ロシア東欧貿易調査月報

1996年2月号

 

T.1995年のロシア経済を読む

U.ロシア商業銀行列伝 ―担保入札に関与した銀行を中心に―

V.ロシアにおける土地改革の現状と諸問題

W.下院選挙後のロシアの極東の政治・経済情勢

  ―ミナキル氏の講演会から―

X.ロシアの対外経済管理制度改革の動向

  ―1995年下半期の動向と展望―

Y.ロシアの生産物分与法

Z.1994年のCIS諸国の外国貿易統計

[.旧ソ連諸国の指導部人事一覧A

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1995年のロシア経済を読む

 

1. 1995年のロシア経済の現状

2. ロシア経済の評価と今後の見通し

 

はじめに

 ロシア統計国家委員会が発表した1995年ロシアの経済実績によれば、GDP、工業生産実績でそれぞれ前年比4%減、3%減、インフレ率は月平均7%にとどまり、1992年以来の経済の崩落傾向にもようやく歯止めがかかってきたようにみえる。ロシア統計のデータ捕捉率の低さ、統計には現れないロシア社会の深部で生じている動きを考慮すれば、ロシア経済の現状は数字で表現されるものよりもっと良好であるとみることも可能であろう。

 だが、先のロシア下院選の結果に示された多くのロシア国民の現政権に対する不信の態度は、経済改革の恩恵が必ずしも国民全体にまで及んでいないことを物語るものである。また後で述べるように、ロシア経済の現状の評価については政権指導部内でも意見が一致していない。

 以下では、明暗入り交じったロシア経済の現状について、公表された1995年経済実績を踏まえ、検討してみる。

 本稿執筆者は、当研究所調査役音羽周である。なお、本稿は『ロシア東欧経済速報』(No.1015、平成8年2月25日)で発表した拙稿「1995年のロシア経済―明と暗が交錯する新局面を迎えて―」に加筆・修正したものである。

 


 

ロシア商業銀行列伝

―担保入札に関与した銀行を中心に―

 

1. 担保入札の勝利者たちのプロフィール

2. 巻き返しをはかる銀行

3. 地方銀行について

 

はじめに

 ロシアでは、国家保有株を担保として、国家が一般企業より融資を受けることとなり、1995年末に融資権をめぐる一連の入札(以下、担保入札と称する)が実施された。この担保入札は、融資を行う側にとってもきわめて重要な意味をもつものであった。国家に融資を行うことにより、国家との親密な関係を構築あるいは強化することができるからである。現に、この担保入札に勝利したメナテップ銀行の株の15%を、国家が取得するという話が、最近、具体化しているようである。つまり、昨年末の担保入札は、国家の寵愛をめぐる銀行間の死闘の場であったという見方もできよう。

 本編では、この担保入札を巡る死闘に関与した銀行を、担保入札における勝因・敗因なども交えながら紹介する。これらの銀行は、いずれも、ロシアの金融システムの核を形成する大銀行であり、そのプロフィールを知ることは、ロシアの金融システム全体を知るうえでの手がかりになると思われる。

 この他本編では、今まであまり紹介されなかった地方の銀行の状況、ならびに地方の金融業界に共通の特徴を紹介する。

 なお、本編のメナテップに関する記述は、当会の経済速報(No.1013、平成8年2月5日)の当該部分に訂正を加えたものである。執筆者は坂口泉・ロシア東欧経済研究所調査役である。

 


 

ロシアにおける土地改革の現状と諸問題

 

1. 土地関係の小史

2. 土地使用料

3. 大都市における土地関係

4. 都市以外の土地関係

 

はじめに

 周知の通り、ソ連時代には土地は国有とされ、長いこと私的所有は禁止されてきた。しかし、ソ連解体後のロシアでは、市場経済化のもとで土地の国家独占が廃止され、土地所有形態の多様化に向けて法的基盤が整備されつつある。本稿では、ロシアにおける土地改革について農村部と都市部の現状、所有形態と賃貸借、土地税と地代といった問題を中心に考察する。

 本稿の執筆者は、当会モスクワ事務所D.V.ヴォロンツォフ研究員である。

 


 

