ソ連東欧貿易調査月報

1990年8月号

 

T.1989年のソ連の貿易動向

U.経済政策とルーブルの交換性

V.東欧諸国経済資料

◇◇◇

日ソ・東欧貿易月間商況1990年月分)

ソ連・東欧諸国関係日誌1990年月分)

対ソ・東欧諸国・モンゴル輸出入通関実績

1990年月および1〜月累計)

 


 

1989年のソ連の貿易動向

 

1.1989年の貿易概況

2.1989年の取引圏別貿易動向

3.1989年の商品別貿易動向

4.1990年上半期の貿易動向

5.1989〜1990年の日ソ貿易

6.ソ連貿易統計

 

はじめに

1989年のソ連の外国貿易高は対前年比6.6%増の1,409億ルーブルに上った。うち,輸出は同2.4%増の688億ルーブル、輸入は同10.9%増の721億ルーブルであった。

1989年のソ連の外国貿易は,輸出入ともに近年の低落傾向から上向きの変化がみられたといえる。しかし,輸出に比べ輸入が著しく増加した結果,最近14年間で初めて貿易収支がマイナスになり,33億ルーブルにおよぶ赤字を記録した。このような貿易収支の赤字傾向は1990年に入っても続いている。

地域別にみると,総額で社会主義諸国との取引はほぼ横ばいであったが、資本主義諸国との取引が大幅に増加したことによって,ソ連の取引圏別の貿易構成は,ほぼ社会主義諸国6割、資本主義諸国4割という構成になった。

 商品別の輸出構造をみると,これまでと同様,ソ連の輸出のなかで機械・設備が占める割合は16.4%と非常に低い水準にとどまっている。一方,燃料・エネルギーおよび木材製品の割合は全輸出量の約半分を占めた。付加価値の高い機械製品の輸出促進をはかるという政策が実を結ぶには,まだかなりの時間がかかりそうであり,今後ともソ連にとって石油,ガスが主要な外貨獲得源であることには変わりがない。

石油輸出による外貨収入が悪化しているなか,大量の穀物や消費財を中心とする輸入が増大することによって,ソ連の貿易収支の赤字幅はいっそう拡大しており,支払い遅延の問題も深刻化している。1989年の貿易実績は,このようなソ連の外国貿易を取り巻く環境の厳しさを裏打ちする結果となっている。

 本稿執筆者は当会ソ連東欧経済研究所研究員岡田邦生である。

 


 

経済政策とルーブルの交換性

 

1.交換性とは何か

2.ルーブルの地位と1986〜1989年の改革

3.交換性導入のプログラムはどうあるべきか

4.総合経済政策

5.新通貨政策

 

資料紹介

本稿はソ連の『コムニスト』誌1990年8月号に掲載された。B・フョードロフ党中央委員会社会経済部顧問(経済学博士候補)の論文「経済政策とルーブルの交換性」を翻訳、紹介するものである。

同論文は、1986年以降のペレストロイカ政策のなかで、今日までに採られた経済政策は一貫性を欠き、多くの点で間違いですらあったとし、その結果、モノ不足とルーブルの価値の低下がいっそう深刻になり、対外債務も増大したと述べている。さらに、ルーブルの交換性を回復することが経済改革の主要課題であり、それなしには経済メカニズム全体の抜本的な改革はありえないとの主張がなされている。

 同論文は、これまでの経済改革の政策の問題点を整理した上で、交換性導入のプログラムと、それに伴う総合的な経済・通貨政策のあるべき形を非常に具体的に示しており興味深い。