ロシア東欧貿易調査月報 2001年11月号 |
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連作レポート「ロシアの産業は今」
−ビッグビジネスとマイクロビジネスの狭間に所在するビジネス・チャンス−
当会ロシア東欧経済研究所 調査部次長
坂口泉
はじめに(連作レポートの前書き)
1.軍需産業
2.民間航空機製造分野
3.造船分野
4.農業機械(コンバイン)
5.鉄鋼分野
はじめに(連作レポートの前書き)
筆者は、これまで、出来るだけ多くのロシアの産業分野を取り上げ紹介することに意を注いできたつもりであるが、振り返ってみれば、エネルギー分野、自動車分野、非鉄分野、通信分野、食品分野等ごく一部の産業分野しか紹介してこれなかった。カバーする産業の範囲を比重の高い基幹産業に限定し、高い頻度で当該産業を紹介するというのが、これまでの筆者の基本方針だったからである。しかし、最近になり、これまで紹介してこなかった産業分野の中にも活況を呈してきているもの、あるいは大きな変化の兆しが見え始めているものが少なからず存在することに気づき、これまでのアプローチ方法では、ロシアにおけるビジネス・チャンスの所在を部分的にしか紹介できないのではないかとの危惧をいだくようになった。より具体的に述べれば、ビッグビジネスとマイクロビジネスの中間に存在するビジネス・チャンスを見逃しているのではないかという危機感をいだくようになった。
そこで、今回、これまで取り上げることができなかった分野を中心に、できるだけ数多くの産業分野の現状を紹介することに主眼をおいた連作レポートを作成し、月報の特集号として発表することとした。初めての試みで不備な点も多いが、この連作レポートが、会員の皆さまがロシアでのビジネス展開を検討する上での基礎資料として役立つようであれば幸いである。
カザフスタン農業の移行過程:投入財調達をめぐる制度的工夫
日本貿易振興会アジア経済研究所
錦見浩司
要約
はじめに
1.カザフスタン農業の移行過程
2.農業生産の低下とその原因
3.小麦農業における施肥不足問題
おわりに
要約
本稿では、カザフスタン農業の移行過程で生じた長期的な生産性低下の問題を概観し、その原因と解決に向けた動きを検討する。とくに、国内農業の主要部門である小麦生産における投入財調達の実態と、生産リンケージ再生に向けた具体的な取り組みについて詳しく議論する。1990年代半ば、多くの農場は、春先に種子やディーゼル燃料を借りて収穫後の小麦で代金を返済する契約を小麦買付業者との間で結んでいた。このような契約は、生産リスクに対する保険の機能を兼ね備えているため、小麦買付価格の低下をもたらすことが検討の結果わかった。こうした低い小麦価格のもとでは化学肥料の投入は採算が合わず、結局、施肥不足によって土地生産性が年々低下し続けることとなった。しかし、1999年以降、このような契約は姿をひそめ、流通業者による農場の統合が進むこととなる。流通企業に合併された農場のほとんどには化学肥料が投入されるようになっている。