二重課税回避条約

 

一九八六年一月一八日

 

所得に対する租税に関する二重課税の回避のための

日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の条約

 

日本国政府及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府は、

所得に対する租税に関し、二重課税を回避するための条約を締結することを希望して、

次のとおり協定した。

 

第一条

1 この条約は、一方又は双方の締約国の居住者である者に適用する。

2 この条約の適用上、「一方の締約国の居住者」とは、住所、居住、本店又は主たる事務所の所在地、事業の管理の場所その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者をいう。

3 2の規定により双方の締約国の居住者に該当する者については、両締約国の権限のある当局は、合意により、この条約の適用上その者が居住者であるとみなされる締約国を決定する。

 

第二条

1 この条約は、次の租税について適用する。

(a) 日本国においては、

(@) 所得税

(A) 法人税

(B) 住民税

(b) ソヴィエト社会主義共和国連邦(以下「ソ連邦」という。)においては、

(@) 個人所得税

(A) 外国法人に対する所得税

2 この条約は、1に掲げる租税に加えて又はこれに代わってこの条約の署名の日の後に課される租税であって1に掲げる租税と同一であるもの又は実質的に類似するものについても、適用する。

 

第三条

 この条約の適用上、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、

(a) 「一方の締約国」及び「他方の締約国」とは、文脈により、日本国又はソ連邦をいう。

(b) 「国際運輸」とは、一方の締約国の居住者が運用する船舶又は航空機による運送(他方の締約国内の地点の間においてのみ運用される船舶又は航空機による運送を除く。)をいう。

(c) 「者」には、個人、法人(租税に関し法人として取り扱われる団体を含む。以下同じ。)及び法人以外の団体を含む。

(d) 「権限のある当局」とは、

(@) 日本国については、大蔵大臣又は権限を与えられたその代理者をいう。

(A) ソ連邦については、連邦財務省又は権限を与えられたその代理者をいう。

 

第四条

1 この条約の適用上、「恒久的施設」とは、事業を行う一定の場所であって一方の締約国の居住者がその事業の全部又は一部を行っている場所をいう。

2 建築工事現場又は建設若しくは据付工事は、十二箇月を超える期間存続する場合に限り、「恒久的施設」とする。

3 1及び2の規定にかかわらず、「恒久的施設」には、次のことは、含まれないものとする。

(a) 1の居住者に属する物品又は商品の保管、展示又は引渡しのためにのみ施設を使用すること。

(b) 1の居住者に属する物品又は商品の在庫を保管、展示又は引渡しのためにのみ保有すること。

(c) 1の居住者に属する物品又は商品の在庫を他の者による加工のためにのみ保有すること。

(d) 1の居住者のために物品若しくは商品を購入し又は情報を収集することのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。

(e) 1の居住者のためにその他の準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。

(f) (a)から(e)までに掲げる活動を組み合わせた活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。ただし、当該一定の場所におけるこのような組合せによる活動の全体が準備的又は補助的な性格のものである場合に限る。

4 1の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が他方の締約国内において代理人を通じて事業を行う場合には、次の(a)から(c)までに掲げることを条件として、その居住者は、当該代理人がその居住者のために行う全ての活動について、当該他方の締約国内に「恒久的施設」を有するものとされる。

(a) 当該代理人が、当該地方の締約国内において、その居住者の名において契約を締結する権限を有し、かつ、この権限を反復して行使すること。

(b) 当該代理人が、5の規定が適用される独立の地位を有する代理人ではないこと。

(c) 当該代理人の活動が3に掲げる活動に限られないこと。

5 一方の締約国の居住者は、通常の方法でその業務を行う仲立人、問屋その他の独立の地位を有する代理人を通じて他方の締約国内で事業活動を行っているという理由のみでは、当該他方の締約国内に「恒久的施設」を有するものとされない。

