ソ連東欧貿易調査月報

1990年3月号

 

T. 1990年代のソ連経済と対外経済戦略

   ―ソ連・ロシア共和国ゴスプラン議長および

   ソ連対外経済関係研究所長特別講演会より―

U. チェルノブイリ事故とソ連原子力発電

   ―ソ連原子力発電工業省代表団講演より―

V.ソ連の対米・対日貿易比較

W.米ソ・コンソーシアムに関するソ連側決定

X.東西の合弁企業の設立現況 ―国連欧州経済委員会報告―

Y.米ソ合併企業の設立状況

Z社会主義諸国の改革とGATT, IMF, 世界銀行への加盟

   ―米国議会上下両院合同経済委員会報告書より―

[東欧諸国経済資料

新刊紹介

◇◇◇

日ソ・東欧貿易月間商況1990年1月分)

                 (1990年2月分)

ソ連・東欧諸国関係日誌1990年1月分)

                 (1990年2月分)

 

 


 

1990年代のソ連経済と対外経済戦略

―ソ連・ロシア共和国ゴスプラン議長およびソ連対外経済関係研究所長特別講演会より―

 

1.1990年代のソ連経済とロシア共和国の発展

A.A.ホミャコフ・ロシア共和国ゴスプラン議長

2.新5ヵ年計画期におけるソ連の対外政策

I.P.ファミンスキー対外経済研究所長

3.質疑応答

 

はじめに

 当会では、ソ連及びロシア共和国ゴスプラン(国家計画委員会)代表団の来日を機会に、本年2月20日に講演会を開催した。そこで本月報ではその内容を紹介する。

 講演は、ロシア共和国ゴスプラン議長のA.A.ホミャコフ氏が「1990年代のソ連経済とロシア共和国の発展」と題して、続いてソ連国家対外経済委員会付属対外経済研究所長のI.P.ファミンスキー氏が「新5ヵ年計画期におけるソ連の対外経済関係」と題しておこなった。

 


 

 チェルノブイリ事故とソ連原子力発電

―ソ連原子力発電工業省代表団講演より―

 

1.ソ連の原子力発電の現状と将来の計画

E.A.リシェトニコフ・ソ連原子力工業省次官

2.チェルノブイリ事故とその被害処理

E.I.イグナチェンコ・ソ連原子力工業省科学技術総局長

 

はじめに

 当会はソ連東欧エネルギー需給に関する調査の一環として、ソ連東欧圏の原子力発電に関する研究を進めてきた。これに関連してこのほど、通商産業省の助成をえて、ソ連から原子力発電工業省リシェトニコフ次官ならびにイグナチェンコ科学技術総局長を日本に招請した。目的はチェルノブイリ事故後のソ連原子力発電に関する情報を交換することであった。本稿は2月27日、関係者に限定して開催した講演会の要旨を紹介するものである。

 


 

 ソ連の対米・対日貿易比較

 

1.ソ連の対西側貿易行動様式とペレストロイカ

2.ソ連の対外貿易と対西側貿易の消長

3.東西デサントの再構築と米ソ関係の緊密化

4.米国と日本の対ソ経済政策の比較

5.ソ連の対西側貿易と対日・対米貿易の地歩

6.対米・対日貿易の商品構造と意義

7.ソ連における合弁事業の展開と米国・日本

 

はじめに

 わが国と米国とは、ともに1970年代半ばから1980年代はじめにかけて、ソ連向け輸出を大幅に拡大した。1980年代に入り停滞していたソ連の対西側貿易も現在、「新思考」外交と貿易制度改革の下で再び活発化させることがめざされている。しかし日本と米国との貿易では、取引の内容や対ソ貿易を左右するファクターには大きな相違がある。

 本稿はソ連の西側先進諸国との貿易のなかで、とくに日本と米国との取引の特徴をまとめたもので、執筆者は当研究所 小川和男副所長である。

 


 

米ソ・コンソーシアムに関するソ連側決定

 

1.ソ連対外経済コンソーシアム・米国貿易コンソーシアム間の一般貿易協定について(1989年3月21日付ソ連閣僚会議決定第238号)

2.ソ連対外経済コンソーシアムの活動に関する基本規程(1989年3月21日付ソ連閣僚会議決定第238号より承認)

 

資料紹介

 1989年3月30日、米国貿易コンソーシアムとソ連対外経済コンソーシアム間で「一般貿易協定」が成立した。潜在的な巨大市場であるソ連への進出が西側企業にとってひとつの検討事項であるのは確かであるが、ソ連と合弁企業を設立した設立した場合に外貨の確保や利益の送金など難問が多いのも事実であり、これを克服するための方式として浮上してきたのがコン ソーシアムの結成である。米国貿易コンソーシアムは、シェブロン・コーポレーション(石油)、RJRナビスコ(食品、タバコ)、イーストマン・コダック(写真)、ジョンソン&ジョンソン(医薬品)、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(穀物加工)、メルカトール・コーポレーション(投資銀行)で構成されている。米国コンソーシアムは、今後20年間で100億ドルの対ソ投資を行うと発表した。一方、ソ連対外経済コンソーシアムは、約30の企業で構成されていると伝えられる。

