ロシアNIS調査月報2007年8月号特集◆ロシアNIS貿易会の活動 |
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特集◆ロシアNIS貿易会の活動 |
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調査レポート |
日ロ中堅企業間のビジネスマッチング |
調査レポート |
ロシア沿海地方の建設・建材産業 ―企業コンサルタント事業の現場から |
調査レポート |
日露貿易投資促進機構のビジネスサポート |
調査レポート |
キルギス企業への経営指導 |
報告 |
第37回ロシアNIS貿易会定時総会報告 |
調査レポート |
ユコス消滅後のロシア石油業界 |
ビジネス最前線 |
文化交流で築いたロシアビジネスの基盤 |
データバンク |
2007年1〜3月のロシア経済 |
データバンク |
2007年1〜3月のロシアの乗用車市場 |
ユーラシア巡見 |
甘利大臣のウズベク・カザフ訪問の成果 |
ロシア産業の迷宮 |
不死身の大富豪スレイマン・ケリモフ |
クレムリン・ウォッチ |
欧州MD計画にプーチンが反対する理由 |
RUSSIAN STYLE |
読書大国? ロシア |
日ソ・日ロ経済関係の 舞台裏 |
極東ロシアとの交流 ―ヨーロッパ部のみならず極東にも軸足を置く |
日本センター所長 リレーエッセイ |
タシケント編 「タシケント(石の都)から」 |
商流を読む |
右肩上がりに成長するロシアの外食産業 |
エネルギー産業の話題 |
サハリン3〜6プロジェクトの最新の動き |
自動車産業時評 |
スズキ等の外資が相次いで現地生産を決定 |
メタルワールド |
クレメンチュグ鋳鋼工場をめぐって |
月刊エレクトロニクスNews |
モスクワ地下鉄のデジモノ事情 |
ノーヴォスチ・レビュー |
道路問題はロシアの永遠のテーマか |
ドーム・クニーギ |
宇多文雄・原ダリア著『ロシア語通訳教本』 |
業界トピックス
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2007年5月の動き 2007年1〜4月の通関統計 |
新刊案内 |
2007年発行の特別報告書のご案内 |
日ロ中堅企業間のビジネスマッチング
ロシアNIS経済研究所 次長
岡田邦生
はじめに
1.ビジネスマッチング前史
2.「コンサルティング型専門家派遣事業」
3.ビジネスマッチングの事例
4.日ロの鉄の都同士をお見合いさせる
むすびにかえて
はじめに
社団法人ロシアNIS貿易会(ROTOBO)は、日ロ両国政府の合意による経済協力プログラムにもとづき、経済産業省より補助金を受け、ソ連崩壊後、15年間にわたり、様々な対ロシア支援事業を実施してきた。筆者は、モスクワ勤務の頃も含め、これらの事業の多くに直接、間接に関与し、数多くのロシア企業を訪問し、日本企業の潜在パートナーを探し、両者のビジネスマッチングを試みてきた。近年、ロシア企業の変化は著しく、また、ロシア市場を見る日本企業の意識の変化も著しい。本稿では、2001年度より開始され、2002年度から筆者が担当を務めている「ロシア企業へのコンサルティング型専門家派遣事業」の事例などを紹介しながら、ロシア中堅企業の最近のビジネス動向、およびROTOBOが行う日ロ中堅企業間のビジネスマッチングの成否について報告する。
ロシア沿海地方の建設・建材産業
―企業コンサルタント事業の現場から―
ロシアNIS経済研究所 次長
高橋浩
はじめに
ロシアNIS貿易会は、経済産業省より補助金を得て、ロシア企業に対するコンサルティング事業を実施している。この事業は、ソ連解体後のロシアに対する支援事業として開始したが、ロシアが経済成長を続け、市場経済化が進むとともに、支援的要素からビジネスマッチングを重視した日ロの貿易投資促進のためのツールとして性格が変貌してきている。
