貿易経済協力深化プログラム

 

 

日本国及びロシア連邦との間の
貿易経済分野の協力の深化のためのプログラム

 日本国及びロシア連邦(以下「双方」という。)は、
 信頼、相互利益及び長期的視点を基礎とした幅広い分野における創造的パートナーシップの構築を重要な課題と認識し、
 双方の間の貿易経済分野の協力の更なる強化と発展を志向し、
 1993年10月13日の「日露関係に関する東京宣言」及び「日本国とロシア連邦との間の貿易経済及び科学技術の分野における関係の今後の展望に関する宣言」並びに1998年11月13日の「日本国とロシア連邦との間の創造的パートナーシップ構築に関するモスクワ宣言」に規定された双方の間の関係の発展に向けた意思を確認し、
 1997年11月の日露首脳会談に際し作成された「橋本・エリツィン・プラン」の下で実施されてきたロシア連邦政府による改革努力に対する日本国政府の協力が有益な成果を生んでいることを高く評価し、
 貿易経済に関する日露政府間委員会の役割に重要な意義を認め、
 以下の基本的な方向に沿って貿易経済分野の相互協力の拡大と深化が必要であるとの認識で一致した。

 

1.貿易の促進及び良好な投資環境の整備

 双方は、貿易及び投資を日露関係の主要な要素としてこれに大きな意義を認め、双方の間の貿易経済分野の関係の発展を支持する。双方は、貿易及び投資の障害を除去し、投資の誘致とビジネス活動の活発化のための良好な環境を整備するロシア側の努力の重要性を確認する。日本側は、外国投資の保護及び促進に係る環境整備に向けたロシア側の努力に対し、適切な形で協力を行う。
 この関連で、双方は、1998年11月13日の「投資の促進及び保護に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定」の発効を歓迎する。
 双方は、両国の民間経済界の交流の拡大を可能な範囲で支援していく。
 双方は、良好な投資環境の整備という文脈において、日露投資会社の設立構想を含め、ロシアに対する投資の円滑化のための作業を継続する。

 

2.ロシアにおける経済改革の促進

 双方は、ロシアの経済改革が着実に遂行されることの重要性を確認する。
 双方は、ロシアの市場経済と産業の強化に向けて日本側より行われている技術・知的協力を継続する過程において、協力と交流の発展を支持する。
 双方は、マクロ経済政策、産業政策、政策金融、中小企業育成及び国際経済体制への統合等の様々な分野において日本国政府の関係機関により実施されている技術・知的協力を支持する。
 日本国政府は、ロシアに所在する「日本センター」及び「中小企業センター」における研修並びに日本における研修を利用しつつ、ロシア連邦の企業経営者養成計画及び公務員養成計画の枠組みにおける人材育成の分野の協力を継続する。
 日本国政府は、必要に応じ、ロシアの経済改革の促進に関し助言を行うための専門家の派遣を行う。

 

3.国際経済体制へのロシアの統合

 双方は、ロシアの国際経済体制への統合が重要であるとの認識を共有する。この関連で、日本国政府は、ロシアが世界貿易機関(WTO)に早期に加盟することを支持する。ロシア連邦政府は、法制度及びその運用の改善などの必要な改革の実施に向けて引き続き努力する。日本国政府は、ロシアのWTO加盟に向けて必要な技術協力を継続する。

 

