ロシアNIS調査月報
2006年12月号
特集◆カザフスタンの
経済と産業
調査レポート
第1回「日露投資フォーラム」開催される
特集◆カザフスタンの経済と産業
調査レポート
ウクライナとカザフスタンの乗用車市場
調査レポート
カザフスタンの税制改革
―フラット・タックス導入に向けて
ユーラシア巡見
中央アジアミッションに参加して
エネルギー産業の話題
カザフスタンの石油ガス分野の動き

調査レポート
ロシア極東の住宅・公共料金問題
データバンク
2006年版ロシア大企業ランキング
データバンク
2006年上半期のCIS諸国の経済
ビジネス最前線
顧客第一主義で自動車部品を届ける
ビジネストレンド
2006年9月分
商流を読む
ロシアの包装・容器産業
ロシア産業の迷宮
ブラヴァトニクという米国人実業家
クレムリン・ウォッチ
本格化するポスト・プーチン体制への移行プロセス
―退陣後下院議長就任案も
ロシア文化へのいざない
ロシアのティータイム
日ソ・日ロ経済関係の
舞台裏
忘れ得ぬロシアの人たち
自動車産業時評
モスクワの中古車市場
月刊エレクトロニクスNews
Mヴィデオの24時間店舗は成功するか?
ノーヴォスチ・レビュー
マネーロンダリング対策を強化するロシア
ドーム・クニーギ
小町文雄著『サンクト・ペテルブルグ
―よみがえった幻想都市』
通関実績
2006年1〜8月の日本の対ロシア・NIS諸国
輸出入通関実績


第1回「日露投資フォーラム」開催される

1.第1回日露投資フォーラムを終えて

(社)ロシアNIS貿易会 常務理事
細矢佑二

はじめに
 第1回「日露投資フォーラム」が、去る9月6日から8日の3日間、ロシアのサンクトペテルブルグで開催された。同投資フォーラムの開催にあたり、当会は日露貿易投資促進機構の日本側事務局として、ロジスティック面を中心に担当したところ、同フォーラムを終えて、その開催意義、次回開催問題などにつき、私見を申し述べさせていただく。

2.日露投資フォーラムの開催概要

ロシアNIS経済研究所 調査役
中居孝文

はじめに
 9月6日(水)〜8日(金)の3日間、ロシアのサンクトペテルブルグ市において、第1回「日露投資フォーラム」が開催された。
 ロシア経済の好調を受け、2005年には日本とロシアの貿易額がソ連時代からを通じて初めて100億ドルを突破し、また今回の開催地であるサンクトペテルブルグはトヨタと日産が相次いで進出を決めた地であることから、同フォーラムに対する関心も予想以上に高く、フォーラムへの参加総数は、当初予定の倍に当たる600名に達した(当初予定は日ロ合わせて300名)。以下では「日露投資フォーラム」の開催概要をご紹介することとしたい。


ウクライナとカザフスタンの乗用車市場

ロシアNIS経済研究所 調査部次長
坂口泉

はじめに
1.ウクライナの乗用車生産の状況
2.ウクライナの乗用車市場の概況
3.カザフスタンの乗用車メーカー
4.カザフスタンの乗用車市場の概況
5.カザフスタンの外国新車市場
6.UzDaewooの現状
まとめ

はじめに
 ロシアでの外国車生産プロジェクトの多くは、現地生産車の販売先として、ロシア市場のみならず、旧ソ連諸国の市場も視野に入れている。本稿では、旧ソ連諸国の中でも輸出先として最も期待がもてるウクライナとカザフスタンの乗用車市場の状況を紹介する。その他、ロシア市場に相当数の乗用車を輸出しているウズベキスタン(Uz-Daewoo)の状況も紹介する。


カザフスタンの税制改革
―フラット・タックス導入に向けて―

一橋大学国際・公共政策大学院
タスマガンベトフ・ガニ

はじめに
1.カザフスタンの税制の現状と将来
2.フラット・タックスの概要
3.フラット・タックス導入国のサーベイ
4.フラット・タックス導入の効果
5.ほかの税制との比較
6.望ましい税制改革とは
終わりに