6 一方の締約国の居住者である法人が、他方の締約国の居住者である法人若しくは他方の締約国内において事業を行う法人を支配し、又はこれらに支配されているという事実のみによっては、いずれの一方の法人も、他方の法人の「恒久的施設」とはされない。

 

第五条

1 一方の締約国の居住者が行う事業から生ずる利得に対しては、その居住者が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行わない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。一方の締約国の居住者が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には、その居住者の利得のうち当該恒久的施設に帰せられる部分に対してのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 3の規定に従うことを条約として、一方の締約国の居住者が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には、当該恒久的施設が、同一又は類似の条件で同一又は類似の活動を行い、かつ、当該恒久的施設を有する居住者と全く独立の立場で取引を行う別個のかつ分離した者であるとしたならば当該恒久的施設が取得したとみられる利得が、各締約国において当該恒久的施設に帰せられるものとする。

3 恒久的施設の利得を決定するに当たっては、経営費及び一般管理費を含む費用で当該恒久施設のために生じたものは、当該恒久的施設が存在する締約国内において生じたものであるか他の場所において生じたものであるかを問わず、損金に算入することが認められる。

4 居住者の恒久的施設が当該居住者のために物品又は商品の単なる購入を行ったことを理由としては、いかなる利得も、当該恒久的施設に帰せられることはない。

5 1から4までの規定の適用上、恒久的施設に帰せられる利得は、毎年同一の方法によって決定する。ただし、別の方法を用いることにつき正当な理由がある場合は、この限りでない。

6 他の条で別個に取り扱われている種類の所得が事業から生ずる利得に含まれる場合には、当該他の条の規定は、この条の規定によって影響されることはない。

 

第六条

1 一方の締約国の居住者が船舶又は航空機を国際運輸に運用することによって取得する利得に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 一方の締約国の居住者は、船舶又は航空機を国際運輸に運用することにつき、ソ連邦の居住者である場合には日本国における事業税、日本国の居住者である場合には日本国における事業税に類似する租税でソ連邦において今後課されることのあるものを免除される。

3 1及び2の規定は、共同計算、共同経営又は国際経営共同体に参加していることによって取得する利得についても、適用する。

 

第七条

1 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国の居住者に支払う配当に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の配当に対しては、これを支払う法人が居住者とされる締約国においても、当該締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該配当の受領者が当該配当の受益者である場合には、当該配当の額の十五パーセントを超えないものとする。

この2の規定は、配当に充てられる利得についての当該法人に対する課税に影響を及ぼすものではない。

3 この条において、「配当」とは、株式その他利得の分配を受ける権利(信用に係る債権を除く。)から生ずる所得及びその他の持分から生ずる所得であって分配を行う法人が居住者とされる締約国の税法上株式から生ずる所得と同様に取り扱われるものをいう。

4 1及び2の規定は、一方の締約国の居住者である配当の受益者が、当該配当を支払う法人が居住者とされる他方の締約国において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該配当の支払の基因となった株式その他の持分が当該恒久的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第五条の規定を適用する。

 

第八条

1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者に支払われる利子に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の利子に対しては、当該利子が生じた締約国においても、当該締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該利子の受領者が当該利子の受益者である場合には、当該利子の額の十パーセントを超えないものとする。

3 2の規定にかかわらず、一方の締約国内において生ずる利子であって、他方の締約国の政府、当該他方の締約国の地方公共団体、当該他方の締約国の中央銀行又は当該他方の締約国の政府の所有する金融機関が取得するもの及び当該他方の締約国の政府、当該他方の締約国の地方公共団体、当該他方の締約国の中央銀行若しくは当該他方の締約国の政府の所有する金融機関によって保証された債権、これらによって保険に付された債権又はこれらによる間接融資に係る債権に関し当該他方の締約国の居住者が取得すものについては、当該一方の締約国において租税を免除する。

