ロシア東欧貿易調査月報 1996年9月号 |
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ロシアの対外経済管理制度改革の動向
―1996年上半期の動向と展望―
1. 1996年上半期の貿易実績
2. 外国投資の状況
3. 対外経済活動管理制度の動向
4. 外貨管理制度の動き
5. 工業製品の輸出支援に関する動き
6. 外国投資環境の整備問題
はじめに
本誌で半年ごとに掲載しているV.A.オレシキン・ロシア景気研究所所長による、ロシアの対外経済活動の管理制度改革に関する最新レポートを紹介する。
今年の上半期の最も大きな「事件」は、輸出関税の完全廃止であろう。「関税率表に関する法律」では、昨年中に廃止される旨が規定されていたが、わずか半年遅れで(完全廃止は7月1日から)実施された背景にはIMFの融資にからむ取り引きがあった。輸入関税に関しては、対外経済活動部門からの唯一の国庫収入源となったこともあり引き上げられた。また、国内製造業保護の目的により、現在も完成品等の輸入関税の大幅引き上げをめぐる攻防が政府内で繰り広げられている。
為替政策にも新しい動きがみられ、7月からはこれまでの目標相場圏に代わり、スライド式の新たな変動幅が設けられ、中央銀行が自ら毎日の「公式レート」を設定することになった。
長い間待ち望まれていた「外国投資法」および「自由経済地域法」の2つの外国投資環境に関する法案は、現在も審議・検討が続けられている。本号では、この2つの法案が規定している外国投資家に対する優遇措置について詳しく解説している。
インフレの抑制と代用貨幣の氾濫
―乱発されるロシア式手形―
1. 財務省手形
2. 銀行手形
3. バーター手形
はじめに
周知のとおり、ロシアではマネーサプライを制限しインフレを抑えるという緊縮財政・金融政策がとられている。このため、確かに、インフレ率は低下しているが、現金(ルーブル)不足も深刻化している。ルーブルの相対的価値は高まっているが、絶対量が不足しているため、ルーブルが生産企業間の決済手段として利用されるケースは減少しているように思われる。
このような状況を背景に、ロシアでは、「ロシア式手形」とよばれるルーブルの代替品が大量に流通している。
本稿では、ロシア独特の証券である「ロシア式手形」のうち、代表的なものについて紹介する。
本稿執筆者は、当会ロシア東欧経済研究所次長坂口泉である。