ロシアNIS調査月報
2022年4月号
特集◆プーチンの地政学と
ユーラシア動乱
 
特集◆プーチンの地政学とユーラシア動乱
調査レポート
ロシアによるウクライナ侵攻が与えるインパクト
調査レポート
軍事面から見る今次ウクライナ危機
調査レポート
近年のユーラシア安全保障環境の変化と多国間主義
調査レポート
対ロ経済制裁の現状とその影響
INSIDE RUSSIA
SWIFT制裁はどこまで効くか
産業・技術トレンド
製造業の現場で見たロシアと喧嘩できないドイツ
データリテラシー
もう一つの前線としての欧州ガス市場
ロシアの二国間関係
緊迫する中で対話を続けるロシアとフランス
ドーム・クニーギ
『コロナ禍で変わる地政学』
ロシア極東羅針盤
極東ズヴェズダ造船所の現在
デジタルITラボ
ウクライナ侵攻とロシアの仮想通貨動向
ミニレポート
ロシアとベラルーシが食品禁輸で奇妙な共闘
ロシア政財界人物録
ウクライナ問題とロシア要人によるSNS投稿
ロシアメディア最新事情
今ロシアメディアで起こっていること
ウクライナ情報交差点
これが最後でないと祈りたいウクライナ貿易統計
中央アジア情報バザール
中央アジア・コーカサスのウクライナ情勢への反応
ユーラシア珍百景
ロシア国旗を抵抗なく受け入れるベラルーシ
記者の「取写選択」
ウクライナは滅びず

調査レポート
2021年のロシア乗用車市場の総括
―崩れた油価との連動性―
シリーズ 工業団地探訪
シェレメチェヴォ工業団地(モスクワ州)
ロジスティクス・ナビ
ロシア港湾の動向:2021
エネルギー産業の話題
ロシア原子力発電部門の輸出ポテンシャル
HOW TO ビジネス実務
ロシアの決算書を読む(2)
ロシア音楽の世界
カリンニコフ交響曲第1番ト短調
業界トピックス
2022年2月の動き
通関統計
2022年1月の輸出入通関実績


調査レポート
ロシアによるウクライナ侵攻が与えるインパクト

防衛研究所 政策研究部
兵頭慎治

 2022年2月24日に開始されたロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、2014年3月のクリミア半島の併合をはるかに凌駕する「力による現状変更」であり、ウクライナの主権及び領土の一体性を著しく侵害する国際法及び国連憲章への重大な違反行為である。また、ウクライナの独立と主権を尊重し、同国に脅威や武力行使を控える旨の米英露などによる「ブタペスト覚書」にも反する。国際社会での孤立を恐れることなく、プーチン大統領はルビコン川を渡ってしまった。今回の軍事侵攻により、国際社会はロシアに対する認識を根本から修正せざるを得なくなったと言えよう。
 2月24日の軍事侵攻開始から本稿執筆時点(3月3日)まで時間や情報が限られていること、大統領府をはじめとした政府系のウェブサイトにアクセスができなくなっていること、プーチン大統領を含めてロシア政府自身が虚偽の言説を拡散しておりロシア側の一次情報に依拠して分析することが難しくなっていることなどから、軍事侵攻そのものについての細かな分析は次の機会に譲ることとしたい。上記の制約の中、本稿では、今回の軍事侵攻がロシアの内外政策にどのようなインパクトをもたらすかについて、現時点における考察を緊急寄稿の形で取りまとめてみた。


