ロシアNIS調査月報
2013年6月号
特集◆中央アジアと日本の経済関係
特集◆中央アジアと日本の経済関係
調査レポート
2012年のNIS諸国の経済トレンド
調査レポート
2012年のNIS主要国の乗用車市場
イベント・レポート
第4回日本カザフスタン経済官民合同協議会
イベント・レポート
第11回日本ウズベキスタン経済合同会議
ビジネス最前線
中央アジア初の日本のコンビニ展開
ビジネス最前線
ロシアNIS諸国で環境プロジェクトを組成
特別寄稿
トルクメニスタン市場の現状と大使館の日本企業支援
データバンク
2012年の日本の対NIS諸国貿易統計
データバンク
2012年のNIS諸国の経済統計
首長ファイル番外編
カザフスタンの地方リーダー
出張・駐在の達人
発見! タシケント駐在生活
エネルギー産業の話題
カザフスタンの石油・ガス最新事情
ロジスティクス・ナビ
中央アジアへの鉄道輸送
ドーム・クニーギ
帯谷知可・北川誠一・相馬秀廣編
『中央アジア(朝倉世界地理講座5)』

研究所長随想
ルツコイ元副大統領の自宅を訪ねて
ロシア極東羅針盤
ウラジオLNGと環境問題
日ロ異文化遭遇の日々
情報が少なすぎるロシア
業界トピックス
2013年4月の動き
◆ROTOBOとASIの協力覚書
◆医療法人北斗がウラジオストクに健診センター
通関統計
2013年1〜3月の通関実績


2012年のNIS諸国の経済トレンド

ロシアNIS経済研究所

はじめに
 本誌では毎年6月号において、前年のNIS諸国の経済実績を踏まえつつ、各国の最新の経済動向について論評するという企画をお届けしている。本年も2012年のデータがほぼ出揃ったので(データバンク「2012年のNIS諸国の経済統計」参照)、早速それを試みたい(『ロシアNIS経済速報』2013年4月15日および4月25日号より再録)。
 執筆は当会ロシアNIS経済研究所のスタッフによるものであるが、ロシアについては北海道大学スラブ研究センターの田畑伸一郎教授にとくにご寄稿いただいた。


2012年のNIS主要国の乗用車市場

ロシアNIS経済研究所 部長
坂口泉

はじめに
 本稿では、NIS諸国のうちウクライナ、ベラルーシ、カザフスタン、ウズベキスタンの4カ国を取り上げ、それぞれの乗用車市場の現状と今後の見通しを紹介する。ウクライナ市場に関しては、WTO加盟の影響や特別関税(追加関税)をめぐる動き、ベラルーシ市場に関しては、関税同盟への参加が及ぼした影響、カザフスタン市場に関しては、関税同盟への参加が及ぼした影響や国内自動車産業の活発な動き、ウズベキスタン市場に関しては、同国唯一の乗用車メーカーであるGMウズベキスタンの現状や政府の国内自動車産業保護政策に、それぞれ注目したい。


イベント・レポート
第4回日本カザフスタン経済官民合同協議会

はじめに
 2013年2月18日、東京にて「第4回日本カザフスタン経済官民合同協議会(第13回日本カザフスタン経済合同会議を兼ねる)」が開催された。主催は、経済産業省、外務省、日本カザフスタン経済委員会、(一社)ロシアNIS貿易会、カザフスタン共和国産業・新技術省、在日カザフスタン共和国大使館、カザフスタン日本経済委員会であった。
 同協議会は2009年10月の第1回(アスタナ開催)、2010年9月の第2回(東京開催)、2011年10月の第3回(アスタナ開催)に続くもので、日本側は佐々木伸彦・経済産業審議官、中原秀人・日本カザフスタン経済委員会会長ほか、政府機関および商社、メーカー、銀行などから約180名、カザフスタン側からはイセケシェフ副首相兼産業・新技術大臣、ジャクサリエフ産業・新技術省次官ほか政府機関関係者とエシムベコフ商工会議所会頭ら企業関係者合わせて130名、合計300名を超す参加者を集め、過去最大規模の協議会となった。
 イセケシェフ副首相の訪日に合わせて行われた今回の協議会は、直前に日本・カザフスタン投資協定が実質合意に至ったことを受けて、両国の経済協力関係のさらなる深化を期待させる有意義な意見交換の場となった。
 以下では、イセケシェフ副首相兼産業・新技術大臣の発言内容を掲載するとともに、事務局を担当したロシアNIS貿易会より協議会の概要について紹介する。(中馬瑞貴)


