アカエフ大統領スピーチ  

 

 

 尊敬する皆様。本日のセミナーにご招待いただきましたことを感謝申し上げます。

 今回の私の日本訪問の目的のひとつは、日本とキルギス共和国のビジネス交流の発展に対して皆様に関心を持っていただくことであります。よって、今回のセミナーに私は大きな期待を抱いています。私が1993年に初めて日本を訪れた際、私と一緒に来たビジネスマンはわずか3名でした。今回の訪日では一団体として多くのキルギスビジネスマンが同行しています。これは20年間に渡って行ってきた市場経済改革と民主主義改革の結果です。キルギスのビジネスマンは日本のビジネスマンと一緒に仕事をする準備ができていますので、本日このようなセミナーを開催することは大変重要であると考えます。

 

 私が特別な感嘆の念を覚える日本の歴史の一時期があります。それは日本の歴史上の転換点であり20世紀後半の日本の発展を決定づけた時期であり、国の発展の新たな方針と新しい経済モデルを作り出した日本の優れたリーダー達の見知と強い意志が示された時期でもありそれまでの歴史的経験の根本的見直しが行われた日本の戦後の発展期であります。根本的な見直しによって、伝統的な要素と新しい要素が調和がとれた形で相互に作用するようになったのです。この時期に日本は歴史的に唯一可能な選択を行いました。つまり、一方ですべての社会経済関係の根本的変革が起こり、それらは新しい歴史的条件に合うように変更されました。他方では日本の国民的性格とその伝統の核となっているもの、意義等はすべて大切に保存され拡充が図られました。国中が全力をあげて忍耐強く経済発展に先んじていた国へ追いつこうと努力し、これらの国々の経験からよいもののみを取り入れ、極めて大きな成功を手に入れたのです。わずか一世代の間に世界は名実ともに「日本経済の奇跡」と呼ばれる現象を見ることになったのです。この日本の経験は、独立民主主義国家キルギスの建設を目指す我々の努力の精神的な源となっています。日本の経済発展をモデルとして安定した経済を作りたいと思っています。

 

 キルギス共和国が独立して13年、我々はすでに国の将来の安定的経済発展と繁栄の基礎を築いたという確信を持っております。我々のヴィジョンは、国の経済発展と国民生活レベルの向上の基礎となるのは競争力のある民間セクターであるという考えに基づいています。民間セクターの持つ潜在力の完全なる開花は、実業界が国家のために努力するのではなく、国家が実業界のために努力するというパートナーシップが実現になったときにのみ可能となるのであります。我々は民間セクターを優先的に発展させるという政策をとっています。我々は民間セクターの発展を阻害する障害を全て撤廃するようにしています。しかし、実業界側もまた国家の運命に対する自らの責任を感じていなければなりません。国家と実業界の合理的な協力のもとに成功はあるのです。本日ご出席の日本・キルギス両国のビジネスマンの皆様も、国の発展に対して大きな責任を負っていると思います。

 十分な天然資源がないため、キルギス共和国の経済成長の主要な要因となるのは人材です。人材の発展こそ我々にとって一番重要な課題です。キルギスタンの人々は高い教育を受け、自由な考えを持ち、新しい挑戦にも果敢に挑みます。このような人材の資質は特に民主主義という条件の下で発揮されます。我々の優先する重要方針は教育であり、我々の教育の質が欧州先進諸国の大学の標準に合っていることを大変誇りに思っています。

 ここで我々は、日本がこれまで行ってきた貴重な支援に対して深く感謝を表明いたします。キルギス共和国の経済発展にとって最重要の意義を持ち成功裡に実現したプロジェクトとしては人材に対する投資、教育に対する投資、保険制度の向上、母性の保護で、これらは日本の援助のおかげで実現しました。我が国では乳幼児の死亡率が大変低くなりました。さらに、将来の発展を目指したインフラ発展プロジェクトである「マナス空港」の改修計画によりマナス空港は中央アジアの中で最も良い空港となり、反テロ活動の基地として選ばれました。マナス空港はアフガニスタンのテロ撲滅のために使用されました。現在、アフガニスタンには平和が訪れており、これを我々は大変嬉しく思います。アフガニスタンでは新たな民主主義国家の建設が進んでおり、今日テロの脅威はありません。我々は、アフガニスタンの戦後復興に対する日本政府、日本の国民の皆様の貢献に大変感謝しています。アフガニスタン支援会議が東京で開催されましたが、これは大きな意義をもっていました。この支援会議で採択された様々な措置が現在行われていることを大変喜んでいます。また、キルギスの南と北を結ぶ戦略的道路と言われている大シルクロードの一部であるビシュケク〜オシュ間道路の改修案件についてですが、この道路は中国への貿易路で中国の新彊に通じています。我々はこの道を日本の将来の道と言っています。なぜなら、この道を通じて大シルクロードの伝統が復活しこのことがキルギスの将来の繁栄につながるからです。有名な玄奘三蔵がこの大シルクロードを辿りキルギスタンのことを630年に書いています。我々は本日この場を借りて、仏教寺院遺跡他その当時に作られた古代の首都遺跡の発掘に対して、日本政府が支援を与えてくださっていることに感謝の意を申し上げたいと思います。

