ロシア東欧貿易調査月報

2002年8−9月号

 

追悼 小川和男所長

故小川和男氏の経歴と業績

弔辞

関係者による追悼の言葉

日本とロシア・CIS諸国との経済関係(小川和男所長の最後の著書2冊から)

 

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T.ロシア石油分野の現状と今後についての考察

U.モスクワでの代表事務所設立と運営の諸問題(8)(9)

V.エカテリンブルグ中規模企業訪問記

W.イルクーツク州セミナーと経済ラウンドテーブル

◇◇◇

ロシア企業クローズアップモスクワ直送情報

 インタビュー 菅沼健一さん(在ロシア日本大使館公使)

データバンク

 特集 2002年上半期のロシア経済統計

CIS・中東欧ビジネストレンド(2002年6、7月分)

CIS・中東欧諸国関係日誌(2002年6、7月分)

 


 

追悼 小川和男所長

 

 ロシア東欧経済研究所の小川和男所長((社)ロシア東欧貿易会理事)は、平成14年7月19日午後3時永眠いたしました。享年67歳でした。

 関係者の皆様には、ここに改めて生前のご厚誼を深謝申し上げます。

 言うまでもなく、故人は本『月報』の編集・執筆にも長年にわたり携わって参りました。そこで今回は故人を偲んで、追悼特集をお届けいたします。

 


 

ロシア石油分野の現状と今後についての考察

当会ロシア東欧経済研究所 調査部次長

                        坂口泉

はじめに

1.残存確認埋蔵量とその現実(「基礎体力」の現状)

2.「基礎体力」の活用の現実

3.新産油地域の状況(「基礎体力」の維持の可能性について)

結語

 

はじめに

 1998年から1999年初めにかけ石油の国際価格は低迷を続け、ロシアの石油業界も悲観的な空気につつまれていた。当時は、ロシアの石油ロシアへの場制反し生産量が急激な減少カーブを描いてゆくのは不可避という悲観的な見方が大勢を占めていた。ところが、1999年後半以降石油の国際価格は急上昇し、ロシアの石油の生産量ならびに輸出量も予想に反し急増した。

 正直に告白すれば、筆者も、業界関係者の見方は悲観的すぎるのではという疑念を抱きつつも、ロシアの石油分野には外的環境の変化に即座に反応しうるほどの基礎体力は残っていないと考えていた。つまり、外的環境が改善されたとしても、これほど急激に生産量や輸出量を伸ばせるとは思っていなかった。自分なりの分析を行わず、当時ロシアの石油業界で支配的となっていた悲観的見解を鵜呑みにした結果であると反省している。

 ところで、現在、ロシアの石油業界では、一転して、過度とも言える楽観論が支配的になっている。たとえば、ロシアの石油生産量や輸出量は今後一本調子で増加し続けるという類いの見解を最近見かけることが多い。1999年初頭には、数年後にロシアは石油の輸入国になるかもしれないという意見すら出ていたのに、わずか3〜4年の間に180度異なる見解が支配的になろうとしているわけである。この豹変ぶりをどう理解すればよいのであろうか。このような短期間での見解の豹変ぶりの背後に、何か作為的なものを筆者は感じる。

 1999年初頭当時と同じ間違いを繰り返さないため、本稿では、ロシアの石油分野の上流の「基礎体力」について筆者なりの分析・考察を行ってみたい。

 


 

モスクワでの代表事務所設立と運営の諸問題(8)(9)

当会モスクワ事務所 副所長

.ヴォロンツォフ

はじめに

1.毎日の財務活動の記帳(テーマ8)

2.代表事務所の会計報告書および代表事務所に対する検査(テーマ9)

連載のまとめ

連載「モスクワでの代表事務所設立と運営の諸問題」記事一覧

 

はじめに

 シリーズでお伝えしてきた「モスクワでの代表事務所設立と運営の諸問題」も、いよいよ最終回を迎えた。今回は、財務活動の記帳と、会計報告書および検査について解説する。そのうえで、シリーズ全体のまとめとして、若干の指摘を行うことにする。

 


 

エカテリンブルグ中規模企業訪問記

当会ロシア東欧経済研究所 研究員

                       齋藤大輔

はじめに

1.スヴェルドロフスク州の経済概況

2.地方中規模企業の特徴

3.企業訪問

おわりに 

 

はじめに

 2002年3月、ロシア・ウラル地方のスヴェルドロフスク州の州都エカテリンブルグを訪問した。そこで、いくつかの企業を訪問し、中規模企業の実態を見る機会があった。訪問の目的は、日本政府のロシア支援プログラムのひとつ、ロシア企業へのコンサルティング派遣事業の事前調査として、コンサルティングの対象となる企業を選定することであった。

 大企業ばかりクローズアップされがちなロシア調査の中で、中規模企業を見ることは、非常に興味深く、新たな発見の連続であった。残念ながら、訪問した企業のすべてが、われわれ訪問団に協力的だったとは言い難かったが、どの企業も事業を成功させたいという意欲に満ち溢れていた。

 その一方、ロシアの大企業と同じく、企業のホールディング化が地域密着の中規模企業にも進んでいる実態がみてとれた。良くも悪くも、にわか成り金たちが、業種を超えた企業買収を重ね、企業グループを形成する。その姿はまさに、ベレゾフスキーやグシンスキーといったロシアを代表するオリガーキーのミニチュア版を連想させ、非常に興味深かった。

 本稿では、スヴェルドロフスク州の経済概況について述べた後、中規模企業の特徴、今回エカテリンブルグで訪問した企業の概要を紹介する。

 


 

◆セミナー記録◆

イルクーツク州セミナーと経済ラウンドテーブル

 

はじめに

1.ロシア・イルクーツク州セミナー(2002年4月3日開催)

(1)イルクーツク州の経済と概況(B.ゴヴォリン知事)

(2)イルクーツク州の投資環境および投資プロジェクト(A.ルジク副知事)

(3)イルクーツク州企業と外資企業との協力事例

2.日本とロシア・イルクーツク州の経済ラウンドテーブル(2002年4月2日開催)

 

はじめに

 ロシアのイルクーツク州行政府は、本年4月に代表団を日本に派遣し、ゴヴォリン知事自らがこれに参加して、日本との投資および貿易関係拡大のための促進活動を行った。当会では、イルクーツク州の活動を支援するため、同州および日本貿易振興会と共催で4月3日、ジェトロBSCホールにてセミナーを開催した。以下では、このセミナーにおけるイルクーツク州代表団の主要報告の要旨を掲載する。

 またセミナーに先立って4月2日には経済産業省会議室にて、ゴヴォリン知事らを迎え、経済産業省および当会の共催で経済ラウンドテーブルが開催され、日本とロシア/イルクーツク州との経済関係について忌憚のない意見交換が行われた。このラウンドテーブルの主なやり取りについてもあわせて紹介する。