ロシア東欧貿易調査月報

1994年6月号

 

T.1993〜1994年のロシア経済

U.1993年のロシア極東の対外経済関係

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旧ソ連・東欧貿易月間商況1994年5月分)

旧ソ連・東欧諸国関係日誌1994年5月分)

CIS・東欧諸国・モンゴル輸出入通関実績(1994年4月および1〜4月累計)

 

 


 

1993〜1994年のロシア経済

 

1.  1993年のロシア経済

2.  1994年のロシア経済

 

はじめに

  1992年に国内総生産(GDP)が前年比で19%減と破滅的な経済状況を経験したロシアだが、1993年は低落速度が、やや鈍化し、GDPは同12%滅となった。

 生産の低迷とは対照的に消費活動は活発で、小売商品販売高は前年比で2%のプラスを記録した。しかし、年間インフレ率は1,000%と前年の2,600%と比べると改善されたとも言えようが、きわめて高水準であることには変わりなく、インフレの波を直接こうむることになる社会的弱者にとっては、生活状態は決して楽とはいえず、貧富の格差は拡大傾向をみせた。

1993年12月のロシア新議会における極右政党の大躍進は、内外に大きな波紋を投げかけたが、この結果は市場経済化にともなう以上のようなロシアの社会経済状況を反映したものであったといえる。

1994年のロシア経済は、インフレ進行の鈍化と生産低下という昨年来のトレンドを基本的に維持しつづけるとみられる。1994年は構造改革、とりわけ国有企業改革を軸とする制度改革が進展することが期待されているが、軍民転換の困難性、地域経済の不均等発展、投資環境の悪化、希薄な所有・経営意識、また議会におけるロビー活動の活発化などが障害となり、スムーズな改革は望めないものと考えられる。

 本稿の執筆者は当研究所調査役 音羽周である。

 


 

1993年のロシア極東の対外経済関係

 

1.  1993年の極東地域の貿易動向

2.  極東地域の相手国別貿易動向

3.  極東地域の輸出品および輸入品構成

4.  極東地域における外資参加企業の活動状況

 

はじめに

 本稿は、最新のロシア極東の貿易・外国投資動向を紹介する目的でロシア科学アカデミー極東支部経済研究所に調査を依頼したもので、執筆者はA.G.イワンチコフ同研究所国際研究・コンサルティング部元部長(現インテルグループプロエクト社長)である。

 ロシア極東では、近年になり州・地方別の貿易統計が少しずつ公表され始めた。まだまだ不完全とはいえ、この2〜3年で極東地域の対外経済の動向やその構造がかなり明らかになってきた。これまでに明らかにされたロシア極東の貿易・外国投資の特質、基本点を整理すると、以下のようにまとめることができる。

 ソ連解体後、極東地域ではロンア国内市場およびCIS市場との非効率な経済関係を弱め。アジア太平洋諸周との経済的つながりを強化する動きがみられる。そのため、ロシア全体では貿易が縮小傾向にあるのに対し、極東地域では逆に貿易規模の拡大が続いている。

 また、極東地域の貿易・外国投資構造では、まず第1に、輸出においては日本、輸入においては中国の占めるシェアが非常に大きいことが特徴的である。だが、1993年には対中輸入の増加に歯止めがかかった。この傾向は、1994年3月に中国人に対するビザ制度が導入されたことから1994年にも継続すると考えられる。第2に、極東地域ではロシアの他地域に比べ、外資参加企業の活動が活発であることを指摘しうる。もっとも、本稿でも述べられているように、1993年には合弁企業の登録数が増大しているにもかかわらず、その貿易額は前年に比べ半減した。これには、合弁企業に対する特典がなくなったことや地元の企業が独自に外国市場に参入する権利をもつようになったことなどが影響していると考えられる。日ロ合弁企業のきわだった特徴として、外貨建て取引が大きいことがあるが、これは事業規模が小さいことと表裏一体であり、極東地域の経済発展の牽引力とはなっていない。官民一体となった長期的視点に立った投資戦略が望まれる。