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ロシアNIS調査月報2022年8月号特集◆ロシア貿易の劇的 |
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特集◆ロシア貿易の劇的ビフォーアフター |
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調査レポート |
2021年のロシアの貿易統計 |
調査レポート |
ロシアの農産物貿易の現在地 ―2021年の動きを中心に― |
調査レポート |
月別データで見る2022年1〜5月の日ロ貿易 |
ロシア極東羅針盤 |
2021年のロシア極東貿易 |
データバンク |
相手国側データから見るロシアの最新貿易動向 |
エネルギー産業の話題 |
ロシア石油ガス分野における輸入代替の現状 |
データリテラシー |
欧州へ海上輸送されるロシア産原油の現状 |
地域クローズアップ |
スモレンスク州は東西南北の懸け橋 |
シベリア・北極圏便り |
北極海航路をめぐる政策の現状 |
ロシアの二国間関係 |
国際的な非難に動じないロシアとブラジル |
ロジスティクス・ナビ |
黒海・アゾフ海水域の物流 |
調査レポート |
昨今の情勢を踏まえたロシアでの人事と労務 |
報告 |
ロシアNIS貿易会令和4年度定時総会報告 |
INSIDE RUSSIA |
ロシアの軍需産業と輸入代替 |
産業・技術トレンド |
2021年ロシアの旅客機生産 |
ロシアメディア最新事情 |
新しい顔ぶれのペテルブルグ経済フォーラム |
ウクライナ情報交差点 |
ウクライナの電力とザポリージャ原発 |
中央アジア情報バザール |
着々と改善するウズベキスタン・タジキスタン関係 |
シリーズ 工業団地探訪 |
ウクライナ侵攻後の工業団地 |
HOW TO ビジネス実務 |
ロシアの決算書を読む(6) |
ロシア音楽の世界 |
リムスキー=コルサコフ「スペイン奇想曲」 |
業界トピックス |
2022年6月の動き |
通関統計 |
2022年1〜5月の輸出入通関実績 |
ユーラシア珍百景 |
ルクオイルが保有していたオデーサ製油所 |
記者の「取写選択」 |
ロシアの対欧情報戦 |
調査レポート
2021年のロシアの貿易統計
ロシアNIS経済研究所 所長
服部倫卓
ロシア連邦税関局が発行する『ロシア連邦外国貿易通関統計』の2020年年報が刊行され、2020年の同国の貿易動向に関する詳しいデータが明らかになった。そこで本稿では恒例により、『ロシア通関統計』およびその他の資料を利用し、同国の最新の貿易統計を図表にまとめて紹介し、あわせて解説をお届けする。
調査レポート
ロシアの農産物貿易の現在地
―2021年の動きを中心に―
ロシアNIS経済研究所 名誉研究員
坂口泉
かつてロシアは穀物のネットの輸入国であったが、約20年前にネットの輸出国に転じ、今は世界有数の穀物生産国として名をはせるようになっている。また、鶏肉や豚肉に関してもロシアは最近急激に生産量を伸ばしており、ネットの輸入国から輸出国に転じる展望も見え始めている。ただ、その一方で輸入依存度がいまだに強い部門も存在する。たとえば、主要な野菜のほとんどすべてにおいてロシアは純輸入国となっている。さらに、栽培用の種子や農業機械・設備に関しても輸入品への依存度の高さが目立つ。ロシアの農業分野には突出して輸出競争力が強い部門も存在するが、その一方で、輸入品に依存せざるをえない部門も少なからず存在するのである。ロシアは自他共に認める穀物大国ではあるが、農業大国と言い切るのは躊躇される。
本稿では、以上のようなロシアの農業分野が抱える問題点を意識しながら近年のロシアの穀物、油糧種子(ひまわり、大豆、ナタネ)、各種野菜、鶏肉・豚肉等の生産と輸出入の状況をご紹介するが、その際に、穀物と油糧種子の輸出関税や輸出枠に関連する目まぐるしい変化にも言及したい。さらに、ロシアのウクライナへの軍事侵攻を受け、その必要性が高まっている輸入代替への対応がどの程度進んでいるのかという点にもごく簡単にではあるが触れてみたい。
調査レポート
月別データで見る2022年1〜5月の日ロ貿易
ロシアNIS経済研究所 副所長
中居孝文