4 3の規定の適用上、「中央銀行」及び「政府の所有する金融機関」とは次のものをいう。 

(a) 日本国については、

(@) 日本銀行

(A) 日本輸出入銀行

(B) 日本国政府が資本の全部を所有するその他の金融機関で両締約国の政府が随時合意するもの

(b) ソ連邦については、

(@) ソ連邦中央銀行

(A) ソ連邦外国貿易銀行

(B) ソ連邦政府が資本の全部を所有するその他の金融機関で両締約国の政府が随時合意するもの

5 この条において、「利子」とは、すべての種類の信用に係る債権から生じた所得、特に、公債、債券又は社債から生じた所得(公債、債券又は社債の割増金及び賞金を含む。)をいう。

6 1から3までの規定は、一方の締約国の居住者である利子の受益者が、当該利子の生じた他方の締約国において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該利子の支払の基因となった債権が当該恒久的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第五条の規定を運用する。

7 利子は、その支払者が一方の締約国又は当該一方の締約国の地方公共団体若しくは居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとされる。ただし、利子の支払者(締約国の居住者であるかないかを問わない。)が一方の締約国内に恒久的施設を有する場合において、当該利子の支払の基因となった債務が当該恒久的施設について生じ、かつ、当該利子が当該恒久的施設によって負担されるものであるときは、当該利子は、当該恒久的施設の存在する当該一方の締約国内において生じたものとされる。

8 利子の支払の基因となった債権について考慮した場合において、利子の支払者と受益者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、利子の額が、その関係がないとしたならば支払者及び受益者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうち当該超過分に対し、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上、各締約国の法令に従って租税を課することができる。

 

第九条

1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者に支払われる使用料に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2(a) 文学上、美術上又は学術上の著作物(映画フィルム及びラジオ放送用又はテレビジョン放送用のフィルム又はテープを含む。)の著作権の使用又は使用の権利の対価として受領する使用料については、当該使用料の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、当該使用料が生じた一方の締約国において租税を免除する。

 (b) 特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式若しくは秘密工程の使用若しくは使用の権利の対価として、産業上、商業上若しくは学術上の設備の使用若しくは使用の権利の対価として、又は産業上、商業上若しくは学術上の経験に関する情報の対価として受領する使用料に対しては、当該使用料が生じた一方の締約国においても、当該一方の締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該使用料の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、当該使用料の額の十パーセントを超えないものとする。

3 1及び2の規定は、一方の締約国の居住者である使用料の受益者が、当該使用料の生じた他方の締約国において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該使用料の支払の基因となった権利又は財産が当該恒久的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第五条の規定を適用する。

4 使用料は、その支払者が一方の締約国又は当該一方の締約国の地方公共団体若しくは居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとされる。ただし、使用料の支払者(締約国の居住者であるかないかを問わない。)が一方の締約国内に恒久的施設を有する場合において、当該使用料を支払う債務が当該恒久的施設について生じ、かつ、当該使用料が当該恒久的施設によって負担されるものであるときは、当該使用料は、当該恒久的施設の存在する当該一方の締約国内において生じたものとされる。

5 使用料の支配の基因となった使用、権利又は情報について考慮した場合において、使用料の支払者と受益者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、使用料の額が、その関係がないとしたならば支払者及び受益者が同意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうち当該超過分に対し、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上、各締約国の法令に従って租税を課することができる。

 

第十条

1 一方の締約国の居住者が他方の締約国内に存在する不動産から取得する所得に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 「不動産」の用語は、当該財産が存在する締約国の法令における不動産の意義を有するものとする。船舶及び航空機は、いかなる場合にも不動産とはみなさい。

3 1の規定は、不動産の直接使用、賃貸その他のすべての形式による使用から生ずる所得について適用する。

 

第十一条

1 一方の締約国の居住者が前条2に規定する不動産で他方の締約国内に存在するものの譲渡によって取得する収益に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 一方の締約国の居住者が他方の締約国内に有する恒久的施設の資産の一部を成す財産(不動産を除く。)の譲渡から生ずる収益(当該恒久的施設の譲渡から生ずる収益を含む。)に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

