日本とウクライナのパートナーシップ共同声明  

 

 小泉純一郎日本国総理大臣とヴィクトル・ユーシチェンコ・ウクライナ大統領は、ユーシチェンコ大統領の2005年7月20日から23日までの訪日に際し、「日本国とウクライナの間の21世紀における新たなパートナーシップに関する共同声明」を発表しました。以下では、その声明(日本外務省による仮訳)を掲載します。

 

日本国とウクライナの間の21世紀における

新たなパートナーシップに関する共同声明(和文仮訳)

 

1.新たなパートナーシップへの展望

ウクライナの民主化の進展

 日本側は、2004年の大統領選挙でウクライナ国民が自らの指導者を自由に選出する権利を行使したことを高く称賛した。ウクライナ側は、日本国民によるウクライナにおける民主的変化への全面的な支持に深い感謝の意を表明した。日本側は、ウクライナにおける民主主義の定着のため更なる支援を行う意向を再確認した。

 ウクライナ側は、民主主義、市場経済及び人権尊重といった普遍的価値観がウクライナの将来の発展の鍵になることを認識しつつ、二国間関係の幅を拡大し欧州への統合という目標達成にウクライナを近づける、透明性のある法律・経済制度の確立に向けた改革を加速させる旨の約束を再確認した。

 この基礎に立ち、双方は、基本的価値観を共有する対等なパートナーとして新たなパートナーシップ構築のために最大限努力する意向を表明した。日本側は、ウクライナが旧ソ連邦の承継国の一つであるとの認識を重ねて表明した。

政治対話の促進

 双方は、1995年の日・ウクライナ共同声明署名以来、二国間関係が着実に発展してきたことを認識しつつ、最近の政治対話の緊密化を歓迎し、二国間の議会間交流、外務省間のハイレベル協議を含め、そのような政治対話を更に促進する意向を表明した。

 双方は、二国間及び国際的な問題の分野におけるあり得べき協力の方法と手段について協議するため、閣僚レベルの日本・ウクライナ協力委員会を設置する意向を表明した。

 双方は、東欧の平和及び安定を維持することの重要性を認識しつつ、同地域における民主化及び経済の移行を支援するため、二国間対話及び協力を強化することへの関心を表明した。

2.経済及び科学技術分野における協力

貿易・投資、WTO加盟

 双方は、特に貿易及び投資の分野における最近の二国間経済関係の発展を歓迎し、これらの分野における協力を深化させる意向を表明した。

 この点で、双方は、ウクライナの世界貿易機関(WTO)加盟に関する二国間交渉が妥結したことを歓迎し、ウクライナの世界経済への統合を更に促進する同国の早期加盟への期待を表明した。

 ウクライナ側は、外国投資家にとっての投資環境改善のため努力するとの約束を再確認した。双方は、ウクライナにおける日本企業にとっての投資環境並びにその他の貿易及び投資関連事項に関する二国間協議を強化する意向を表明した。

 この点で、双方は、日本からの機械設備等の輸出促進及びウクライナの経済発展への貢献という観点から、国際協力銀行がウクライナ輸出入銀行に対し総額5千万ドルを限度とするバンク・ローンを供与するための覚書の署名が行われたことを歓迎した。

経済支援

 ウクライナ側は、同国における民主主義の定着及び透明性のある市場経済の確立のための日本による一貫した支援に対し感謝の意を表明した。初の円借款案件であるボリスポリ国際空港拡張計画への特別な謝意が表明された。

 さらに双方は、ウクライナにおける貧困の削減及び医療サービス改善のための両国間の協力の成功を歓迎した。日本側は、世界銀行における日本信託基金である「政策及び人的資源開発基金(PHRD)」を通じた保健制度改革計画に対する77万5千ドルの財政的貢献を発表した。

 双方は、ノウハウの移転及びキャパシティ・ビルディングを含む日本のウクライナに対する技術支援の実施を容易にした2004年6月10日に署名された技術協力・無償資金協力協定に特に留意した。この関連で、双方は、二国間の文化交流及びウクライナ国民の研修を通じて市場経済化の進展を促進する技術協力プロジェクトであるキエフ工科大学における「ウクライナ・日本センター」実施のため、2005年7月15日に署名された取決めを歓迎した。

科学技術分野における協力

 双方は、科学技術が経済的競争力、生活水準の改善及び地球環境の保護の鍵であるとの見解を共有した。

 双方は、科学技術分野における二国間協力強化の意向を確認し、2005年8月のウクライナのロケットによる宇宙航空研究開発機構(JAXA)の衛星打ち上げに留意した。

3.国際的課題

国連改革

 双方は、国際連合創設60周年の機会に、その実効性、信頼性及び正統性を強化して21世紀における課題に有効に対処するため、国連の包括的な改革が必要であるとの見解を共有した。

 双方は、国連安全保障理事会改革に関する枠組み決議案の共同提案国として、安保理の常任・非常任双方の議席の拡大を含む早期の国連改革実現のため共同して取組む決意を表明した。この文脈で、ウクライナ側は、拡大された安保理における日本の常任理事国入りへの支持を再確認し、日本側は、安保理非常任議席の枠の中で東欧グループに1議席の追加配分を行うことへの支持を再確認した。