2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻とその後に米欧日等の“西側諸国”によって発動された大規模な対ロ制裁は、ロシアを巡るビジネス環境を激変させた。こうした大きな環境変化は、日本とロシアの間の貿易やビジネスに当然ながら甚大な影響を及ぼしている。本稿では、月別のデータに従って、最新の5月の実績を含めた2022年1〜5月の日ロ貿易の状況を紹介し、ウクライナ侵攻以降の日ロ貿易の変化をレポートする。
ロシア極東羅針盤
2021年のロシア極東貿易
ロシア極東税関の通関統計によると、2021年のロシア極東地域の貿易高は、輸出が286億ドル、輸入が106億ドル、輸出入の総額は392億ドルとなった。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は180億ドルの黒字であった。輸出は2019年、輸入は2013年に次いで過去2番目に高い水準となった。(齋藤大輔)
データバンク
相手国側データから見るロシアの最新貿易動向
ウクライナへの軍事侵攻後、ロシアは貿易統計をほぼ発表しなくなった。2022年2月の輸出入総額まではかろうじて公表されたが、3月以降についてはそれすらも出なくなった。かくして、ロシアの貿易は、相手国別・商品別といった内訳はもちろんのこと、輸出入総額すらも不明となり、まったくのブラックボックスの領域となってしまったのである。
かくなる上は、周辺的な情報から、ロシアの貿易動向を推測していくしかない。その最有力な手段が、ロシアの貿易相手国側のデータからアプローチすることであろう。そこでこのコーナーでは、ロシアの主要貿易相手国を14ヵ国ピックアップし、2021年1月〜2022年5月を対象に、当該相手国側の対ロシア月別輸出入データを整理することによって、間接的にではあれ、ロシアの貿易動向を把握することを試みる。なお、この14ヵ国の相手国で、ロシアの貿易総額の3分の2程度を占めているはずである。
エネルギー産業の話題
ロシア石油ガス分野における輸入代替の現状
ロシアは世界有数の石油ガス生産国ですが、技術面での西側企業への依存度は高くなっています。また、輸入代替も順調に進んでいるとはいえません。たとえば、石油分野では、外資系のサービス会社のロシアからの撤退もしくはロシア事業の縮小に伴う問題発生の可能性が指摘されるようになっています。ガス分野では、コンプレッサーステーションやLNGプラント用のタービンのメンテナンスを独力では行えないことに起因する問題が浮上してきています。今回は、それらの問題を通し垣間見える、ロシアの石油ガス分野の輸入代替の現実についてご紹介します。(坂口泉)
データリテラシー
欧州へ海上輸送されるロシア産原油の現状
今回は、対ロ経済制裁の焦点の一つ、欧州向けに海上輸送されるロシア産原油の関連データを紹介します。(長谷直哉)
地域クローズアップ
スモレンスク州は東西南北の懸け橋
ロシアによるウクライナへの侵略によって、ロシアとウクライナの国境地域が注目されるが、今回はもう1つの隣国、ベラルーシとの国境地域に目を向けてみたい。
ロシアとベラルーシの国境は全長1,239kmで、そのうち857.7kmが陸の国境、残りが川や湖の国境となっている。国境地域にあたるのは北から南へプスコフ、スモレンスク、ブリャンスクの3州であり、北のプスコフはリトアニアとエストニア、南のブリャンスクはウクライナとも国境を接している。真ん中にあるスモレンスク州だけはベラルーシとのみ国境を接する。スモレンスク州内にはモスクワとミンスク、両国の首都を結ぶ重要な幹線道路M1が東西に通過している。また、スモレンスク州にはサンクトペテルブルグとノヴォロシースクを結ぶ鉄道が南北に走っていたり、その他の自動車道路やパイプラインなど重要な輸送インフラが東西南北に張り巡らされていたりと、ロシアの重要な輸送拠点の1つとなっている。
またスモレンスクは、大祖国戦争時代にナチス・ドイツによる激しい攻撃に耐えた「英雄都市」として知られる町でもあり、その一方で、国際的に批判されている「カティンの森虐殺事件」(後述)の舞台となった場所でもある。軍事拠点として輝かしい栄光と負の遺産、2つの顔を持つ。本稿ではロシアの重要な拠点の1つ、スモレンスクについて概説する。(中馬瑞貴)
シベリア・北極圏便り
北極海航路をめぐる政策の現状
