ロシアNIS調査月報
2026年3月号
特集◆「中央アジア+日本」が
切り拓く新たなステージ
 
特集◆「中央アジア+日本」が切り拓く新たなステージ
イベント・レポート
「中央アジア+日本」対話・首脳会合と関連行事
ミニレポート
「中央アジア+日本」東京宣言と各国との共同声明
イベント・レポート
「中央アジア+日本」ビジネスフォーラム
資料
「中央アジア+日本」対話の成果文書
ビジネス最前線
ウズベキスタンの通信インフラを支える日本の技術
講演録
中央アジアを読み解く3つの資源
―政治、経済、エネルギー―
調査レポート
中央アジアの重要鉱物
―何が存在し、何が幻か―
調査レポート
ウズベキスタンにおける私有化プロセスの今

INSIDE RUSSIA
ロシアの愚行で斜陽化する中欧班列
データリテラシー
なぜルーブル高が止まらないのか?
エネルギー産業の話題
ベネズエラ・イラン情勢の緊迫とロシアの石油分野
ロシア極東羅針盤
対ロ中古車輸出の“新常態”
シベリア・北極圏便り
ノヴォシビルスク州から見た2026年経済
ロシアメディア最新事情
シベリアの医療事情
―新生児9人死亡の衝撃―
ウクライナ情報交差点
ウクライナ大統領府の新布陣
コーカサス情報フォーカス
ダボス会議で存在感を示したアゼルバイジャン
シネマで見るユーラシア
『ディア・ハンター』
ロシア音楽の世界
ショスタコーヴィチ 交響曲第11番「1905年」
ドーム・クニーギ
長谷川雄之著『ロシア大統領権力の制度分析』
業界トピックス
2026年1月の動き
通関統計
2025年のロシア・NIS輸出入通関実績(速報値)
おいしい生活
アルメニアで出会ったアヴェルク
記者の「取写選択」
「非友好国」の姉妹都市交流


イベント・レポート
「中央アジア+日本」対話・首脳会合と関連行事

 2025年12月18日(木)から20日(土)にかけて、中央アジア5カ国(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)の大統領が、「中央アジア+日本」対話・首脳会合(12月20日開催)への出席を目的として来日した。日本滞在中、5カ国の大統領は同首脳会合のほか、高市早苗総理との二国間首脳会談、「中央アジア+日本」ビジネスフォーラムへの出席、さらには日本企業関係者との会談・会合など、数多くの関連行事に臨んだ。以下では、日本政府(外務省、経済産業省)や中央アジア5カ国の大統領のウェブサイト等で公表された資料を基に、今回の「中央アジア+日本」対話・首脳会合の概要を整理するとともに、5カ国大統領の訪日に合わせて実施された主な関連行事を紹介する。


ミニレポート
「中央アジア+日本」東京宣言と各国との共同声明

  2025年12月20日に東京で初めて開催された「中央アジア+日本」首脳会合では、最後に「『中央アジア+日本』対話・首脳共同宣言(東京宣言)」が採択された。(輪島実樹)


イベント・レポート
「中央アジア+日本」ビジネスフォーラム

 2025年12月20日、「中央アジア+日本」対話・首脳会合の一環行事として、帝国ホテル東京にてビジネスフォーラムが開催された。主催は日本国経済産業省、(一社)ROTOBO、(独)日本貿易振興機構(ジェトロ)で、プレナリーセッションには、高市早苗内閣総理大臣と中央アジア5カ国首脳が出席し、日本と中央アジアの企業・関連団体によって結ばれた158件の覚書が締結・披露された。本フォーラムには日本と中央アジア5カ国のビジネス関係者約680人が参加。本稿ではその要旨を紹介する。


