ロシア東欧貿易調査月報

2000年2月号

 

T.ロシアにおける地方財政制度の諸問題

  ―サンクトペテルブルグ市を事例として―

U.1999〜2000年のロシア極東経済と地方財政の現状

V.対ロシア輸出認証制度について

W.ロシア連邦国家会議(下院)選挙当選者名簿

 

◇◇◇

論調と分析

 クレムリンの見える静かなセンター

 中・東欧諸国のEU加盟交渉の見通し

 効果なき対ユーゴスラビア経済制裁

データバンク

 1.ロシアの経済統計

 2.1999年のロシアの外国投資受入状況

旧ソ連・東欧貿易月間商況2000年1月分)

旧ソ連・東欧諸国関係日誌2000年1月分)

統計特集(T):日本の対CIS貿易統計

 


 

ロシアにおける地方財政制度の諸問題

―サンクトペテルブルグ市を事例として―

福井県立大学経済学部助教授

アンドレイ・ベロフ

サンクトペテルブルグ市財政委員会副議長

セルゲイ・ジョーミン

はじめに

1.サンクトペテルブルグ市の経済概観

2.連邦予算と市予算の関係の量的評価

3.1994〜1996年の財政危機と予算過程の改革

4.市の債務管理

5.2000年の予算の特質

おわりに

 

はじめに

 国内信用市場への外国資本の誘致は、1995〜1998年におけるロシア金融政策の特徴のひとつであった。高めに設定されたルーブル相場とロシア金融市場での超高金利は、外国の信用資金の安値幻想を生み出した。ロシア政府、大銀行と大企業は、短期かつ高利の国内借入れから、より有利な外国からの借入れに切り替えようと積極的に試みた。1997年から外国信用市場への独立したアクセスを認められたロシアの大地域(モスクワ市、サンクトペテルブルグ市、ニジェゴロド州)も、この一種独特なユーフォリア(多幸感)の影響下に陥った。それぞれの地域は自らの対外信用利用のメカニズムを創出した。実際のところ、モスクワ市では、予算外の投資向け借款システムが創設され、そこで外国の資金が投資目的で利用された。サンクトペテルブルグ市では、1997〜1998年に予算過程の総合的な改革が実施され、外国資金が国内債務のリストラのため、後に財政の安定化につれて投資のために利用されてきた。ニジェゴロド州では、外国資金は経常支出への投入や国内債務の償還、部分的に投資目的用に向けられた。

 1998年後半の事件は情勢を根本的に変化させた。新たな為替レートのもとで外債の安値状態がストップした。国際信用市場に進出したロシアのすべての連邦構成主体は困難な状況に陥った。外貨借款に際してのルーブル評価が急激に上昇し、債務償還に関する財政負担が増大した一方で、他方では危機後の経済復興が有効需要の低さと、こうした地域では輸出指向部門のシェアが小さいことによって妨げられている。それにほぼ2年間続く連邦、市および自治体の選挙キャンペーンが付け加わる。当然ながら、次のような疑問がわき上がる。ロシアの最も発達した地域が一連の経済、金融、そして政治の不安定をいかに克服するのか、あるいはもっと全般的には1996〜1998年のロシアの財政政策の「地域的意義」はいかなるものであったのか?

 ここ数年間にサンクトペテルブルグ市では総合的な財政改革が実施されたので、同市にとって提起された問題に回答を与えることは他の諸地域より重要である。改革戦略には間違いがなかったのか?改革の開始時期の選択は正しかったのか?新たなマクロ経済的環境のなかで市の財政制度は安定するのか?これらの問題を解決するために、同市の予算にロシアの地域政策と経済政策の特質が集中的な形で反映されているので、同市の予算の分析を行うこととする。

 


 

1999〜2000年のロシア極東経済と地方財政の現状

ロシア科学アカデミー極東支部

経済研究所所長 パーヴェル・ミナキル

ロシア科学アカデミー極東支部

経済研究所主任研究員 セルゲイ・レオーノフ

1.2000年を迎えたロシア極東経済

 (1)1999年のロシア経済と極東経済

 (2)極東経済の今後の不安要因

 (3)下院選挙の結果とその地方への影響

2.金融危機後のロシア極東の地方財政

 (1)極東地域における予算への影響要因

 (2)1998〜1999年の地方予算における歳入状況

 (3)1998〜1999年の地方予算における歳出状況

 (4)連邦と地方の予算間関係

 (5)2000年予算を巡る諸問題

質疑応答

 

 当会では、ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所のP.A.ミナキル所長およびS.N.レオーノフ主任研究員を招き、2月24日に「2000年を迎えたロシア極東経済」、「金融危機後のロシア極東の地方財政」と題して講演会を開催した。本稿では、その内容を紹介する。

 


 

対ロシア輸出認証制度について

 

 当会は平成12年2月3日、東京パレスビルにおいて、ロシアへの輸出認証問題で日本を担当するGOST-ASIA PTE LTD(シンガポール)のグサコフ代表を迎えて、対ロシア輸出品認証制度に関する最近の動きについて説明会を開催した。

 一部の品目については(財)日本品質保証機構(JQA)で認証を取得できるようになり、簡素化が図られた。

 以下にグサコフ代表からの説明を紹介する。

 


 

ロシア連邦国家会議(下院)選挙当選者名簿

 

1.比例区(全連邦区)

2.小選挙区(一人区)

 

 ロシア連邦では1999年12月19日に、連邦議会の国家会議(下院)の議員を選出する3回目となる選挙が実施された。下院の定員は比例区(全連邦区)225議席、小選挙区(一人区)225議席の計450議席で任期は4年である。選挙の結果、共産党が113議席で第一党の座を守り、反大統領勢力の中道左派「祖国-全ロシア」は小選挙区で健闘したものの68議席にとどまった。一方、急ごしらえの政権与党「統一」が72議席と大躍進し、現政権支持に回った右派勢力同盟も形勢不利との予測をくつがえし29議席を確保した。穏健改革派の「ヤブロコ」は20議席と大幅に議席を減らした。

 以下に紹介するのは『ロシア新聞』(1999年12月31日付)および『コメルサント・ブラースチ』(2000年1月25日付)に掲載された当選者名簿(1999年12月25日現在)である。選挙結果の解説については、本誌先月号の「エリツィン後の道筋をつけたロシア下院選挙」を参照していただきたい。