ロシア東欧貿易調査月報 1999年6月号 |
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米ロ貿易の拡大と要因
―米国は最大の対ロシア投資国―
当会ロシア東欧経済研究所 所長
小川和男
1.拡大続く米ロ貿易
(1)米ロ貿易拡大と日ロ貿易停滞の対比
(2)米国はロシアにとって世界第2の貿易パートナー
2.米ロ貿易の主要取引品目
(1)米国のロシア向け主要輸出商品
(2)米国のロシアからの主要輸入商品
3.米国はロシアへの最大投資国
(1)対ロシア投資で主導役割の米国
(2)大きい直接投資のシェア
(3)1998年の外国投資は著減
4.極東地方での米国の投資活動
5.米ロ経済関係拡大の背景と要因
(1)米国企業のフロンティア開拓精神
(2)レイトカマーである米国企業の強み
(3)米国政府のバックアップ体制
(4)米ロビジネス協議会の活動
(5)米国にとって魅力あるロシア商品
(6)ロシアにおける米国崇拝
はじめに
ロシア東欧経済研究所では、当研究所『調査月報』(1999年2月号)において、独ロ貿易が著増し、1997年のドイツの対ロ輸出が90億ドルを超え、日本の対ロ輸出の9倍に達していることを紹介した。ロシア経済の混迷が続き、市場化が円滑に進まないことが日ロ貿易不振の要因になっていると一般に言われているが、ドイツ企業はロシア市場の激変に即応した輸出戦略を展開し、大きな実績を上げている。
米ロ貿易の拡大も顕著であり、米国は近年、ロシアにとってドイツに次ぐ世界第2の貿易相手国に浮上し、その地歩をゆるぎないものにしている。米ロ貿易の規模は日ロ貿易の3倍を超えると同時に、米国はロシアへの最大の投資国である。
ロシア東欧貿易会は、小川和男経済研究所所長、小林薫産能大学教授、清水正俊経済研究所副所長、吉田臣吾嘱託の4人からなる代表団が去る5月下旬、「第14回ロシア経済研究日米シンポジウム」の開催・参加のために米国を訪問し、ジョージ・ワシントン大学(ワシントンD.C.所在)およびカリフォルニア大学バークレー校において「ロシア経済危機の継続:その原因、帰結および展望」ならびに「日・米・中・ロ4カ国の関係」の2つのテーマでシンポジウムを実施すると同時に、米国議会図書館調査局や米ロビジネス協議会などを訪ね、意見交換を行った。
この「第14回日米シンポジウム」の成果と米国のロシア研究専門家や対ロビジネス専門家たちとの討論の成果を踏まえて、また、今回入手できた最新の米国資料を参照して本稿では米ロ貿易の拡大と背景について紹介することにした。
ロシア極東における軍需企業と軍民転換
株式会社「アムールERA」
G.F.ヴィリジャイキン
1.極東地方における軍需企業の現状
2.造船部門の現状
3.航空機製造部門の現状
4.機械製造部門の現状
はじめに
本稿では、ロシア極東における軍需企業の軍民転換の調査結果を報告する。軍民転換は変化、意向、改造を意味する。軍需部門における軍民転換は軍需生産の民需生産への改造として計画された。しかし、実際のところ、軍需生産の縮小は生じたが、民生品の生産も同様に激減した。第1図はそうした状況を示している。
論理的には、軍需生産の変動は曲線1あるいは2で、民需生産の成長は曲線3で特徴付けられるはずであった。だが実際には、1991年から1996年までの期間に軍需製品の生産低下は曲線1で、民生品の生産低下は曲線4で特徴付けられた。こうして軍需生産と民需生産の縮小が進み、現在もそのプロセスは進行している。5年間、(1991〜1996年)にロシアの軍需産業では数百のテクノロジーが失われ、国家発注は33分の1に減少した。軍需生産の低下分の民生品の生産増大は起きていない。
ロシアの1999年度連邦予算について
1.連邦予算の本文
2.付録文書の紹介
3.連邦予算収支対照法及び他年度予算との比較
資料紹介
1999年ロシア連邦予算法は、1999年2月5日国家会議(下院)で採択され、2月17日連邦会議(上院)で批准、2月22日エリツィン大統領の署名で成立した(『ロシア新聞』1999.2.25)。これはロシアの1999年度財政の根幹を成すもので、この他、地方予算(連邦構成体予算および市町村予算)と、両者を統合した統合予算が存在する。