資料
「中央アジア+日本」対話の成果文書

 2025年12月20日、中央アジア5カ国の首脳を東京に迎えて、「中央アジア+日本」対話(略称CA+JAD、Central Asia plus JApan Dialogue)で初めてとなる首脳会合が開催された。また首脳会合に並行あるいは前後して「中央アジア+日本」ビジネスフォーラム、高市早苗内閣総理大臣と中央アジア5カ国首脳とのバイ会談、閣僚級の会談、中央アジア各国の個別イベント(トルクメニスタン大統領との合同ミーティング、タジキスタン日本ビジネスフォーラム、ウズベキスタン日本ラウンドテーブル等)が相次いで実施された。これらの行事を通じて、公開されているものに限っても200件を上回る成果文書が日本と中央アジア5カ国その他との間で署名あるいは披露された。以下では、公開資料で確認できた229件の成果文書の一覧にして掲載する。


ビジネス最前線
ウズベキスタンの通信インフラを支える日本の技術

豊田通商株式会社デジタルソリューション本部デジタルインフラ事業部 海外インフラグループ
グループリーダー 安藤朋子さん

 豊田通商株式会社は2014年より、中央アジアのウズベキスタンにおいて通信インフラ事業を展開しています。国家戦略としてICT立国を掲げる同国では、その実現に向けて通信インフラの整備が最優先課題の1つと位置付けられており、豊田通商は日本のパートナー企業と連携しながら、その基盤構築に貢献しています。本稿では、豊田通商デジタルソリューション本部デジタルインフラ事業部・海外インフラグループのグループリーダーを務める安藤朋子氏に、IOWN実証プロジェクトを含むウズベキスタンでの同社の取り組みについてお話を伺いました。(中居孝文)


講演録
中央アジアを読み解く3つの視点―政治、経済、エネルギー―

D.サトパエフ、V.ドドノフ、O.チェルビンスキー

 ROTOBOでは、2025年11月18日に東京にて産業協力・企業間交流セミナー「中央アジアを読み解く3つの視点〜政治・経済・エネルギー〜」を開催しました。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻から3年半が経過する中、当事国と関係の深い中央アジア諸国に対する地政学的注目度がますます高まっています。特にカザフスタンは石油・ウランなど、エネルギー資源の世界的産出国であると同時に中央アジアにおける日本の最大の貿易相手国であり、一定の局面でロシアの代替となりうる可能性を秘めた存在です。そこで本セミナーではカザフスタンから3名の専門家を招聘し、それぞれ政治、経済、エネルギーという3つの視点からカザフスタンおよび中央アジアの現状を分析、また日本との関係発展の可能性について展望していただきました。以下では、その内容をご報告いたします。


調査レポート
中央アジアの重要鉱物―何が存在し、何が幻か―

(一社)ROTOBO ロシアNIS経済研究所 研究員
渡邊光太郎

 中央アジアには、レアメタル鉱床やレアアース鉱床があるとの認識が世間で存在しているようだ。確かに、中央アジアには世界最良のウランとクロムの鉱床があり、ベースメタルの資源も豊富である。しかし、話題の磁石用金属や電池用金属では、資源らしい資源はない。特に、レアアース鉱床が存在する可能性は、日本より低いくらいだ(事実上ゼロ)。今後も発見される可能性は極めて低い。レアメタルというワードから多くの人がイメージするものは、中央アジアにほとんど存在しない。中央アジアのレアメタルの価値が異常に過大評価される一方で、不思議なことにカザフスタンやウズベキスタンのベースメタルの価値は過小評価の状態と思われる。データセンターで脚光を浴びる銅の産地として、中央アジアの価値は高まるだろう。
 中央アジアには金属の精錬能力もあり、鉱床や資源といった言葉だけでは語れない。カザフスタンとウズベキスタンで採掘された鉱石の大半は、国内で精錬されて輸出されている。例えば、中央アジアにチタンやタンタルの資源はほぼ存在しないが、原料を輸入して精錬を行っている。中央アジアに資源がなくても日本の重要な供給源となっている場合もあるし、逆に資源があっても日本のサプライチェーンにはまらない場合もある。
 中央アジアの金属資源は、存在が不明確なレアメタルは過大評価され、実際に生産されている金属は過小評価の傾向があるように見える。本稿は、主に日本の原材料確保の観点から、中央アジアに「存在する金属」と「存在しない金属」を明らかにし、中央アジアの“実際に”豊富な資源の実態について述べる。