平成18年度のこの事業のひとつとして、ロシア沿海地方ウラジオストク市にあるザハール社という舗装用のブロック(インターロッキング)等のコンクリート二次製品製造、建設機械のリース、植栽事業など多岐にわたる事業を行う企業に対して、コンサルティングを実施した。コンサルティングというのは、会社の商業的秘密などにも触れ、また、事業の目的ともなっている日本企業とのビジネスマッチングの促進という目的から、具体的に書きにくいところもあるが、本事業を実施してきた経験からみたロシア沿海地方の建設・建材産業の一端を紹介するというのがここでの目的である。
日露貿易投資促進機構のビジネスサポート
(社)ロシアNIS貿易会 経済交流部 調査役
原真澄
はじめに
1.ビジネスサポートの趣旨
2.日露貿易投資促進機構の組織
3.ビジネスサポートの概要
4.サポート事例
5.コンサルタント紹介
6.利用方法
はじめに
当会は、日ロ間の貿易投資の拡大を促進するために日ロ政府の合意により2004年6月に活動を開始した日露貿易投資促進機構の日本側事務局を担っている。日露貿易投資促進機構の主な活動は、日ロ両国のビジネス関連の制度や有用情報の収集と提供、両国間の取引に興味を持つ企業データベースの整備と提供(情報提供サービス)、両国企業からのビジネスに関する問い合わせに対し助言を行い、また両国企業の商談ミッションの実施に際し、面談アレンジ等を含む支援を行う(ビジネスマッチング・コンサルティング・サービス)、そして、日ロ両国の企業間における紛争の発生を未然に防止、または解決するために両国の企業に必要に応じ助言を行う(紛争処理支援)の3つがある。
本稿では、機構のこれらのサービスの概要とこれまでの成果を報告したい。
キルギス企業への経営指導
ロシアNIS経済研究所 調査役
中居孝文
はじめに
1.支援対象企業の選定
2.対象2企業の概要
3.コンサルティングの指導内容
4.日本での研修
おわりに
はじめに
当会では、2005〜2006年の2年度にわたり、キルギスの中小企業2社(製造業)に対して、ODAの技術支援として日本のコンサルタントによる経営指導を実施してきた。
言うまでもなく、キルギスは、ソ連からの独立、そして市場経済化を目指してから15年とまだ若い国であり、他方、日本は、市場経済の中で経験を蓄積し、世界経済のトップランナーに成長した国である。
平たく言えば、本事業は、市場経済の中で蓄えてきた日本の企業経営の知識やノウハウ、成功経験を、我が国のコンサルタントを通じて、キルギスの企業経営者に伝えることにより、同国の市場経済化の進展に少しでも貢献しようという試みである。
本稿では、コーディネーターとして参加した立場から、本事業の概要を報告する。
第37回ロシアNIS貿易会定時総会報告
はじめに
社団法人ロシアNIS貿易会は平成19年5月22日に如水会館にて第37回通常総会を開催いたしました。総会では役員が改選され、当会の新体制が発足しました。7年間にわたり会長を務めてきた高垣佑・且O菱東京UFJ銀行特別顧問が退任し、代わって西岡喬・三菱重工業且謦役会長が新会長に就任いたしました。
以下では総会において承認された平成18年度事業報告、平成19年度事業計画、新役員名簿を掲載するとともに、総会における西岡新会長および高垣会長の挨拶、また来賓としてご出席いただいた高田稔久経済産業省大臣官房審議官のご挨拶を掲載いたします。
ユコス消滅後のロシア石油業界
ロシアNIS経済研究所 調査部次長
坂口泉
はじめに
1.ユコス消滅前の石油業界の概況
2.ユコス消滅後の業界地図
3.M&Aブームと国営企業2社
4.国家主導のM&Aブームは続くのか
まとめ
はじめに
2003年から政権サイドのバッシングを受けていたユコスだが、2006年夏に裁判所が破産手続き開始の決定を下し、2007年3月から資産の競売が開始された。競売は5月にはほぼ終了し、かつて年間7,000万t以上の石油生産量を誇り、ロシアの石油分野の代名詞的な存在でもあった大石油会社「ユコス」は事実上消滅した。