3 2の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者が他方の居住者である法人の株式の譲渡によって取得する収益に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

4 一方の締約国の居住者が国際運輸に運用する船舶又は航空機及びこれらの船舶又は航空機の運用に係る財産(不動産を除く。)の譲渡によって取得する収益に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

5 一方の締約国の居住者が1から4までに規定する財産以外の財産の譲渡によって取得する収益に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

 

第十二条

1 次条から第十八条までの規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者がその勤務その他の人的役務(自由職業の役務を含む。)について取得する賃金その他の報酬に対しては、その居住者の活動が他方の締約国内において行われる場合には、当該他方の締約国において租税を課することができる。ただし、そのような報酬については、次の(a)から(c)までに掲げることを条件として、当該他方の締約国において租税を免除する。

(a) 報酬の受領者が当概年を通じて合計百八十三日を超えない期間当該他方の締約国内に滞在すること。

(b) 報酬が当該他方の締約国の居住者でない者又はその者に代わる者から支払われるものであること。

(c) 報酬が当該他方の締約国の居住者でない者の当該他方の締約国内に有する恒久的施設によって負担されるものでないこと。

2 1の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が国際運輸に運用する船舶又は航空機内において行われる勤務に係る報酬に対しては、当該一方の締約国において租税を課することができる。

 

第十三条

一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の役員の資格で取得する役員報酬その他これに類する支払金に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

 

第十四条

1 一方の締約国の居住者である個人が演劇、映画、ラジオ若しくはテレビジョンの俳優、音楽家その他芸能人又は運動家として他方の締約国内で行う個人的活動によって取得する所得に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

もっとも、そのような活動が両締約国の政府間で随時合意される文化交流のための特別の計画に基づき当該一方の締約国の居住者である個人により行われる場合には、当該所得については、当該他方の締約国において租税を免除する。

2 一方の締約国内で行う芸能人又は運動家としての個人的活動に関する所得が当該芸能人又は運動家以外の他方の締約国の居住者である者に帰属する場合には、当該所得に対しては、第五条及び第十二条の規定にかかわらず、当該一方の締約国において租税を課することができる。

もっとも、そのような活動が両締約国の政府間で随時合意される文化交流のための特別の計画に基づいて行われる場合には、当該所得については、そのような活動が行われた締約国において租税を免除する。

 

第十五条

次条の規定が適用される場合を除くほか、過去の勤務につき一方の締約国の居住者に支払われる退職年金その他これに類する報酬に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

 

第十六条

政府の職務の遂行として一方の締約国又は当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体に提供された役務につき、当該一方の締約国の国民に対し、当該一方の締約国若しくは当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体によって支払われ、又は当該一方の締約国若しくは当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体が拠出した基金から支払われる報酬(退職年金を含む。)に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

 

第十七条

1 一方の締約国内にある大学、学校その他の公認された教育機関において教育又は研究を行うことを主たる目的として当該一方の締約国内に一時的に滞在する個人であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものは、当該一方の締約国に最初に到着した日から二年を超えない期間、その教育又は研究に係る報酬につき当該一方の締約国において租税を免除される。

2 1の規定は、主として特定の者の私的利益のために行われる教育又は研究から生ずる所得については、適用しない。

 

第十八条

専ら教育又は訓練を受けるため一方の締約国内に滞在する学生又は事業修習者であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものがその生計、教育又は訓練のために受け取る給付については、当該一方の締約国の租税を免除する。ただし、当該給付が当該一方の締約国外から支払われるものである場合に限る。

 

第十九条

1 一方の締約国の居住者の所得(源泉地を問わない。)で前各条に規定がないものに対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 1の規定は、一方の締約国の居住者である所得(第十条2の規定する不動産から生ずる所得を除く。)の受領者が、他方の締約国において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該所得が生ずる基因となった権利又は財産が当該恒久的施設と実質的な関連を有するものであるときは、当該所得については、適用しない。この場合には、第五条の規定を適用する。