近年、北極海における著しい海氷減少が報告される中、反比例するように期待が高まっていたのは北極海航路の利用拡大です。北極海航路運用を担当するロスアトムの発表に拠れば、2021年の同航路の取扱い貨物量は3,485万tであり、2020年の実績である3,297万tから6%弱増加したことになります。この水準は、ロシア政府の北極海航路発展計画(2017年12月決定)に記載の昨年末までの目標値である3,200万tを上回るものであり、ロシア政府にとって満足いく結果であったことは間違いないでしょう。この状況は、ロシアによるウクライナ侵略以降の米欧日による経済制裁により変化したのでしょうか。本稿では、対ロ制裁発動以降の北極海航路の政策や実施状況について説明します。(長谷直哉)
ロシアの二国間関係
国際的な非難に動じないロシアとブラジル
ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、ロシアと諸外国との関係は悪化の一途を辿っているように見える。しかし、ロシアに制裁を課し、ロシア側から「非友好国」のレッテルを貼られている西側欧米諸国とは一線を画す国も数多く存在する。その1つがBRICSの一員である南米のブラジルだ。
ロシアがウクライナに侵攻する直前の2022年2月16日、国内外からの非難や懸念にもかかわらず、ボルソナロ・ブラジル大統領はロシアを公式訪問してプーチン大統領と対面で会談し、ロシアとの関係発展を強調した。両大統領が握手を交わす写真は、時節柄、世界中のメディアに取り上げられた。その後、3月2日に行われた国連の緊急特別会合でブラジルはロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議案に賛成を投じたものの、4月7日に行われた国連人権理事会の理事国を務めるロシアの資格停止を求めた決議では棄権票を投じた。対ロ制裁には加担しないことも表明しており、強硬な対ロ姿勢を取らない方針を示している。
さらに、6月24日にはBRICSのオンライン首脳会談が行われ、プーチンとボルソナロが顔をそろえた。両大統領は27日にも電話会談を行い、食料安全保障について協議。ウクライナ侵攻後、ロシアとブラジルの関係は、世界の潮流に反して、発展しているように見える。(中馬瑞貴)
ロジスティクス・ナビ
黒海・アゾフ海水域の物流
ロシア及びウクライナ産穀物の輸出港として黒海港湾が注目されています。ウクライナ産穀物が円滑に国際市場に出回らない場合はアフリカ諸国などで飢餓が発生するとの警告も出されています。ロシア港湾の中で日本とは疎遠な関係にあった黒海水域について解説します。(辻久子)
調査レポート
昨今の情勢を踏まえたロシアでの人事と労務
矢野瑞恵
今般のロシアによるウクライナ侵攻や事態の長期化により、ロシア経済全体への影響はもとより、ロシアで事業を展開している外国企業に及ぼす直接的・間接的な影響も日を追うごとに深刻さを増してきている。欧米諸国や日本による一連の対ロシア制裁にロシアからの対抗措置なども相俟って、事業の停止やロシア市場からの撤退といったビジネスそのものへの影響は言うまでもなく、それに付随する人員整理という難しい問題への対応を迫られている企業も少なくない。
そこで、本稿では、昨今の情勢に起因して人員整理を行う場合にどのような方法が考えられ、どのような点に注意する必要があるのかについて、最低限押さえておくべき事項を概括していく。このような手続きが必要とならないことを切に望むが、万一必要となった場合に少しでも参考になれば幸いである。
なお、本稿は、本年6月28日に開催されたROTOBO月例報告会において解説した内容に即したものとなっている。本稿の性格上、必ずしも専門的なアドバイスを提供することを目的としたものではない点にご留意頂きたい。実際に人員整理を行う際には、事前に専門家に相談の上、適切なアドバイスを受けられることをお勧めする。
報告
ロシアNIS貿易会令和4年度定時総会報告
一般社団法人ロシアNIS貿易会は東京の如水会館にて、6月13日に令和4年度定時総会を開催いたしました。定時総会では「令和3年度事業報告」の報告、第1号議案「令和3年度計算書類」、第2号議案「役員選任の件」の承認がなされました。 以下では定時総会において報告された令和3年度事業報告の内容を掲載するとともに、定時総会における来賓の矢作友良経済産業省大臣官房審議官(通商政策局担当)のご挨拶、また、飯島会長の挨拶を掲載いたします。