イベント・レポート
第11回日本ウズベキスタン経済合同会議

はじめに
 2013年3月5日、ウズベキスタン共和国の首都タシケントにおいて、「第11回日本ウズベキスタン経済合同会議」が開催されました。現地での開催は2007年10月以来、5年5カ月ぶりのことであり、日本側56名、ウズベキスタン側26名の計82名が参加しました。
 合同会議には、先方会長であるアジモフ第一副首相兼財務大臣をはじめ、ガニエフ対外経済関係・貿易・投資大臣、サイドワ経済大臣等、ウズベク側要人が数多く出席し、貿易・投資の拡大、高度技術導入等を含む、日本との幅広い協力関係発展に対する熱い期待が語られました。一方、日本側は主要会員各社がウズベキスタンにおけるビジネスの実績と展望について報告、今後とも関係を継続・発展させていく意思を確認しました。 翌6日にはナヴォイ経済特区訪問、7日には自動車分野の人材育成のためにイタリアとの協力のもとに設立されたトリノ大学の視察が行われました。また、会議に先立つ4日には、両国政府および関係機関による「第2回日本ウズベキスタンビジネス環境に係るワーキング・グループ」が開催され、合同会議参加者の一部もオブザーバ参加しました。
 以下に、会議の概要についてご報告致します。(輪島実樹)


ビジネス最前線
中央アジア初の日本のコンビニ展開

ミニストップ梶@執行役員 海外事業本部長
内ヶ崎泰弘さん

はじめに
 ミニストップは2012年5月、総合物流のセンコー鰍ネらびにカザフスタンで小売店と広告事業を展開するRTS有限責任事業会社とともに合弁事業会社「RTS-MINISTOP」をカザフスタンのアルマティに設立、翌年1月には1号店をオープンしました。中央アジア初となる日本のコンビニエンスストアの出店であり、すでに2号店も営業を開始しています。カザフスタンに進出している日本企業の多くは、旧ソ連市場として同国を見る傾向にありますが、ミニストップは東アジア、アセアン諸国と比較し、アジアの一国として位置づけておられるのが特徴です。本社で統括されていた内ヶ崎さんへのインタビューでは、そこから見えてくるカザフスタン市場の特性についても教えていただきました。(芳地隆之)


ビジネス最前線
ロシアNIS諸国で環境プロジェクトを組成

あすかグリーンインベストメント梶@代表取締役
栗田永幸さん

はじめに
 持続可能な社会の構築に寄与すべく、環境・エネルギーという新しい市場でのパイオニアを目指す、あすかグリーンインベストメント(AGI)は3月にウクライナ環境投資庁の子会社であるホルリフカ熱併給会社に日本製高温水ボイラーを供給する契約を結びました。AGIを立ち上げた栗田さんは、大手金融機関のシンクタンクに勤務されていた時代からロシアNIS諸国における温室効果ガス排出権取引のビジネスに注目されており、長年の努力の成果がここで実ったといえます。昨年は毎月のようにウクライナへ出張していた栗田さん、今年はビジネスの現場を中央アジアへと広げ、日本との間を往復する日々だそうです。物腰は柔らかく、スマートな外見ですが、なかなかにタフな方とお見受けしました。(芳地隆之)


