ロシア極東マイクロビジネス支援

〜ウラジオストク、ハバロフスクを訪問して〜

 

平成15年9月

経済産業省ロシア・NIS

ロシア一係長 相田 裕之

 

 平成15年9月7日から12日にかけて、ロシア極東マイクロビジネス支援事業の第6弾として、自動車関連部品、建設機械等について関心のある日本企業とともにウラジオストク、ハバロフスクを訪問したので、その概要について紹介したい。

 なお、当該概要については、私個人の印象、見解によるものであることを予めご了承願いたい。

 

 

1.自動車関連部品

 ご存知の方も多いと思われるが、ロシア極東では日本製中古車(バス、トラックを除く。)のシェアが極めて高い。今回訪れたウラジオストク市では、90%以上が、右ハンドルの日本製中古車であると言われており、ハバロフスク市でも、ウラジオストク市ほどではないが、日本製中古車の比率が高い。他方、最近、中古自動車に対する輸入関税の引き上げが実施されたが、沿海地方で、その際、輸入関税引き上げに対する抗議デモが行われたと聞く。日本製の自動車を運転すると、ロシア製の自動車に戻ることは考えられないとの意見もあり、様々な意味で、日本製中古自動車は、ロシア極東において経済や生活に大きな影響を与えていると言えるであろう。

 それでは、今回、日本側の企業が紹介した自動車関連部品等についての商談の概要を説明したい。

 

(1)リモコン式のエンジンスターター

  遠隔操作で自動車のエンジンをスタートさせる製品であり、寒い地域であることから、朝の暖機運転等に伴う需要があると考え、製品の提案を行った。しかしながら、訪問先の企業によると、韓国製又は中国製の製品が多く流通しているようであり、盗難防止やタイマー等の機能が付加された製品が一般的に販売されているとのことであった。また、韓国製又は中国製であっても、品質の点で問題はないという反応であった。さらに中国ではパッケージについてもロシア語の表記を施しているところもあるとのこと。

 今回、日本側の企業が紹介したリモコン式エンジンスターターは、盗難防止装置等が付加されておらず、価格的にも割高であったため、訪問した企業の関心を得ることはできなかった。

 

(2)ドアミラーウィンカー

 ドアミラーに配線を施すことによりウィンカーと連動して光るアクセサリーであるが、まだ、日本国内でもあまり見かけない製品。基本的にはアクセサリーであるが、ロシア極東部では、右ハンドルの日本製中古車が、右側通行をしているため、左折時における事故防止に役立つものと思われる。

 当該製品については、多くの訪問先企業で関心が高く、価格等を含めて、更に詳しい情報の提供が求められた。

 

(3)建設機械用の盗難防止システム

 今回、日本側の企業が紹介したシステムにつき、ある訪問先の企業から、古いシステムであり、盗難防止の効果が薄いとの指摘があった。極東ロシアだから、古いシステムやモデルでも大丈夫という考えは、通用しないのではないかと思われる。

 

 次に、現地の自動車部品販売店及び修理工場を訪問して気付いた点をいくつか述べたい。

  まず、自動車部品販売店であるが、現地では、多くの日本製部品(例えば、ブレーキパッド、スパークプラグ、燃料ポンプ等)を見かけることができた。日本製の部品の調達方法について照会したところ、日本にいるパートナーを通じて航空便で購入しているという回答があった。さらには、メーカーで作成した有償の電子カタログ等を利用しているという企業もあった。

  また、日本の小売店ではあまり見かけない部品(例えば、”ショックアブソーバー”(衝撃吸収器))が陳列されていた。同行した日本企業の方によると、日本で一般ユーザーが当該機器を求めることは少ないとのこと。ロシアの多くのドライバーは、自分で部品を取り付けるので、このような製品も一般用に販売されているものと思われる。

