ロシア東欧貿易調査月報

1997年6月号

 

T.開放経済下のロシア証券市場

U.ロシアの電気通信事情

V.第27回ロシア東欧貿易会定時総会報告(概要)

◇◇◇

ロシア貿易・産業情報

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  燃料・エネルギー

  非鉄金属

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  その他

内外の論調と分析

  「解散含み」のロシア政局の読み方

  中欧の模範国チェコが陥った経済危機

ロシア経済法令速報

データバンク

  ロシアの経済統計

  CIS諸国の経済統計

  1997年1〜3月のロシアの外国投資受入状況

旧ソ連・東欧貿易月間商況1997年5月分)

旧ソ連・東欧諸国関係日誌1997年5月分)

CIS・東欧諸国・モンゴル輸出入通関実績(1997年1〜3月累計)

 

 


 

開放経済下のロシア証券市場

 

1.ロシア証券市場における外国投資家の役割

2.ロシア国債市場の国際化

3.西側証券市場でのロシアの法人有価証券の出現

4.ロシアのユーロ債

 

はじめに

 近年ロシアは国際金融市場での資金調達活動を活発化しつつある。1997年に入ってからもユーロ債を2回発行し、予想を上回る応募があった。一方、国内では外国投資家のロシアの短期国債を中心に旺盛な証券投資活動が展開されており、ロシアの証券市場における外国投資家のプレゼンスが日々実感されるようになってきている。

 本稿は、このように国際化を強めつつあるロシア金融市場の現状について、とくに外国投資家のロシア証券市場での動向を中心に論じたものである。

 執筆者は、当会モスクワ事務所副所長D.ヴォロンツォフである。

 


 

ロシアの電気通信事情

 

第1部 ロシアの一般利用電気通信分野の状況(「スビャジインベスト」をめぐる動きを中心に)

1.遅れる地域電気通信インフラの整備

2.「スビャジインベスト」の動向

[付録1]「スビャジインベスト」傘下の有力企業のプロフィール

[付録2]ロシアにおける通信機器製造合弁企業

第2部 ロシアの新電気通信分野の現状

1.セルラー通信

2.ポケベル通信

3.その他

[参考資料]CIS諸国(ロシアを除く)の一般電気通信事情

 

はじめに

 近年、ロシアでは国際・長距離電気通信分野のインフラ整備が急速に進んだが、一方、比較的短い距離を結ぶ地域電気通信インフラは、きわめて劣悪な状態にある。1995年9月に設立された国営持株会杜「スビャジインベスト」は、この地域電気通信分野のインフラ整備のための資金を調達することを主な目的に設立された(最近では国家予算の歳入不足を同社の株の一部を売却することによって補填することが期待されているが)。

 本稿は、この「スビャジインベスト」をめぐる動きを中心にロシアの電気通信の発達水準について論じたものである。第1部では、一般利用電気通信の養備計画を「スビャジインベスト」の動きに注目しながら紹介し、第2部では、セルラー通信(移動体通信)および衛星通信システムのロシアでの開発状況をフォローしている。最後に、参考資料としてCIS諸国(ロシアを除く)の一般利用電気通信関連のデータを掲載したので、合わせて参考願いたい。

執筆者は、当会ロシア東欧経済研究所調査部次長坂口泉である。

 


 

27回ロシア東欧貿易会定時総会報告(概要)

 

1. 1996年度事業の概要報告

2. 1997年度事業計画

 

はじめに

 ロシア東欧貿易会は1997年5月27日第27回定時総会を開催した。ここではその際報告された平成8年度事業内容と平成9年度事業計画を紹介する。

  1996年の日ロ貿易の通関実績は、輸出1,113億5,300万円、輸入4,283億6,500万円、合計5,397億1,800万円となった。前年比は、輸出103.0%、輸入96.3%、輸出入計97.6%であった。同じくドルベースでみると、輸出10億2,466万ドル、輸入39億4,878万ドル、合計49億7,344万ドルとなった。前年比は、輸出87.6%、輸入82.9%、輸出入計83.8%であった。この通貨表示による差は、1995年の円高が1996年には円安に転じた為替レートの変動によるものである。ドル表示を絶対視はできないが、円表示が実態を過大にみせていることは否定できない。日ロ貿易は出発時(1992年)から大幅入超で、日ソ貿易であった1990年を含めると7年連続で入超パターンが定着したといえよう。

