ソ連東欧貿易調査月報

1992年4月号

 

T.1991年の日ソ貿易

U.旧ソ連のエネルギー事情

V.旧ソ連農業の問題点とCIS諸国の課題

W.独立国家共同体(CIS)鉄道輸送の直面する問題点

X.ベトナムの対ソ連・東欧との経済関係の変化

Y.1991年の旧ソ連邦の貿易動向

Z.1992年1〜3月のロシア経済

◇◇◇

旧ソ連・東欧貿易月間商況1992年3月分)

旧ソ連・東欧諸国関係日誌1992年3月分)

CIS・グルジア・東欧諸国・モンゴル輸出入通関実績(1992年2月および1〜2月累計)

 

 


 

1991年の日ソ貿易

 

.  1991年の日ソ貿易一般動向

.  輸出の主要動向(1)

.  輸出の主要動向(2)

.  輸入の主要動向(1)

.  輸入の主要動向(2)

 

 ソ連の11共和国の首脳は1991年12月21日、「独立国家共同体」(CIS)の創設に調印し、周知のとおりソ連はこの時点で消滅した.これに伴い日ソ貿易―日本とソビエト社会主義共和国連邦との貿易―も1957年の通商条約・貿易支払協定調印以降、34年の歴史の幕を閉じた。1991年は、したがって日ソ貿易としては最後の都市だったわけだ.輸入も7年ぶりに前年を下回り、輸出入総額はピーク時の1989年の89.2%に縮小している。

 


 

旧ソ連のエネルギー事情

 

.  エリツィン政権下のエネルギー政策

.  ロシア連邦の石油産業の組織形態と管理体制

.  旧ソ連のエネルギー生産動向

.  旧ソ連の石油、天然ガス、石炭の輸出動向

 

はじめに

 石油をはじめとする旧ソ連のエネルギー生産は、このところ危機的な状況にある.単に生産量が急減したことばかりが原因ではない。CIS(独立国家共同体)の共和国間の連携にひびが入ったことや、本年1月2日に価格自由化が行われたものの、エネルギー価格については基本的には価格統制が撤廃されないままとなっている一方、機資材の急騰でエネルギー生産企業の経営状況が極度に悪化したことによるものである。

 ガイダール副首相は本年4月にエネルギー価格の完全自由化を実施する意向であったが、ロシア議会を中心に反対論も強く、段階的な値上げに踏み切らざるを得なくなっている。

 ロシアを中心とするCISにとって、エネルギー問題はもっともクリティカルな問題であり、今後ロシアをはじめ各国政府がいかに対応するか、注目される。

 この3月に日本政府が技術的支援の一環としてロシアに官民合同のエネルギー調査団を派遣したが、本稿は、その折の会談を踏まえて問う経済研究所調査部長の村上隆が執筆したものである。 

 


 

旧ソ連農業の問題点とCIS諸国の課題

 

.  旧ソ連の農業政策と問題点

.  CIS諸国農業の現状と問題点

 

はじめに

 旧ソ連政府の農業政策は、その目的であった国民の食生活改善という点では、大きな成果をあげた。しかし食料品の増産は大規模な国庫の負担に支えられたものであった。またさらに、不足する需要をまかなうため、最近10年間には、毎年4,000万t前後の穀物と、100万t規模の食肉輸入が必要であった。

 1991年12月の連邦崩壊後、ソ連を構成してきた各共和国は、経済改革の一環として、農業においても従来の中央政府の管理による生産、調達、分配システムを見直すこととなった。しかしこれまで一元化されていた経済のネットワークが崩れる一方、新しい制度は確立されていないという状況のもとで農業においても生産から小売にいたる各分野で著しい混乱が生じている。

 とくに、旧ソ連の食糧需要のアンバランスは深刻である.もともと、農産物の生産には、各共和国間で著しい格差があり、供給余力があるのは穀物ではカザフ、畜産物では白ロシア、ウクライナ、カザフ、バルト3国、モルドバに限られていた。現在、旧ソ連諸国には外国から食糧を輸入できるだけの外資もないところから、これら諸国の間での農産物の需給調整が当面の緊急課題である。

 こうしたソ連に対する食糧援助は、国際的な関心の一つとなっているが、それにあたっては、旧ソ連地域が2億9,000万の人口を抱えていることを年頭に起き、何よりも相手国の生産者の意欲を損なわないよう、最新の配慮が必要とされる。将来の農業関連の国際援助では、緊急の食糧援助と同時に、農業経営の近代化や農産物の流通網の整備など、幅広い分野が対象となろう。

