ロシア東欧貿易調査月報

2002年3月号

 

T.2001年の日ロ貿易

U.ロシア新興財閥の「現実」

◇◇◇

統計特集(T)日本の対CIS貿易統計

 1.ロシア

 2.ウクライナ

 3.ベラルーシ

 4.カザフスタン

 5.ウズベキスタン

 6.タジキスタン

 7.キルギス

 8.トルクメニスタン

 9.アルメニア

 10.モルドバ

 11.アゼルバイジャン

 12.グルジア

 


 

2001年の日ロ貿易

当会ロシア東欧経済研究所  研究開発部次長
高橋浩

1.2001年の日ロ貿易
2.
Trade between Japan and Russia in 2001

 

  2001年の日ロ貿易は、輸出が7億2,000万ドル前年比25.6%増加、輸入が38億7,000万ドル前年比で15.7%減少した(第1表、第1図参照)。輸出が大幅に伸び、輸入が減少した結果、貿易収支は2000年の約40億ドルから約32億ドルに減少したが、依然として輸出額は輸入額の5分の1以下にすぎず、日本の輸出全体に占める対ロ輸出のシェアは、わずかに0.2%にとどまる(参考資料参照)。2000年と2001年を比較すると、円安が大幅に進んだために、円建てでみると輸出の伸びは41.7%増とドル建てよりも大きくなり、輸入については減少幅が5.2%と小さくなる(第2表参照)。輸出では、主力輸出品である自動車が堅調に伸びたほか、一般機械、電気機器も伸びた(第3表参照)。輸入については、最大の輸入品目である非鉄金属の輸入が数量および金額とも大幅に減少したほか、つぎにシェアの大きい魚介類も減少したために、全体としての輸入が減少した。輸入の減少は、不況の日本経済の需要減少を反映しているものとみられる(第4表参照)。

 


 

ロシア新興財閥の「現実」

元朝日新聞モスクワ特派員
塩原俊彦

はじめに
1.6人の「新興財閥」
2.1996年の大統領選をめぐって
3.金融危機からプーチン登場まで
結びにかえて

 

はじめに

 現代ロシアの政治経済分析において、いわゆる「新興財閥」がきわめて重要な役割を果たしてきたことは間違いない。しかし、その「現実」に肉迫するのは困難な作業といわなければならない。権力者のなかに分け入って、その「現実」を知るためには、取材する側にも権力が必要だからである。筆者は朝日新聞のモスクワ特派員として、ベレゾフスキー、スモレンスキー、グシンスキーといった財閥の領袖に直接、単独インタビューした経験をもつが、繰り返し取材をするのは困難であり、「現実」を知るところまでは至らなかった。遍在する権力関係にあって、より強大なメディアとしての権力を備えていなければ、ロシアの権力者に迫ること自体、不可能なのかもしれない。

 その不可能を、強力なメディアであるワシントン・ポストの記者David E. Hoffmanは可能にし、みごとに「現実」に迫ってくれた。本稿は、2002年に上梓された、かれの著書The Oligarchs(Public Affairs, New York)に依拠しながら、これまでベールに包まれてきたロシアの「現実」に一歩でも近づくことを目的にしている。わが国の報道は断片的なものが多く、必ずしもロシアの「現実」に肉迫しているとはいえない。ロシアの「現実」を知らなければ、外交も貿易もうまくいかないかもしれない。本稿が少しでも読者のロシアに対する「現実」理解に資することを願ってやまない。