さらに、専門家および特別ミッションの派遣、我が国の人材に対する研修等により、貴国の専門家による長年積み上げられた知識と経験が我々に伝えられています。これら知識の実践での活用は、キルギスタン全体の経済改革における決定的要因のひとつであると信じております。ここで、JICA等日本機関により派遣されたコンサルタントの皆様方に対し、感謝の意を申し上げます。彼らはキルギスの発展にとって大きな役割を果たしてくれました。私は嬉しい気持ちで思い出すことがあります。それは、亡くなられた竹原様の我々に対する協力の態度です。私は本当によく竹原様のことを覚えています。彼はキルギスの産業発展のために本当に尽くしてくれました。日本とキルギスが一緒になってビシュケクにテクノパークを建設することを夢見ていました。私の机上には彼の研究結果が残っておりそれを毎日読んでいます。そして竹原さんが考えてくれたキルギスの将来の発展を考えています。我々は皆様とともに竹原さんのプロジェクトを実行したいと考えています。これは偉大なる国際的専門家であった竹原様のとても素晴らしい記憶であります。

 ここで日本センターについて少しお話ししたいと思います。現在、若いキルギスの学生が800名ほど、この中には専門家も含まれていますが、積極的に日本センターで日本語を学んでいます。日本センターでは、銀行改革、市場改革等を含めた様々な分野でのセミナーを行っています。これらセミナーを行ってくださっていることに対しても感謝申し上げます。そして多くのキルギスの若者たちが日本に向かっており、日本で勉強したいと言っています。芸術、技術、テクノロジーの面で日本がなしえた世界文明を学ぼうとしています。

 

キルギス政府が現在行っている社会経済政策の中で最重要方針は貧困の削減です。JICAはこの貧困削減に対して大きな支援をしてくれています。この他にキルギス国民の生活の向上を優先課題としています。自由の原則、人間の尊厳の原則、個人の機会均等などの原則のもとで貧困削減、経済成長の確保、政治的社会的満足の達成、キルギス国民の経済的福祉の向上という主要課題に集中しています。我々は日本をモデルにしており、人権がキルギス国内において最も尊いものにしたいと考えています。我々は民主的な道を歩いて行きます。

 国による効果的かつ質の高い統治を行うために「グッド・ガバナンス審議会」を設立しました。審議会の目的は国のレベルにおいて汚職を根絶するためです。汚職の根絶は我々の優先方針のうちのひとつです。

 我々は、潜在的な外国のパートナーの目に、キルギスがより魅力的に思われるよう、今日あらゆる措置を探っております。12年間に渡ってキルギスは海外からの広範な支援を受けてきました。その中でも日本は我々にとって一番大きなドナー国ですから、我々キルギス国民は日本に大変感謝しています。我々はキルギスの人材とキルギスが持っている資源全てを今後の発展のために使っていきます。我々は日本の皆様からの絶えざる支援を常に感じています。我々は自助努力をして自ら進んでいくことが重要だと考えています。国家投資プログラムを少なくして、外国の投資が直接入ってくるように促進していくつもりです。そのために我々はこのセミナーを開催し来日しました。日本キルギス経済委員会会長の秋山様は、日本とキルギスを2つの両輪のもとで協力を進めていくという提案をなさいました。ひとつの協力の輪はODAのラインでの広範な協力です。もうひとつの輪は日本の民間セクターと協力拡大していくことです。残念ながらこの面ではまだ成功を収めていませんが、キルギスはこの民間セクターでの協力を行う準備ができています。キルギスは投資国として素晴らしい国であると思います。キルギスの国民は日本国民ならびに日本のビジネス界の代表の皆様に対して好感を持っています。日本語ができコンピューターも自在の使いこなすキルギスの若いビジネスマンが日本の皆様とともにビジネスをしていく準備ができています。我々は日本の皆様がビジネスに対して高い要求をもっていることを知っていますが、我々はその要求に応えることができると思います。

 

私のスピーチはキルギスとの協力へ皆様を招待するものであります。秋山会長は日本とキルギスの協力が両輪で大きく進歩するために意見を述べられましたが、我々はその考えを実現するために頑張ります。キルギスへの一番良い投資先として水力発電が挙げられます。この分野は高い採算が見込まれます。我々にとって日本から直接投資が行われることは大変重要で、投資先分野として農業、観光があります。JICAはイシククリ地区の観光産業発展プログラムを策定してくれました。我々はイシククリ湖を国際観光地として発展させていきたいと考えています。また、日本の皆様が我が国の素晴らしい山スキーのセンターを訪れることを望みます。キルギスは中国およびインドに至る中継基地となるチャンスを持っています。

私は先ほどキルギスの一番の資源は人材であると申し上げましたが、日本政府に対してキルギスのIT産業を新しい段階にするための支援をお願いいたしました。新しいITセンターが作られることになりました。キルギスにはIT分野に多数の専門家がいます。日本のビジネスマンはキルギスにおいて、日本語を話しコンピューター技術を習得している若いキルギス人を見つけることができます。

 

 私のスピーチに引き続き、キルギスへの投資の可能性に関してジエンベコフ氏がプレゼンテーションを行います。協力の具体的方針について日本の皆様とキルギスの諸氏と真剣な話し合いが行われることを期待します。本日はエネルギッシュかつ革新的な考えを持つキルギスの人たちが出席しています。この話し合いの結果、具体的計画と相互に有利な協力の合意がなされることも期待しています。

最後になりましたが、本日は駐日キルギス共和国大使館がオープンする歴史的な日であります。キルギス国旗を日本の青空の下に日本の国旗とともに上げたいと思います。13年前、我々は、東にあるとても輝かしい星、21世紀に我々が目指す方向性として日本を見ていました。今キルギスは日本の光のもとで地平線上に輝いています。私はキルギスの国民を代表して「ありがとう」という言葉を申し上げたいと思います。

 ご静聴ありがとうございました。

 

 

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