ロシア東欧貿易調査月報

1993年10月号

 

T.中ロ経済関係の新展開

  ―中ロ双方にとって増す相互貿易の重要性―

U.最新ロシア経済情勢

  ―L.I.アバルキン・ロシア科学アカデミー経済研究所所長講演会より―

V.ロシア対外経済関係の現状

  ―ロシア対外経済関係省付属景気研究所サラファーノフ所長講演会より―

W.韓国の対旧ソ連経済協力に対する評価

X.キルギスタンの対外経済管理制度の概要

◇◇◇

旧ソ連・東欧貿易月間商況1993年9月分)

旧ソ連・東欧諸国関係日誌1993年9月分)

CIS・グルジア・アゼルバイジャン・東欧諸国・モンゴル輸出入通関実績(1993年8月および1〜8月累計)

 

 


 

中ロ経済関係の新展開

―中ロにとって増す相互貿易の重要性―

 

1.  中ソ貿易、40年間の変遷

2.  激増続く中ソ(中ロ)貿易

3.  中ロ( 中ソ)貿易の商品構造――顕著な相互補完性――

4.  中ロ合弁企業の展開

5.  国境貿易の急増と地域間経済交流の活発化

6.  環日本海経済交流の柱に成長

 

はじめに

 中国と旧ソ連との経済関係(以下、中ソ経済関係)は、1960年代から1980年代初めまで続いたイデオロギー対立と政治対立を背景に、著しく希薄化し、中ソ貿易も全く不振のまま推移した。

 中ソ政治関係は、1980年代後半になって好転し、ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長(当時)の北京訪問(1989年5月)と中ソ頂上会談の成功によって、完全に好転した。それに先行して、中ソ経済関係の著しい緊密化が見られていたが、中ソ貿易は、1988年に往復約29億ドルであったのが、1992年には約66億ドルへと飛躍した。

 中ロ貿易(中ソ貿易)は、商品構造が極めて相互補完的であり、外貨不足に悩む両国にとって好ましいバーター取引が主流ということも会って、双方にとって利益が大きく、重要性が高まっている。

 中ロ貿易の約半分は、いわゆる「国境貿易」(辺境貿易)であり、中国の東北三省や内モンゴル自治区、とりわけ黒龍江省、ロシア極東地方の地域住民の生活水準改善に寄与している。

 中ロ間では、有望な大規模経済協力プロジェクトの具体化が交渉中であり、将来、中ロ経済協力が北東アジア経済協力の支柱の一つに成長する可能性が大きい。

 なお、本稿は当研究所副所長、小川和男が執筆したものである。

 


 

最新ロシア経済情勢

L.I.アバルキン・ロシア科学アカデミー経済研究所所長講演会より

 

1.  経済改革の意義と性格

2.  危機脱出の方途

3.  危機の見通し

質疑応答

 

はじめに

 当会では、アバルキン・ロシア科学アカデミー経済研究所所長が来日したのを機に、9月22日、東京証券会館にて講演会を開催した。ここではその内容を紹介する。

 アバルキン氏は、ゴルバチョフ時代に経済界各担当副首相として、経済改革の旗手役を務め、現在は科学アカデミー経済研究所所長の任にあたっているロシア有数の経済学者である。わが国に紹介された著者も数多いが、代表的なものとしては、『ペレストロイカの政治経済学―加速化への道の選択』(小川和男監訳、日ソ図書、1988年)、『失われたチャンス―ソ連副首相としての一年半』(岡田進訳、新評論、1992年)などがある。

 現在、アバルキン氏は、チェルノムイルジン首相に極めて近く、現ロシア政府の経済政策についてアドバイスを求められる機会も多いといわれている。しかし、講演の冒頭で触れられているように、その見解は特定の政治勢力を擁護するものではない。同氏は、研究者として独立した態度と見解を貫き、現政府の政策についても厳しい評価を下している。

 


 

ロシア対外経済関係の現状

―ロシア対外経済関係省付属景気研究所サラファーノフ所長講演会より―

 

1.  ガイダル改革の功罪

2.  ハイパーインフレの危機

3.  難問山積の対外経済関係

4.  二重権力構造の弊害

質疑応答

 

はじめに

 当会ロシア東欧経済研究所は、1978年余李ロシアの対外経済間継承付属景気研究所との間で、日ロ経済専門家会議を開催してきたが、このほど本年度のロシア側代表団が来日した。代表団のメンバーは、M.サラファーノフ景気研究所所長、V.バニチ副所長、V.オレーキシン・ロシア対外経済関係部長、Yu.シーポフ日本経済部長の4名であった。

 代表団来日の機会に9月30日に東京証券会館で講演会を開催したので、本郷ではサラファーノフ所長の講演、及び質疑応答の内容の一部を紹介する。

 


 

韓国の対旧ソ連経済協力に対する評価

 

1.  対旧ソ連経済協力の成果

2.  対旧ソ連経済協力の問題点

3.  対旧ソ連経済協力の課題

4.  対ソ経済協力の借款問題

 

はじめに

 本稿では、韓国対外経済政策研究員・研究委員である李昌在氏の著作『対旧ソ連経済協力の基本戦略』から、第2章「対旧ソ連経済協力に対する評価」および第5章の3「対ソ経済協力の借款問題」の(1)現況の部分を紹介する。

 そのなかで、李氏は勧告と旧ソ連両国間の経済協力について、貿易、投資、資源、科学技術、輸送・通信手段といった各分野ごとの分析を行い、連邦崩壊による両国間貿易高の激減や旧ソ連地域の投資環境の未熟などのマイナス面ばかりでなく、両国の経済交流が促進されているというプラス面までも含め、あらゆる角度からの検証を試みている。

 いずれにせよ、韓国にとって対旧ソ連経済協力が重要課題の一つであることに変わりはなく、同氏は、今後韓国政府及び企業レベルでのプロジェクトの具体化が必要であると説いている。

 


 

キルギスタンの対外経済管理制度の概要

 

1.  キルギスタン共和国における対外債務管理

2.  キルギスタン共和国における外貨管理の基本的原則

3.  キルギスタン共和国における貿易管理制度

 

資料紹介

 周知のとおり、キルギスタン共和国は、IMFの勧告をもとに他のCIS諸国に先駆けて独自通貨の導入に踏み切ったが、対外経済管理面では経験に乏しく、関連法規の整備も遅れており、西側諸国が同国と経済関係を作り上げる上での大きな障害となっている。

 ここに紹介するのは、当研究所がキルギスタン共和国経済・財務省付属経済研究所より入手したキルギスタンの対外債務・外資・貿易管理システムを説明した文書である。キルギスタンの現行の対外経済管理制度を理解する上で有益であると思われる。