調査レポート
軍事面から見る今次ウクライナ危機

東京大学先端科学技術研究センター講師
小泉悠

 2022年2月24日、ロシアはウクライナに対する大規模な軍事侵攻を開始した。米ソ冷戦の終結によって、軍事力の時代は終わり、政治・経済・環境・人権などが国際関係の中心的要素になっていくだろうとの見通しが語られた時代を記憶する世代としては、隔世の感を覚えざるを得ない。
 ただ、現在進行形の事態をここで分析することは、公表までのタイムラグに照らしてあまり賢明ではないだろう。そこで本稿では、今次危機の背景となるロシアの軍事力について、読者の理解のたすけとなりそうな情報と知見をまとめることした。
その第1は、ロシアの軍事力それ自体に関するものである。より具体的には、軍事力の中核を成すロシア連邦軍(以下、ロシア軍)の兵力・構成・指揮統制・装備などを明らかにするとともに、その他の準軍事組織についても簡単に扱う。ロシアの軍事力はこうした多様な組織の総体として成り立っているからである。
 第2に、地政学的ツールとして見た場合の軍事力の効用について考えてみたい。かつてのソ連は、その最末期にあってさえ500万人以上の兵力を擁し、米国と並ぶ軍事的超大国であると自他ともに認められていたが、現在はそうではない。にもかかわらず、ロシアが軍事力を用いて国際的に大きな存在感と影響力を発揮できているのは何故なのか。この点を地政学と軍事戦略思想という観点から考察した。
 第3に、以上を踏まえた上で、今次の戦争に先立ってウクライナ危機に際してロシアが展開した兵力とその行使形態を検討する。すでに述べたように、これは進行中の軍事作戦の推移を明らかにしようとするものではなく、ロシアの軍事力行使が全体としてどのような性質を有するのかがここでの主題である。


調査レポート
近年のユーラシア安全保障環境の変化と多国間主義

上智大学外国語学部ロシア語学科 教授
湯浅剛

 2022年に入り、ポスト・ソ連諸国の政治・安全保障環境が激しく変化し続けている。震源地は主に2つある。
 1月、カザフスタンでは、「老人よ、去れ」という市民の意思表明とともに、81歳のナザルバエフが政界から退場した。トカエフが自らの権力基盤を固められるのか、しばらくは政治エリート間の暗闘が展開するのか、先行きは見通せないものの、30年以上にわたり同国に君臨した政治指導者が後退したことによる内政・外交への衝撃は、大きい。
 それ以上に劇的な展開を見せているのが、ウクライナである。2月24日に始まったロシア軍によるウクライナへの侵略は、国家間の全面戦争をもたらした。プーチン政権はこれを「特殊軍事作戦」と呼んでいるが、武力衝突にまで至った政治・軍事の対立は修復困難となってしまった。また、ウクライナの背後には米欧諸国が存在し、ロシアは中国と連携した行動をとっていることが窺え、衝突は世界経済にまで影響を及ぼしている。
 本稿をまとめている時点(3月5日)で、われわれは戦争の帰趨を見届けていない。しかし、プーチン大統領が、冷戦終結後の約30年間にわたり欧州において構築されてきた協調的安全保障体制を終焉の瀬戸際に追いやっている、ということは明らかであろう。また、侵略行為という明らかな国際法違反を行ったロシアの指導者であるプーチンは、いかなるものになるかは予断を許さないものの、国際社会のなかでそれまでとは異なる役割を担わざるを得ない、もう一人の老人となっていくであろう。国際社会は、好むと好まざるとにかかわらず、新しい秩序に向かって進んでいく。しかし、その向かうべき秩序がどのようなものなのか、誰も明確な答えを持っていない。
 以上のように現時点では不確定極まりない状況ではあるが、本稿では、ロシアをとりまく国際関係やポスト・ソ連地域の安全保障について、2010年代後半から現段階までの地域秩序のあり方を確認し、若干の将来展望を試みる。


調査レポート
対ロ経済制裁の現状とその影響

ロシアNIS経済研究所 主任
長谷直哉

 本稿では、2月24日のロシアによるウクライナ侵攻開始後に、日米欧が導入した対ロ経済制裁、また世界各国の企業によるロシアビジネス撤退の動きについて、整理・分析し、解説する。また、ロシア経済との関係が深い、中央アジア・コーカサス諸国への影響についても補論として末尾に掲載した。
 今般の対ロ経済制裁について、特に米欧のその内容が実際には、報道されているものよりも広く、厳しい措置であることに注意願いたい(可能な限り、原文を確認されることを推奨したい)。今後も制裁は強化され、その数と範囲も拡大していく見通しであり、ビジネス実務という観点からすれば、「広大な地雷原」が出来上がっているとも形容することもできる状態で、ロシアビジネスのリスクは尋常ではなく跳ね上がったと言える。今般制裁によりロシアとのビジネスすべてが実施できなくなったわけではないが、物流と決済が寸断され、取扱い製品によっては取引ごとに制裁への抵触がないか確認の必要のある、難しい状況となっている。
 なお、本稿は『ロシアNIS経済速報』2022年3月5日号(No.1885)に掲載した拙稿をアップデートして新たに分析と情報を追加して作成したものであり、3月8日までの動きを反映した内容となっている。


