ロシア東欧貿易調査月報 2000年3月号 |
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プーチン新政権と経済政策の行方
当会ロシア東欧経済研究所 研究開発部次長
音羽周
はじめに
1.プーチン氏の統治スタイル
2.ロシアの主要政党の経済政策
(1)財政政策
(2)銀行および通貨政策
(3)構造改革
むすびにかえて
はじめに
ロシアでの選挙戦では経済政策はあまり重要ではなく、国民はイデオロギーや個人的性格を判断材料に投票するといわれる。昨年の下院選挙に続き今春の大統領選挙でも、それは同じであった。プーチン氏は最後まで、チェチェンのテロリスト一掃を叫び、具体的な経済政策は公表せずに選挙戦を戦ったが、もとより、それがプーチン陣営の戦術であった。また、昨年のGDP(国内総生産)が、国際石油価格の上昇による外貨収入増とルーブルの切り下げによる輸入代替効果の結果、プラスに転じたことにより、ライバル陣営の批判を「実績」でかわすことができたことも経済政策論争を回避することを可能にした。したがって、プーチン新政権が今後どのような経済政策を打ち出してくるか、現時点では予想することはできない。
いずれにせよ、今後プーチン氏は大統領就任の後、新政府に経済政策の策定を急がせ、その承認を下院に求めることになるが、下院では政府与党が議席数で野党を上回るとはいえ、個別の政策では、与党の間でも対立が予想される。そこで、以下では、ロシア下院の主要政党の経済政策を紹介し、ポスト・エリツィン後の経済政策の争点を考えてみる。(なお、本稿は当会『経済速報』2000年2月25日号、No.1151に加筆したものであり、記述内容は基本的に大統領選前の状況をベースにしている。)
1999年ロシアの金融市場の概観
当会モスクワ事務所副所長
D.ウォロンツォフ
1.インフレ
2.銀行および金融市場
3.外貨市場
4.国債市場
5.地方債市場
6.証券市場
7.ロシアの対外債務市場
8.2000年初め
以下、1999年のロシアの金融市場の市況を考察するが、同年上半期については以前詳細に記述したので(本誌1999年8月号参照)、ここでは特に同年下半期に注目する。
1999年は、ロシアの金融市場にとっても、また経済全体にとっても金融危機後の最初の年であった。ロシアの金融市場発展の歴史は大きく二つの時期に区分しうる。第一の時期は1998年の危機までで、ほとんどすべての関係指標が上向いた。後に判明するが、これは根拠のない楽観主義の時代であり、金融幻想の時期であった。第二の時期は「危機後」であり、事実上1999年まる1年によって区分された。
1999年は、より冷静な評価の年、現実的な年となり、金融市場の個別セクターの現実ばなれした発展の年とはならなかった。ルーブル交換レートは実際の経済バランスに相対的により近接しており、国内発行機関の株式は今日では水増しされた価額ではなく、その実勢によって評価されているようにみえる。1999年は、なによりもまずロシアにとり対外債務の返済と関連した困難な年であり、実際、対外債務市場の状況がおのずと金融市場のその他のセクターの相場を形成した。
ロシアの金融市場では全体としては悪くはない、予期せざる結果が表示されたと認めないわけにはいかない。アナリストの誰が1998年12月に、1999年の結果について、たとえばインフレ率ないしルーブル・レートの変動率がそれほど高くはないことを予想しえたであろうか。年初は著しいより大きな悲観論が支配し、パニック的な気分さえも支配した。だが、結果は期待を大きく上回ったのである。
同時に、金融市場がロシア経済に及ぼす影響は全体として縮小したことを認めないわけにはいかない。市場に出回る一連の金融商品が縮小した。より正確にいえば、実体経済部門と金融市場の間の関係の変化が生まれたが、全体としてこれは支持せざるをえない。ありのままをいえば、金融市場は国内経済の傾向を決定しえない。正常な経済システムでは、実体経済部門が金融市場の相場を決定するのである。
以下、1999年〜2000年初頭における金融市場の環境を決定づけた若干の社会・政治状況を思い出そう。
-二度にわたり(5月と8月)、大統領は内閣を更迭した。
-チェチェンにおける連邦軍の軍事行動が9月に始まり、その後絶え間なく続いた。
−ダゲスタン、モスクワ、ヴォルゴドンスクで、テロ行為により数百人が死亡した(8〜9月)。原因は不明。
-エリツィン大統領が辞任した(12月31日)。
-「2000年問題」、その深刻な現れがロシア領内で予測された。
ロシア貿易・産業情報
拡張を続けるルクオイルの実像
―交叉する光と影――
当会ロシア東欧経済研究所 調査部次長
坂口泉
1.構成
2.ルクオイルの株式をめぐる状況
3.経営陣
4.保有埋蔵量
5.石油生産の推移
6.設備投資状況
7.国内の傘下製油所の状況
8.ルクオイルによる企業買収の例(国内)
9.ルクオイルによる企業買収の例(国外)
10.ルクオイルが関与する国内の新油田開発計画
11.ルクオイルが関与する国外での新油田開発計画
12.外国でのその他の事業展開(『石油ガス垂直統合』誌、1999.10より)
13.財務状況