 

第二十条

1 日本国以外の国において納付される租税を日本国の租税から控除することに関する日本国の法令に従い、日本国の居住者がこの条約の規定に従ってソ連邦において租税を課される所得をソ連邦において取得する場合には、当該所得について納付されるソ連邦の租税の額は、当該居住者に対して課される日本国の租税の額から控除する。ただし、控除の額は、日本国の租税の額のうち当該所得に対応する部分を超えないものとする。

2 ソ連邦においては、二重課税の回避は、ソ連邦の法令に従って行われるものとする。

 

第二十一条

1 一方の締約国の国民は、他方の締約国において、同様の状況にある当該他方の締約国の国民又は第三国の国民に課されており若しくは課されることがある租税若しくはこれに関連する要件以外の租税若しくはこれに関連する要件又はより重い租税若しくはこれに関連する要件を課されることはない。

2 一方の締約国の居住者に対しその居住者が他方の締約国内に有する恒久的施設に関して課される租税は、当該他方の締約国において、同様の活動を行う第三国の居住者に対し恒久的施設に関して課される租税よりも不利に課されることはない。

3 1及び2の規定にかかわらず、いずれの一方の締約国も、相互主義に基づき、又は第三国との特別の協定により、第三国の国民又は居住者に租税に関する特別の利益を与えることができる。

4 この条の規定は、第二条の規定にかかわらず、すべての種類の税に適用する。

 

第二十二条

1 一方の締約国の居住者が、いずれか一方の又は双方の締約国の措置によりこの条約の規定に適合ない課税を受けたと又は受けることになると認める場合には、当該事案について、当該いずれか一方の又は双方の締約国の法令に定める救済手段とは別に、自己が居住者ある締約国の権限のある当局に対して又は当該事案が前条1の規定の適用に関するものである場合には自己が国民である締約国の権限のある当局に対して、申し立てをすることができる。当該申し立ては、この条約の規定に適合しない課税に係る当該措置の最初の通知の日から三年以内に、しなければならない。

2 権限のある当局は、1の申し立てを正当と認めるが、満足すべき解決を与えることができない場合には、この条約の規定に適合しない課税を回避するため、他方の締約国の権限のある当局との合意によって当該事案を解決するよう努める。成立したすべての合意は、両締約国の法令上のいかなる期間制限にもかかわらず、実施されなければならない。

3 両締約国の権限のある当局は、この条約の解釈又は適用に関して生ずる困難又は疑義を合意によって解決するよう努める。両締約国の権限のある当局は、また、この条約に定めない場合における二重課税を除去するため、相互に協議することができる。

 

第二十三条

1 両締約国の権限のある当局は、この条約又はこの条約が適用される租税に関する両締約国の法令(当該法令に基づく課税がこの条約の規定に反しない場合に限る。)を実施するために必要な情報を交換する。交換された情報は、秘密として取り扱うものとし、この条約が適用される租税の賦課若しくは徴収又はこれらの租税に関する不服申立てについての決定に関与する者(当局を含む。)以外のいかなる者にも開示してはならない。

2 1の規定は、いかなる場合にも、一方の締約国に対し、次のことを行う義務を課するものと解してはならない。

(a) 当該一方の締約国又は他方の締約国の法令又は行政上の慣行に抵触する行政上の措置をとること。

(b) 当該一方の締約国又は他方の締約国の法令の下において又は行政の通常の運営において入手することができない情報を提供すること。

(c) 営業上、事業上、産業上、商業上若しくは職業上の秘密若しくは取引の過程を明らかにするような情報又は公開することが国家の利益に反することになる情報を提供すること。

3 両締約国の権限のある当局は、それぞれの国の税法について行われた実質的な改正を、その改正後の妥当な期間内に相互に通知する。

 

第二十四条

この条約のいかなる規定も、一方の締約国において当該一方の締約国の法令又は両締約国の他の協定により他方の締約国の国民又は居住者に対して現在又は将来認められる租税の免除、軽減その他の減免をいかなる態様においても制限するものと解してはならない。

