業は非常にアクティブでクイック・レスポンスを行っているということです。

原材料については、シルク、コットン、ウール、カシミアといったあらゆる天然素材が豊富にあります。日本へのキルギスからの繊維製品の輸出という観点から見ると、残念ながら現在のキルギスの素材は日本のマーケットでは受け入れられない水準のものです。今の日本の繊維製品の輸入は9割前後が衣服として輸入されています。輸入側にとって一番興味があることは生地の種類です。商売を決める要因の50%は日本の市場に合致した生地ができるかどうかにかかってきます。

一方、その生地を用いた縫製技術の面では、キルギスの縫製工場を回りましたが、多少の問題点はありますが大きくとらえれば日本の市場に十分対応できる縫製技術を持っていると思います。日本の繊維産業の弱点のひとつは、いままで国内市場ばかり見て仕事をしてきたということです。キルギスの企業の強みはCIS諸国、特にロシアへの輸出に強いということです。日本の繊維産業の強みは、ハイテク技術を用いて様々な生地を作ることができるということで、日本とキルギスの強みを組み合わせて、例えば日本の素材を用いてキルギスで縫製してロシアへ輸出するという可能性があるのではないかという希望もあります。

 ウール、コットン、シルク、カシミアといった豊富な天然素材をハイテク素材と組み合わせるなど新しい分野の素材開発に広げていくことができれば、日本のマーケットに受け入れられるものと考えます。

 

芝元・ジェトロ課長:次にキルギスとの貿易を手がけられている三ツ星貿易株式会社副社長の鈴木様にお話いただきます。

 

鈴木副社長:昨年機会がありましてキルギス、ウズベキスタン、カザフスタンへ一ヶ月程出張に行って参りました。我々が取り組んでいることをビジネス事例という形で紹介させていただきたいと思います。分野が限られているため皆様のご参考になるかどうか多少の懸念はありますが、具体的な例としてご紹介いたします。

 キルギスには世界最大の胡桃の森があると言われており、これはアレキサンダー大王が植えたと聞いています。そこで胡桃にしぼってお話しします。まず日本での胡桃の需要は年間約一万tです。このうち北米産が約85%、日本の胡桃と我々が扱っているフランス産が約15%を占めています。用途は大きく分けると3つあり、ひとつは洋菓子・和菓子のトッピング用で、2番目は小麦パンに代表される製パンに多く利用されます。3番目はスナック菓子です。キルギス産胡桃の品質について申し上げますと、アレキサンダー大王によって持ち込まれて以来、品種改良が行われていません。自然のままで良いのですが、残念ながら先ほど申し上げた用途では風味と甘さが少し足りないため洋菓子・和菓子には向かず、現在は製パンおよびスナック用となっています。

 次に課題・問題点について申し上げます。まず物流費(ロジスティック・チャージ)です。さきほどのプレゼンテーションでもありましたようにビシュケクから東京までバンダレアッバース港経由で4,300ドルかかります。欧州から日本に持ってきた場合の物流費は約2,000ドルのため、キルギスからの輸入は費用面で不利となっています。また胡桃は食用のため検疫上殻のままでは輸入できず、殻と実の選別を日本で行うとなるとコストが加算され、日本市場で立ちゆかなくなります。

我々は今、付加価値のついた商品を扱うことをトライしています。一例を挙げると、胡桃を絞りオイルを生産します。これは1リットルあたり高値がついています。次に蜂蜜で、キルギスで生産されるハイマウンテン・ハニーと我々が呼んでいる蜂蜜があり高い品質を保っています。現在日本経済は回復しつつあると言われているものの、いまだ回復に至っていません。そのような中で日本国内では安い中国製蜂蜜が出回っていますが、日本の消費者も安いものだけ買う人ばかりではなく、高価でも品質の良いものを購入する消費者も数は多くありませんが存在します。いずれそういうお客様からの需要が出てきて、良い結果をキルギス側に連絡できると思います。将来的にはドライフルーツにも取り組むことを考えています。

キルギスを訪問して非常に自由な国だと感じました。日本人には渡航ビザが不要なため、遠い国ではありますが訪問しやすい国です。しかし言葉の問題が残ります。ロシア語でビジネスを行うことは通訳の雇用などで出張経費が高くつきます。

 

ジエンベコフ特別代表:日本とのビジネス協力を希望するキルギス側ビジネスマン2名よりご発言いただきます。

 

Mr. SULAIMANOV (President of JSC “Deniz”)

私は「デニス」社の社長で貿易業を行っており様々な商品を扱っています。ただいま鈴木様からお話のありました蜂蜜の貿易も行っています。大型倉庫を鉄道のすぐ横に保有しており、5,000tも入る物流センターを持っている会社です。ハイマウンテン・ハニーは西ヨーロッパならびに米国で高い関心を持たれています。米国では離乳食ならびに子供のための薬として処方箋まで作られているくらい関心を持たれています。日本でも我々の製品を高く評価してもらえると思いますが、西ヨーロッパや米国へ輸出してしまいますので急いでご決断ください。我々としては胡桃や蜂蜜を原料のまま日本へ輸出するのではなく、機械設備を日本から導入してキルギスで初期加工を行い、その後に輸出するという合弁事業の立ち上げを望みます。本件については具体的なオファーが我が社にはありますので、ぜひご検討ください。

 

Mr. KUZMIN (Director of “Semicon.kg”)

世界市場へ出て競争力のあるビジネスを行うことがいかに難しいことであるかは我々も承知していますが、グローバル化が進む現在、我々もそうせざるを得ません。我が国では民間企業が発展するための環境が整えられています。我が社は半導体分野の企業で、半導体ならびにICに用いられる合成石英を製造しています。すでにロシア、ウクライナ、中国の企業と契約を結んでいます。限られた専門分野ではありますが、電子工業の発達した日本の企業と契約を結んでいることで世界での評価は高くなるため、我々はぜひ日本でパートナーを見つけたいと思います。

 

〈質疑応答〉

問(日本側):我が社はキルギスのオロロフカからレアアースを輸入しており、シリコン関係がキルギスは強いということを知っています。オロロフカのシリコン単結晶を輸入しましたが、直径の径が小さいため長続きしていません。我々は合成石英るつぼをロシアから輸入していますが、キルギスから輸出する径はどれくらいですか?

 

答(Mr. KUZMIN):406ミリです。

 

問(日本側):マウンテンハニーの花の種類は?

 

答(キルギス側):高山にあるさまざまな花が混ざっています。

 

日本側:日本では国の名前で商品のイメージが湧くと言われており、キルギスというあまり聞いたことのない国の商品を買う消費者はいないでしょう。ただし、キルギスにしかない特徴がある蜂蜜ということが証明されれば別で、お話だけではなくサンプルをいただければ専門家の立場で答えることができます。

 

ジエンベコフ特別代表:ありがとうございました。本日はとてもよい意見交換ができたと思います。終わりにあたりひとつご報告したいことがあります。今回日本への出発前、3,500tの豆類の輸出契約が日本のある企業とキルギスの国営企業の間で結ばれました。皆様とは顔も似ており積極的な意見交換もでき、古くからの友人のように思えます。本日提案されたことが実現することを願っています。本日はお忙しい中時間を割いていただきありがとうございました。機会がありましたらぜひキルギスにお越しください。

 

 

 

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