ユコスの破産・資産競売が国家の主導のもとに行われたのは誰の眼にも明らかで、競売開始前から、国家が描いたシナリオにもとづき、国営石油会社「ロスネフチ」と、ガスプロムネフチという石油子会社を保有する国営ガス会社「ガスプロム」がユコスの主要資産をすべて買収するとの見方が大勢を占めていた。実際、競売の結果は、ほぼ順当なものとなった。すなわち、ロスネフチとガスプロムの2社が、ユコスの主要資産のほとんどすべてを買い占めることに成功した(もっとも、ガスプロムの動きが緩慢でロスネフチの一人勝ちの様相が強くなったのはやや意外であったが)。ただ、ロシア政権サイドの旺盛な食欲は、ユコスの資産だけでは満たされないようで、現在、ロシア石油業界では、国営企業2社によるルスネフチとバシネフチの買収の可能性が囁かれ始めている。さらに、将来的には、TNK-BPの株式の一部を国営企業が買収する可能性や、ロスネフチとスルグトネフチェガスの合併の可能性も存在するといわれている。
本稿では、以上のような状況を踏まえ、ユコスの資産の競売がロシア石油業界の勢力地図に与える影響、国営企業(ロスネフチおよびガスプロム)の規模拡大の実態、および、国営企業のさらなる勢力拡大の可能性等について紹介する。
ビジネス最前線
文化交流で築いたロシアビジネスの基盤
株式会社 エムズプランニング
CEO 松田有司さん
はじめに
ロシアの若手音楽家の指の動きの美しさ ――これがロシアビジネスを始めるきっかけでした。松田さんは、ビジネスの基本は文化交流だとおっしゃいます。人と人との付き合いを大事にするということはもちろん、将来、日本が世界の市場で誇れるのは「文化」というソフトだと確信されているからでしょう。松田さんはウラジオストクの現地法人や主なロシア側提携企業など数百名のロシア人スタッフを統括する立場にあります。今回のインタビューは、そうした松田さんならではの日ロ比較文化論ともなりました。それはいみじくもロシアビジネスのノウハウとなっており、実利とロマンの両立をめざした今後のエムズプランニングのロシアビジネスに注目したいと思います。
ユーラシア巡見
甘利大臣のウズベク・カザフ訪問の成果
ロシアNIS貿易会経済交流部
はじめに
我が国の甘利明・経済産業大臣は、4月下旬に中央アジアのウズベキスタンとカザフスタンを訪問した。とりわけ、カザフとのウラン分野での協力で大きな進展があったことは、周知のとおりである。
ロシアNIS貿易会ではこれを受け5月18日、両国との二国間経済委員会のメンバーにお集まりいただき、「甘利大臣のウズベク・カザフ訪問結果概要報告会」を開催した。報告会では、増山壽一・経済産業省通商政策局欧州中東アフリカ課長兼ロシア室長に、大臣の訪問の成果について報告していただいた。以下では、その報告概要を紹介するとともに、経産省作成によるまとめの資料を掲載する。
ロシア産業の迷宮
不死身の大富豪スレイマン・ケリモフ
5月初旬、スレイマン・ケリモフのことが日本の週刊誌で取り上げられていると教えられ、驚いた。2006年11月にケリモフが自分で運転するフェラーリ・エンゾ(価格は1億円を超えるそうだ)で衝突事故を起こしヘリコプターで病院に搬送されたというニュースを筆者は目にしており、てっきりそのまま亡くなったと早合点していたからだ。さらに、確かに大富豪ではあるが(最新のフォーブスの世界長者番付によれば同氏の資産は144億ドルでロシア人ではアブラモヴィチに次ぐ第2位となっている)、日本ではもちろんのこと、ロシアでも一般市民には馴染みの薄いケリモフが、日本の週刊誌に取り上げられたことにも驚かされた。ちなみに、記事の内容は、ケリモフが、2008年のG8サミットの主会場に予定されている洞爺湖のホテルに宿泊したが、それは親密な関係にあるプーチン大統領の命を受けての会場視察ではなかったのか、といったものであったと記憶している。
プーチンと特に親しいという話はあまり聞いたことはないが、ケリモフがロシアを代表する投資家(実業家と呼ぶにはやや抵抗感がある)なのは事実である。ただ、投資家といわれる人種は大抵がそうなのかもしれないが、ケリモフも謎の多い人物である。本稿では、ケリモフの半生をトレースすることにより、同氏の錬金術の謎の一端にでも迫れればと考えている。
クレムリン・ウォッチ
欧州MD計画にプーチンが反対する理由
はじめに
ビジネスマンの世界では安全保障の問題に関心をもつことはまれだと思います。ロシアに関してもこの分野に目を配っている方は少ないでしょう。今回はこのコラムとしては例外的なテーマになりますが、ロシアがなぜ欧州MD計画に強く反発しているのかを考えてみます。
RUSSIAN STYLE
読書大国? ロシア
はじめに
