ロシア東欧貿易調査月報 1994年10月号 |
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ロシア経済の現状と展望
―L.I.アバルキン・ロシア科学アカデミー経済研究所所長講演会より―
1. 経済の現状に対する見解の相違
2. インフレ抑制と生産低下
3. 需要抑制政策の「効果」
4. 国民の所得構成における変化
5. 問題の多い資金運用
6. 将来的見通し
はじめに
当会では、アバルキン・ロシア科学アカデミー経済研究所所長が来日したのを機に、9月5日、東京証券会館にて講演会を開催した。ここではその内容を紹介する。
今日ロシアでは、インフレの低下傾向、国民の可処分所得の向上、政情の相対的安定化を反映して、ロシア経済が1994年末には回復に転じるであろうとの楽観的な見方が特徴的である。これに対しアバルキン氏は、インフレの低下は政府の総需要抑制政策の結果であり、国民の実質所得の向上も労働の対価以外の所得の増大によるものであって、内容的には問題が大きいと指摘、楽観論に持論を対置することにより、ロシア経済の現状に対しまったく異なる評価を与えている。
ロシアの対外経済管理制度改革の動向
―1994年上半期までの状況―
1. ロシアの対外経済活動規制の現行システム
2. 輸出業務規制
3. 輸入業務規制
4. 外貨管理
5. ロシアの対外経済活動改善のための提案
はじめに
本誌ではこれまでロシアの対外経済活動の制度上の問題について伝えてきたが、本号では V.A.オレシキン・ロシア対外経済関係省付属景気研究所副所長の論文を紹介する。
ロシアの対外経済管理制度は大統領令や政府決定など様々なレベルの法令が個々に出され、それぞれが矛盾することも少なくなく、変更や補足も度々加えられるため把握するのが非常に困難である。1994年に入ってからは新輸入関税が承認され、輸出の割当・ライセンス制が廃止されるなど重要な文書が次々と出され、大きな変化が起こりつつある。
また、新輸入関税も割当・ライセンス制の廃止も公布直後から各方面の非難が相次ぎ、結局両方とも訂正せざるをえなくなり事態はますます複雑になった。
当研究所では、とくに今年に入ってからの制度上の変更、問題点を明らかにするためにオレシキン景気研究所副所長に状況の解説と分析を依頼した。氏はこの分野の第一人者であり、著作も多く近年高い評価を得ており、『経済と生活』紙などでも活躍している。
なお、本稿は1994年8月に執筆されたものである。
韓国・ロシア経済協力の現状と展望
1. 序論
2. 韓国とロシアの経済協力の現状
3. 韓ロ経済協力への障害
4. 韓ロ経済協力の可能性と展望
5. 結論
はじめに
本稿では、韓国対外経済政策研究院・協力政策室長である李昌在氏が、1994年7月に発表した研究論文『韓国・ロシア経済協力の現状と展望』の全文を紹介する。
このなかで、李氏は、最近の韓国とロシアの経済協力の低迷現象に対し個人的評価を与えている。同氏は、最新の統計資料を使い、韓国とロシアの貿易や韓国のロシアへの直接投資を中心にこれまでの経済協力の急速な発展を確認、また、同氏は、科学・技術協力、資源開発、運輸・通信などの協力分野での大きな可能性についても言及している。
結論として、同氏は第4章のなかで、長期的可能性と短期的展望とを検討し、韓国とロシアの経済協力について両国で流布されている否定的な見方とは異なり、むしろ楽観的な見解を述べている。さらに、ロシアの不安定な政治経済状況が、一朝一夕には好転しない現実を直視しつつも、韓国は今後の対ロ経済協力により穣極的にのぞむことを説いている。
なお、当調査月報1993年10月号に同氏の執筆による「韓国の対旧ソ連経済協力に対する評価」と題した研究論文が掲載されているので、あわせて参考にしていただきたい。