 

第二十五条

1 この条約は、批准されなければならない。批准書の交換は、できる限り速やかにモスクワで行われるものとする。

2 この条約は、批准書の交換の日の後三十日目の日に効力を生ずるものとし、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の所得について適用する。

 

第二十六条

この条約は、無期限に効力を有する。ただし、いずれの一方の締約国も、この条約の効力発生の日から五年の期間が満了した後に開始する各年の六月三十日以前に、外交上の経路を通じて他方の締約国に対し書面による終了の通告を行うことができる。この場合には、この条約は、終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の所得について効力を失う。

以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの条約に署名した。

千九百八十六年一月十八日に東京で、ひとしく正文である日本語、ロシア語及び英語により本書二通を作成した。解釈に相違がある場合には、英語の本文による。

日本国政府のために

安部晋太郎

ソヴィエト社会主義共和国連邦政府のために

E・シェヴァルナッゼ

 

議定書

 

所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の条約(以下「条約」という。)の署名に当たり、下名は、条約の不可分の一部を成す次の規定を協定した。

1 条約第一条3に関し、双方の締約国の居住者に該当する個人については、次の原則を考慮に入れて、問題を合意により解決する。

(a) 当該個人は、その使用する恒久的住居が存在する締約国の居住者とみなす。その使用する恒久的住居が双方の締約国に存在する場合には、当該個人は、その人的及び経済的関係のより密接な(中核となる重要な利害関係を有する)締約国の居住者とみなす。

(b) 中核となる重要な利害関係を有する締約国の決定ができない場合又はその使用する恒久的住居がいずれの締約国にも存在しない場合には、当該個人は、その常用の住居が存在する締約国の居住者とみなす。

(c) 常用の住居が双方の締約国に存在する場合又はいずれの締約国にも存在しない場合には、当該個人は、自己が国民である締約国の居住者とみなす。

2 条約第四条及び第五条に関し、一方の締約国の居住者が、他方の締約国にある駐在員事務所を通じ当該他方の締約国の居住者に物品又は商品の販売を行うことにより取得したいかなる利得も、当該販売に関連した当該駐在員事務所の活動が条約第四条3に掲げる活動に属する限り、当該駐在員事務所に帰せられることはない。

3 条約第十条2に関し、「不動産」の用語は、日本国においては、不動産用益権及び鉱石、水その他の天然資源の採取又は採取の権利の対価として料金(金額が確定しているかいないかを問わない。)を受領する権利を含む。

以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの議定書に署名した。

千九百八十六年一月十八日に東京で、ひとしく正文である日本語、ロシア語及び英語により本書二通を作成した。解釈に相違がある場合には、英語の本文による。

日本国政府のために

安部晋太郎

ソヴィエト社会主義共和国連邦政府のために

E・シェヴァルナッゼ

 

 

(参考)

所得に対する租税に関する二重課税の回避のための

日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の条約に関する交換公文

 

(日本側書簡)

書簡をもって啓上いたします。本大臣は、本日署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の条約に言及するとともに、両政府間で到達した次の了解を日本国政府に代わって確認する栄光を有します。

船舶又は航空機を国際運輸に運用することから生ずる所得及び利得に対する租税の相互免除に関する千九百七十五年七月三十一日付けの両政府間の交換公文による取極は、条約第二十五条2の規定に従って条約が適用されることとなる所得について効力を失う。

本大臣は、更に、閣下が前記の了解を貴国政府に代わって確認されることを要請する光栄を有します。

本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。

千九百八十六年一月十八日に東京で

日本国外務大臣 安部晋太郎

ソヴィエト社会主義共和国連邦

外務大臣   E・シェヴァルナッゼ閣下

 

   (ソ連側返簡省略)

 

一覧に戻るホーム

©社団法人 ロシアNIS貿易会 無断転載を禁じます