はじめに
 カザフスタンは、人口は1,500万人だが、国土が世界で9番目に大きな国である。ソ連が崩壊し、独立を果たしてから15年が経った。ユーラシア大陸の真ん中に位置し、石油、天然ガス、クロム、亜鉛、銅、ウラニウムなどの地下資源に恵まれている。資源開発部門への外国直接投資を原動力に様々な経済改革を行い、計画経済から市場経済へ移行を果たした。2000年から経済が平均で10%伸び続けている。世界銀行によると、2005年の国民一人当たりのGNIが2,930ドルだったのに対し、2006年には3,700ドルを超えると予想される。経済発展が世界で最も速い国の一つである。
 しかし、目覚しい経済成長を遂げている一方、経済が急激に資源開発部門に偏重しつつある。油田開発、建設、輸送、加工といった石油関連事業が、2005年にはGDPの16.6%を占め、燃料と石油製品の輸出が輸出全体の69%にもなった。金属、非鉄、麦がその他の主要な輸出品である。資源輸出が増加している一方で、製造業の輸出が輸出全体に占める割合が減少し続けており、2005年に1999年の水準の半分にまで縮小した。また、国内に流入するオイル・マネーがカザフの通貨であるテンゲの為替レートに上昇圧力をかけ、資源以外の製品の輸出を不利な立場に追い込んでいる。
 このような事態に危機感を抱く政府は、製造部門に内外からの投資を誘致するのに必死である。製造部門への投資に対する様々な税制優遇措置がとられている。カザフスタン開発銀行、イノベーション・ファンド、カザフスタン投資ファンドなどの機関は、それぞれが目的別に政策金融の役割を果たしている。たとえば、イノベーション・ファンドは、先端技術をカザフスタンに取り入れる企業に対して、長期で低金利の資金を提供している。
 様々な政策がとられているなかで、国全体の国際競争力を向上させることが最終的な目的である。2006年3月1日のナザルバエフ大統領の年次演説では、国際競争力上位50カ国に入ることが目標に定められた。グローバル化する世界において、資金の流れがより自由になり、外国への投資がより活発的になってきた。その結果として、生産拠点が投資環境の優れた地域に移動してしまう。このような状況において、税制が国の競争力を左右する重要な要素になってくる。
 3月の演説を受け、大統領の提案をもとに政府が税制改革案をまとめた。その税制改革案は、国会を通過している。本稿では、このような改正が所期の目的を達成できるのかを検討する。フラット・タックスを導入した国のサーベイを行い、それらの国の経験からカザフスタンに適切な税制を策定するためのヒントを探る。


ユーラシア巡見
中央アジア・ミッションに参加して

(社)ロシアNIS貿易会 経済交流部部長
佐藤隆保

はじめに
 さる9月13〜20日の間、高垣佑・ロシアNIS貿易会会長を団長とする中央アジア訪問団に同行してウズベキスタンのタシケント、サマルカンドおよびカザフスタンのアルマトイ、アスタナを訪問した。本稿では、団の概要と訪問先や会合の概要を紹介する。


エネルギー産業の話題
カザフスタンの石油ガス分野の動き

 最近、カザフスタンの石油ガス分野に関連するロシアの新聞・雑誌の記事(石油と資本誌、2006年9月号等)を集中的に読む機会があったので、今回は、その中から特に興味深いトピックスをいくつか抜粋してご報告する。


ロシア極東の住宅・公共料金問題

ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所
S.ナイデン

はじめに
1.住宅・公共料金値上げ政策
2.極東地域住民の負担状況
3.補助金支給の動向と見通し
4.所得課税による住民負担の増加

はじめに
 現在のロシア国民の実質可処分所得は1991年の水準に達しておらず、2005年の実質所得は1991年の80%であった。また1990年の1人当たり平均所得が最低生活費の5倍であったのに対し、2003年は2.4倍にとどまった。しかも、1990年の最低生活費はより多くの消費物資をもとに算出されており、現在の最低生活費の2倍に相当する。
 ソ連崩壊後の市場改革の初期には、長引くインフレの影響により、消費支出全体に占める住宅・公共料金の割合は2%から0.7%へと大幅に減少した。しかし2000年以降、住宅・公共料金の割合が急増している。1999年以降、住宅・公共料金は消費者物価指数全般に比べて速いテンポで値上がりするとともに、その内訳(住宅共益費と公共料金の割合)も大きく変化している。


データバンク
2006年版ロシア大企業ランキング

はじめに
 ロシアの経済週刊誌『エクスペルト』(2006.10.9-15, No.37)に、毎年恒例のロシア大企業ランキングが掲載されているので、本誌でも早速これを抜粋して紹介する。
 『エクスペルト』誌の大企業ランキングは、売上高にもとづくランキングと、株式時価総額にもとづくランキングの2本建てとなっている。前々回から、売上高ランキングの対象に非製造業企業が加わるとともに、ランキングの規模が200社から400社に増え、より一層充実した形となった。
 以下では、まず本月報独自の企画として、売上高および株式時価総額の2つのランキングに登場するすべての企業を日本語の五十音順に並べ替えて、それに当会が調べた各企業のインターネット・アドレスを加えた資料「ロシア主要企業五十音順一覧」を作成した。全539企業を網羅した本資料を、まずは総合索引としてご利用いただきたい。
 「A.ロシア企業売上高ランキング」は、2005年の商品・サービスの売上高にもとづいたベスト400である。銀行や保険会社などの非生産部門の企業については、経営指標のなかから内容的に極力それに近い指標を選んで対比している。原典には細かい注釈がいくつか付されているが、本誌では割愛する。 ところで、「A.ロシア企業売上高ランキング」においては、企業グループの場合には、重複を避けるため、親会社たる持ち株会社だけが掲載され、子会社は除外されるという方式になっている。しかし、石油・ガス部門とテレコム部門では、子会社であっても、売上高がきわめて大きく、重要な企業が多い。そこで、『エクスペルト』誌では、この2部門についてのみ、主な子会社の売上高を別表において示している。本月報では、このうち石油・ガス部門の子会社のランキングを、A表の後に参考資料として紹介する。
 一方、「B.ロシア企業株式時価総額ランキング」は、2006年9月1日現在のデータで、株価×発行済株式総数で計算された時価総額ベスト200が示されている。こちらは、親会社だけでなく子会社もランキングの対象となる。