  自動車修理工場においては、今回のミッションでは様々なことを見聞することができた。保証については、ある修理工場で確認したところ、小規模の工場を除いて、一般的に6ヶ月の保証を付けているとのことであった。日本に比較すると短いようであるが、中古品もしくは中国製の部品を使用することにより、価格を低く押さえていることを考慮した期間であるとも言えよう。因みに、この修理工場では、修理する前に、修理に使用する部品等について事前に依頼者の希望に応じて、部品を使い分けているとのこと。例えば、あるアクセサリーについては、日本製と中国製の製品があったが、価格差で5倍の開きがあった。さらに、この工場では、塗装現場においては、経年変化等をも考慮して、自動的にコンピューターが調合するという日本でも採用されつつある最先端技術を導入していた。他方、廃ゴムから部品を作るなど、日本では見ることができないような工程もあり、新旧の技術が混在した状況に、同行した日本企業の方々も、大変興味を示しておられた。

 

 

2.時計、琥珀

 今回、日本企業のノベルティ(広告・宣伝のため、社名や自社の商品名を記して配布する品物)として、ロシア製の時計(POLJOT社やVOSTOK社が有名)及び琥珀(植物の樹脂が化石となったもの)を買いつけることを検討すべく、ロシア側の企業と商談を持った。

  ノベルティとして配布することから、時計の文字盤や琥珀に附属している金属の部分(ネクタイピン用に加工)に会社のロゴを施すことが可能か否かにつき照会が行われたが、その点については支障はないとの回答であった。また、価格等については、数量にもよるが、いずれも、10ドルから15ドル程度での販売が可能とのことであった。

 日本企業側で、輸入数量、価格等につき、持ちかえり検討されることとなった。

 

 

3.建設機械

 本件については、当方が同行していないので、事後的に概略を聞き取ったところによることを予めご了承願いたい。

 建設機械については、中古建機の販売の他、修理、メンテナンス、レンタル等を行う企業を訪問。このうち、いくつかの企業において、中古のもので、小型から中型程度の油圧ショベルや、クレーン車、ブルドーザーについて引き合いがあったようである。今後、メール等を通じて、更なる情報交換が行われることとなった。

 以前から、極東各地で土木・建設工事が行われており、常に、建設機械が不足の状態にあるという話を聞いていたが、今回参加した日本企業の方によると、やはり中古の建設機械に対する旺盛な需要を感じたとのことであった。また、現地の日本国総領事館によると、ウラジオストク市では、今後、観光促進に力を注ぐこととなっており、橋梁の建設等のため、建設機械の需要は更に高まる可能性があるとの説明があった。

 因みに、中古建機については、ウラジオストクで陸揚げされた後、ウラジオストクだけでなく、ハバロフスクやサハリン向けに販売又はレンタルされるケースが多いとのこと。また、日本との決済については、FOBによる契約条件で、前金払いの送金によるケースが多いとのことであった。

 

 

4.まとめ

  ロシア極東地域のビジネス環境については、よく言われるように、税関をはじめ改善を要すべき部分はまだ多くあるのも事実ではあるが、一方で、明るい兆しも生まれていると言える。

  例えば、今回のミッションでは、最近、ハバロフスク市に開業した5階建ての大型複合施設「NKシティ」を視察した。当該施設では、比較的高級な衣類、食料品、化粧品、装飾品等が販売されており、一定の富裕層が育っているものと思われる。

また、中古自動車に関しても、以前に比べ、型式の新しいものが販売されるようになってきたとの話も聞いており、この地域における購買力上昇の現われと考えられる。

  現地の日本国総領事館からは、当地は、対日関心が高い地域であり、日本人とビジネスを行いたいというロシア企業が数多くあるとも伺った。更に、当地では、日本語を学ぶ学生の人数が多く、日露の通訳者も増えてきているとのこと。また、今回参加された日本企業の方々からも、ロシア側の企業との商談を通じて、一様に、真剣にビジネスに取り組む姿勢を強く感じたとともに、工夫次第でビジネスになる可能性もあるとの意見をお聞きした。

 

 経済産業省では、引き続き、小規模でも魅力的な案件を発掘するため、参加企業のニーズにきめ細かく対応するミッションを、現地の日本国総領事館の協力を得て、ロシア極東に派遣したいと考えている。

 ご関心をお持ちの方は、経済産業省ロシア・NIS室又はロシア東欧貿易会経済協力部へご一報いただければ幸いである。

 

<備考>

 今回のミッションには、経済産業省通商政策局ロシア・NIS室の相田(筆者)及びロシア東欧貿易会経済協力部の原氏が参加した。