調査レポート
ウズベキスタンにおける私有化プロセスの今

(一社)ROTOBO ロシアNIS経済研究所 嘱託研究員
大内悠

 ミルジヨエフ大統領が掲げた市場経済化改革は、先代政権が独立以降一貫して標榜してきた国家管理型経済からの脱却、すなわち「ウズベク・モデル」との決別に他ならなかった。ミルジヨエフ大統領は政権発足早々に市場経済化に係る一連の改革措置、具体的には通貨スムの複数為替相場の統一、通貨スムの実勢レートへの切り下げ、外貨兌換の自由化、輸入関税の引き下げ、中央管理貿易の廃止、一部財を除く価格規制の撤廃といった施策を次々に断行し、経済自由化を推し進めた。これら諸施策の成果は外資参入や外国投融資の増加、民間部門の伸長といった形で結実し、ウズベキスタンは足元で底堅い経済成長を謳歌している。
 他方、市場経済化の重要な要素である「国有企業の私有化(privatisation)」の進捗ペースは、就任直後に実施された改革諸措置に比して緩慢であり、ミルジヨエフ体制発足10年目を迎えてなお有力国有企業が国家経済の基幹部門において絶大なプレゼンスを発揮している。とはいえ、国有企業1)の私有化に係る改革努力は確かに継続されており、有力国有企業の一部政府保有株放出や外資への完全売却といった政策実績が少しずつではあるが積み重ねられている。そこで本稿では、ウズベキスタンにおける国有企業の私有化プロセス、特に政府保有株の売却・放出を伴う国有企業の私有化実績の現状に着眼し、これを検討する。


INSIDE RUSSIA
ロシアの愚行で斜陽化する中欧班列

 「中欧班列」とは、中国政府主導の下で、中国鉄道を基盤に構築された国際輸送ネットワークであり、中国と欧州をコンテナ定期列車で結ぶサービスである。アジアと欧州を輸送回廊で結ぶという新シルクロードの理念に適い、そして実際にその輸送量が急拡大してきたことから、一帯一路のシンボル的なプロジェクトと位置付けられるようになった。(服部倫卓)


データリテラシー
なぜルーブル高が止まらないのか?

  ルーブル高が止まりません。2026年1月28日(モスクワ時間同日午前)時点で1ドル=76.55ルーブル、1ユーロ=90.93ルーブル、1人民元=10.89ルーブルという水準にあります。いずれも10月末時点では、80ルーブル、95ルーブル、11.2ルーブルほどでしたので、ドルとユーロに対しては4%ほど、人民元には3%ほど上昇したことになります。(長谷直哉)


エネルギー産業の話題
ベネズエラ・イラン情勢の緊迫とロシアの石油

 米国のトランプ政権がベネズエラとイランへの圧力を強化しています。両国の共通点は豊富な埋蔵量を有する石油輸出国であるという点です。さらに両国の石油は、ロシア産石油同様に西側の制裁対象になっており、輸出先が限定されているという共通点もあります。米国の圧力の結果、最終的に米国寄りの政権が確立され、両国の石油が制裁対象から外されるというシナリオも考えられますが、短中期的に見た場合には、ベネズエラに関してもイランに関しても石油の生産と輸出に支障が生じる可能性の方が高いと判断されます。本稿では、ベネズエラとイランの問題がロシア産石油・石油製品の輸出にどのような影響を及ぼすのかという点について考察してみます。(坂口泉)


ロシア極東羅針盤
対ロ中古車輸出の“新常態”

 この1年を振り返ると、廃車税率の変更をはじめとするロシア側の輸入規制や、決済手段の厳格化に翻弄される場面はあった。それでも日本側で追加制裁はなく、制裁下でのビジネスモデルが定着した1年だった。いわば、新常態が浸透し、侵攻直後の混乱期と比べれば「安定」と言える1年だった。(齋藤大輔)