INSIDE RUSSIA
SWIFT制裁はどこまで効くか

 昨年来、ロシアがウクライナに対する軍事的圧迫を強める中で、ロシアをSWIFT(国際銀行間金融通信協会)から排除することが、欧米のとりうる最強の制裁措置と言われてきた。そして、ロシアによるウクライナ軍事侵攻という事態を受け、欧州委員会は3月2日、ロシアに対するSWIFT制裁を実際に発表した(SWIFTはベルギーに本部があるためEUの法令に服することとなる)。(服部倫卓)


産業・技術トレンド
製造業の現場で見たロシアと喧嘩できないドイツ

 ロシアがウクライナに侵攻を開始した後、ドイツのロシアに対する態度は一変した。しかし、ウクライナ周辺での緊張が高まっている中、ヘルメット5,000個等、ドイツの冷たい態度が批判されていた。ドイツのロシアへのエネルギー依存がその理由と報道されている。恐らく、それは正しいのだが、ドイツがロシアに依存するのは、エネルギーに留まらない。コロナ前、筆者はロシアの製造業の現場を見る機会を多く持てた。ロシアの製造業の現場では、ロシアにおけるドイツの圧倒的な存在感を感じた。裏を返せばドイツのロシア市場への依存ということになる。結局、このようなことになってしまったが、ドイツはなんとかソフトランディングしてほしいと願っていただろう。ドイツの方向転換は苦渋の決断だったはずだ。(渡邊光太郎)


データリテラシー
もう一つの前線としての欧州ガス市場

 日増しに深刻さの度合いが増してゆき、ついにはロシアによる軍事行動に至ったウクライナ危機ですが、それと同時並行的に混乱が拡がってきたのが欧州の天然ガス市場です。昨年秋以降、欧州では天然ガスの不足が顕著となり、スポット取引は今では1,000m3当たりの価格が2,000ドルを超えることも珍しくなくなりました。この混乱の背景には、季節的な影響に加え、第1に欧州での脱炭素化の動きと、石炭から天然ガスへの急激な燃料転換、第2に世界的なLNG需要の高まりと供給のアンバランス、第3にガス供給契約期間の短期化と価格フォーミュラに占めるスポット比重の増加、第4にEUおよびロシアのガス貯蔵率の低下など、市場動向の変遷に伴う諸要素が短期間に顕在化、複合的課題として立ち現れたことが考えられます。(長谷直哉)


ロシアの二国間関係
緊迫する中で対話を続けるロシアとフランス

 世界中が注目するロシア・ウクライナ関係の仲介役に努めてきた国の1つであるフランス。欧州の中でドイツと並んで、ロシアと比較的良好な関係を築いてきたフランスは、2014年のクリミア併合以降、ミンスク合意の一員としてロシア、ウクライナと対話を続けてきた。そして2022年に入ってロシア・ウクライナ関係が緊迫化する中で、エマニュエル・マクロン仏大統領は2年ぶりロシアを訪問してプーチン大統領と会談を行い、その後も頻繁に電話会談を行って、積極的にロシアに働きかけてきた。(中馬瑞貴)


ロシア極東羅針盤
極東ズヴェズダ造船所の現在

 ロシアの造船業の復活に勤しむのは、サンクトペテルブルグやアストラハンなどロシア西部に限らない。ロシア極東もまた、資源輸送の需要拡大や北極海航路の発展をにらんで、すでに船の建造を進めている。外国からの優れた技術にまず取り組み、そこでの技術の習得を通じて開発力を高め、国産化を実現する戦略だ。その拠点が、沿海地方ボリショイカーメニ市にあるズヴェズダ造船所である。(齋藤大輔)


