ロシア東欧貿易調査月報 1996年10月号 |
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エリツィン新体制化のロシアの現状と日ロ関係
―日本・ロシアシンポジウムより―
1. 基調講演「ロシア経済をどう見るか」:(社)日本経済研究センター会長 金森 久雄
2. パネルディスカッション
はじめに
日ソ国交回復40周年を迎えることを記念して、当会では(社)新構想研究会、日本対外文化協会と共催で、10月2日如水会館に於いて「エリツィン新体制下のロシアの現状と日ロ関係」と題し、シンポジウムを開催した。
ここでは、金森久雄・日経センター会長の基調講演とそれにもとづくパネルディスカッションの模様を紹介する。
なお本文中のロシア側の人名の肩書きは当時のものである。
ロシア大統領選挙後の経済政策をめぐって
はじめに
西側諸国は今回のロシア大統領選挙の結果を一様に歓迎している。ロシアではこのことを根拠に、今後西側からの対ロシア投資が活発化するとの楽観的な見方が政策当局の間に広がりつつある。
だが、ロシア経済の現状は実体経済に目を向ければ、「不況的安定化」局面から再び生産低下の局面へと移行しつつある。また賃金未払い問題、生産企業の慢性的資金不足、所得格差の拡大など、マクロ経済安定化による否定的結果も残されたままである。
このような経済・社会状況を背景にロシアでは従来の経済政策を見直す動きがでてきているが、この動きはロシアにおける民族資本の形成とも密接に連動している。以下では、現地での聞き取り調査も踏まえ、最近の動きを追ってみる。
本稿執筆者は、当会ロシア東欧経済研究所・研究開発部次長音羽周である。
ロシアにおける銀行資本の生産資本への接近(1)
―金融・産業グループ「インターロス」の誕生―
1. 新旧「インターロス」
2. ONEKSIM銀行について
3. ノリリスク・ニッケル
4. シダンコ
周知のとおり、ロシアでは市場経済化が進む過程で、商業銀行と「私的生産企業」の簇生がみられた。だが、インフレの昂進と高率な金利、金融市場での取引の選好、高い収益率を期待しうる生産部門の欠如などの理由により、商業銀行と「私的生産企業」の提携関係は、一部を除いて、きわめて弱いものであった。
ところが、1995年8月の銀行危機と同年秋からの担保入札の開始、インフレ期待の縮小、そして輸出関連部門の好調さを主要契機として、商業銀行が有力生産企業の主要株主になるべく積極的な活動を開始した。ロシアにおける銀行資本の生産資本への接近の開始である(この具体化のうちのひとつが金融・産業グループの形成であると考えられる)。
本誌では今後、ロシアにおける銀行資本の生産資本への接近の具体的事例を紹介していくが、今回はONEKSIM銀行が形成母体である金融・産業グループ「インターロス」をとりあげる。
本稿執筆者は。当会ロシア東欧経済研究所調査部次長坂口泉である。