ロシアNIS調査月報
2025年9-10月号
特集◆中央アジア・コーカサス
経済・貿易の新潮流
 
特集◆中央アジア・コーカサス経済・貿易の新潮流
データバンク
2024年の中央アジア・コーカサス貿易統計
調査レポート
中央アジアとアフガニスタンの経済・貿易関係
調査レポート
カザフスタンのクロム産業
―日本の産業界を支える安定供給―
ビジネス最前線
ITデジタル立国を目指すウズベキスタンとともに
イベントレポート
カザフスタン起業家ラウンドテーブル
データバンク
2025年上半期の日本と中央アジア・コーカサス貿易
中央アジア情報バザール
トランプ関税はカザフスタンの脅威ではない?

調査レポート
ロシア農業分野の最新動向
―穀物・畜産部門を中心に―
データバンク
2025年上半期の日ロ貿易
INSIDE RUSSIA
ロシア鉱工業生産の不振が一層鮮明に
ロシア極東羅針盤
極東中国特区がついに始動
データリテラシー
撤退外資復帰条件をめぐる最近の動向
エネルギー産業の話題
ロシアのガス輸出の現状と展望
ロシア政財界人物録
政策金利の引き下げとナビウリナ中銀総裁発言
ロシアメディア最新事情
ロシアの旅行シーズンは危険と隣り合わせ?
ウクライナ情報交差点
ウクライナ新内閣は逆風下の船出
シネマで見るユーラシア
『人間の境界』
ロシア音楽の世界
プロコフィエフ『3つのオレンジへの恋』
ドーム・クニーギ
鳥飼将雅『ロシア政治 プーチン権威主義体制の抑圧と懐柔』
業界トピックス
2025年7月の動き
おいしい生活
デザインがおしゃれなアルメニアのロゼワイン
記者の「取写選択」
空母クズネツォフの命運


データバンク
2024年の中央アジア・コーカサス貿易統計

 中央アジアおよびコーカサス諸国の統計機関が発表しているデータに基づき、トルクメニスタンを除く7カ国の2024年の貿易統計について各国ごとに、貿易高の推移、地域別貿易実績、主要貿易相手国(上位25カ国)、輸出入品目構成(タジキスタン、アゼルバイジャンを除く)の表を作成したので、簡単な解説を交えてご紹介する。(中馬瑞貴)


調査レポート
中央アジアとアフガニスタンの経済・貿易関係

(一社)ROTOBO ロシアNIS経済研究所 研究員
齋藤竜太

 本稿では中央アジアとアフガニスタンの経済・貿易関係について、近年の動向を解説する。


調査レポート
カザフスタンのクロム産業
―日本の産業界を支える安定供給―

(一社)ROTOBO ロシアNIS経済研究所 研究員
渡邊光太郎

 ステンレス鋼や特殊鋼は現在の工業に欠かせない素材である。これらは、原料としてクロムを用いている。カザフスタンには世界最大とされることもあるドンスコイ・クロム鉱床があり、クロムの採掘量で世界第3位である。また、クロムを用いた金属原料であるフェロクロムの生産においても世界3位である。日本はフェロクロムを輸入に頼るが、輸入量の40〜60%をカザフスタンに依存する。日本がカザフスタンから輸入している品目の最大勢力は高炭素フェロクロムであり、輸入額の60〜70%を占める。カザフスタンはクロムの供給において、世界的に重要であるし、日本にとっても極めて関係が深い。本稿では、カザフスタンのクロム産業について紹介する。


ビジネス最前線
ITデジタル立国を目指すウズベキスタンとともに

ウズベキスタン共和国デジタル技術省 大臣顧問
桜井明博

 長年日本の総合ICTベンダーで勤めてきた桜井明博さんは、第2の人生をウズベキスタンのデジタル技術大臣顧問として再スタートさせました。中央アジアのウズベキスタン共和国はITデジタル立国を目指し、2030年に向けてデジタル戦略を推し進めています。同国のデジタル化のために、これまで培った桜井さんの経験やノウハウが必要とされているのです。今回は、ウズベキスタンのデジタル化の現状や目標、ITデジタル分野での日本との協力に向けた計画や今後の展望について、同国デジタル技術省大臣顧問の桜井明博さんにお話をお聞きしました。(聞き手:中居孝文)


イベントレポート
カザフスタン起業家ラウンドテーブル

 2025年7月22日、ROTOBOは、カザフスタンの企業団体「VQ Business Club」による起業家ミッションと日本企業との交流会(ラウンドテーブル)を実施した。以下では、その概要について報告する(構成:中馬瑞貴)。


データバンク
2025年上半期の日本と中央アジア・コーカサス貿易

 日本財務省から2025年6月の貿易統計が発表されたことを受けて、ROTOBOでは、2025年上半期の日本と中央アジア・コーカサス諸国との貿易に関するデータをまとめたので、若干の解説を交えて紹介する。


中央アジア情報バザール
トランプ関税はカザフスタンの脅威ではない?