 今後の旧ソ連諸国の農業改革の柱は、農民の主体性を高めることである。しかし、これまでの穀物のほぼ全て、畜産物の7割は集団農場で生産されてきた。また、その生産は、地域によってはひどく効率の悪いものであった。いずれはこうした農業経営も効率を高める方向で、共和国ごとに特徴のあるものに変わってこようが、農業改革にあたっては、生産力を維持しつつ、これを進めることも不可欠な要因であり、改革の実施には柔軟性が求められる。

 本稿はこうした旧ソ連の農業の実情とCIS諸国の課題を纏めたもので、執筆者は当会ソ連東欧貿易会研究所研究開発・交流部次長 本村和子である。

 


 

独立国家共同体(CIS)鉄道輸送の直面する問題点

 

.  旧ソ連時代の鉄道輸送変遷

.  CIS成立後の変遷

.  終わりに

 

はじめに

 旧ソ連経済の愛レス圏の一つが流通、特に貨物輸送の中で大きな役割を担う鉄道であるとみなされてきた。その意味で、ソ連邦が崩壊し、連邦体制と一体化していた旧ソ連の鉄道部門がどのような変化を遂げるのかというのは興味のもたれるところである。そこで、その問題点をとりあげた。

 執筆者は、ソ連の運輸事情に詳しい岡田安彦である。

 


 

ベトナムの対ソ連・東欧との経済関係の変化

 

.  ソ連に依存してきたベトナム経済

.  東から西へ―急転換するベトナム経済(1986年以降)

.  アジアに急接近するベトナム

.  ベトナムの対外経済関係の展望

 

はじめに

 1970年代末、中国との関係が悪化して以降、ベトナム経済はソ連への依存を深めた。しかし、1986年にはドイモイ(刷新)政策が打ち出され、再びベトナム経済は転機を迎えた。1980年代後半にソ連・東欧が変貌を遂げたことで、これら諸国との経済関係が薄れる一方、世界的に緊張緩和が進む中で、近隣アジア諸国や先進工業国との関係改善が徐々に進み、これがベトナム経済に活力を与えつつある。

 本稿は、こうした近年のベトナム経済の変化を紹介したもので、執筆者は日本貿易会(ジェトロ)海外調査部アジア大洋州課の三浦有史氏である。

 


 

1991年の旧ソ連邦の貿易動向

 

はじめに

  このほど、『経済と生活』紙(1992年3月、No.13)に、1991年の旧ソ連邦の貿易動向を示すデータが掲載されたので、ここでは同氏による解説を含めこれを紹介する。この資料により、同年の取引件別貿易額、主要相手国別貿易額、主要輸入品の貿易動向を知ることができる。

 ソ連邦が1991年12月に消滅したことを喪って、今後は経済統計も共和国ごとのものが主流になろう。今回の資料は、バルト3国を含む旧ソ連全体を対象としているが、このようなデータが得られるのは最後になる可能性もあり、その意味でも関心がもたれる。

 旧ソ連邦を構成していたここの共和国の貿易については、従来ほとんど情報が無かった。共和国は実際には「国」ではなく、きょうわ国語との貿易統計を作成することは意義が低い上に技術的に困難であったからである。だが、連邦が崩壊し、各「独立国家」が経済的にも自立しようとしている今日の状況

では、共和国ごとの貿易動向に大いに関心がもたれるところである。その点で注目されるのは、主要品目の輸出入動向(第6、7表)に限られて入るが、ロシアの占めるシェアが明記されていることである。今後は、ロシア以外の各共和国についてのデータの公表も期待される。

 なお、今回のデータは、全て商業レートでルーブルに換算されたとされている。当会の試算によると、1991年の商業レート平均値は、1米ドル=1.7466ルーブルであった。

 


 

1992年1〜3月のロシア経済

.  概況

.  財政・通貨流通

.  物価・料金

.  就業状況

.  消費市場

.  工業

.  農工コンプレクス

.  基本建設

.  輸送・通信

10. 対外経済関係

 

はじめに

 このほど『経済と生活』紙(1992年4月No.17)に、ロシア統計国家委員会の公表した1992年第1四半期(1〜3月)のロシア連邦の経済実績が掲載されたので、その概要を紹介する。旧ソ連の体制化では経済実績等については連邦レベルの統計が重要視されていたので、当会としてもその紹介に務めてきた。1991年については、CISの経済実績が公表されたが、今後そのようなデータが得られるかどうかははっきりせず、1992年の第1四半期についても今のところ旧ソ連ないしはCISレベルの統計値は出ていない。

 同資料によると、1992年第1四半期のロシアでは、旧ソ連時代方の経済崩壊に歯止めがかかっていないことが浮き彫りになっている。同紙では、GNPには言及されていないが、1992年1〜3月には前年同期比で国民所得が14%低下し、工業生産も同13%低下するなど、主要指標は軒並み大幅なマイナスを示している。その一方で、諸物価の高騰によるインフレ高進が深刻な問題となってきている。