ロシア東欧貿易調査月報

1999年7月号

 

T.PS法制の整備状況とロシアの石油開発

U.ロシアの新外国投資法

V.日ロ投資保護協定

W.ベラルーシ・ビジネスセミナーについて

◇◇◇

ロシア貿易・産業情報

 サハリンUで原油生産開始

論調と分析

 ロシアの中央銀行がIMFに虚偽の報告

 IMFの対ロ融資は「戦略的で政治的な」行為

 独創的な療法

 私はエリツィンの後継者を知っている

 原子力によってのみウクライナの自立は可能か?

データバンク

 1.ロシアの経済統計

 2.1998年のロシアの外国貿易統計(1)

旧ソ連・東欧貿易月間商況1999年6月分)

旧ソ連・東欧諸国関係日誌1999年6月分)

 

CIS・東欧諸国・モンゴル輸出入通関実績(1999年1〜6月累計)

 


 

PS法制の整備状況とロシアの石油開発

当会ロシア東欧経済研究所研究員

中居孝文

はじめに

1.    ロシアにおけるPS法の制定とその問題点

2.    PS法制を巡る勢力図

3.    PS基本法修正法およびPS関連法制修正法の採択までの経緯

4.    PS基本法修正法およびPS関連法制修正法の主要内容と問題点

おわりに

 

はじめに

 生産物分与契約制度は、ロシアの鉱業部門、とりわけ石油・天然ガス部門に投資(とくに外国投資)を呼び込む起爆剤として、その実現がロシア政府や鉱物資源を有する連邦構成体、またロシアの鉱物資源開発に関心を持つ国内外の投資家(企業)によって強く期待されていた。

 ロシアにおけるPS契約制度の基本的枠組みを定めた法律は、1996年1月制定の生産物分与法(PS法)である。しかし、ロシア側の期待に反して、PS法発効以前に契約が結ばれた3件(サハリンT、サハリンUを含む)を除いて、同法発効後にPS契約は1件も結ばれていない。PS法自体の不備や同法に関連する諸法律へ修正が加えられていなかったためである。そうした申請にもとづき1999年初めにPS推進派と反対派との激しい議論の末にようやく策定されたのがPS基本法修正法およびPS関連法制修正法であった。

 以下では、まずロシアのPS契約制度の特性とPS法の問題点を概観し、そのうえで1999年初のPS基本法修正法とPS関連法制修正法採択に至るまでの経緯、両法の主要な内容を整理し、両法の制定が今後のロシア石油開発にいかなる意味を持つか、またPS契約成立の突破口になりうるかを検討したい。

 


 

資料紹介

ロシアの新外国投資法

 

 1999年7月、長い懸案となっていたロシアの新しい外国投資法がようやく制定され、発効した。これまでは、ソ連時代の1991年7月に制定された旧外資法(「ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国における外国投資に関する法律」)が、外国投資に関する大統領令や政府決定によって時々補強されつつも、今日までロシアにおける外国投資に関する基本法である続けてきた。

 実際には新外資法の制定作業はこれまで何度か試みられてきた。最も近いところでは、1998年7月に新外資法案が議会通過している(6月25日下院採択、7月2日上院承認)が、大統領が署名を拒否し、成立までには至らなかった経緯がある。

 今回成立した新外資法(ロシア連邦法「ロシア連邦における外国投資について」)はこの1998年7月の新外資法案を大幅に修正したものである。

 旧外資法と比較して、新外資法には以下の特徴が見られる。

・条文が42条から28条へと、全体的に簡略化されている。

・直接外国投資の内容を詳細に規定している。

・優先的投資プロジェクト(政府が承認)を新たに規定、優遇措置を定める。

・ロシア連邦法規の不利な変更の防止保証を定める。

・外国投資家の財産が接収された後、接収の必要性がなくなった場合の変換措置を定める。

・ロシア連邦領内で稼得された利益の国内使用および国外送金の手続きが簡略化された。

・外資参加営利団体における労働関係、社会保険・社会保障に関する項目が削除されている。

・地方政府の外国投資家への外資誘致にかかる特典の提供を認めている。

・外国投資に関する国家政策の策定の必要を認める。

・外資参加営利団体の設立手続きが簡略化されている。

・コンセッション契約、経済特区に関する項目が削除されている。

 なお、ロシアの金融、保険機関に対する外国投資については、本外資法は適用されないとされている。

  このように、新外資法は、旧外資法と比べいくつかの点で前進がみられるが、ただこれによってロシアへの外国投資が大幅に増大すると考えるのは、早計であろう。何よりも、政治・経済的に安定し、外国投資家が将来を見通して、安心してロシアに投資できる環境の整備こそが望まれる。

 原文テキストは『ロシア連邦法規集』No.28(1999.7.12)を用いた。

 


 

日ロ投資保護協定

 

資料紹介

 1998年11月の小渕首相訪ロの際、日ロ両国政府は日ロ投資保護協定(正式には「投資の促進及び保護に関する日本政府とロシア連邦政府との間の協定」)に署名した。これは日ロ首脳会談の合意に基づくもので投資から、生ずる法律上の紛争が友好的な交渉により解決されない場合、1966年10月14日に発効した「国家と他の国家の国民との間の投資紛争の解決に関する条約」(「ワシントン条約」)、世銀投資紛争解決国際センター(ICSID)の追加制度規則及び国連国際商取引法委員会(UNICITRAL)を活用することが明記されている。

 日本側は、1999年5月14日の衆議院本会議で同協定を採択し、批准したが、ロシア側は未だに議会承認をするまでに至っておらず、したがって同協定は発効していない。ちなみに、米国は同様の投資保護協定を1992年6月17日にロシア政府との間で署名、1993年10月13日に批准しているが、ロシア側が批准していないため、同じく未発効である。

 


 

ベラルーシ・ビジネスセミナーについて

 

1.    ルカシェンコ・ベラルーシ大統領からセミナー主催者ならびに参加者に宛てたメッセージ

2.    ミャスニコーヴィッチ大統領府長官基調報告

3.    シーモフ経済大臣報告

4.    ドブロムードロフ外務次官報告

5.    カラウル国立銀行第一副総裁

6.    セミナー・プログラム

 

 ロシア東欧貿易会、日本貿易振興会(ジェトロ)、国連工業開発機関(UNIDO)東京投資・技術移転促進事務所、経団連・日本NIS経済委員会、日本輸出入銀行は共催で、6月14日にジェトロ・ビジネスセミナーを開催した。

 本セミナーは、日本との貿易・経済・投資関係の拡大を目指すベラルーシ側の希望により開催されたもので、ベラルーシ側からはミャスニコーヴィッチ大統領府長官を団長とする34名の代表団がセミナー出席のため来日した。また、日本側からはロシア東欧貿易会の会員企業をはじめとして130余名が参加した。

 以下、セミナーでのベラルーシ側の報告ならびに当日のプログラム、代表団団員名簿を紹介する。

 


 

ロシア貿易・産業情報

サハリンUで原油生産開始

当会ロシア東欧経済研究所研究員

中居孝文

はじめに

1.サハリンU

2.サハリンT

3.サハリンV

おわりに