 選挙期間中から「米国第一主義(America First)」を掲げてきたドナルド・トランプ米国大統領は、その政策の一環として、米国内の製造業者の保護を目的に、国際貿易における不均衡を解消すべく、各国への追加関税導入を掲げて世界を揺るがしている。「トランプ関税」とも呼ばれる米国の関税政策は中央アジアにも及んでいる。(中馬瑞貴)


調査レポート
ロシアと農業分野の最新動向
―穀物・畜産部門を中心に―

(一社)ROTOBO ロシアNIS経済研究所 名誉研究員
坂口泉

 ソ連解体後、ロシアの農業分野も他の多くの産業分野同様に不振にあえいでいたが、2000年代に入り油価の上昇と石油生産量の増加を受けてロシア経済が活況を呈し始めた頃から徐々に状況が変化し始める。例えば、2000年以降、穀物生産量が増加し始め、かつてはネットの輸入国だったものが、今や世界有数の穀物輸出国となっている。また、ひまわりや大豆に代表される油糧主旨の生産量も同じ頃から増加し始め、ロシアは今や世界有数のひまわり油の輸出国となっている。2000年代半ば以降は鶏肉と豚肉の生産量も増加し始め、現時点で鶏肉と豚肉に関してもネットの輸出国となっている。さらに、2010年頃から良質の肉牛の飼育も開始されており、かつては考えられなかったことであるが、国産の美味な牛肉が市場に出回るようになっている。本稿では、列挙した部門の2000年から現在に至るまでの成長の軌跡を紹介する。


データバンク
2025年上半期の日ロ貿易

 日本財務省から2025年6月の貿易統計が発表されたことを受け、当会では2025年上半期の日本とロシアの間の貿易に関して、米ドル換算するとともに、輸出入商品構成をまとめたので、若干の解説とともに紹介する(齋藤大輔/橋之爪理佳)。


INSIDE RUSSIA
ロシア鉱工業生産の不振が一層鮮明に

 今般ロシア統計局より2025年上半期(1〜6月期)の鉱工業生産統計が発表されたので、概要を図表にまとめてお目にかけるとともに、寸評をお伝えする。(服部倫卓)


ロシア極東羅針盤
極東中国特区がついに始動

 ロシアは、極東地域に友好国からの投資を呼び込むために、新しいタイプの特区を設置する。その名も「国際先進発展区(国際TOR)」。特区設置を定める法が7月末にようやく成立し、2026年1月の施行を目指す。(齋藤大輔)


データリテラシー
撤退外資復帰条件をめぐる最近の動向

 撤退外資復帰条件をめぐって、ロシア政府や主要なロシア経済団体の間で今春から調整の動きがあったことは以前の拙稿(本誌2025年6月号掲載、「撤退外資復帰条件をめぐるロシア経済団体の提案」)にて紹介したとおりです。この動きはその後にロシア議会へと波及し、ロシア下院(国家院)の超党派議員により、「外資による資産買戻し(バイバック条項)阻止」法案(以下、「買戻し阻止」法案)が議会審議上に登場しました。(長谷直哉)


エネルギー産業の話題
ロシアのガス輸出の現状と展望

 ウクライナ戦争前まで、ロシアのガスは主に欧州に輸出されていました。欧州にはソ連時代に構築されたインフラを利用してガスが供給されており、生産コストや輸送コストが安く、ロシアは大きな利益をあげることができていました。ただ、ウクライナ戦争後は数字が激減し、2025年のPLガスの欧州への輸出量は2022年の10分の1程度にとどまる見込みです。これは、最も利益率の高い販売市場の規模が大幅に縮小したことを意味し、PLガスの輸出を独占的に行っているガスプロムの財務基盤は大きく揺らぎ始めています。欧州委員会は今後さらにロシア産ガスへの依存度を低減させる意向を表明していますが、そのことも踏まえ、ロシアのガス分野の現状と展望についての考察を試みます。(坂口泉)


ロシア政財界人物録
政策金利の引き下げとナビウリナ中銀総裁発言

 今回は、2025年7月25日のロシア中銀による政策金利の引き下げ決定(20%から18%へ)に関し、その背景を明らかにしたナビウリナ同中銀総裁の声明を紹介します。(長谷直哉)


ロシアメディア最新事情
ロシアの旅行シーズンは危険と隣り合わせ?

 今のロシアをめぐる状況を鑑みると、楽しい旅がしたいなら、相応のリスクも考慮しなければなりません。本稿では、今夏の旅に関するニュースをご紹介しつつ、起こり得る不測の事態について考えてみます。(徳山あすか)


ウクライナ情報交差点
ウクライナ新内閣は逆風下の船出

 ウクライナではこのほど、D.シュミハリ首相が辞任を表明し、内閣総辞職となった。そして、議会にあたるウクライナ最高会議は、大統領の指名に基づき、副首相兼経済相だったYu.スヴィリデンコ氏を新首相に承認、スヴィリデンコ新内閣が発足した。以下では、一連の事実関係、内閣交代の背景、そして新内閣の注目点につき報告する。(服部倫卓)


シネマで見るユーラシア
『人間の境界』

 ポーランド政府は2021年9月、EU諸国への亡命を求める人々であふれるベラルーシとの国境付近に非常事態宣言を発令した。シリアやアフガニスタンからの難民をロシア経由で受け入れたベラルーシが、ポーランドとの合意を得ることなく、鉄条網が張り巡らされた対ポーランド国境の一部をこじ開けて送り込んだのである。人間を兵器のように扱う行為に、ポーランドは難民を強制的に送還することで対抗した。両国が厄介者として押し付け合った結果、国境エリアに多くの難民が押し止められた。このニュースを覚えている人も多いだろう。(芳地隆之)


ロシア音楽の世界
プロコフィエフ『3つのオレンジへの恋』

 「3つのオレンジへの恋」は、もともとはイタリアの劇作家、カルロ・ゴッツィの寓話だが、プロコフィエフはそれを元に歌劇を作曲した。なかなか上演の機会なく、筆者もライヴ鑑賞した経験がない過激だが、抜粋の組曲や、ヴァイオリン用編曲版とフルート用編曲版の「行進曲」は、コンサートの最後のアンコールピースとして何度か耳にしている(ヒロ・ミヒャエル小倉)


記者の「取写選択」
空母クズネツォフの命運

 北極圏バレンツ海が深く切り込むフィヨルドの奥。北緯69度のムルマンスクから北へ向かっていると、案内してくれた現地の環境活動家がふいに車を止めていった。「空母が言えますよ」。(小熊宏尚)