ロシアでも日本でも「若者が本を読まなくなった」と言われて久しい。両国でこれに対する反論も聞かれるが、実際のところはどうなのだろうか。個人的には、ロシアも日本も、老若男女問わず地下鉄車内で本を読んでいる人は結構多いという印象を受ける。ただ、テレビやインターネット、携帯電話といったメディアの多様化の影響は言うまでもなく、書籍自体の選択肢も膨大になった現在、30〜40年前まで多くの学生が当たり前に読んでいた古典文学を知らない若者が増えていることは事実かもしれない。
昔からロシア人は読書好きで知られ、ソ連時代から(とくに国内で)「世界で最も本をよく読む国民」ともいわれていたが、本当に世界一なのかどうか、真偽の程は定かではない。ソ連時代は書籍発行部数が(実際に読まれたかどうかは別として)非常に多く、国民の識字率も高かったことから、このように言われるようになったのだろうか。
ソ連崩壊後、雑誌や書籍の発行部数は激減し、公立図書館の数も減った。その一方で出版物の種類は増え、現在ではあらゆるジャンルの本が手に入るようになっている。
商流を読む
右肩上がりに成長するロシアの外食産業
ロシアの外食産業最大手であるロスインテル社はこのほど、業界初のIPOを実施し、約1億ドルの資金を調達した。これを受け、現地『エクスペルト』誌(2007.6.11, No.22)が、成長著しいロシアの外食産業に関するレポートを掲載しているので、以下ではその記事を抜粋して紹介する。
エネルギー産業の話題
サハリン3〜6プロジェクトの最新の動き
サハリン3〜6プロジェクトには、確認されている限りでは9〜10の鉱区が含まれますが、そのうちの5つの鉱区で現在、探査作業が行われています。2006年にはそのうち3つの鉱区で合計4本の探鉱井の掘削が行われ、サハリン5のカイガンスキー・ヴァシュカンスキー鉱区ではカイガンスコ・ヴァシュカンスコエ・モーレ・ガス石油鉱床(石油の埋蔵量が5,600万t、ガスが310億m3と評価されている)の発見が正式に確認されました。もっとも、2007年に入ってからは、サハリンの大陸棚鉱区での探査期間の5年の延長が認められる可能性が現実的なものとなった関係で、試掘をめぐる動きは鈍化し、主として、これまでに集積されたデータの分析や地震探査等が行われるようになっています。以下では、プロジェクト別に作業の進捗状況を紹介いたします。
自動車産業時評
スズキ等の外資が相次いで現地生産を決定
周知の通り、最近、日本のスズキと伊藤忠商事が合弁企業を設立し、ロシアでスズキ車の現地生産を開始する意向を表明し話題となりました。また、同時期に、PSA(プジョー・シトロエン)も現地生産を開始する意向を表明しています。以下では、この2つの事例を中心に、外国自動車メーカーのロシアでの現地生産に関する最新の情報を紹介いたします。
メタルワールド
クレメンチュグ鋳鋼工場をめぐって
ウクライナに、クレメンチュグ鋳鋼工場という会社があります。鉄鋼はウクライナの基幹産業ですが、同国にひしめく大手の鉄鋼関連メーカーに比べれば、クレメンチュグ鋳鋼工場は小粒な存在です。しかし、同社の生産品目が鋳物であることから、ウクライナの鉄鋼部門のメーカーとしては比較的高い付加価値を生み出す優良企業のようです。2006年、この会社の経営権をめぐって、ウクライナの財閥間で激しい争奪戦が勃発しました。
2006年の事件は、ウクライナの産業事情、投資環境全般を考えるうえでも見逃せない出来事でした(この事件から判断する限り、ウクライナの商道徳は、ロシアのそれに酷似しているという印象を禁じえません)。そこで以下では、クレメンチュグ鋳鋼工場の概要と、2006年の争奪戦の顛末、そして中心人物であるレオニード・ユルシェフ氏のプロフィールなどについてお伝えします。
月刊エレクトロニクスNews
モスクワ地下鉄のデジモノ事情
日本では電車の車中で、携帯電話をいじったり、デジタルプレーヤーで音楽を聴いている人が非常に多いですけれど、ロシアではどうでしょうか? これについて、SmartMarketingというロシアのシンクタンクが実施した調査の結果が同社のサイトに掲載されているので、紹介しましょう。
調査はモスクワ市の地下鉄で、2006年10〜11月に実施されました。調査員が380時間を費やし13万人の乗客を調べた結果とのこと。