ロシアNIS調査月報2007年3月号特集◆パイプラインと石油ガス |
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特集◆パイプラインと石油ガス |
調査レポート |
劇的な変化を遂げるロシアの鋼管製造分野 |
調査レポート |
サハリン石油・ガス開発のバランスシート |
調査レポート |
カザフスタンのエネルギーをめぐる大国の思惑 |
Interview |
変わりゆくロシア向け鋼管輸出 遠藤 寿一さん(三菱商事 業務部顧問)に聞く |
ユーラシア巡見 |
アゼルバイジャンの石油開発と サンガチャルターミナル |
エネルギー産業の話題 |
ガスプロムの投資戦略を検証する |
ノーヴォスチ・レビュー |
ロシアとベラルーシのエネルギー紛争 |
日ソ・日ロ経済関係の 舞台裏 |
生涯の伴侶となったロシアのエネルギー |
ドーム・クニーギ |
塩原俊彦著『ロシア資源産業の「内部」』 |
データバンク |
CIS諸国の原油輸出統計 |
ビジネス最前線 |
中古OA機器販売に込めた経営理念 |
データバンク |
2006年1〜9月のCIS諸国の経済 |
データバンク |
2005年のCIS諸国の貿易統計 |
ビジネストレンド
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2006年12月の動き |
ロシア産業の迷宮 |
WTO加盟に向けたロシアのラストスパート |
クレムリン・ウォッチ |
揺らぐ最大与党 |
ロシア文化へのいざない |
祖国防衛の日と国際婦人デー |
商流を読む |
ロシア流通大手の地方展開が本格化 |
自動車産業時評 |
ロシアの外国新車市場における法人需要 |
月刊エレクトロニクスNews |
外国勢がロシアでの冷蔵庫生産を強化 |
日本センター所長 リレーエッセイ |
日ロ経済関係の活性化のために ―暖冬のモスクワから |
通関実績 |
2006年1〜11月の日本の対ロシア・NIS諸国 輸出入通関実績 |
劇的な変化を遂げるロシアの鋼管製造分野
ロシアNIS経済研究所 調査部次長
坂口泉
はじめに
1.ロシアの鋼管製造分野の概況
2.大口径管の国内需要
3.ロシアの主要大口径管製造メーカー
まとめ
はじめに
最近、ロシアの鋼管製造分野では設備投資が活発化している。とくに大口径管製造部門においてその傾向が顕著で、過剰投資の可能性すら出始めている。設備投資の活性化に伴い、鋼管製造技術も急激に向上しており、海底PL(パイプライン)用の大口径管の製造も可能になりつつある。本稿では、急激に変化するロシアの鋼管製造分野および鋼管市場の状況を、大口径管の需給動向に焦点をあてながら紹介する。
サハリン石油・ガス開発のバランスシート
ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所
V.カラシニコフ、R.グリドフ
はじめに
1.サハリンプロジェクトの恩恵
2.ロシア側から見たプロジェクトの問題点
はじめに
現在ロシアでは、生産物分与協定(PSA)に基づいて石油・ガス開発を行う3件の大規模な国際プロジェクトが進行中である。このうち2件はサハリン州で実施されている「サハリン1」ならびに「サハリン2」プロジェクトである。1996年、ロシア連邦領内ならびに大陸棚、排他的経済水域における鉱物資源の探査、試掘、採掘への投資プロセスにおいて生じる諸関係の法的基盤を定めた連邦法第225-F3号「生産物分与協定について」が発効した。PSAの枠内で実施されている「サハリン1」および「サハリン2」プロジェクトは、今日のロシアおよび世界において最も大規模な石油・ガス鉱床開発プロジェクトの一つである。従って、その影響は好悪にかかわらず広く多方面に及ぶ。最近、「サハリン1」および「サハリン2」プロジェクトの投資家とロシア政府の関係が目に見えて緊迫している。紛争激化のきっかけ(原因ではない)の一つは、オペレーター企業が事業予算の増額を表明したことであった。ロシア政府と大統領府は、1994〜1995年に締結されたPSAの実施条件がロシア側にとって不利になったと発表した。しかし、状況は、いつになったらロシア側が利潤生産物の分与を受けることができるのかといった単純な議論とは異なるようだ。本稿の前半では、これまでにも度々議論されてきたことであるが、「サハリン1」と「サハリン2」の実施によってロシア側が取得する実質的な収入と期待される恩恵について論じる。さらに後半では、PSAの見直しにまでは至らなくとも、ロシア側が両プロジェクトの経費や収益について激しい議論を展開している背景にある諸問題について述べたい。