その実行可能性について海外でどういわれようと、採択された予算は現実性を持っている。この点で、過去数年間の予算案とは決定的に異なる。総額において、1998年度の予算規模を大きく下回っている(ドル表示ではそれは2分の1の大きさである)。
今後財務省は、政府の経常支出を前年支出の12分の1に組み替える。すべては、新予算の範囲に支出が抑えられる。これは政府にとって、最初の経験である。支出コントロールメカニズムとそれぞれの支出毎の財政規律が作成される。毎月の下院議会に対する内閣報告、地域の滞納は地域行政府の財政支出に強制的に振替え、予算の浪費分に対する連邦予算援助をやめ州や企業の責任とする。こうした措置を実施するためには、内閣がその政策に100%責任を負うことを万人に納得させなければならない。
第一次収支(政府債抜き)でGDPの1.64%の黒字を見込んでいる。これによって国家政策の根幹が変化した。つまり、西側の融資を期待する代わりに、自国の蓄積に依拠する政策への切り替えである。この実現を支えるのは、近く実施される租税法の改定により、地域への補助金分配に関するもっと実際的方法や、一連の省庁の資金配分をその作業の効率に依拠して実施するという原則である。
以下では、『ロシア新聞』(以下RG)に発表された連邦予算に関する資料をもとに、1.連邦予算法本文の逐条的翻訳(ただし全訳ではない)、2.22個の付表の翻訳、3.「連邦予算収支対照表および他年度予算との比較」を試みた。
ただし、紙幅の関係で省略した箇所や、また法律独自の厳密な繰り返しのため、文章が煩雑で間延びする箇所は抄訳するなどしたので全訳とはなっていない。なお{ }内の文章は訳注を意味する。また、原文にはないが並列項目を明確にするため、訳者の一存で@AB・・などの番号を付したところもある。発表された1999年度連邦予算では、予算の基本文書のほかに次の22個の付表がついている。付表の紹介は2.で行う。なお第19条は連邦予算法の収入項目を網羅したものであるので、3.「連邦予算収支対照表および他年度予算との比較」の部分で再録した。
(解説、翻訳 北大名誉教授 望月喜市)
カザフスタンの経済改革の現状
―外国投資・石油開発と経済発展―
カザフスタン発展研究所 所長
ルステム・ジョラマン
1.カザフスタンの経済改革を読み解く4つのポイント
2.カザフスタンの投資環境
3.カザフスタンの経済発展における石油セクターの役割
4.カザフスタンの金融・証券事情
当会では、カザフスタンの独立家政治・経済機関であるカザフスタン発展研究所のR.ジョラマン所長を招聘し、1999年6月3日に「カザフスタン経済改革の現状:外国投資・石油開発と経済発展」と題して講演会を開催した。本稿ではその内容を紹介する。
数字で見るロシア極東(ロシア極東データブック1999年版)
1.面積と人口
2.労働と雇用
3.投資と建設
4.国民経済計算・財政・金融
5.工業
6.農業
7.運輸・通信
8.生活水準
9.社会・教育
10.外国貿易
資料解説
本資料では昨年(本誌1998年6月号)に引き続き、ロシア極東地域の統計データを紹介する。今年度、本資料の改訂に当たって留意した点は、人口変動、工業生産構造の変化、国別・商品別輸出入構成などの特徴的な指標をグラフ化することにより、ソ連邦解体後におけるロシア極東経済の変動の有様を視覚的に理解できるよう務めたことである。こうしたビジュアル化の作業は来年度以降も継続していきたい。
なお、本資料の作成に当たっては、在ハバロフスクのロシア科学アカデミー極東支部経済研究所(ミナキル所長)より多大な協力を得た。記して感謝する次第である。
ロシア貿易・産業情報
ロシア一般電気通信業界の現状
当会ロシア東欧経済研究所調査部次長
坂口泉
1. 全般的状況
(1)管轄官庁
(2)一般電話(固定加入電話)の普及状況
(3)ロシアの一般電機業界地図
(4)国際電話をめぐる状況
(5)国内長距離電話をめぐる状況
(6)地域内電話をめぐる状況
2. 一般電気通信分野で活動する企業群
(1)持ち株会社「スヴャジインベスト」
(2)スヴャジインベスト傘下の主要企業