ビジネス最前線
顧客第一主義で自動車部品を届ける

株式会社 Emirates Express
会長 ボリス・コピレヴィチさん
スペアパーツ部長 アレクセイ・モロゾフさん

はじめに
 EMEX(Emirates Express)はアラブ首長国連邦のドバイ経由で自動車部品を買い付け、モスクワに輸入・卸売りを行っている会社です。同社はあらゆる外国自動車の部品を取り扱っていますが、そのほとんどが日本製。ロシアでは自動車保有台数が上昇するに伴い、日本車ユーザーも増えています。にもかかわらず、ロシアの市場では、日本の部品メーカーの情報が十分提供されていません。そのため日本車用部品が全般的に不足しており、発注しても納期までに時間がかかるのが現状です。こうしたなか、日本企業の「カイゼン」を学び、顧客第一のポリシーをもってシステムの構築を目指しているEMEXは直接買い付けのため、日本市場を本格的に開拓中です。


商流を読む
ロシアの包装・容器産業

 ロシアの食品業界誌『フード』の2006年No.5に、食品向けを中心としたロシアの包装・容器産業の最新事情に関するレポートが掲載されているので、以下でその要旨を紹介する。


ロシア産業の迷宮
ブラヴァトニクという米国人実業家

はじめに
 最近、ロシアの大手アルミニウム会社のルサールとスアール、および、スイスのトレーダー「グレンコア」のアルミニウム部門(アルミナが中心)の3者が合併し新会社が設立されることになったとのニュースが流れ話題となったが、今回は、その合併劇に関与したスアール社の大株主である米国人実業家のブラヴァトニクについて紹介したい。(坂口泉)


クレムリン・ウォッチ
本格化するポスト・プーチン体制への移行プロセス
―退陣後下院議長就任案も―

 プーチン大統領の跡を継いでロシア大統領になるのは誰か、というテーマが盛んに議論され、様々な憶測をよんでいますが、ロシアの非民主的な政治体制が、事態の予測を難しくしています。この体制の中では、重要な政治プロセスであればあるほど、公式の国家メカニズムの外側(あるいは裏側)で進められることが多いからです。
 内外のロシア政治分析者たちが答えを見つけなければならない問題のうち、主なものは次のポイントです。(月出皎司)


ロシア文化へのいざない
ロシアのティータイム

はじめに
 米スターバックスコーヒーが、来年モスクワでロシア1号店をオープンするということだ。同社は1996年に銀座に海外1号店をオープンし、現在では日本に600以上、世界36カ国で約12,000の店舗を展開するまでに成長した。
 モスクワにはすでにコーヒーショップやファーストフード店が無数にある。しかし、日本でもこの10年間でみられたように、これからスターバックスと同じようなスタイルのコーヒーショップが雨後の筍(ロシア語では「雨後のキノコ」)のように増え、ロシア全国でさらに浸透していくかもしれない。
 ただし、今のところ、ロシア人にとって最も親しみのある飲み物といえば、紅茶だろう。各種の調査でも、よく飲むノンアルコール飲料がお茶という人は60〜70%、コーヒーは20〜30%程度という結果が出ている。今号では、ロシアのお茶文化についてご紹介したい。(山本靖子)


日ソ・日ロ経済関係の舞台裏
忘れ得ぬロシアの人たち

 前回のテーマから離れますが、日本に馴染み深いアルカーヂー・イヴァノヴィッチが亡くなられましたので、想い出に残る素晴らしいロシアの方々について、書き止めて置きたくなりました。私は、偉い方々と昵懇になる立場にはありませんでしたので、事務方が見た表層的な人物評を敢えて紹介します。(杉本侃)


自動車産業時評
モスクワの中古車市場

 本コラムでは、ロシアの新聞・雑誌に掲載された記事を基に、ロシアの自動車産業・市場に関する最新情報をトピックス風にご紹介いたします。第1回目は、今後急成長が予測されているモスクワの中古車市場の最新トレンドをいくつか取り上げてみます。


月刊エレクトロニクスNews
Mヴィデオの24時間店舗は成功するか?

 ロシアの家電販売大手「Mヴィデオ」は9月1日に、モスクワのサドヴォ・スパスカヤ通り店を24時間営業店舗に転換しました。果たしてこの試みは成功するのでしょうか。現地の『商業ニュース』誌2006年10月号に掲載された論評を紹介します。