カザフスタンのエネルギーをめぐる大国の思惑
カザフスタン世界経済政治研究所 副所長
L.ムザパロワ
はじめに
1.ロシアとのエネルギー協力深化の道
2.米国とのエネルギー協力:現状と見通し
はじめに
このほど、カザフスタンの政府系シンクタンク「世界経済政治研究所」のL.ムザパロワ副所長に、カザフスタンのエネルギーおよびパイプラインをめぐる大国の思惑と対応を分析したレポート2本をご提供いただいた。まず、「ロシアとのエネルギー協力深化の道」と題するレポートで、これは研究所の機関誌『グローバル・プロセスのなかのカザフスタン』に近く掲載予定の論文とのことである。もうひとつは、「米国とのエネルギー協力:現状と見通し」と題するもので、こちらは同誌の2006年No.3においてすでに公表されたものである。著者のムザパロワ女史ご本人から転載の許可をいただいたので、以下で邦訳して紹介する。
ビジネス最前線
中古OA機器販売に込めた経営理念
株式会社 オフィスバスターズ
本部 代表取締役 天野太郎さん
はじめに
人間は自主・自立の精神をもてば、普段の10倍くらいの能力を発揮できる――オフィスバスターズ・天野社長の持論です。天野さんが総合商社勤務を経て、同社を設立したのは2003年6月。弱冠33才でした。中古のOA機器やオフィス家具を安く提供し、独立開業をサポートしていくことを経営理念のひとつとして掲げるオフィスバスターズは、2005年11月に初めての海外進出先として、ハバロフスクに販売店を開設します。
きっかけはロシアや中南米などでOA機器のビジネスを行っていた商社マン時代に、相手から「中古でもいいから、もう少し安い製品を売ってくれないか」と言われたことでした。ビジネスの種はたくさんあるのに、資金がなくビジネスを行うためのOA機器が買えない相手国の現状と、使用できるOA機器が廃棄され、電子機器ごみとなっている日本の問題点。そこから今のビジネスモデルが創出されたのです。今回は天野社長より、商社マン時代の経験から、OA機器市場を通してみた現代のロシア、さらには他国とのビジネス環境比較まで、様々な視点からロシア市場にスポットを当ててもらいました。
データバンク
2005年のCIS諸国の貿易統計
はじめに
CIS統計委員会の統計集『2005年のCIS諸国の外国貿易』(2006年)が、このほどようやく刊行された。本統計集の発行時期は年々遅くなっており、今回のものは発行年2006年と記されているが、実際の発行は2007年にずれ込んでいる。ともあれ、ようやく統計を入手できたので、本誌でもこれにもとづいてCIS諸国の2005年の貿易データをまとめて紹介する。
CIS統計委員会にしかるべく数字を提供しておらず、したがってこの統計集にデータが不十分にしか掲載されていないウズベキスタンとトルクメニスタンについては、別の情報源からデータを補った。
各国の第4表は、それぞれの主要貿易相手国トップ40を見たものである(幸い、日本はすべての国の相手国としてトップ40に入っている)。
なお、ロシアについては、より詳細な貿易統計が本誌2006年9-10月号に掲載されているので、ご利用いただきたい。
ロシア産業の迷宮
WTO加盟に向けたロシアのラストスパート
はじめに
ロシアのWTO加盟に関する露米二国間交渉は、当初は、2006年7月中旬のサンクトペテルブルグでのG8サミットにタイミングをあわせる形で終結するとみられていたが、米国産食肉をロシアに輸入する際の衛生検査方法をめぐり両国の意見が対立し、結局プロトコールが締結されることはなかった。食肉の問題は、二国間交渉妥結の障害になるには軽微すぎるとの印象も拭いきれず、一部には、それは口実であって露米の間には公言できないより深刻な問題が存在するのではないかとの声も出ていた。その関連で、米国との二国間交渉は長引くのではないかとの観測も一時出たが、結局、出来るだけ早期に交渉を終結させたいとの政治的思惑の方が勝ったようで、2006年11月18〜19日にハノイで開催されたAPEC首脳会議の際にプロトコールが締結された。これで、ロシアはWTO加盟に向け大きな前進をしたことになる。今回は、そのような状況を踏まえ、米国との交渉の経緯、今後ロシアのWTO加盟の障害になる可能性のある問題、ロシアのWTO加盟がビジネスに与える影響等について考察してみる。(坂口泉)
クレムリン・ウォッチ
揺らぐ最大与党