下院選挙後のロシアの極東の政治・経済情勢

P.A.ミナキル・ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所長講演会より―

 

1. 1995年の極東地域の工業生産

2. インフレ、財政、投資

3. 対外経済関係

4. 極東地域における下院選挙の結果とその影響

  

はじめに

 当会では、ミナキル・ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所長が来日したのを機に、2月8日、アルカディア市ヶ谷にて講演会を開催した。ここではその内容を紹介する。

 今回、ミナキル所長には1995年のロシア極東の経済情勢に関する総括および極東地域における1995年12月17日のロシア下院選挙の結果と同地域に及ぼすその影響についてご講演いただいた。

 


 

ロシアの対外経済管理制度改革の動向

1995年下半期の動向と展望―

 

1.  1995年の貿易実績

2.  ロシアの対外経済活動管理制度の動向

3.  連邦法「生産物分与協定について」

4.  自由経済地域に関する法令

 

はじめに

 本誌では、V.A.オレシキン・ロシア景気研究所所長によるロシアの対外経済活動の管理制度改革に関する解

説を半年ごとに掲載しているが、本号では1995年下半期の動向について紹介する。

 1995年下半期には、輸出関税の引き下げまたは廃止による輸出の自由化、政府による輸出促進措置の導入、輸出入取引の際の外貨管理制度の強化など重要な決定がいくつかなされた。年末には、年内の採択が絶望視されていた連邦法「生産物分与協定について」が採択され、本年1月から施行されることになった。

 本稿では、輸出関税の引き下げまたは廃止をはじめとする政府の輸出業者支援措置、外貨管理強化のための輸出商品の鑑定システム、同様の目的で新しく導入された輸入の際の外貨管理制度の背景および事実関係の解説の他、連邦法「生産物分与協定について」の要約・解説に焦点をあてている。

 なお、連邦法「生産物分与協定について」に関しては、その全文を本号に掲載しているので、ご参照いただきたい。

 


 

ロシアの生産物分与法

 

資料紹介

 ロシアで1995年末に「生産物分与協定について」のロシア連邦法、いわゆるプロダクション・シェアリング法が議会で採択、承認された大統領も署名し、1996年1月に発効した。国家会議(下院)での採択後、連邦会議(上院)で否決され、その後の法律の修正によって投資家に不利になったといわれている法律であるが、簡素な課税システム、プロダクション・シェアリング協定の安定性の保証など、画期的な内容を含んだものであることにはかわりはない。以下に、その全文を紹介する。なお、出典は『ロシア新聞』(1996.1.11)である。なお、本号の月報の「ロシアの対外経済管理制度改革の動向」のなかで、この法律の解説がなされているので、参照されたい。

 


 

1994年のCIS諸国の外国貿易統計

 

1. アゼルバイジャン

2. アルメニア

3. ベラルーシ

4. グルジア

5. カザフスタン

6. キルギス

7. モルドバ

8. ロシア

9. タジキスタン

10.トルクメニスタン

11.ウズベキスタン

12.ウクライナ

 

はじめに

 当会モスクワ事務所でこの度、『1994年のCIS諸国の対外経済活動』(CIS統計委員会、モスクワ、1995年)を人手したので、ここにその一部を紹介する。本統計は、CIS各国の統計機関がCIS統計委員会に提出したデータをもとに作成されたものである。本稿のロシアに関する数値は、ロシア連邦統計国家委員会がCIS統計委員会に提出したデータであり、ロシア連邦関税国家委員会のデータにより作成した当月報1995年8月号の「1994年のロシア連邦の外国貿易統計」とは若干異なる。なお、国によって提出したデータに偏りがあるため、すべての国の表の統一はとれなかった。

 


 

旧ソ連諸国の指導部人事一覧A

 

1.  ロシア連邦(1996年1月現在)

2.  グルジア共和国(1996年1月現在)

 

はじめに

 当月報1月号に掲載した「旧ソ連諸国の指導部人事一覧」にひきつづき、人事が確定していなかったロシアとグルジアの指導部人事一覧を紹介する。

 なお、ロシアはすべての省庁、国家委員会等のポストの有無を確認しているが、グルジアについてはその限りではない。