ロシア東欧貿易調査月報

1993年2月号

 

T.1991〜1992年の旧ソ連・東欧諸国の対西側貿易動向

  ―国連欧州経済委員会報告―

U.1992年のロシア経済

V.ロシア極東経済の現状と発展計画

  ―P.A.ミナキル・ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所所長講演会より―

W.ロシア・東欧諸国の経済改革の現状と評価

  ―バルツェロビッチ・前ポーランド副首相兼大蔵大臣講演会―

新刊案内

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旧ソ連・東欧貿易月間商況1993年1月分)

旧ソ連・東欧諸国関係日誌1993年1月分)

統計特集(T):

CIS・グルジア・東欧諸国・モンゴル輸出入通関実績(1992年12月および1〜12月累計)

 

 


 

1991〜1992年の旧ソ連・東欧諸国の対西側貿易動向

―国連欧州経済委員会報告―

 

1.  1990年から1992年の期間の外国貿易の変動

2.  東西貿易と収支

 

資料紹介

 本稿は1992年11月、子暮れ能州経済委員会(在ジュネーブ)の年次報告書”Economic Bulletin for Europe, vol.44”の第2章(原題は”Foreign Trade of Transition Countries”)のなかから、対西側貿易の部分を紹介するものである。

 それによると、東欧では、1992年、輸出拡大が見られたが、輸入は前年に続く縮小となった。特に先進諸国との取引の伸びが続く一方で、旧コメコン諸国との貿易は大幅に減少した。

 旧ソ連の貿易は、輸出入とも1991年以降、2ケタ台の激しい落ち込みが続いている。

 国連欧州経済委員会は、これまで各国の統計のほか、独自の作業により、東西貿易・支払い動向をレポートしてきているが、現在、市場経済への移行期にある旧ソ連・東欧諸国のデータは不明確、不整合なものも多く、今回は分析に苦慮している模様がうかがえる。

 経済を取り巻く環境が厳しい中で、チェコスロバキア、ハンガリー、ポーランドは貿易・経常収支の改善に成功しており、西側の評価が高まっている。本稿では、これら諸国の近年の実績で共通している点として、まず初期に輸出収入を増やすなど、何らかの要因で対外ポジションの改善に成功していることを紹介している。これは今後、旧ソ連、東欧諸国が経済再建に当たる上で、重要で現実的な教訓といえよう。

 


 

1992年のロシア経済

 

1.  概況

2.  所有変革

3.  財政・信用・通貨

4.  価格自由化

5.  社会的領域

6.  工業

7.  農工コンプレクス

8.  基本建設

9.  運輸・通信

10.外国貿易

 

はじめに

 このほどロシアの『経済と生活』紙に、統計国家委員会による1992年のロシアの経済実績報告が掲載されたので(「1992年のロシア連邦における社会・経済状況と経済改革の発展」、同紙1993年1月、No.4, p.13〜15)、これを抄訳して紹介する。

 この報告によれば、1992年のロシア経済は、GDPがマイナス19%となる劇的な落ち込みを記録した。工業生産はマイナス18.8%、農業生産もマイナス8%となった。1991年12月から1992年12月までの1年間で消費者物価が26倍上昇したのに対し、同時期には賃金は12.3倍引き上げられたにすぎず、改革の国民へのしわ寄せがよりいっそう明瞭に現れてきている。

 


 

ロシア極東経済の現状と発展計画

P.A.ミナキル・ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所所長講演会より―

 

1.  1992年の極東経済

2.  極東地域における経済改革

3.  極東地域発展計画

 

はじめに

 当会では、ミナキル・ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所所長が来日したのを機に、1月20日、東京会館にて講演会を開催した。ここではその内容を紹介する。

 ミナキル氏は、極東地域経済研究の第1人者であり、主著には『極東経済―展望と加速化―』がある。現在、同氏は、ハバロフスク地方第一副知事を兼務しており、実際の極東行政にも深くかかわっている。

 1992年9月、エリツィン大統領は極東経済の発展と国家支援に関する大統領令に署名した。その中では近い将来、新たな極東発展計画が作成され、実施される旨が記されている。

 かつてミナキル氏は、1991年の『極東経済およびザバイカルにおける危機打開並びに2000年までの社会・経済発展促進コンセプト(いわゆる『2000年までの極東発展コンセプト』)の作成作業に直接かかわった経緯から、新たな発展計画の作成と実施にも重要な役割を果たすものと思われる。

 


 

ロシア・東欧諸国の経済改革の現状と評価

―バルツェロビッチ・前ポーランド副首相兼大蔵大臣講演会―

 

1.  旧社会主義諸国の変革の特殊性

2.  改革の初期条件

3.  脱社会主義の経済戦略

4.  急進的改革のダイナミクス

 

はじめに

 当会並びに日本ポーランド経済委員会は、バルツェロビッチ・前ポーランド副首相兼大蔵大臣が外務省オピニオン・リーダー招聘プログラムによって来日したのを機に、2月8日、霞ヶ関東京會舘において講演会を開催した。ここではその内容を紹介する。

 1989年10月に発表した経済改革プログラムは、いわゆるショック療法により短期間に市場経済への転換を行おうとする戦略であった。このプログラムは他の近隣諸国の改革に少なからぬ影響を与えてきている。

 今回の講演で同氏は、現在のロシア・東欧諸国の政治・経済改革の動きを歴史上かつてない体制変革とみなし、初期条件を踏まえたうえでの経済戦略作りの重要性を説いている。また、改革開始時点で深刻な不均衡を抱えている旧社会主義諸国には急進的経済改革が唯一の両方であると述べ、ロシアの改革のテンポが緩慢になるのは危険だと警告している。