ロシア東欧貿易調査月報

1998年6月号

 

T.経済改革下におけるロシア地域の生産構造変化

U.数字で見るロシア極東(ロシア極東データブック1998年版)

V.今日のロシアの貿易・投資制度(3)

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ロシア貿易・産業情報

 燃料・エネルギー

 金融

 通信

 その他

論調と分析

 タチアナの1年 ―政治への娘の意見の害と利益について―

 モスクワは今度こそ本気で改革を敢行しなければならない

データバンク

 1998年の1月〜5月のロシアのマーケット

  ロシアの経済統計

旧ソ連・東欧貿易月間商況1998年5月分)

旧ソ連・東欧諸国関係日誌1998年5月分)

CIS・東欧諸国・モンゴル輸出入通関実績(1998年1〜3月累計)

 

 


 

経済改革下におけるロシア地域の生産構造変化

日本貿易振興会 アジア経済研究所

 平泉秀樹

1.ロシア地域の概要

2.ロシア鉱工業生産の動向と部門構造の変化

3.地域における産業部門の構造変化

4.鉱工業生産の地域構造変化

 

はじめに

 ロシアで資本主義経済への移行(経済改革)が始まって6年以上が経過した。この間、ロシア経済はインフレの発生、国内総生産の縮小、とりわけ鉱工業生産の著しい低下に見舞われた。しかし、これまで実施されてきた超緊縮金融・財政政策により社会的、経済的に多大の痛みを伴いながらも、現在ではインフレは沈静化し、1997年には国内総生産、鉱工業生産も若干ながらプラスに転じた。このような状況からロシア経済に本質的な転換の兆しが現れたという声も聞かれる。しかしロシア全体の数字として平均化されたマクロの指標だけでロシア経済の現状をみることは、経済過程全体で生じている現実の姿を誤って理解する危険性がある。ロシアは数多くの連邦構成体からなる国であるが、経済改革の過程でこれら地方の経済が衰退し、地方間で経済格差が拡大している現実がある。このような地方経済の現状をみるならば、マクロの数字はあくまでも一国の平均であるという事実を確認しておく必要がある。したがって、ロシア経済の現状をより正確に理解する上で、地域もしくは地方経済の現状を理解することが重要である。

 計画経済下において、ロシア経済はサービス部門の発展が遅れ、特に鉱工業生産が産業構造の中で大きな比重を占めていたが、その中でも機械工業(この中心は軍産複合体である)と食品、軽工業に比重が偏っていた。このような経済構造をもつロシア経済は、経済体制の移行期に鉱工業生産が大きく縮小し、そのことによって国内総生産が年々減少するという縮小再生産過程に入っている。1991年から1995年の国内総生産動向をみると、全体としての国内総生産の縮小に比べて、いわゆる第1次、2次産業といわれる商品生産部門でのそれはより大きく(1990年比47.7%減)、サービス生産部門では相対的に小さい(同18.6%減)。この中でも1990年に国内総生産の37.8%で最大の比重を占めていた鉱工業の縮小は非常に大きく(同49%減)、これがロシア経済の縮小再生産過程の最大の要因であった。

ロシアの地域経済も鉱工業生産に依存し、全体として機械工業部門と食品、軽工業をその主要な産業基盤として抱えていたことは、全体としてのロシア経済と同様である。しかし、地域によっては燃料、非鉄、木材などの資源エネルギー部門が地域経済にとって大きな意味を持っていた。このような産業構造の地域的特徴を持つロシア地域経済は、経済改革の下で大きな変化をこうむった。本稿は、移行期における地域工業生産の部門および地域構造の変化を明らかにすることによって、ロシア経済の現状をより正確に理解することを目的としている。なお本稿では「地域」という用語は広域経済地域を指し、連邦構成体を指す場合には「構成体」もしくは「地方」を用いることにする。

 


 

数字で見るロシア極東(ロシア極東データブック1998年版)

1.面積と人口

2.労働と雇用

3.投資と建設

4.財政・金融

5.工業

6.農業

7.運輸・通信

8.住民の生活水準

9.社会・教育

10.外国貿易

 

 ソ連解体後6年以上が経過し、ロシアでは統計の方法論を世界的なスタンダードに近づけるべく整備が進められ、その内容も多様化が図られている。また、1997年にはロシア国家統計委員会から統計集『ロシアの地域』が公刊されるなど、州・地域ごとの統計も年ごとに充実しつつある。

 当会では1993年より毎年『ロシア極東データブック』を刊行し、ロシア極東地域の統計データを紹介し

てきたが、以上のようなロシアの統計事情の変化を鑑み、今回、その内容の大幅な見直しを行い、項目を一新して本誌で紹介することにした。

 本資料の刷新にあたって留意した点は、@同じ項目についてロシア平均および極東地域の他州との比較を可能にすること、Aソ連解体を契機として生じた産業構造、社会構造、・生活水準の変化の動向を把握するために、時系列的にデータを紹介すること、B市場経済化の中で重要性を増してきた新しい分野(例えば、金融分野)もできる限りフォローすること、などである。

 なお、本資料の作成に際しては、資料の提供や貴重な意見など、ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所のミナキル所長をはじめとする研究所スタッフより多大な協力を得た。記して感謝する次第である。

 


 

今日のロシアの貿易・投資制度(3)

 

4.外国投資活動規制

5. ロシア連邦における自由経済地域

6.外国貿易における係争処理、仲裁

 

はじめに

 本誌4月号に引き続き、今日のロシアの貿易・投資制度(3)を掲載する。最終回の本号では、外国投資家への優遇措置を含めたロシアの外国投資活動規制を中心に、自由経済地域の概要および活動規制、係争処理の現状を紹介する。