ロシア東欧貿易調査月報 2006年1月号 |
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一枚の写真
コーカサスの踊り
2005年11月6日にアゼルバイジャンで議会選挙が行われた。アリエフ大統領派と野党連合が争った結果、大統領支持勢力が125議席の大半を占めるところとなった。野党勢力からは勿論、米国、EU等からも不正があったとの批判を受け、現政権側は一部選挙区でのやり直しなどの懐柔策をとり、体制固めを推し進めた。
一方、中央アジアのカザフスタンでは12月4日に大統領選挙があり、ナザルバエフ現大統領の再選が決まった。選挙前の噂話として、「ナザルバエフが9割取るような選挙は必ずしも覚えがめでたくない」といったことも言われていたが、実際には91%を超える票を獲得した。これによりナザルバエフは、今後さらに7年間、2013年まで大統領として君臨することになる。
アゼルバイジャンに話を戻して、写真は2005年5月17日に開催された愛知地球博・アゼルバイジャン共和国ナショナルデーのセレモニーの一コマ。コーカサス・コサックの踊りである。背景の技装の赤は、火の国アゼルバイジャン、バクーの沖に燃え続けるカスピ海原油の象徴なのか。あるいは、燃え上がろうとする民主化運動を象徴するものなのか。
この日は共和国代表としてシャリホフ副首相がホストを務め、夜には万博迎賓館にて盛況にレセプションが行われた。展示館はアゼルバイジャン、グルジアおよびアルメニアの三カ国が入るコーカサス共同館。館の片隅にあるカフェーでは、カスピ海ヨーグルト入りソフトクリームに行列が出来ていた。
その後の二国間関係では、2005年10月にアゼルバイジャン初代駐日大使としてホセイン大使が着任し、11月には目黒区に大使館を開設している。さらに2006年3月にはアリエフ大統領が来日予定との話も聞こえてきている。
(佐藤隆保)
モスクワ〜カリーニングラード家電ミッション報告(上)
はじめに
1.家電ミッションの若干の総括(服部倫卓)
2.家電製造部門に関する調査結果(橋本仁)
3.ロシアの電子部品市場の現状と将来性(中野雅史)
はじめに
ロシア東欧貿易会では、平成17年度国庫補助事業の一環として、ロシア家電市場の調査に重点的に取り組んでいる。11月の中旬、専門家をロシアに派遣し、モスクワとカリーニングラードで現地調査を実施した。詳しい調査結果はいずれ報告書にまとめる予定だが、本月報では、本号と次号の2回に分けて、11月の現地調査の成果についていち早くご報告することとしたい。
本号では、まずミッションに同行したロシア東欧貿易会の服部が、今次調査における全体的な気付きの点を述べ、若干の総括とする。そのうえで参加者の皆様に各論を展開していただくが、まず橋本仁さんにはロシアの製造部門にポイントを絞って、今回の調査結果をおまとめいただいた。さらに、中野雅史さんには、11月の現地調査結果だけでなく独自の情報なども加味して、「ロシアの電子部品市場の現状と将来性」と題するレポートをお寄せいただいた。
日ロICT(情報通信技術)ビジネス・セミナー
はじめに
ロシア東欧貿易会では、ベスコロヴァイニィ・ロシア連邦通信庁長官を団長とするロシアの情報・通信技術分野の官民専門家からなる代表団を招聘し、日露貿易投資促進機構、独立非営利法人日本センターと共催で2005年11月16日に日ロICTビジネス・セミナーを開催した。
ロシアの情報・通信技術分野のレベルの高さは周知の事実であり、ソ連時代に蓄積された軍事、宇宙開発等の分野での特殊技術を背景に、ロシアでは独創性の高い多くの優秀な専門家を擁して欧米企業との数多くの共同プロジェクトを推進している。
セミナーでは「ロシアの先進的なICT技術」「ロシアの強固な情報セキュリティ技術」「ロシアの独創的なソフト開発能力」の3セクションにわかれて、ロシアの大学・研究機関代表ならびに民間企業より講演が行われた。
