ロシア東欧貿易調査月報

1998年8月号

 

T.日ロ経済関係を再検討する −現状分析と今後の見通し−

U.モスクワ代表団来日について

V.キルギスの投資環境(英文)

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 反汚職を最優先に ―ホルスト・ケーラーEBRD次期総裁インタビュー―

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旧ソ連・東欧貿易月間商況1998年7月分)

旧ソ連・東欧諸国関係日誌1998年7月分)

CIS・東欧諸国・モンゴル輸出入通関実績(1998年1〜6月累計)

 

 


 

日ロ経済関係を再検討する

−現状分析と今後の見通し−

当会ロシア東欧経済研究所所長

小川和男

1.幕末(徳川時代末期)以来の良好な日ロ政治関係の形成

2.活発化する極東地域との交流

3.日本の対ロ(ソ)外交の変遷

4.日ロ首脳会談の定着

5.日ロ貿易の全般的動向

6.ニュー・ビジネス・チャンネルの開拓

7.日ロ経済関係における極東地方の重要性

8.極東に集中する有望な経済協力プロジェクト

9.綏芬河〜ウラジオストク・ナホトカルートへの期待

 

要 旨

 日本と旧ソ連・ロシアとの経済・貿易関係は両国間の政治関係によって左右される、と一般に言われてきた。果たしてそうであろうか。本稿の筆者はかねがね、第二次大戦後の日ソ(ロ)関係・交流のなかでもっとも広く、しかも相互にとって利益が大きく重要であったのは経済・貿易関係であり、人的交流をみてみても、もっとも活発な分野はビジネス・貿易に関連していることを指摘し、両国がこのチャンネルの維持と拡大によりいっそうの注意と努力を払う必要があると主張してきた。

 大戦後、日本は憲法のなかで戦争を放棄し、経済立国の道を歩み、世界のなかでもっとも豊かな国の一つに成長したわけであり、日本の外交は経済力をバーゲニング・パワーにして全方位平和をめざしてきた。旧ソ連は、大戦後の東西冷戦体制のもとで、一時的には米国に拮抗する軍事力を構築したが、日本との関係で重視してきたのは日本の工業生産力・技術・資金力にほかならず、それらの旧ソ連・ロシア経済への導入に大きな努力を傾けてきた。日ソ(ロ)両国が経済関係で良好な互恵関係を維持してきたのは、当然であったといえよう。

 日本にとって、極東地域は広大なロシアのなかでもっとも近くにある地域であり、歴史的関係も深く、相互の交流も活発である。北方領土問題の未解決という難題が厳存してはいるが、日本人の極東地域への関心は高く、日ロ貿易のなかで極東地域とのビジネスが持つ重要性はきわめて大きい。

 日本は、1970年の時点で、旧ソ連にとって西側諸国中最大の貿易相手国であり、1970年代を通じても西ドイツ(当時)に次いで世界第二の貿易相手国の地位を堅持していた。しかし、日本のこの地位は1980年代には5〜6位に落ち、1990年代になってからはさらに低落している。

 時代は変遷し、東西対立は溶解、世界政治・経済のグローバル化が進展している。かつて東西冷戟の最前線であった北東アジアの緊張は著しく緩和され、環日本海経済圏における多国間協力が日程にのぼり、日本海は平和と協調の海へと変容している。日本海をめぐる経済関係はかつては全て二国間の関係、たとえば、日ソ(ロ)経済関係、日中、日韓、日朝経済関係であった。それが今日では、多国間経済関係が形成され、多国間経済協力プロジェクトが動き始めているのである。

 日本政府の対ロシア外交は、後述のとおり、「政経不可分」の原則から「拡大均衡」に転換し、1996年以降はさらに「重層的アプローチ」へと展開している。日ロ間では、クラスノヤルスク会談(1997年11月)と川奈会議(1998年4月)の成功により、最高首脳会談がようやく定着し、良好な政治関係が形成されている。橋本首相が小渕首相に代っても、日本の対ロ基本路線は堅持される見通しである。

 以上のように政治関係が著しく改善され、日ロ・ビジネスがさらに拡大する環境が形成されているのであるが、実際には、日ロ貿易は、とりわけ日本の対ロ輸出は近年不振をきわめ、年間11億〜13億ドル程度の輸出額は、30億ドルを上回っていた1980年代前半の実績を大きく下回っている。

 政治関係の好転が経済関係の拡大につながってないのである。ルーブル切り下げ(1998年8月)後の不安定な情勢が懸念されるが、ロシア経済が今後復調軌道に乗り、日ロ間で懸案の数多くの開発協力プロジェクトが始動すれば、日ロ経済・貿易関係は活況を取戻すことになろう。サハリン島陸棚天然ガス・石油開発協力プロジェクトをはじめ有望な大規模協力プロジェクトの多くが極東地域に集中している。

 


 

モスクワ代表団来日について

 

1.スヴィストゥノフ団長(モスクワ州副知事)報告

2.レベジェフ・コンソーシアム「CHIEF GROUP」会長報告

3.モスクワ州提供投資プロジェクト・リスト

4.代表団滞在日程

5.代表団団員名簿

 

  1997年9月のスベルドロフスク州、1998年2月のクラスノヤルスク州に続き、モスクワ州からスヴイストゥノフ副知事を団長とする総勢64名の大型経済代表団が9月7日から9月12日まで来日した。

 代表団の訪日目的は、工業生産力ではロシア連邦内第2位の位置を占めるモスクワ州に日本からの投資を誘致することで、滞在中は日本企業との面談が積極的に行われた。また、9月8日には、在日ロシア通商代表部においてモスクワ州のプレゼンテーションが開催され、日本側からはロシア東欧貿易会の会員企業をはじめとして90余名が参加した。

 以下、プレゼンテーションでの報告ならびにモスクワ州提供投資プロジェクト・リストを紹介する。

 


 

キルギスの投資環境(英文)

キルギス共和国立法議会(上院)上級アドバイザー

カムチェベク・オムルザコフ

1.キルギスの経済状況

2.キルギスの投資環境

3.キルギスでの投資機会