ロシア東欧貿易調査月報 2003年8−9月号 |
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ロシア極東・東シベリアにおける石油・ガス関連プロジェクトの現状と課題
(財)日本エネルギー経済研究所
小森吾一
はじめに
1.ロシアの石油・ガス産業にとっての極東および東シベリアの意義
2.極東および東シベリアにおける原油・天然ガス開発/輸出プロジェクト
3.プロジェクト推進にあたっての問題点
はじめに
現在、ロシアは西シベリアにおいて原油・天然ガスの大部分を生産し、それらを主に欧州向けに輸出することで外貨を獲得している。長期的に見ると西シベリアの原油・天然ガス埋蔵量もいずれ減少・枯渇していくことが予想されるため、これに備えてロシア国内において新規の油田・ガス田を探鉱・開発することが課題となるであろう。さらに、現時点でロシア産原油・天然ガスの主力輸出先である欧州市場は、確実な需要はあるもののアジア市場ほど原油・天然ガス需要の伸びが期待できないと見込まれている。そこで、ロシアの石油・ガス企業にとって、輸出先の多様化を図るために現在は未探鉱・未開発鉱区が多く残っている極東および東シベリアの原油・天然ガスを開発して、今後のエネルギー需要の増加が見込まれるアジア市場向けに輸出することが将来に向けた検討課題となる。
本稿ではこのような問題意識の下でロシア極東・東シベリアにおける原油・天然ガス開発およびアジア市場向けの輸出パイプライン建設プロジェクト推進に伴う問題を検討し、今後の課題を指摘することを目的とする。
ロシアのPSA(生産分与協定)をめぐる動き
ロシア東欧経済研究所 調査部次長
坂口泉
はじめに
1.改訂の骨子
2.PSA反対派が仕掛けた今回の改訂
まとめにかえて
付属資料:連邦法「ロシア連邦税法典2部への追加、その他の複数のロシア連邦の法令の変更と追加、および、ロシア連邦の複数の法令の失効について」(仮訳)
はじめに
2003年6月初め、PSA(生産分与協定)関連法(複)の変更および補足を規定した連邦法「ロシア連邦税法典2部への追加、その他の複数のロシア連邦の法令の変更と追加、および、ロシア連邦の複数の法令の失効について」(以下、新法)が発効した。この新法では、ローカルコンテンツの定義の見直し、補償生産物の上限の設定等が行われているが、その最大の注目点はPSA締結の前提条件を見直した点にある。
前提条件の見直しは、PSA締結交渉のスタート地点に立つために必要となる前提条件を厳格化するという方向で行われており、見方によっては、PSA法の発効前にPSAが締結され、グランドファーザー条項が適用される3つのプロジェクト(サハリン1、サハリン2、ハリヤガ)、ならびに、例外措置が適用される一部のプロジェクト(大陸棚プロジェクト等)を除き、大半の石油ガス鉱床開発プロジェクトにおいて、PSA方式を適用しうる可能性が事実上なくなったとの解釈も可能である。
本稿では、改訂の具体的内容、今回の新法制定に至るまでの経緯および背景、今回の改訂の問題点等について考察してみたい。また、付属資料として新法の翻訳を掲載しているので、ご利用いただければ幸いである。
アゼルバイジャン、ウズベキスタン、カザフスタンの石油産業
−それぞれの現状と課題−
はじめに
1.資源量に不透明感が増すアゼルバイジャン
2.新鉱床の開発が急務のウズベキスタン
3.輸送路の発展が鍵となるカザフスタン
はじめに
当研究所では、ロシアの石油ガス専門シンクタンク「石油と資本」社に依頼し、アゼルバイジャン、ウズベキスタン、カザフスタンの石油産業につき、その現状と各国が直面している課題をまとめてもらった。以下そのレポートを紹介する。
本稿に記載されている事実関係およびデータは2003年4月現在のものであり、また示されている見解はあくまで「石油と資本」社のものである。
データバンク:データで見るCIS諸国のエネルギー産業
(第1表)CIS諸国のエネルギー・バランス(1999年)
(第2表)CIS諸国と世界主要国の石油生産量(ガスコンデンセートを含む)
(第3表)CIS諸国と世界主要国の天然ガス生産量
(第4表)2002年末時における世界とカスピ海沿岸諸国の石油・天然ガス確認埋蔵量
ロシア企業クローズアップ
1.ロシア統一電力システム
ロシアの大半の地域電力会社を傘下に収める持ち株会社。2002年に純益倍増し増配を達成。機関投資家の投資を呼び込み設備投資の拡大をめざす。
2.セヴェルスターリ
ロシア第2の鉄鋼メーカー。欧米諸国の輸入制限を受けるも、中国向けが増大。若きモルダショフ会長が積極経営を引っ張る。
3.カマ自動車工場(KamAZ)
当国随一のトラック・メーカーも、競争力の低下で苦戦続く。2002年には輸出増が国内の販売不振をカバー。欧州標準エンジンへの移行を急ぐ。