シベリア・北極圏便り
ノヴォシビルスク州から見た2026年経済

 今回は、シベリア主要地域であるノヴォシビルスク州の経済専門家による2026年ロシア経済展望、またそれを踏まえた同州経済の見通しを紹介します。2026年はロシア経済にとって非常にかじ取りの難しい年になる可能性がありますが、それを地方の視点から確認しておきたいと考えます。(長谷直哉)


ロシアメディア最新事情
シベリアの医療事情―新生児9人死亡の衝撃―

 新年早々、悲しいニュースがロシアメディアをかけめぐりました。ケメロヴォ州ノヴォクズネツク市の第一産院で、1月4日から11日までの短い期間に、9人もの赤ちゃんが連続して亡くなったというのです。ロシアの新生児死亡率は年々減少しており、出生1,000人あたり3.6人です。この産院における死亡数が、異常に多いことがわかります。一体何があったのでしょうか。(徳山あすか)


ウクライナ情報交差点
ウクライナ大統領府の新布陣

 1月号の本コーナーでは、「ゼレンスキー最側近辞任の衝撃」と題し、政権No.2と目されていたA.イェルマーク大統領府長官が汚職疑惑に関連して辞任した件を報告した。その後若干の時間を要したが、K.ブダノフ氏が新たに大統領府長官に任命されたので、今回はこれについてお伝えする。(服部倫卓)


コーカサス情報フォーカス
ダボス会議で存在感を示したアゼルバイジャン

 2026年1月19〜23日、スイスのダボス・クロスタースで第56回世界経済フォーラム年次総会(通称「ダボス会議」)が行われた。毎年各国首脳が集う会合に、今年はトランプ米大統領やゼレンスキー・ウクライナ大統領など約65人の国家元首や政府首脳を含め、130カ国以上から約3,000人が出席した。コーカサスからはコバヒゼ・ジョージア首相が参加を見送り、パシニャン・アルメニア首相がトランプ大統領提案の「平和評議会」創設の署名式にのみ参加したのに対して、アリエフ・アゼルバイジャン大統領は各国政財界トップとのバイ会談、EuroNewsTVのインタビューと同TV局主催のビジネスイベント、ダボス会議パネル討論会など、精力的に参加し、各所で積極的に発言した。(中馬瑞貴)


シネマで見るユーラシア
『ディア・ハンター』

 冒頭、ペンシルベニア州クレアトンの製鉄所の現場が映し出される。耐熱服を身につけた労働者たちがオレンジ色や黄色を放つ溶けた鉄を溶鉱炉に流し込み、溶鉄から不純物を取り除く。技術と体力が求められる仕事だ。その作業を見ているこちらにまで熱が伝わってくる。(芳地隆之)


ロシア音楽の世界
ショスタコーヴィチ 交響曲第11番「1905年」

 今年2026年は、ロシアのモーツァルトこと、ショスタコーヴィチの生誕120周年の記念の年で、彼の交響曲を取り上げる演奏会が相次いでいる。新年から5週間のうちに、第1番、第4番、第11番「1905年」、第12番「1917年」と、彼の交響曲を既になんと4曲も、ライヴで聴かせて頂く機会を得ている。(ヒロ・ミヒャエル小倉)


記者の「取写選択」
「非友好国」の姉妹都市交流

 ロシア極東ハバロフスク地方政府などの職員だったミハイル・スクヴォルツォフさん(37)=写真=が新潟市役所に国際交流員として着任したのは2022年9月のことだった。ロシアのウクライナ全面侵攻開始から半年余り。日本国内の対ロ感情は極度に悪化していた。新潟の人々が自分に敵対的だったらどうしよう―。赴任前にはそんなことを考えていたが、案ずるより産むがやすし。市民は優しかった。(小熊宏尚)