ロシア東欧貿易調査月報 1995年11月号 |
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市場経済化のロシアの企業会計制度
―ロシアにおける企業会計制度の構築―
1. ソビエト会計制度の限界
2. ロシア企業のフレームワーク
3. 勘定計画と取引の記帳
4. 会計基準と会計処理
5. 財務諸表の作成と公表
6. 会計報告書の様式と記入手続
7. 公認会計士制度の導入
8. インフレーションと固定資産再評価
9. 企業会計制度を構築している機関
10.残された問題
はじめに
中央集権的社会主義経済システムから市場経済システムに移行するにあたり、ロシアの企業会計制度が大きく変化している。旧ソ連時代の社会主義時代の企業会計は、中央に報告するための単なる簿記に後退していた。市場経済が浸透し、企業が独立するようになって、ようやく企業会計の概念が誕生し、それに則した会計制度がロシアで構築されてきている。そこで、市場経済化が進行するロシアの企業会計制度の現状について、森章・明治大学商学部教授に執筆していただいたので、ここに紹介する。
ロシアの会社形態
―ロシア連邦民法典からの抜粋―
資料紹介
ロシア連邦の民法典(第1部のみ)は1994年10月21日にロシア下院で採択され、1995年1月1日から施行された。このなかで、ロシアにおける会社形態について基本的な説明がなされているので、その説明部分である民法典のなかの「法人」の章から「人的および物的会社」、「生産協同組合」、「国家および自治体単一企業」の節を翻訳紹介する。また、民法典の全体の目次とこれらの条文の一部を以下の図表にまとめた。
なお、ロシアの新しい民法典の性格については、小田博ロンドン大学教授が執筆した「ロシア連邦の民法典−ロシア私法の再生−」(『ジュリスト』1995.4.15)に詳しいので参照されたい。
ロシアの新しい外国貿易管理法
資料紹介
1995年10月に新しい外国貿易管理法である「外国貿易活動国家規制についての」ロシア連邦法にエリツィン大統領が署名した。内容は、一般的規定が多いが、第4章の「外国貿易活動の国家規制についての基本規程」などは、具体的内容(とくに、貿易における国家独占あるいは貿易保護措置など)も含まれており、今後の外国貿易活動の基本的法律として重要なものである。なお、原文は『経済新聞』(1995、No.43)による。
新たな経済発展段階を迎えたロシア経済
1. 政府中期プログラムにおける現状認識
2. 最近の実績に見るロシア経済の現状
ロシア連邦政府プログラム「1995〜1997年のロシア経済の改革と発展」(抄訳)
はじめに
ロシア経済は、1995年のGDPが前年比で4%減(1992年19%減、1993年12%減、1994年15%減)と予測されるなど、急激な生産減に歯止めがかかってきたように見える。
しかし、ロシア政府の中期プログラムがロシア経済の現状を、安定化段階のうちの構造的危機局面と規定していることにも見られるように、ロシア経済が危機的状況を克服するに至っていないこともまた確かである。生産に限ってみても、同プログラムが「生産分野の構造的問題は深刻化しており、経済の原料部門に対する依存度が強まっている。原料部門は、外国市場に主眼を置き、比較的安定した成長を続けており、同部門の比重は高まっている。
そして、いまのところ、まさにこのことが、全体的な減産のテンポを緩やかなものとしているのである」と述べているとおり、手放しで喜べるものではない。
1〜9月のロシアの経済実績は、1994年末に生じ、1995年に入りしだいにはっきりしてきた基本的トレンドに大きな変化がないことを示している。ロシア経済が真の意味で安定化段階を迎えるには、しばらく時間がかかりそうである。
なお、ロシア政府の中期プログラムのうちの第3章、第4章、第5章、第6章の抄訳を文末に掲載しておく。テキストは、『ロシア連邦政府プログラム“1995〜1997年のロシア経済の改革と発展』(モスクワ、1995年)である。
データバンク
1. ロシアの経済統計
2. CIS諸国の経済統計
3. ロシアの1995年上半期の国際収支
欧州開銀によるCIS・中東欧諸国の改革に関する評価