ロシア東欧貿易調査月報 1997年9月号 |
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ロシアのWTO加盟をめぐって
1.ロシア政府のWTO加盟への基本姿勢
2.ロシアの経済的利益をめぐる対立
3.ロシアにおける最近の論調の特徴
結びにかえて
[付録] ロシアのGATT/WTO加入への動き
WTO加入手続フローチャート
WTO加入作業部会(WP)の軌跡
はじめに
1993年6月にロシアがガット(関税と貿易に関する一般協定)への加入を申請してから6年が経過した。そのプロセスはきわめて遅い印象を与え、当初は加盟は西歴2000年以降のことと思われていた。だが、1997年3月にヘルシンキで開催された米ロ首脳会談において、米国側がロシアのWTO(世界貿易機関、ガットが発展的に改組したもの)への1998年中の加盟をロシア側に約束、これを受けた形での6月のデンバー・サミットでのロシアのWTO早期加盟の支持声明以後、ロシアのWTO加盟問題は現実味を帯びだしてきている。
本稿は、これまでのロシアのWTO加盟に向けた流れを、とくにロシア国内での議論を踏まえつつ振りかえり、その間題点と今後の課題を考察するものである。
執筆者は、当会ロシア東欧経済研究所研究開発部次長音羽周である。
ロシアの「公式型」金融・産業グループ
はじめに
1.「公式型FIG」の制度分析
2.「公式型FIG」の現状分析
結びにかえて
周知のとおり、ロシアでは市場経済システムへの移行の過程で、民間銀行と生産企業の融合・癒着が直接的・間接的な官僚的支援をバックに進行しており、政府の確たる産業政策が事実上存在しない状況にあって、ロシアの産業再編のひとつの中核を形成しつつある(その一端については、これまで本誌でも何度か紹介してきた)。
本稿は、以上の流れの具体的形態としての金融・産業グループについて、とりわけ政府への登録という形で公式に認定された「公式型」金融・産業グループについて、設立の経緯、現状、問題点について詳細に論じたものである。
執筆者は塩原俊彦氏である。
ロシアにおける銀行資本の生産資本への接近(5)
―各金融・産業グループのそれぞれの今―
1.アルファ・グループ
2.インコムバンク
3.ロシースキークレジット
4.メナテップ・グループ(ロスプロムの現状)
結びにかえて
はじめに
為替の安定、国債の利回りの低下等もあり、最近、ロシアの銀行資本はリアル・セクターへの関心を強めつつあるように思われる。しかし、彼らの関心の対象となりうるロシアの生産企業の数は、限られている。原則として、輸出競争力を有する生産企業、国内市場で競争力を有する消費財を生産している企業のいずれかにしか、ロシアの銀行資本は興味を示さない。しかも、融資の対象ではなく、M&Aの対象として考えるケースが多い。もっと正確にいえば、M&Aを実施し経営権(および資金の流れ)をきちんと握った生産企業でないと、リスクが高すぎて、融資などできないというのが銀行側の本音のようである。ロシアにおいて、特定の生産企業の支配権をめぐり、銀行資本間の戦いが過熱化する傾向が強いのはこのためである。
恐らく、銀行資本がM&Aを繰り返す形で形成されていったロシアの金融・産業グループで、他のグループとの「戦い」を経験していないものはないのではなかろうか。本稿では、ロシアの主要金融・産業グループの最近の「戦利品」にスポットをあてながら、その近況を紹介していくこととする。
執筆者は、当会ロシア東欧経済研究所調査部次長坂口泉である。
カスピ海石油・ガス開発事情
―ブームの背景と行方―
1.第1の障害:輸送問題・ロシア
2.第2の障害:輸送問題・地域対立
3.第3の障害:アゼルバイジャン情勢
4.第4の障害:カスピ海領有権問題
結論:開発への追い風
はじめに
昨今、内外のマスコミでカスピ海地域の資源開発が注目を浴びている。ことに今年7月末から8月上旬にかけて、米国が@イラン経由のパイプライン建設に対する制裁法の不適用、A対アゼルバイジャン経済制裁の解除、の2つの決定を行ったことにより、情勢はにわかに熱を帯びてきた。従来からこの地域における米国石油資本の活動は活発であったが、先の2つの決定により、米国政府が本腰を入れてこれを支援する方針が内外に示された。いわば西側資本全体へのGOサインである。また、米国がイラン経由のパイプライン建設を是認するならば、カスピ海資源開発最大の障害である輸送問題は、解決へ向けて大きく前進することになろう。
本稿の目的は、こうしたまき起こりつつある“ブーム”を前に、今一度、カスピ海エネルギー資源をめぐる状況を整理・概観することにある。ソ連解体より6年、そもそもカスピ海の資源開発は今まで何故進まなかったのか、また状況の改善はどのようにもたらされたのか。果たして、開発への“追い風”は本当に吹いているのか。
執筆者は、当会ロシア東欧経済研究所研究員 輪島実樹である。なお、本稿は当研究所『ロシア東欧経済連報』 No.1065〜1066掲載の「カスピ海エネルギー開発に追い風は吹き始めたのか」に若干の加筆を施したものであることをお断りしておく。