ロシア東欧貿易調査月報

1992年12月号

 

T.ロシアと他のCIS諸国間の経済関係

  ―日ロ経済専門家会議・ロシア側代表団報告―

U.ロシア連邦のエネルギー政策構想

V.カムチャツカ州の経済

W.ロシアの輸出入ライセンス・割当制

X.コメコン崩壊とハンガリーの対東側経済関係

◇◇◇

月報年間目次

旧ソ連・東欧貿易月間商況(1992年11月分)

旧ソ連・東欧諸国関係日誌(1992年11月分)

CIS・グルジア・東欧諸国・モンゴル輸出入通関実績1992年10月および1〜10月累計)

 

 


 

ロシアと他のCIS諸国間の経済関係

―日ロ経済専門家会議・ロシア側代表団報告―

 

はじめに

 当会ロシア東欧経済研究所は1977年よりロシアの対外経済関係省所属 景気研究所との間で日ロ経済専門家会議を開催してきたが、このほどロシア側代表団が来日した。代表団メンバーは、V.ヴォルコフ景気研究所所長、M.サラファノフ同研究所副所長(なお同氏は、ロシア対外経済関係省経済次局長もつとめる)、Yu.シーポフ同研究所日本部長の3名であった。

 代表団来日の機会に11月24日、東海大学校友会館において講演会を開催したので、その内容を紹介する。なお、諸般の事情により、今回はM.サラファノフ氏のみの講演となった。

 


 

ロシア連邦のエネルギー政策構想

 

ロシアのエネルギー政策のコンセプト要旨

1. エネルギー状況の現状認識

2. 第1段階(1992〜1993年)

3. 第2段階(1993〜1997年)

4. 第3段階(1997〜2010年)

5. エネルギー産業における科学技術進歩(略)

6. 環境保護(略)

7. 燃料・エネルギー・コンプレクスと関連諸部門の関係(略)

新しい経済条件下におけるロシアのエネルギー政策構想

    1. 新エネルギー政策立案の課題

    2. エネルギー危機―原因と結果

    3. 緊急危機対策

    4. 調整エネルギー市場形成の移行期(1993〜1997年)におけるエネルギー政策

    5. 長期エネルギー政策

    6. 終わりに

 

はじめに

 ロシア東欧経済研究所はこのほど、ロシア側の機関から「新しい経済条件下でのロシアのエネルギー政策のコンセプト」(1992年9月)を入手した。

 このコンセプトは、A.A.マカロフ・ロシア科学アカデミー準会員の指導の下にロシア科学アカデミー、ロシア連邦経済省、ロシア連邦燃料・エネルギー省をはじめとする研究所や機関の150名の専門家や省庁代表からなる集団の研究をベースにしている。すでに同様の文書「ロシアのエネルギー政策のコンセプト」が本年4月に作成されており、本コンセプトはこれを修正したものである。

 ロシアのエネルギー担当副首相であるチェルノムイルジン氏が首相に就任したことから、最高会議で審議にかけられていたこの文書がいよいよ日の目を見る可能性が強まった。その内容には、伝統的な長期計画のスタイルが色濃く残されているが、概して堅実な政策を取り入れており、資源大国ロシアのエネルギー開発は量的拡大という点では困難さを浮き彫りにしている。

 本コンセプトに盛り込まれた内容で、特に注目されるのは次の点である。

 @ エネルギー部門は民営化の点でも価格自由化の点でも完全に自由化されるのではなく、国家の統制色を残す「調整された市場経済」を目指している。

 A ロシアの将来のエネルギー確保のためには、埋蔵量の豊富なガス産業を発達させるしかない。

 B エネルギーの価格自由化、法的整備によって巨額の地代、税金が国庫に入るようになれば、エネルギー部門への再投資が可能になるばかりか、市場経済以降に役立つ。

 C 外国からのエネルギー部門への機械・設備、資本の投入なしには、エネルギーは外貨獲得源になりえない。

 D 長期的なエネルギー政策は、公共・生活用エネルギー需要を最重視する一方、省エネを進め、またエネルギーが環境を破壊しないようにすることが課題である。

 


 

カムチャツカ州の経済

 

1. カムチャツカ州経済の特徴

2. インフラストラクチャーの状況

3. カムチャツカ州の経済改革

 

資料紹介

 ロシア極東のカムチャツカ州(カムチャツカ半島)は、近年外部への開放が進み、当研究所も1992年9月に同州に初めての代表団を派遣した。この際、州のシンチェンコ第一副知事からカムチャツカ州の経済についての資料を入手したので、以下にこの資料の抄訳を紹介する。

 


 

ロシアの輸出入ライセンス・割当制

 

1.ロシア連邦領内における商品(作業、役務)輸出入のライセンス発行および割当について

2.ロシア連邦における商品(作業、役務)輸出入のライセンス発行および割当の方式に関する規程

3. 割当により定められた数量内で発行されるライセンスに基づいて輸出が実施される商品のリスト

4. ライセンスに基づいて輸出が実施される特殊商品(作業、役務)のリスト

5. ライセンスに基づいて輸入が実施される特殊商品(作業、役務)のリスト

6. ロシア連邦大統領およびロシア連邦政府が定める方式に基づき輸出入が実施される商品のリスト

 

はじめに

 このほど、1992年11月6日付ロシア政府決定第854号により、1993年以降の同国の輸出入ライセンス・割当せいの概要が示された。そこで『ロシア通報』紙(No.91.1992.11.17)に掲載された同決定と5本の付属文書の全文を翻訳して紹介する。

 この決定によれば、1993年1月からロシアでは特定の商品(付属文書に明記されている)を対象とした輸出入ライセンスおよび割当の統一的方式が施行される。ライセンス・割当が適用される輸出品目としては魚、石油、金属製品、木材関連も含まれており、日本にとっての影響も少なくないと思われる。とはいえ、1992年にも時限てきに同様のライセンス・割当制が実施されてきた経緯があり(1992年12月31日付政府決定第90号)、今回の決定でロシアの貿易がいっきょに国家管理色を強めるというわけではない。

 ロシアでは6月の大統領令で重要物資の輸出権が特定の業者に限定されており(本誌、1992年7月号)、その重要物資のリストと今回のリストが重複する場合には、当然ながらライセンス・割当が交付される企業はすでに輸出権を得た業者ということになっているが、厳密な関連は不明である。また、本決定には表現が明確でない箇所もあり、制度の全容が明らかになっているとはいいがたい。

 


 

コメコン崩壊とハンガリーの対東側経済関係

 

1. 旧ソ連邦市場へのはかない期待

2. ビシェグラード三国(チェコスロバキア、ポーランド、ハンガリー)間の政治・経済関係

3. 疎遠となるバルカン地域

4. 数字で見るハンガリーの対東側貿易

 

はじめに

 コメコンが崩壊して約1年半が過ぎた。過去数年急速に縮小してきたハンガリーの対旧ソ連・東欧貿易は1992年1〜7月、輸出に関しては数量ベースでもわずかながら拡大に転じた。しかし1987年までハンガリー貿易の約半分を占めた旧コメコンとの貿易は、いまや貿易全体の約4分の1を占めるに過ぎない。いかに訳出紹介する論文(『対外経済』誌1992年8月号掲載)は、1991年時点でのハンガリーと旧コメコン諸国の経済関係を、対旧ソ連、「ビシェグラード三国」間(対チェコスロバキア、ポーランド)、対その他諸国に分けて考察している。筆者、アンタローツィ・カタリンは金融研究所鰍フ研究員であり、この論文は同研究所刊「トンネルからの報告」シリーズのために執筆されたものの要約である。