ロシア東欧貿易調査月報 2002年10月号 |
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ロシアのWTO加盟交渉の現状と展望
みずほ総合研究所 主任研究員
金野雄五
はじめに
1.WTO加盟手続きの概要
2.ロシアの加盟交渉の現状
(1)法制度の整備(多国間交渉)
(2)関税交渉(二国間交渉)
(3)農業交渉(二国間・複数国間交渉)
(4)サービス交渉(二国間交渉)
3.WTO加盟に伴い予想されるロシア経済への影響
はじめに
ロシアのプーチン大統領は、2002年4月の年次教書演説において、WTO加盟がロシアにとって「きわめて有益なこと」であると発言するなど、最近、機会あるごとにWTO加盟の重要性を指摘している。また、欧米諸国も、とくに米国の同時多発テロ発生以降、ロシアの早期WTO加盟を支持する姿勢を明確にしている。1993年6月のGATT(WTOの前身)加盟申請から約9年を経て、ロシアのWTO加盟に向けたモメンタムは、ロシア内外でかつてない高まりを見せ始めたといえよう。
では、ロシアはいつ頃にWTOに加盟するのか、そして、WTO加盟によってロシア経済にはどのような影響が生じるのであろうか。本稿では、これらの疑問に答える一助とすべく、1.WTO加盟手続きの概要、2.ロシアの加盟交渉の現状、3.WTO加盟に伴い予想されるロシア経済への影響について、その基本的な枠組みを整理、概観する。
ロシアのWTO加盟とその産業への効果
三菱商事(株)プラントプロジェクト本部付 ロシア・CIS担当
酒井明司
1.加盟交渉の現状と見通し
2.対ロ取引への効果・影響
3.WTO加盟とロシアの産業
岐路にたつロシアのガス分野
―ガスプロムの状況を中心にー
当会ロシア東欧経済研究所 調査部次長
坂口泉
はじめに
1.ロシアのガス分野の全般的状況
2.ガスプロム
3.イテラ
4.その他のガス生産企業
まとめにかえて
はじめに
2001年末時点のロシアの天然ガスの確認埋蔵量は、ガスプロム保有の鉱床分だけで約28兆㎥、その他の企業所有分を含めると約47兆㎥にも達する(『ロシア石油ガス垂直統合』誌、2002.8)。
この数字を見る限り、ロシアのガス分野の資源基盤は磐石のように思えるが、実際は、開発中のガス鉱床での資源の質の低下(コスト高あるいは採収困難な埋蔵量の割合の増加)、新ガス鉱床の開発の遅れといった問題が深刻化しており、予断を許さぬ状況が生じつつある。特にロシアのガス分野において独占的地位を有しているガスプロムの上流の状況は厳しく、ここ数年、かなり大幅な減産が続いている。さらに、今後も大幅な増産は期待できず、内外のガス需要の高まりに対応できなくなる可能性が大きいとの見方が一般的となっている。
そのような中、ガスプロム以外の企業によるガス生産の奨励の必要性が唱えられるようになっているが、ガスプロムの基礎体力の弱体化をカバーしうる企業が育つまでには、まだかなりの時間がかかるというのが実情である。
以下では、ガスプロムを中心に、岐路にたつロシアのガス分野の現状と今後について紹介する。