 日ロ貿易は、1992年に前年の日ソ貿易を大きく下回る水準でスタートしたあと、1995年まで3年連続で回復してきた。そして、1995年にはロシア経済に底入れ感が出てきたため、1996年には日ロ貿易も大幅に伸び、今後本格的に拡大していくための足がかりができるのではないかと期待されていた。しかし、肝心のロシア経済が1996年に入って再び混迷の度合いを深めたため、日ロ貿易もそのあおりを受けて低迷を余儀なくされた格好となった。日本の貿易全体のなかでの日ロ貿易のシェアも低下し、ドル建てで輸出は0.22%で輸入も辛うじて1%台にとどまるという状況だった。

 日ロ貿易の落ち込みがもっとも顕著だったのは1996年第1四半期、第2四半期のことであり、おそらくは6月のロシア大統領選を前にした混乱や模様挑めのムードが、上半期の取引を低調にしたものと思われる。これに対し、下半期には若干盛り返したことが見て取れる。1996年の輸出が前年を下回る不調が続いた理由としては、同年も日本のロシア向け金融支援が発効しなかったことがあげられる。日本輸出入銀行の支援融資4億ドルによる契約は、ヤロスラブリ製油所改修2億5,000方ドル、カマ自動車工場エンジン製造設備1億5,000万ドルの大型2件が頭金の入金がなく契約が発効しなかった。続く5億ドル融資案件もほとんど進展していない。

 対ロ輸出は、一般機械や金属品などは総じて不振であった。とくに金属加工機械、事務用機器の落ち込みが激しい。こうしたなか、荷役機械だけは高い伸びを示しており、また建設・鉱山用機械も前年並みの水準を保った。ロシアでも通信セクターだけは例外的な活況を呈しており、1996年には日ロ間で通信関連の商談が相次いだが、同年の通関統計にそれが反映されるには至らず。通信機器の輸出は減少した。

 対ロ輸入は、魚介類、木材、石炭といった中心的な品目は、円建ての金額ベースでは減っていない。輸入の低下はもっぱら、近年その比重を拡大していた金属および同製品の失速によって引き起こされている。アルミニウムだけはほぼ前年並みであったが、ニッケルが激減し、白金とパラジウムも減少に転じた。また、例年1億ドル前後あった金(非貨幣用)の輸入が、1996年にはゼロになった。その他の品目では石炭がやや増え、鉄鋼くず、機械機器も増えたものの大勢には影響はない。

 ロシア以外のCIS諸国との貿易額を多い順にみると、ウクライナ(220億4,300万円、2億292万ドル)、カザフスタン(172億7,500万円、1億5,830万ドル)、ウズベキスタン(155億4,100万円、1億4,400万ドル)、アゼルバイジャン(36億5,200万円、3,352万ドル)、ベラルーシ(18億9,200万円、1,748万ドル)、トルクメニスタン(12億3,100万円、1,117万ドル)、キルギス(6億8,9000万円、639万ドル)、タジキスタン(4億4,300万円、408万ドル)、グルジア(3億9,000万円、368万ドル)、モルドバ(5,800万円、55万ドル)、アルメニア(3,100万円、29万ドル)となっている。

1996年の対モンゴル貿易は対前年比112.3%と増加した。うち日本の輸出が64億8,600万円(対前年比62,1%増)、5,990万ドル(同41.2%増)、輸入が97億1,000万円(同14,9%増)、8,885万ドル(同1.3%減)であった。

1996年の対中東欧諸国(バルト3国を含む)貿易は日本の輸出が1,039億8,200万円(対前年比36.7%増)、9億5,835万ドル(同17.9%増)、輸入が618億円(同20.4%増)、5億7,992万ドル(同6.0%増)で、往復では1.657億8,700万円(同30.1%増)、15億3,827万ドル(同13.1%増)であった。往復貿易額でみた相手国の順位は、1位ハンガリー、2位チェコ、3位ポーランド、4位ルーマニア、5位スロベニア、6位ブルガリア(以上前年と同じ)、以下、スロバキア、リトアニア、エストニア、マケドニア、クロアチア、ラトビア、アルバニア、セルビアおよびモンテネグロ、ボスニア・ヘルツェゴビナと続く。

  1996年3月にアメリカ合衆国ボルチモアで開催された第4回東西経済産業貿易大臣会合の際にG7諸国の間で中東欧諸国およびNIS諸国への直接投資を積極的に支援するという合意がなされた。日本に対しては。中東欧各国とも直接投資を強く要望しているが、日本企業の間でも、この地域に生産拠点を設ける動きがますます積極化しつつあり、直接投資と結びついた日本からの輸出が伸びることが期待される。