ロシア東欧貿易調査月報

1993年12月号

 

T.ロシアの軍民転換と兵器輸出の諸問題

U.ロシア情勢と対外経済関係

  ―I.D.イワノフ対外経済研究所副所長を囲む研究会より―

V.1992年のロシア連邦の外国貿易統計

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月報年間目次1993年分)

旧ソ連・東欧貿易月間商況1993年11月分)

旧ソ連・東欧諸国関係日誌1993年11月分)

CIS・グルジア・東欧諸国・モンゴル輸出入通関実績(1993年10月および1〜10月累計)

 

 


 

ロシアの軍民転換と兵器輸出の諸問題

 

1.  不安定な転換期が続くロシアの現状

2.  市場化のカギは大規模国有企業の民営化

3.  市場化と軍民転換の諸問題

4.  軍民転換意欲の高揚と低下

5.  極東地域の軍産複合体と軍民転換

6.  旧ソ連・ロシアの兵器輸出の実態と輸出拡大志向

7.  必要な先進諸国の軍民転換支援

 

はじめに

 ロシアは政治の民主化と経済の市場化を目指して産みの苦しみを続けている。転換期は長く続く見通しであるが、エリツィン政権の英材政策の失敗から、実体経済は悪化するばかりであり、国民の不満が非常に高まっている。1993年12月のロシア議会総選挙におけるエリツィン大統領派の敗北は、国民のそうした不満を如実に反映した結果であった。

 市場化の成否のカギのひとつは、軍民転換が握っているが、ロシア経済で大きなウェイトを占める巨大軍産複合体の民需転換は容易に進んでおらず、エリツィン政権も軍産複合体代表者たちも兵器生産の安易な続行と兵器輸出の拡大を主張し始めている。兵器輸出の拡大によって外資収入を増やし、その外資収入によって軍民転換を促進するという考えも出ている。

 先進諸国としては、ロシアの大量兵器輸出を防止するため、軍民転換を積極的に支援する必要がある。知的・技術的支援に加え、金融支援にも踏み込む必要があろう。

 本稿は、当研究所 小川和男副所長が執筆したものである。

 


 

ロシア情勢と対外経済関係

I.D.イワノフ対外経済研究所副所長を囲む研究会より―

 

1.  構造変換の困難

2.  議会選挙で掲げる各党の経済政策

3.  輸出入のアンバランス

 

はじめに

 当会ロシア東欧経済研究所では、イワノフ対外経済研究所副所長の来日を機に、12月3日、当会会議室において氏を囲んで研究会を開いた。

 本研究会において、イワノフ氏は、ロシアの経済改革及び対外経済関係における問題点を指摘した上で、今後の経済発展の為の展望を述べた。また、12月12日のロシア新連邦議会選挙を前に、経済政策を中心として各党の紹介及び分析を試みた。極右と共産勢力が票を伸ばした先の選挙結果を考える上でも、各党に対する氏の評価を知ることは大いに役立つであろう。

 


 

1992年のロシア連邦の外国貿易統計

はじめに

 当会モスクワ事務所でこのたび、ロシア連邦対外経済関係省より『1992年のロシア連邦の対外経済関係』を入手したので、ここにその一部を紹介する。旧ソ連ではソ連対外経済関係省から、『外国貿易統計集』が毎年出版されていたが、旧ソ連崩壊の混乱と共に統計集の出版も停止した。本統計は、ロシア連邦としてはじめてだされた外国貿易統計であり、金額の表示は今までのようなルーブル表示から米ドル表示になり、統計の手法も国際的手法に合致させており、HS条約(商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約)にほとんど準じており、ロシアの外国貿易の実情を知る上で、大変参考になると思われる。

 なお、本稿で紹介した統計の第1表及び第7表では、各地域内の国の順序はロシア語のアルファベットによるものである。また、第5表、第6表の主要商品の国別輸出入高の国の順序は、数量が多い準であり、必ずしも金額の多い順にはならんでいない。さらに、各商品項目に、「日本」が出てきた場合は、その数量に関わらず、表中に日本の項目を入れた。