ロシア東欧貿易調査月報

1999年11月号

 

T.ロシアは何処へ向かおうとしているのか?

U.EU東方拡大と財政問題(1)

◇◇◇

ロシア貿易・産業情報

 ロシア鉄鋼業界の現状

論調と分析

 プーチン首相、チェチェン・汚職・経済情勢を語る

 チェチェンを巡る西側の偽善行為―個人的見解―

 ガスパイプの捨て駒

データバンク

 1.ロシアの経済統計

 2. 1999年1〜9月のロシアの外国投資受入状況

 3. 1998〜1999年版ロシアの地域別投資環境ランキング

旧ソ連・東欧貿易月間商況1999年10月分)

旧ソ連・東欧諸国関係日誌1999年10月分)

 

CIS・東欧諸国・モンゴル輸出入通関実績(1999年1〜9月累計)

 


 

ロシアは何処へ向かおうとしているのか?

当会ロシア東欧経済研究所 研究開発部次長

音羽周

1.      問題の所在

2.      ロシア経済の現状分析

3.      将来の経済システムの姿

4.      展望

 

はじめに

 1985年は次のような戦後の世界経済体制の大きな転換を象徴する出来事が起こった歴史的転換点であったということができる。

@プラザ合意による先進諸国間協調にもとづく国際通貨体制への転換。その後の変動相場制の前面化と金融統合の進展

Aソ連におけるゴルバチョフ政権の成立。その後の冷戦の終焉と旧社会主義国の市場経済化。

BEU統合深化の方向性を示した欧州統合白書の発表。その後の経済通貨同盟(EMU)にいたるEU統合の発展。

 ABに始まり90年代へと連なる流れは、@に象徴されるいわゆるグローバリゼーションの進展と資本移動自由空間の拡大という事態を背景として生じている。しかも、この1980年代後半から今日に至る時期に、途上諸国においても資本規制が大幅に(先進国並みに)緩和あるいは撤廃され、急成長を遂げた東アジアをはじめとするエマージングマーケットへの資本流入が急増し、途上諸国が金融統合に合流していった。日本企業の対外直接投資が本格化するのもまさにこの時期である。

 経営史家ジェフリー・ジョーンズはこうした国際ビジネス環境の変化を、「ボーダレス世界の復活」と把握している。ユーロダラーの出現を背景として、「1970年以降、それまでの50年間に蓄積していた国際ビジネスに対する制限の多くが取り払われ」、1980年代の規制緩和によってボーダレス世界が復活し、19世紀(1880年代〜)に存在していたような資本の移動が回復したというのである。

 こうした歴史的視点から見れば、Aの社会主義体制の崩壊は、「ボーダレス社会の復活」を背景として、国家権力を利用した空間的な外的資本規制の試みが、最終的に破産したことを示すものと考えることができる。旧ソ連東欧諸国が最後の経済フロンティアといわれるのも故なきことではない。

経済通貨同盟(EMU)へと進んだ欧州統合も、またこうしたグローバリゼーションへの適応という側面を持っている。だが、それは単に資本移動の自由空間を拡大しようというばかりでなく、同時に国家に代わる市場安定化システムと新しい成長体制の構築を目指しているという点に大きな特徴がある。国家間、地域間で経済発展の段階や産業構造が異なる多様なEUにおいて、欧州中央銀行によるインフレ抑制を目的とした金融政策だけでは、域内の経済の安定化や調整を図るには明らかに不十分である。言い換えれば、EMUは、単一通貨の下で、域内経済の安定化をいかにして図るのかという新しい問題を提起しているのである。

 そこで焦眉のかだいとなっているのがEU財政の改革である。その理由のひとつは、財政問題がEUの東方拡大戦略を記した「アジェンダ2000」の一部として提起されていることからもわかるように、東方拡大による経済的に遅れた中東欧諸国の加盟が、地域政策など所得再分配機能の充実を迫り、新たな財政負担を招くと予想されているからである。また、国境を越えた財政移転の制度が整備されていないことがEMU悲観論の有力な根拠とされてきたのは、EMUが域内の経済的不均衡を調整する新しい安定化装置を必要としているという根本的問題を端的指摘しているからでもある。

 だがそればかりではない。何よりも、単一通貨圏の下でEU財政は市場統合と政治統合との、EUと国家あるいは地域との利害が衝突する矛盾の結節点であり、その改革は、EU統合の深化にとっても拡大にとっても、もはや先送りすることのできない課題となっているからである。

 以下では、EMUとEU東方拡大が、まさにこのEU財政改革という点で深く関連しており、東方拡大は、とりもなおさずEUそのものの機構改革を前提としてのみ可能となることを明らかにする。また、今後拡大にともない、多様性を増すEUにとって課題となる問題点を提示したい。

 


 

EU東方拡大と財政問題(1)

立正大学経済学部助教授

蓮見雄

はじめに

1.      EU統合の深化と拡大の同時進行

 


 

ロシア貿易・産業情報

ロシア鉄鋼業界の現状

当会ロシア東欧経済研究所調査部次長

坂口泉

第1部 ロシア鉄鋼業界の全般的状況

1.      概況

2.      生産の状況

3.      設備の状況

4.      主要鉄鋼メーカーの生産効率

5.      国内市場の状況

6.      輸出および輸出環境

第2部 各主要メーカーの現状

1.      全般的状況

2.      各主要メーカーの現状