ロシア東欧貿易調査月報 2004年3月号 |
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2003年のロシアの金融市場
ロシア東欧貿易会 モスクワ事務所副所長
D.ヴォロンツォフ
はじめに
1.マクロ経済指標
2.為替レート
3.外貨準備
4.銀行システムと融資
5.国債市場
6.株式市場
7.ロシアの外債市場
8.若干の総括
はじめに
毎年恒例のロシア金融市場レポートの2003年版をお届けする。石油価格の高値安定に支えられた好調な経済パフォーマンスを背景に、ロシアの金融市場は引き続き安定的に推移している。金・外貨準備の拡大により、2003年に対外債務の支払には何ら問題は生じなかった。しかし、金融システム本来の役割、すなわち資金の貸し手と借り手を結び付け、経済成長を支えるという観点からすると、やはりまだこれからの課題と言えそうだ。
ロシアの消費財市場におけるビジネスチャンス
−家電と化粧品に関するケーススタディ−
ロシア東欧経済研究所 調査部次長
坂口泉
はじめに
1.家電市場の状況とビジネスチャンス
(1)テレビ製造部門
(2)家電販売部門
(3)家電製品(AV機器)の通関
2.ロシアの化粧品市場における主要プレーヤー
(1)ロシアの化粧品市場の規模および特性
(2)主要な輸入卸売り業者
(3)主要な化粧品店チェーン
(4)外国メーカーの現地生産の動き
まとめにかえて
付属資料:ロシアのテレビ・家電関係企業のURL集
はじめに
ロシアの消費市場は活況を呈しているが、新規参入という観点から見るとかなり厳しい市場であるという印象が強い。もちろん例外も存在するが、個別の商品別にその市場動向を見ていると、拡大フェーズの期間が非常に短く、市場の成熟化が急激に進行するという傾向が全般的に見受けられる。つまり、拡大フェーズが始まったかと思う間もなく、価格競争の激化およびそれに伴う利幅の縮小傾向が顕著になるという印象が強い。たとえば、タバコ、ビール、チョコレートといった市場では、現在、各メーカー間で体力勝負のシェア争いが激化している。つまり、これから参入しても、参入コストに見合ったリターンを期待することが困難な商品市場が多いような気がする。こういった市場に新規参入する場合は、ニッチ狙いの戦略をとらざるを得ないのではなかろうか。
ただ、大きなリターンを期待しうる商品市場が皆無なわけではない。たとえば、家電市場や化粧品市場では、新規参入の余地は残っていると判断される。
家電市場では、多くのセグメントで価格競争が激化し、利幅も大幅に縮小しているが、日本メーカーが得意とする高級家電(液晶テレビ、プラズマテレビ、DVDレコーダー等)セグメントでは、安定した状況が今後も続く可能性が高い。また、ロシア国内で生産(正確には外国製の部品を使用したアセンブリー)されるテレビをはじめとする家電の台数が急激に増加しており、ロシア国内のアセンブラーに部品を売り込むチャンスも高まりつつある。
化粧品市場は、ロシア経済の好景気とロシア人女性の化粧品に対する突出した関心の高さに支えられる形で、急成長している。また、専門家の間では、ロシアの化粧品市場における拡大フェーズはまだしばらく続くとの予測が一般的になっている。練り上げられた戦略は必要になるであろうが(高級化粧品を売り込む場合、広告媒体の絞込みを有効に行えば参入コストをかなり抑えられる可能性も存在する)、日本のメーカーにもまだまだ新規参入の余地がある市場であるといえる。
以上のような状況を踏まえ、本稿では、ロシアの家電市場および化粧品市場の現状や特性を紹介したい。本稿が、これらの市場に日本企業が参入する上での参考になれば幸いである。
◆セミナー報告◆
EBRD貿易投資ジョイントセミナー
−ロシアビジネスと公的金融−
ロシア東欧経済研究所 次長
高橋浩
はじめに
1.基調報告「欧州復興開発銀行と日本企業」
2.基調報告 "Russia and Eastern Europe offer terrific growth opportunities ―Are Japanese investors missing the boat?"
3.午前の部パネルディスカッション
4.基調報告「ロシア・中東欧諸国との貿易振興を目指して」
5.国際協力銀行の紹介「国際協力銀行(JBIC)のロシア向け取組み」
6.貿易保険の紹介
7.午後の部パネルディスカッション
セミナーを終えて
付属資料:セミナーにおけるEBRD配布資料
はじめに
2004年2月3日(火)、ジェトロのBSCホールにおいて、「EBRD貿易投資ジョイントセミナー −ロシアビジネスと公的金融−」が開催された。欧州復興開発銀行(EBRD)、日本貿易振興機構(JETRO)、貿易研修センター(IIST)、ロシア東欧貿易会、日本貿易保険(NEXI)の主催、国際協力銀行(JBIC)および海外投融資情報財団(JOI)の後援のもと実施された。延べで150名を超す参加者があり、ロシアとのビジネスに対する関心の高さがうかがわれた。
ロシアなどの市場経済移行諸国を対象とする国際金融機関であるEBRDは、経済成長が続くロシアへの投融資においてプレゼンスを急速に高めており、欧米企業はロシア進出のために積極的にこのスキームを活用している。一方でEBRDは、昨年、東京に事務所を開設するなど、これまで活用されることの少なかった日本企業へもビジネスパートナーとしてのアプローチを強めている。このように、ロシアの投資環境改善の状況を踏まえ、EBRD活用の方策、日本の公的金融制度の紹介を交えたEBRDとのロシア向けの貿易投資ジョイントセミナーを開催するに至った。なお、今回のセミナーは、EBRD側より最初にアプローチがあり、セミナーの構想を作成した日本貿易保険が運営の主体となった。
以下、セミナーの概要を筆者の理解のもと、エッセンスを以下にまとめた。
ロシア企業クローズアップ
1.ルスアル
アルミニウムの世界的なメーカー。その世界シェアは約10%に達する。CIS諸国他、ギニアにも進出し、若きデリパスカ社長の指導の下、野心的な経営を目指す。原料の自己調達率の引き上げが課題。支配株主はBasic Element。
2.ザヴォルジエ・モーター工場
ロシアの代表的な自動車エンジンメーカー。現在はロシアの大鉄鋼グループ「セヴェルスターリ」の自動車部門の傘下にある。製品の大部分がゴーリキー自動車工場(GAZ)向け。主な輸出先はCISだが、最近は中国マーケットに触手を伸ばしつつある。
データバンク
1.データで見るロシアの鉄鋼業
(第1表)ロシアにおける鉄鋼業の主要品目の生産量
[第1図]ロシアにおける鉄鉱石の生産量の推移
[第2図]ロシアにおける銑鉄の生産量の推移
[第3図]ロシアにおける粗鋼の生産量の推移
[第4図]ロシアにおける完成鋼材の生産量の推移
[第5図]ロシアにおける鋼管の生産量の推移
(第2表)ロシアにおける企業別の鉄鉱石の生産量
(第3表)ロシアにおける工場別の銑鉄の生産量
(第4表)ロシアにおける工場別の粗鋼の生産量
(第5表)ロシアにおける工場別の完成鋼材の生産量
(第6表)ロシアにおける工場別の鋼管の生産量
2.2003年のロシア・CIS諸国のアルミニウム産業
(第1表)CIS諸国におけるアルミナの生産量
(第2表)CIS諸国におけるアルミニウム新地金の生産量
(第3表)ロシアにおける工場別のアルミニウム新地金の生産量
[第1図]ロシアにおけるアルミナの生産量の推移
[第2図]ロシアにおけるアルミニウム新地金の生産量の推移