 いうまでもなく、米ソ双方が数社によるコンソーシアムを結成し、その枠内で多角的に合弁事業を展開していくことの最大の眼目は、外貨収入の確保にあり、そのためには、ソ連側が通常の合弁法規に加えて追加的な特別措置を講じる必要がある。ここに紹介するのは、「協定」締結に先立って1989年3月21日に採択されたソ連閣僚会議決定第238号「ソ連対外経済コンソーシアム・米国貿易コンソーシアム間の一般貿易協定について」、および同決定により承認された「ソ連対外経済コンソーシアムの活動に関する基本規程」である。とくに後者は、既述のような東西合弁事業の根本的な問題に鑑み、外貨不足を打開するための措置や、有能な専門家を確保するための新機軸などを盛り込んであり、興味深い内容となっている。

 


 

東西の合弁企業の設立現況―国連欧州経済委員会報告―

 

1.新しい法規

2.合弁企業

3.最近の会議の開催状況と出版物の予定

 

資料紹介

 ここに紹介する資料は、国連欧州経済委員会発行の『東西合弁企業ニュース』(1989年11月号)の翻訳である。ソ連東欧諸国にあっては、経済回復のテコとして西側企業との合弁に対する期待が高い。同資料では、東西の合弁企業の現状が手際よく整理されている。

 


 

米ソ合併企業の設立状況

 

資料紹介

 1987年にソ連領内で合弁企業の設立が認められてから、1990年1月1日段階で、既に1,274件の合弁企業が設立され、その90%は西側との合弁である。1990年12月初の946件についてみると、西ドイツの167件、フィンランドの142件についで、米国が122件もの合弁企業を設立していることは、きわめて注目に値する。(日本は27件)。

 米ソの合弁がどんな分野で設立され、またどのような実績を上げているのかを把握するのは、米国経済界のソ連市場へのねらいを知る上で重要であろう。もっとも、米ソ合弁企業も例外ではなく、リストにある事業内容をそのまま米ソ経済協力の実態とみるのは、当然不適当である。だが、それでもなお、米ソ合弁企業の事業内容に現れている傾向性は、非常に興味深いものがある。

 まず設立地は、そのほかの国の合弁企業同様、圧倒的にモスクワが多い(109件中72件)。日ソ間の合弁企業は約半分が東シベリア・極東に位置しているが、米国の場合には、モスクワでの設立の比率が平均よりやや高いほかは、これといった地域的傾向性はない。

 そして事業内容では、情報や企業経営に関連する業種が多いのが目に付く。すなわち、コンピュータ、ソフト開発、コンサルタント、マーケティング、宣伝、出版といった事業内容を挙げている企業が多いのである。たとえば、日本とソ連の合弁企業では、水産業及び木材が二台業種になっており、そのほかレストラン・旅行業などの比較的小規模なサービス業である。これはすなわち、対ソ合弁を設立した日本の企業は既に対ソ貿易で実績のある企業であり、ソ連経済の実際の姿を熟知しているため、対ソ合弁事業を従来の貿易関係の発展と捉え、その延長で合弁を行っているということである。したがって日本のソ連との合弁企業は、設立件数こそ少ないが、その多くが稼動を開始しており、それなりの実績もあげている。これに対して米国の場合は、従来ソ連との経済関係が比較的疎遠であったため、予備知識もないまま大規模な投資を要する製造業には乗り出せず、とりあえずは投資や人材が少なくてすむ情報・経営分野の合弁を設立し、これを拠点にソ連市場の調査を行い、大掛かりな協力の可能性を探るということになったと推測される。

 ここでは当研究所がソ連閣僚会議対外経済委員会対外経済関係研究所から入手した資料をもとに、1989年11月15日までに設立された米ソの全合弁企業(109企業)を紹介する。

 


 

社会主義諸国の改革とGATT, IMF, 世界銀行への加盟

―米国議会上下両院合同経済委員会報告書より―

 

1.これまでの経緯

2.国際経済機関への加盟と経済改革との関連

3.中央計画経済国の加盟資格の戦略的問題

4.政策勧告

 

資料紹介

 ここに紹介する資料は、1989年10月27日に公刊された米国議会両院合同経済委員会の報告書”Pressures for Reform in the East European Economics”,vol.2 に所収の論文”Reform and Membership of the Planned Economics in the GATT, the IMF, and the World Bank”の全訳である。

 著者はニューヨークの国際連合事務局国際経済・社会部所属のJozef van Brabant氏と、インディアナ大学商学部国際ビジネス教授のPaul Marer氏である。

 本論分の見解は両著者独自のものである。