下院で絶対多数を占める大統領与党「統一ロシア党」に異変が起きています。同党は2003年末の総選挙の結果、下院で議席総数の3分
の2を占める絶対多数会派となり、グルイズロフ党首は下院議長になりました。下院を事実上単独支配し、クレムリンの意向に添った
法律の制定・改変を強行してきました。こうした振る舞いが立法府を形骸化し、ロシア政治の民主化度を引き下げる原因にもなりました。
当初は議員団中心の寄り合い所帯だったものが、次第に下部組織も整備され、地方でも勢力を伸ばしてきました。次の大統領選挙で
は党として候補を立てる、つまりクレムリンが決めたプーチン後継者を党首としてかつぎ、大統領イコール「統一ロシア」という形をつ
くることを構想していました。議員団全員の勉強会にプーチン大統領を招き、近い将来に党首にお迎えしたい、と提案したこともあり
ます(昨年7月)。行政・立法一体の単一政治指導組織、かつてのソ連共産党的な存在を目指している印象を受けました。(月出皎司)
ロシア文化へのいざない
祖国防衛の日と国際婦人デー
はじめに
バレンタインデーが終わり、日本の男性にとっては頭の痛いホワイトデーが近づいている。ご存知のように、日本では、バレンタイ
ンデーは1950年代頃から菓子のメーカーや輸入業者が仕掛け、現在のような国民的行事として定着したものだが、元々は3世紀頃のロ
ーマ帝国時代のキリスト教聖職者ヴァレンティヌス、さらには多神教の祭事に由来する、「恋人たちの日」であった。もちろん、欧米
でもこの日にチョコレートを贈ることは(男女を問わず)決して珍しくないが、選択肢の一つであり、日本のようにチョコレート一色
ということはないだろう。
ロシアでは、バレンタインデーはソ連崩壊後の1990年代以降に登場した。全ロシア世論調査センターの2006年2月の調査によると、
バレンタインデーの存在を知っているロシア人は50%程度ということだ。若者を中心に、2月14日に恋人に贈り物をする習慣は徐々に
広まっているようである。
ところで、ロシアには、バレンタインデーよりも以前から、同じ時期に似たようなイベントがある。「祖国防衛の日」(2月23日)と国際婦人デー」(3月8日)だ。国の祝日となっていることもあり、ロシアでは、バレン
タインデーよりも国民の間に広く浸透していることは間違いない。今号では、この2つの祭日についてご紹介したい。(山本靖子)
商流を読む
ロシア流通大手の地方展開が本格化
モスコータイムズHPで公開されている
『REAL ESTATE QUARTERLY Q4 2006 』 によると、モスクワ最大のショッピングセンター、Mega(スウェーデンの家具大手IKEAが2002年末、モスクワの環状道路沿いのチョープルィ・スタンにオープン)では、2005年の年間訪問者数が約5,200万人を記録した。これはヨーロッパのショッピングセンターとしては最大の数字である。
MegaはIKEAのほか、フランスのハイパーマーケットAuchan、ロシアの家電量販店テフノシーラ、子供服のジェッツキー・ミール、ス
ポーツ用品のスポルトマステルなどをテナントとし、スケート場や映画館も有する巨大な複合施設である。IKEAは2004年末、モスクワ郊外のヒムキに
2号店(Mega2)をオープンし、ここにもAuchanやフィンランドの高級スーパー、ストックマン、ドイツのDIY型ホームセンターOBIなどが入り、2005年には4,000万人以上の訪問者を記録している。
自動車産業時評
ロシアの外国新車市場における法人需要
ロシアの乗用車市場では、その市場規模の急激な拡大に伴い、法人向けの乗用車販売台数も増加傾向にあります。この傾向はとくに外国新 車市場において顕著で、2003 年には1万8,700台だった販売台数が2005年には約6万台に達しています。2005年のロシアの外国新車市場の規模は約60万台でしたから、法人需要は全体の約10%を占めたことになります。また、金額ベースでいえば2005年の外国新車市場の規模は124億ドルでしたが、そのうちの約15億ドルを法人需要が占めたといわれています。今回は、ロシアの自動車専門誌『アフトビジネス』の情報などをもとに、ロシアの法人向外国新車市場における需要家の特性や、この市場において強みを発揮する外国メーカーの販売動向等について紹介いたします。
月刊エレクトロニクスNews
外国勢がロシアでの冷蔵庫生産を強化
ロシア家電協会の機関誌『エレクトロニカ』の 最新号(2006, No.5)に、同国の冷蔵庫市場に関するレポートが掲載されているので、その骨子をごく簡単にご紹介します。