4.エネルギー、環境、生物資源の保存・利用

 双方は、エネルギー分野における協力の促進は、両国の利益に合致するとともに、長期的にエネルギー需要の伸びが予想されるアジア太平洋地域におけるエネルギー供給の安定化に寄与するとの見解を共有する。双方は、このような認識に基づき、エネルギー分野における対話の深化を促進する。
 双方は、サハリン1及びサハリン2石油・ガス開発プロジェクトが成功裡に実現されることに期待を表明する。
 双方は、地球規模での気候変動問題への取組に協調的に対応していく。
 この関連で、双方は、温室効果ガスの排出削減に向けた可能な協力のための、1997年12月11日の国連気候変動枠組条約京都議定書の意義を指摘する。双方は、また、温室効果ガスの吸収源の分野における協力の可能性についても留意するとともに、地球規模での気候変動分野の観測・予測の重要性を認識する。
 双方の政府関係機関は、1991年4月18日の「環境の保護の分野における協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定」に基づき、環境分野の協力プロジェクトを実施していく。
 双方は、海洋環境の保護の重要性を認識し、双方に隣接する海域における油汚染事故の発生時又はその発生のおそれがある場合に備えて、迅速かつ効果的な通報体制を整備するとともに、油流出の防止のため又はその被害を最小限に止めるために迅速に情報交換を行う。
 双方は、共有する日本海の海洋環境の現状を分析するための共同モニタリングの実施に関心を示し、海洋環境保全の活動において協力していく。
 双方は、ロシアのシベリア及び極東地域における森林保全の分野での協力の拡大のため、共同研究の実施と情報交換への関心を表明する。
 双方は、北西太平洋の生物資源の保存と合理的利用に関し、協力する意向を確認するとともに、生物資源に関する情報及び統計データの相互交換を含む、こうした協力を一層発展させるため、協議を継続する。

 

5.科学技術、宇宙

 双方は、「科学技術協力に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定」が署名に至ったことを歓迎するとともに、この協定に基づき、引き続き双方の政府関係機関の交流を実施し、科学技術分野の協力を拡大する。
 双方は、国際科学技術センター(ISTC)を通じ、ロシアの軍民転換プロセスの進展と各種共同プロジェクトの実施に向けて協力する。双方は、ISTCの適切な活動のため、支援を行う。
 双方は、日露の民間経済関係者の間で、情報技術をはじめとする様々な分野の協力の進展を奨励し、支援する。
 双方は、日本貿易振興会(JETRO)、ロシア東欧貿易会等の事業を通じ、科学技術分野の交流を促進する。
 双方は、1993年10月13日の「宇宙空間の平和的目的のための探査及び利用の分野における協力に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定」に基づき、宇宙分野の協力を更に促進する。双方は、平和的目的のための宇宙空間の調査・利用分野における互恵的な協力の展開のために、リモート・センシング、宇宙環境利用、宇宙医学、国際宇宙基地計画などの分野において双方の政府関係機関の間で協力が進展することに期待を表明する。

 

6.原子力の平和利用及び核兵器廃棄支援

 双方は、「軍縮・不拡散、核兵器廃棄支援分野における日本国政府とロシア連邦政府との間の協力の促進に関する覚書」が署名されたことを歓迎する。
 双方は、ロシア極東における太平洋艦隊の退役原子力潜水艦の解体処理、ロシア連邦における余剰兵器プルトニウムの処分、高速増殖炉及び関連する核燃料サイクルなどの分野での協力を継続する。
 双方は、ロシア極東の液体放射性廃棄物処理施設の建設プロジェクトの早期完成に向けて最大限の努力を傾ける。

 

7.運輸

 双方は、シベリア鉄道の交通システムの向上についての協議を継続する意向である。この関連で、双方は、シベリア鉄道の近代化に向けた方法及び手段に関する助言を策定するため、双方の関係する国家及び民間機関からなる協議の場を設けることが適当であるとの認識を共有する。双方は、また、この分野の経験と技術の交流を目的として、日露間の技術・知的協力を実施することが適当であると考える。
 双方は、ザルビノ港の開発に関する双方の民間経済関係者の協議に然るべき関心を払う。

 

8.地域レベルの協力(特に日本とロシアのシベリア及び極東地域との協力)

 双方は、日本国とロシアのシベリア及び極東地域との間の貿易経済分野の協力と交流の拡大を支持する。
 双方は、地方における中小企業の発展及び地方の行政府の職員の育成を目的とし、ロシアに所在する「日本センター」及び「中小企業センター」を通じ、研修、専門家の派遣及びセミナーの開催等の事業を継続する意向である。
 双方は、両国の民間経済界によるロシアのシベリア及び極東地域における協力の優先的なプロジェクトに係る作業に関心を表明する。

2000年9月5日
東京

日本国総理大臣 森喜朗

ロシア連邦大統領 V.V.プーチン

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