デジタルITラボ
ウクライナ侵攻とロシアの仮想通貨動向

 2022年2月21日、ロシアはウクライナ東部の親露派独立を承認した。そして、その3日後、軍事作戦を開始し、ウクライナへ侵攻した。これにより、欧米は過去最大級の経済制裁を発動し、いくつかの銀行をSWIFTネットワークから排除することを発表。また、米ビザとマスターは、ロシアの業務を停止した。今後、SWIFTネットワークが外れたロシアにおいて、海外送金ニーズを埋めるべく仮想通貨への注目が再び高まっている。2017年ごろ、このコラムでもロシアの仮想通貨規制について取り上げている。当時の記録をもとに、ロシアにおける仮想通貨規制の現在地と、今後の動向に関して考えてみたい。(牧野寛)


ミニレポート
ロシアとベラルーシが食品禁輸で奇妙な共闘

 2014年のウクライナ危機を受け、欧米がロシアに経済制裁を適用すると、ロシアは欧米からの主要食品の輸入を禁止して対抗した。ロシアはベラルーシおよびカザフスタンと関税同盟を結成しており、2015年にはそれがユーラシア経済連合に発展したので、本来であれば、ロシアは通商措置を一存で講じることはできないはずである。ロシアが事前の協議もなく一国で対抗制裁措置をとったことは、ユーラシア統合のパートナー諸国を困惑させた。その後、ロシアは水面下でパートナー諸国にロシアの対欧米制裁に共同歩調をとるよう求めた模様だが、カザフスタンにしても(当時の)ベラルーシにしても、欧米との良好な関係を望み、ロシアに同調することはありえなかった。(服部倫卓)


ロシア政財界人物録
ウクライナ問題とロシア要人によるSNS投稿

 今回は少し趣向を変えて、ロシアによるウクライナへの軍事的圧迫、DNRおよびLNRという自称人民共和国の一方的承認、そしてウクライナに対する軍事侵攻へと至る過程にて、ロシア要人がどのようなSNS投稿を行い、そしてそこで何を発信し、論じたのか、参考までピックアップし、論じたいと思います。(長谷直哉)


ロシアメディア最新事情
今ロシアメディアで起こっていること

 ロシアに来て9年になりますが、やはりこの国は予測不可能だと痛感させられます。ほんのわずかのうちにガラッと世界が変わってしまいました。このコラムを書いているのは3月7日で、皆さんがこれを目にする頃には状況は更に大きく変わっているでしょうが、私からは、この10日あまりの間に、ロシアメディアの中で何が起こっているか、実際に見聞きしたことを中心にお伝えしたいと思います。日本ではロシア発のニュースはフェイクニュースというレッテルをはられて十把一絡げにされていますが、このコラムで、ロシアメディアの「中の人」が何を考えているのか、少し想像をめぐらせてもらえれば幸いです。(徳山あすか)


ウクライナ情報交差点
これが最後でないと祈りたいウクライナ貿易統計

 毎年この時期、ウクライナ統計局の発表にもとづき、同国の貿易概況表を更新するのが年中行事になっている。ただ、首都キエフがロシア軍に包囲されつつあり、ウクライナ統計局のサイトもいつまで生きているか分からない。そう思い、2月の末に、貿易データを含め、各種データを慌ててダウンロードしまくった。その結果、ウクライナの貿易概況表を2021年まで更新することができた。(服部倫卓)


中央アジア情報バザール
中央アジア・コーカサスのウクライナ情勢への反応

 ロシアのウクライナへの軍事侵攻について、世界中から非難の的となっているロシア。2月28日から3日間にわたって開催された国連緊急特別会合では、ロシアの即時撤退などを求める決議が賛成141カ国で採択された。一方で、58カ国が棄権したが、その中にはアルメニア、カザフスタン、キルギス、タジキスタンなど、ロシアと密接な関係にある中央アジア・コーカサス諸国が含まれていた。西側諸国とは異なり、ロシアに近い国々はロシアの軍事侵攻に対してどのような反応を示したのだろうか。(中馬瑞貴)


ユーラシア珍百景
ロシア国旗を抵抗なく受け入れるベラルーシ

 2月にプーチン・ロシアがウクライナ侵攻に踏み切ったことにより、スポーツの世界にも影響が広がっている。国際サッカー連盟(FIFA)と欧州サッカー連盟(UEFA)は2月28日、ロシア代表およびロシアリーグに所属するクラブチームに対して、国際大会への参加を停止する制裁措置をとると発表した。ロシアは今年カタールで開催されるワールドカップの欧州予選でプレーオフ進出を決めていたが、おそらくこのまま敗退扱いとなろう。
 さて全世界的に「ロシア包囲網」が広がる中で、今日、数少ないロシアの明確な同盟国となっているのがベラルーシである。それでふと思い出した光景がある。 (服部倫卓)


