ロシア東欧貿易調査月報

1998年12月号

 

T.今日のロシアの経済政策をめぐって

U.ロシア金融危機以後の金融産業グループの現状(1)

   ―傘下の石油企業の現状を中心に―

V.米国企業の中欧諸国への進出

   ―プランエコン社ヤン・バーナス 社長講演―

W.ベラルーシの経済:日本との協力の可能性

   ―クラフチェンコ駐日ベラルーシ大使講演―

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ロシア貿易・産業情報

 燃料・エネルギー

 非鉄金属

 金融

 通信

 自動車

 食品

 その他

論調と分析

 倒れた巨人:エリツィン時代の終焉

 暴力は税収増加につながらない。

 ルールガス、ガスプロム株を購入

データバンク

 1998年の1月〜11月のロシアのマーケット

 ロシアの経済統計

 ロシアの200大生産企業リスト

調査月報・経済速報年間目次1998年分)

旧ソ連・東欧貿易月間商況1998年11月分)

旧ソ連・東欧諸国関係日誌1998年11月分)

 

 


 

今日のロシアの経済政策をめぐって

当会ロシア東欧経済研究所研究開発部次長

音羽周

1.プリマコフ政府の経済政策の特徴

2.改革派の対抗プログラムの特徴

3.若干のコメント

 

はじめに

1998年8月17日のルーブルの実質切り下げ、短期国債の新規国債への切り替え、対民間債務支払いの90日間モラトリアムを骨子とするロシア政府と中央銀行の緊急措置発表、それに続くキリエンコ内閣の解任、短命に終わったチェルノムイルジン臨時内閣、プリマコフ新内閣の成立と、ロシアの政局は大きく変動し、経済政策もその影響を受け、一貫した政策が打ち出せないのが実状である(付属資料1参照)。

 周知のように、1993年以来、ロシア政府と中銀はIMFの対ロ融資に先立ちその年の経済・金融政策を共同で発表してきており、1998年に関しては7月16日に出された。だが、プリマコフ新政府は内閣発足後直ちにこの共同声明そのものの見直しに着手し、IMFの対ロ融資交渉も振り出しに戻った形となった。そして、ロシア政府の当面の経済政策が最終的にまとまったのは、内閣が発足してから2カ月以上もたってからのことであった。

1999年はロシアでは12月に議会(下院)選挙を控え、またポスト・エリツィンを巡る政治的駆け引きの活発化が予想される。したがってまた、ロシアの経済政策を巡る議論も本格化しようとしている。そこで、ここでは、プリマコフ政府の経済政策と改革派の対抗プログラムを紹介し、今日のロシアの経済政策をめぐる論争点を整理してみたい。

 


 

ロシア金融危機以後の金融産業グループの現状(1)

―傘下の石油企業の現状を中心に―

当会ロシア東欧経済研究所調査部次長

坂口泉

1.インターロス・グループ

2.ロスプロム

 

はじめに

 かつてロシアの産業構造改革のけん引車となると期待されていた新興財閥(金融・産業グループ)の衰退ぶりが、最近、著しいように思われる。衰退傾向が顕在化したのは、新興財閥の核を成す多くの大手商業銀行が致命的ともいえる打撃を受けた1998年8月の金融危機以降であるが、兆候はそれ以前より現れていた。

 たとえば、1997年後半頃より、新興財閥のトップが、「生産企業のリストラは予想外に困難である」という主旨の発言を行うケースが増えてきていた。新興財閥のトップたちは、当初、西側の市場主義経済の原理に則ったマニュアルをそのままロシアの生産企業に適用すれば企業リストラは成功するとかなり安易に考えていたふしがある。しかし、現場での作業を続けるうちに、彼らは、ロシア特有の事象(たとえば、地方に色濃く残る社会主義のメンタリティー等)を無視した企業リストラは不可能であるという現実に直面した。つまり、新興財閥の幹部にとっては、市場主義経済は絶対的善なのだが、その「絶対的善」が、ロシアの生産現場においては、「悪」として評価されることが多いという現実が存在したのである。恐らく、その苦い現実が、新興財閥のトップたちに、上記のような弱気な発言を行わせたのであろう。

 旧い「善」と新しい「善」の対立という構図の中に妥協点を見いだすという地味で困難でかつ体力のいる作業を続けるうちに、やがて、金融危機が勃発し、多くの新興財閥が、そのような作業を根気よく続けるだけの余力を失ってしまった。その結果、いくつかの新興財閥は深刻な分裂の危機に直面している。石油の国際価格の下落傾向もあり、中でも特に、石油企業を傘下におさめる新興財閥の状況が深刻なようである。本月号では、そのような新興財閥のうち、シダンコを傘下におさめるインターロスとユコスを傘下におさめるロスプロムを例にとりあげ、その現状を紹介する。そして、次号では、同じような条件下にありながらも、比較的良好な状態を維持しているアルファ・グループ(チュメニ石油会社)を紹介する。

 


 

米国企業の中欧諸国への進出

―プランエコン社ヤン・バーナス社長講演―

 

1.投資の背景

2.投資の目的

3.投資分野

4.投資戦略

5.投資の具体的事例

6.展望

  

 1998年10月16日、「第3回中欧投資セミナー」が当会を実施機関として通商産業省の補助を得て、開催された。ここでは、当日の全体会議における基調報告「米国企業の中欧諸国への進出」(Jan Vanous PlanEcon,Inc.社長講演)を紹介する

  


 

ベラルーシの経済:日本との協力の可能性

―クラフチェンコ駐日ベラルーシ大使講演―

 

1.ベラルーシとはどんな国か

2.投資先としてのベラルーシの利点

3.日本との貿易および投資関係

質疑応答

  

  1998年11月4日、ピョートル・クラフチエンコ駐日ベラルーシ大使の出席を得て、当会会員会社との懇談会を開催した。ここに、当日の大使の講演と質疑応答の模様を紹介する。

 ベラルーシ側からは大使の他にドーガン参事官とチェレンチェフ三等書記官が出席した。日本側からは宮崎ロシア東欧貿易会専務理事が司会をつとめ、会員企業等から30名を越える出席があった。

 懇談会の趣旨は、従来情報の少ない同国の経済について大使から話して頂き、今後のわが国との経済貿易関係の道筋を探ることにあった。

 経済の状況について概略の理解が得られた他、ロシア市場をターゲットとした、ベラルーシでの製品組立等、興味のある提案があった。

 なお、同国は1999年6月後半に、ハイレベルの代表団の来日により、東京で大規模な「ベラルーシ投資セミナー」を開催することを計画している。