テロとの闘い

 双方は、2005年7月7日にロンドンで発生したテロ攻撃に見られるような差し迫ったテロの脅威を認識しつつ、あらゆる形態のテロを、その動機がいかなるものであれ、犯罪行為であるとして非難した。双方は、テロとの闘いにおいて国際社会が引き続き結束していくことが重要であるとの見解を共有した。双方は、核テロ防止条約の採択を歓迎し、可能な限り早期に署名・締結する決意を表明した。また、双方は、2006年6月までに包括テロ防止条約の草案交渉を妥結する決意を表明した。

軍縮・不拡散

 双方は、来たる広島・長崎被爆60周年を想起しつつ、核の惨禍による悲劇を繰り返さないとの強い決意を新たにした。双方は、大量破壊兵器及びそれらの運搬手段の軍縮・不拡散に関する国際的な約束を再確認した。双方は、特に両国にとって安全保障上の懸念である大量破壊兵器及びそれらの運搬手段の輸出管理を含む不拡散の強化のため、活発な協力を継続する意向を表明した。双方は、日本・ウクライナ非核化協力委員会を通じたウクライナの核物質国家計量管理制度強化のため協力する可能性について、積極的に検討する意向を表明した。日本側は、かつて世界第3位の規模であった核兵器を自発的に廃棄するとのウクライナの決定を高く評価した。また、日本側は、大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップへのウクライナの参加を歓迎した。双方は、このイニシアチブの下、軍縮及び不拡散プロジェクトのための協力を継続する。

チェルノブイリ原発事故に関連した協力

 日本側は、来年チェルノブイリ原発事故20周年を迎えることを想起しつつ、同事故の結果放射能の被曝に苦しみ、かつ、現在も苦しんでいるウクライナ国民の心情を理解し、被災した人々への支援を継続する意向を表明した。

 この点で、双方は、日本が国連人間の安全保障基金を通じ118万ドルの貢献を行っている国連開発計画(UNDP)によるチェルノブイリ復興開発プログラムが成功裡に実施されていることを歓迎した。

 さらに、日本側は、シェルター建設の完工を支援するため、チェルノブイリ・シェルター基金への1千万ドルの追加拠出を行うことを約束した。

 ウクライナ側は、日本側の支援に謝意を表明するとともに、シェルターの迅速な完成を確保するため追加拠出の用意があることを表明した。

北朝鮮

 双方は、信頼性のある国際的な検証の下、北朝鮮による核計画の完全な廃棄につながるべき6ヶ国協議の再開を歓迎した。

 さらに、ウクライナ側は、北朝鮮による日本人拉致問題に対する日本の懸念への理解及びこの問題の早期解決への強い希望を表明した。

イラク

 双方は、イラク及び中東全体の平和及び安定が世界の平和及び安定にとって不可欠であるとの見解を共有し、国際社会と協力しつつイラクの復興を最大限促進することを重視した。

 この点で、日本側は、治安維持及びイラク治安部隊への訓練実施のためイラクに大規模部隊を派遣することによりウクライナが多大な貢献を果たしていることを高く評価した。ウクライナ側は、地域住民に対し人道・復興支援を行っている日本の自衛隊の活動を高く評価した。

国連平和維持活動

 双方は、国際の平和及び安定の維持のため積極的に貢献し、国連平和維持活動において協力する意向を確認した。双方は、ゴラン高原における国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)の枠組みにおいて、自衛隊とウクライナ軍部隊との協力関係を構築していく。

環境

 双方は、地球環境保護の重要性及びこの分野での十分な国際協力の必要性を再確認しつつ、国連気候変動枠組条約の京都議定書の下での約束を実施する努力を継続する意向を表明した。この点で、双方は、京都メカニズムの下で日本の民間部門の参加を得て、共同実施(JI)プロジェクト及びグリーン投資スキーム(GIS)の促進のため協力することへの関心を表明した。

4.両国民間の相互理解

 双方は、両国民の信頼がより緊密な二国間関係の基礎であることを認識しつつ、文化交流、奨学金制度、言語学習及び姉妹都市関係を通じて相互理解を更に強化する意向を表明した。

 双方は、ウクライナで近く開催される日本の書と生け花の展示会、10月の両国代表によるサッカーの親善試合、日本で8月に開催される日本とウクライナのバレエ劇場の共同公演、11月のウクライナ国立フィルハーモニー交響楽団による公演を始めとする最近の二国間の文化交流の進展を歓迎しつつ、2006年にウクライナにおける日本月間及び日本におけるウクライナ月間を開催する意図を表明した。

 双方は、文化無償協力プログラムによるタラス・シェフチェンコ名称国立キエフ大学へのLL及び視聴覚機材の供与に係る2005年3月の交換公文の署名を歓迎した。日本側は、ウクライナの文化及び高等教育の振興、並びにウクライナの文化遺産保護のため、このプログラムを更に継続する意向を表明した。

 双方は、観光が両国の国民間及び文化間の関係を促進する最も重要な手段の一つであることを認識しつつ、中でもウクライナの2005年日本国際博覧会への参加と日本のビジット・ジャパン・キャンペーンを通じて、観光を振興する希望を表明した。

 ウクライナ側は、経済交流を含む二国間の人的交流促進のため、日本国民に対し短期滞在査証を免除する意向を有する。

2005年7月21日、東京

小泉純一郎
日本国総理大臣
 

ヴィクトル・ユーシチェンコ
ウクライナ大統領

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