ロシア東欧貿易調査月報

1995年6月号

 

T.ロシアにおける有価証券市場の構造

U.ロシアの自由経済地域「ナホトカ」の現状

V.1995年1〜3月のロシア経済

W.ロシア産業・貿易情報

◇◇◇

旧ソ連・東欧貿易月間商況1995年5月分)

旧ソ連・東欧諸国関係日誌(1995年5月分)

CIS・東欧諸国・モンゴル輸出入通関実績(1995年3月および1〜3月累計)

 

 


 

ロシアにおける有価証券市場の構造

 

1. ロシアにおける有価証券市場の生成

2. 有価証券市場の法的基礎と構造

3. 公共債市場

4. 私的有価証券市場

 

はじめに

 本稿では、近年ロシアで形成され始めた有価証券市場の参加者の間の相互関係がどのようにして形成されたのかを明らかにする。また、有価証券の分野における国家の調整機能、市場が機能するための法的基礎、取引所あるいは取引所以外のセクターにおける有価証券取引のメカニズムについて論じる。執筆は当会モスクワ事務所研究員D・ヴォロンツォフである。

 


 

ロシアの自由経済地域「ナホトカ」の現状

I.V.カザコフ、A.P.ロジオーノフ

1.ナホトカの自由経済地域としての歴史と現状

2.ナホトカの自由経済地域の法的・制度的現状

 

 ロシアの議会では長期にわたり「自由経済地域法」の審議がなされているが、いつ採択されるのか、まだ不明確な点は多い。はっきりしている点は、自由経済地域の概念が生まれた1980年末とは異なり、昨今のロシアでの論議は、大規模な自由経済地域という考え方から小規模な保税地域的な考え方が主流になっていることである。

 ここで紹介するのは、カザコフ在日ロシア通商代表部副主席およびロジオーノフ在日ロシア商工会議所代表による自由経済地域をめぐるナホトカの現状についての報告である。このなかでは、一部の優遇措置がナホトカに適用されていることになっているが、それが実行に移されているのか、はなはだ疑問である。いわゆる議会で審議中の自由経済地域法以外の大統領令、内閣決定等については実効性に疑問があるほか、しばしば簡単に撤回されるということが続いているからである。もちろん、だからといってナホトカにおける自由経済地域がまったくの空理空論ということでもないだろう。いわゆるナホトカの自由経済地域の執行委員会(事務局)は1995年4月に日本で大々的にプレゼンテーションを行うというように、ロシアの1小地域としては画期的なことをおこなった。ロシアの法制度を待つのではなく、外国に積極的に打ってでるというように、ナホトカは積極的な外資導入の努力を行っている。外国からの投資の状況、そして民営化の状況、ホテルを含むインフラ整備の状況は、確かに不十分なところもあるが、相当の努力のあともみられる。ナホトカで勧められている韓国系、米国系の工業団地の話も、机上の空論として片付けられないものである。この論考の中でも触れられているように、日系のプリンターの組み立て工場誘致の話もある。

 ナホトカはロシア極東の輸送拠点には違いのないところであり、「自由経済地域法」が施行された場合、ナホトカが、その重要な拠点のひとつになることは間違いない。

 


 

1995年1〜3月のロシア経済

はじめに

 1994年までのロシア経済は、インフレの減速化とリセッションおよび旺盛な消費活動を特徴としたが、1995年に入ると新たな特徴がみられはじめた。すなわち、1995年1月〜3月のロシア経済では、@輸出関連需要による工業生産の活性化、A比較的高いインフレ水準、B国民の実質可処分所得の減少による停滞、という基本的特徴を見出しうる。

 


 

ロシア産業・貿易情報

石油・ガス

自動車

商業

その他

 

「ロシア産業貿易情報」コーナーの新設について

 本月報では旧ソ連・東欧の経済を中心とする様々な論文を掲載してきました。旧ソ連・東欧は、ご承知のように経済制度のみならず、国家制度の根本的な改革の波にさらされています。大きな変革の中で、経済的に大打撃を受けている部門がある一方、新企業、民営化企業などを中心に活発な企業活動を行っている部門もあります。このように変化の激しい時代にあっては、まとまった形で論文を紹介することも重要なことですが、企業活動の現場に近い産業関係、貿易関係の情報を紹介することも意味のあることです。そこでそのような断片的ながら重要と見られる産業・貿易関係の情報を紹介するコーナーを新設しました。ただし、旧ソ連・東欧全体を網羅することは困難であり、散漫になると思われるので、ロシアについて紹介することからはじめることとします。将来的には、CIS諸国までカバーする領域を広げ、断片的ではなく、まとまった形の特定の産業・貿易情報なども紹介したいと思いますのでよろしくお願いします。

 なお、ここで紹介する記事のかなりの部分は当会の経済協力部で配布する見本市参加用の不定期刊行物資料である『ロシア・ミクロ経済情報』(50ページ程度)からの抜粋、要約でありますので、詳しくは同資料をご覧ください(ただし、入手できるのは見本市参加者のみ)。