記者の「取写選択」
ウクライナは滅びず

 笑顔と高揚感にあふれる広場を花火が照らす。2014年2月22日夜のキエフ中心部「独立広場(マイダン)」。ロシアとの関係を重視したヤヌコーヴィチ・ウクライナ大統領を、親欧米のデモ隊と野党勢力が打倒。治安部隊との衝突で荒れ果てた広場に人々が集まり、勝利集会が行われた。(小熊宏尚)


調査レポート
2021年のロシア乗用車市場の総括
―崩れた油価との連動性―

ロシアNIS経済研究所 名誉研究員
坂口泉

 ロシアの新車販売台数は2012年の300万台弱をピークに縮小傾向にある。特に、油価の下落傾向が目立ち始めた2015年以降は不振の度合いが強まっており、年間販売台数が200万台を割り込む状況が一貫して続いている。
 2021年は油価が年初から上昇に転じたことやコロナ禍を背景とする「非労働日」の影響で前年の数字が非常に悪かったことなどもあって、2月から6月までは販売台数が一貫して前年同月の数字を上回り、上半期の新車販売台数は前年同期比で36.9%も増加した。ただ、その後も油価の上昇傾向は続いたものの7月から販売状況が大きく変化し、年末まで前年割れの状態が続いた。


シリーズ 工業団地探訪
シェレメチェヴォ工業団地(モスクワ州)

 われわれが日ごろから出張や一時帰国などで利用することが多いモスクワの主要空港――シェレメチェヴォ国際空港。この空港に隣接して小さな工業団地が存在するのをご存知だろうか。その名もシェレメチェヴォ工業団地。今回はこの工業団地を探訪してみよう。(大橋巌)


ロジスティクス・ナビ
ロシア港湾の動向:2021

 2021年のロシア海洋港湾の動向を公式港湾統計に基づき解説します。コロナ禍ながら経済は好転し、貨物量、コンテナ流動も回復が鮮明になっています。(辻久子)


エネルギー産業の話題
ロシア原子力発電部門の輸出ポテンシャル

 2022年1月に欧州委員会は、期間限定ながら、ガスと原子力をグリーンなエネルギー源として認定する方針を発表しました。政治的な問題も絡み、そのことがロシアの原子力発電関連技術の欧州への輸出の大幅な増加につながる可能性は低いと思いますが、旧東欧圏を中心にロシアが関与している原子力発電プロジェクトの周辺の動きが慌ただしくなる可能性はあると思います。今回はそういった認識にたち、ロスアトムが関与している欧州およびトルコの新原発建設プロジェクトの現状をご紹介します。(坂口泉)


HOW TO ビジネス実務
ロシアの決算書を読む(2)

 今回のテーマはインターネット上などで広く一般に公開されている決算書関連の情報についてです。日本では株式を上場(公開)している企業は法律や証券取引所の規制により株主や投資家に対して投資の判断に必要な有価証券報告書や決算短信といった企業情報を公表する義務があります。またこの他にも企業が自主的に行う情報公開活動を含めてIR(Investor Relations)活動と呼ばれます。近年では株主や投資家だけでなく、顧客や地域社会等に対しても経営方針や活動報告を伝えるIR活動を通じ、相互理解や信頼関係を作り出すことで市場における企業の評価アップに貢献させることも狙いとなっています。(小川弘美)


ロシア音楽の世界
カリンニコフ交響曲第1番ト短調

 ヴァシーリー・セルゲエヴィチ・カリンニコフをご存知だろうか。失意と貧困の中で、34歳の若さで結核により早逝した抒情派の天才音楽家、その早過ぎる死去は20世紀幕開けの1901年、ロシア音楽界での激震だった。モーツァルトでも享年35歳、カリンニコフより早く逝ってしまった作曲家としては、「未完成交響楽」のシューベルト(31歳)、「乙女の祈り」のバダジェフスカ(27歳)、「荒城の月」の滝廉太郎(25歳)くらいしか思い浮かばない。(ヒロ・ミヒャエル小倉)