特別寄稿
トルクメニスタン市場の現状と大使館の日本企業支援

在トルクメニスタン日本国大使館 二等書記官
松山哲士

はじめに
 トルクメニスタンは、統計数字上では「人口500万の小さなマーケット」であり、その情報だけでもトルクメニスタンを「海外進出先リスト」から除外する日本企業も少なからず存在すると思う。本稿では、トルクメニスタン経済や市場の現状とともに、日本企業にとって追い風となり得る統計数字では現れない部分の情報、当館の積極的な日本企業支援を紹介することで、一層多くの日本企業にトルクメニスタン市場への関心を持っていただきたいと考えている。なお、本稿は著者の個人的見解も含んでいる点につき、あらかじめご留意願いたい。


データバンク
2012年の日本の対NIS諸国貿易統計

はじめに
 恒例により、日本財務省発表の貿易統計にもとづいて、2012年の日本とNIS諸国との貿易に関し、データをとりまとめて紹介する。日ロ貿易については、すでに5月号に掲載済みである。


首長ファイル番外編
カザフスタンの地方リーダー

はじめに
 本誌の中央アジア特集に合わせて、首長ファイル番外編として、カザフスタンの地方制度についてお届けする。
 2012年12月、ナザルバエフ・カザフスタン共和国大統領は新しい経済政策として「カザフスタン2050」を発表した。新政策では、これまでの経済多角化、イノベーションに加えて、地方の発展がキーワードとなっている。ジュズと呼ばれる部族連合の結びつきが強いカザフスタンにおいては政治・ビジネスエリートがどこの出身かということが重要になることがある。しかし、カザフスタンにはどのような州がどこに存在し、どのような特徴を持つか、まだあまり日本では知られていない。紙幅の関係で提供できる情報が限られているが、カザフスタンの地方について概説する。(中馬瑞貴)


出張・駐在の達人
発見! タシケント駐在生活

 筆者は2011年2月〜2013年2月まで、在ウズベキスタン日本大使館に専門調査員として勤務した。仕事も一人暮らしも初めてで、これまでと全く違う生活環境に置かれ最初は日本が恋しく感じたが、数か月も滞在するとタシケントならではの楽しみ方が見えてきた。本稿では筆者が経験したタシケント駐在生活について、20代女子の目線で綴ってみたい。(井上久子)


エネルギー産業の話題
カザフスタンの石油・ガス最新事情

 カザフスタンは旧ソ連諸国の中でロシアに次ぐ2番目の石油生産量を誇る国です。しかも、石油の大半が輸出に供されており、国際市場に及ぼす影響は小さくありません。また、これまでは上流部門と比較すると目立たない存在であった製油部門でも、最近になり、近代化の動きが活発化し注目度が高まっています。さらに、ガス分野でも石油分野同様に生産量が伸びています。カザフスタンの石油ガス分野はますます目の離せない存在になりつつあるといえます。そこで、今回は、同分野の現状をご紹介することとします。(坂口泉)


ロジスティクス・ナビ
中央アジアへの鉄道輸送

 中央アジアの経済発展に伴い貿易コンテナが増加しています。東アジアから大陸のど真ん中への輸送は海上輸送と鉄道を利用する複合一貫輸送となります。日系企業の関心も高まっているカザフスタン、ウズベキスタン向け複合輸送の動向を紹介します。(辻久子)


ロシア極東羅針盤
ウラジオLNGと環境問題

 ガスプロムは昨年11月、LNGプラントの建設場所をペレヴォズナヤ湾とすることを正式決定した。今年2月には、投資根拠文書を策定するなど、着工準備を加速させている。
計画では、プラントはペレヴォズナヤ湾の 隣にあるロマノソフ岬に建設する。年間1,000万tの生産を見込む。2018年の稼働開始を目指すとしているが、工事は行われていない。日本でも、計画への参加とともにLNGの新たな調達先として関心が高い。(齋藤大輔)