ロシア東欧貿易調査月報 1997年7月号 |
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1997年上半期のロシア経済と今後の展望
1. 1997年上半期のロシア経済
2. ロシア経済の現状の評価と見通し
はじめに
1997年上半期のロシア経済は、GDPが0.2%減にとどまり、経済の低下にようやく歯止めがかかってきたようにみえる。だが、固定資本投資は約9%減少するなど、本格的な経済回復の状況は生まれていない。
経済成長へのマクロ経済条件のひとつとされる銀行貸出金利は、国債の利回りの低下にしたがって下がってきてはいるが、依然として高い水準にあり、投資活動の活性化に向けた条件はまだ整っていない。この問題と関連して、最近ではミクロレベルでの改革の必要性が強調されているが、改革は緒についたばかりである。
一方、ロシアの有望企業には内外の資本が流入しつつあり、ひとつの成長拠点となりつつある。
本稿は、1997年上半期の経済状況の評価と、それを踏まえた今後の課題を論じている。
執筆者は、当会ロシア東欧経済研究所研究開発部次長音羽周である。
PS契約発効後のサハリンプロジェクト
1. サハリンプロジェクトの概要
2. PS契約の内容
3. プロジェクト実施による波及効果
結び ―PS関連法の整備に向けて―
はじめに
総投資額250億ドルといわれるサハリン−Tおよびサハリン−Uプロジェクトは、1996年6月に相次いで生産物分与契約を発効させて以降、関連事業の発注が活発化するなど本格始動の様相を帯びてきた。開発地域が日本に隣接し、また多数の日本企業も参加していることから、両プロジェクトの動向はわが国の報道でもしばしば大きく取り上げられている。
両プロジェクトの実現によって、将来的にサハリン州の石油の生産量は現在の年間170万tから3,000万t、天然ガスは年間16億㎥から280億㎥に増加すると予測されている。これにより、ロシア極東地域の燃料・エネルギー不足が大幅に緩和されるとともに、生産物の取り分を通して多額の収入をロシア側(とくにサハリン州)にもたらす。また、関連事業の請負を通じて、極東地域における企業の経営状況の改善や雇用の創出といった波及効果も大いに期待されている。
一方わが国にとっては日本企業によるプロジェクトへの直接あるいは間接的な参加以外に、石油・ガス資源の中東依存からの脱却、支援基地誘致などによる地域振興といった視点からもサハリンプロジェクトは関心を集めている。
本稿は、両プロジェクトの経緯と概要、その生産物分与契約の内容、プロジェクト実施による波及効果について、主として日口双方の報道記事を手がかりに整理したものである。
執筆者は、当会ロシア東欧経済研究所研究員中居孝文である。
塗り替えられるロシア石油産業地図
―中堅石油会社の支配権をめぐり激化する企業グループ間の戦い―
1. 第二次石油戦争
2. 各戦線の状況
3. 第二次石油戦争終了後のロシア石油産業地図についての予測(まとめにかえて)
[参考資料] 1998年以降に民営化が予定されている主要石油会社のプロフィール
はじめに
最近、ロシアでは、外資の呼び込みに成功したこともあり、短期国債の利回りが20%台にまで低下してきている(1995〜1996年には一時250%にまで達したこともある)。外為市場の安定後、ロシアの商業銀行にとっての貴重な資金稼ぎの場であった短期国債市場でもまた、安定化傾向が顕著になってきたといえる。
このため、最近、ロシアの大商業銀行のリアル・セクターへの関心が強まりつつあるように思われる。より具体的にいえば、有力生産企業の株を買い占め、傘下におさめようという意欲が、一部大手商業銀行の間で再び高まりつつある。しかし、ここで、問題となるのは商業銀行側からみて魅力的でかつ、まだ最終的所有関係の決まっていない生産企業の数が限定されているということである。このため、最近、ロシアでは、複数の中堅石油企業、スホイ・グループ、スビャジインベスト、ノヴォリペツク製鉄所、クラスノヤルスク・アルミニウム工場などを舞台として、再び、その支配権をめぐる大商業銀行間の戦いが熾烈化してきている。
本稿では、それらの戦いのうち、第2次石油戦争と呼ばれる中堅石油会社を舞台とする金融資本間の戦いについて紹介することとする。
執筆者は、当会ロシア東欧経済研究所調査部次長坂口泉である。