以下にベスコロヴァイニィ・ロシア連邦通信庁長官挨拶、ボルディレフ・アビテルグループ会長報告を掲載する。なお、それ以外の報告については、ロシア東欧貿易会のウェブサイトに掲載予定である。
ビジネス最前線
Interview 快走するロシア中古車ビジネス
株式会社タウ
マリーン事業部部長 篠原裕さん
広報部長 佐藤明美さん
はじめに
今回は日本の中古車販売会社として初めてロシアに進出した(株)タウの篠原さんと佐藤さんにお話を伺いました。創業10周年を迎えるタウは社員の平均年齢が若く、2004年にウラジオストク初代事務所長に就任した篠原さんは20代。一方の佐藤さんも若き広報部長として、現地でのCM撮影などに携わったそうです。
タウの売上相手国トップはロシア。ここ数年、ロシア中古車ビジネスに注目が集まる一方、さぞやご苦労も多いだろうと思いきや、意外と(?)ポジティブなお話が多かったのは、長年ソ連/ロシア・ビジネスに携わってきた世代とは一味違った、ベンチャー企業の若きビジネスマンならではなのかもしれません。
ロシア企業クローズアップ
ペルミ・エンジン製造会社
ロシアの航空機エンジンの生産でトップに地位にある。最近の航空機エンジンの騒音・エミッション規制の厳格化に伴って、海外の関連企業と共同で最新のジェットエンジンの開発に乗りだす。石油・ガス企業のための小型のガスタービンの生産も期待される。
データバンク
1.2005年1〜9月期のロシアの乗用車市場
2005年1〜9月期もロシアの乗用車市場では、外国車の販売の好調さが目立った。一方、ロシア最大の純国産メーカーであるAvtoVAZ(ヴォルガ自動車工場)も、年初以来の不振から脱却し9月の生産量は前年同月比2.5%増の6万6,343台に達した。ただ、その他の純国産メーカーはいずれも大幅に生産を減少させており、もはや失地挽回が困難と判断されるメーカーも少なくない。外国車Vs「AvtoVAZ」の構図がより鮮明になりつつあるといえる。
2.サンクトペテルブルグ市とレニングラード州の経済・社会統計
ロシア北西地域のなかでも、サンクトペテルブルグ市とレニングラード州は外国企業にとっての有望な進出先となっている。自動車分野においては、フォードがレニングラード州に進出すれば、トヨタがペテルブルグでの工場建設を決めるといった具合だ。同じことは家電分野についても言え、エレクトロラックスがペテルブルグでの洗濯機生産に乗り出したかと思うと、メルローニがレニングラード州フセヴォロシスクで現地生産を手がけるという動きがある。もともと強い一体性をもっている両地域だが、現在は外国投資の誘致でしのぎを削りあっていると言えよう。
サンクトペテルブルグ市とレニングラード州のこのような重要性にかんがみ、当会ではこのほど「ペトロスタット(サンクトペテルブルグ市・レニングラード州統計局)」に出向き、基礎的な統計資料を入手してきた。そこでこのコーナーでは、入手した統計資料を抜粋する形で、サンクトペテルブルグ市とレニングラード州の経済・社会統計を、なるべく対比しやすいような形にまとめてお届けすることにする。両地域の投資環境把握に役立てていただければ幸いである。
3.ウクライナの地域別の外国直接投資受入状況
本誌では2005年6月号のこのコーナーにおいてCIS諸国の外国投資受入状況のデータを掲載し、その一環としてウクライナのデータも取り上げた。その後我々は、ウクライナの地域別の外国直接投資受入状況に関するさらに詳細なデータを入手したので、ここで紹介する。
NEW! 月出皎司のクレムリン・ウォッチ
第1回 ハイレベル人事異動 ―後継者作戦のスタートか、内紛の表面化か―
今回から始まったこのコーナー。我が国きってのロシア・ウォッチャーである月出皎司さん(Russia Analysts Group(Japan)幹事)に、ロシア政治の最新の動きを大胆に斬っていただく連載企画です。乞うご期待。