INSIDE RUSSIA
ロシアの軍需産業と輸入代替
先日、ウクライナのV.ダツェンコ氏という軍事アナリストが、フェイスブックに興味深い図解資料を投稿していた。戦車、装甲戦闘車両、火砲、多連装ロケット砲を対象に、ロシアとウクライナが開戦前に保有していた台数と、約3ヵ月後の5月20日に保有していた台数を比較したものである。(服部倫卓)
産業・技術トレンド
2021年ロシアの旅客機生産
例年にならい、Vzlyot誌に掲載された生産数に基づき、2021年のロシアの旅客機生産についてまとめる。結論としては、先行き不透明なのだが、2022年の開戦により、航空産業の状況は激変した。海外からの航空機や航空機部品の輸入が不可能になり、外国製旅客機の運行に障害が発生することが明らかになった。結果として、国産機の重要性が桁違いに大きくなった。では、国産機であれば、問題なく増産できるのかというと、決してそうではない。なぜ難しいのかという点と、今後の予想に重点を置いて解説する。(渡邊光太郎)
ロシアメディア最新事情
新しい顔ぶれのペテルブルグ経済フォーラム
今年もサンクトペテルブルグ経済フォーラムの取材に行きました。サプライズに見舞われたり、例年とは参加者の顔ぶれが違ったりと、色々予期せぬこともありましたが、最終的にはなんとかなりました。現場の雰囲気をお伝えしたいと思います。(徳山あすか)
ウクライナ情報交差点
ウクライナの電力とザポリージャ原発
ウクライナの過去10年の発電量について、この10年の見逃せない変化は、火力と原子力が逆転し、ウクライナの原発依存度がさらに高まったことだろう。ロシア産エネルギーへの依存から脱却したいウクライナにとって、原発はその重要な手段となっている。(服部倫卓)
中央アジア情報バザール
着々と改善するウズベキスタン・タジキスタン関係
2022年6月2日、タジキスタンのラフモン大統領がウズベキスタンを公式訪問し、ミルジヨエフ大統領と会談を行った。ウズベキスタンの政権交代以来、前任者の時代には考えられなかった勢いで両国の関係は発展の一途をたどっている。今回の会談では両大統領が「歴史的文書」と高く評価する「恒久的友好強化と同盟関係についての宣言」が調印された。ロシアによるウクライナ侵攻はもちろん、キルギス・タジキスタン国境での銃撃戦、アゼルバイジャンとアルメニアによるナゴルノ・カラバフ紛争の再燃など、近年、旧ソ連諸国同士の対立が相次ぐ中で改善に向かう関係は非常に重要である。(中馬瑞貴)
シリーズ 工業団地探訪
ウクライナ侵攻後の工業団地
ロシアの週刊経済誌「エクスペルト」は2022年第24号でロシアにおける工業団地と経済特区のランキングを公表した。このランキングは毎年1回公表され、今回で6年目になる。(大橋巌)
HOW TO ビジネス実務
ロシアの決算書を読む(6)
「決算書を読む」シリーズもいよいよ最終回となりました。引き続きアエロフロート・ロシア航空の2021年度決算報告書から、会社の財政状態を示す貸借対照表の純資産の部と負債の部を確認していきます。(小川弘美)
ロシア音楽の世界
リムスキー=コルサコフ「スペイン奇想曲」
ニコライ・アンドレーヴィチ・リムスキー=コルサコフの傑作「スペイン奇想曲」が作曲されたのは、1887年(今から135年前)の夏。翌年1988年にもう一つの代表作、交響組曲「シェヘラザード」を作曲している。この頃には、序曲「ロシアの復活祭」も書いており、創作意欲旺盛な彼の円熟期であったと言えよう。(ヒロ・ミヒャエル小倉)
ユーラシア珍百景
ルクオイルが保有していたオデーサ製油所
このところ続いているウクライナの思い出写真シリーズ。ウクライナでは1990年代の末頃からロシア資本による企業買収が盛んになり、オデーサの製油所はロシア民間石油最大手のルクオイルの傘下に入った。ところが、ウクライナの事業環境は悪化し、ロシア資本は圧迫を受けるようになる。結局、2013年にルクオイルは、ヤヌコーヴィチ大統領一家出入りの政商クルチェンコ(VETEKグループ)にオデーサ製油所を譲り渡し、ウクライナから撤退したのだった。(服部倫卓)
記者の「取写選択」
ロシアの対欧情報戦
シュプレヒコールと旗の波がローマの街を進む。2017年3月25日。欧州連合(EU)の特別首脳会議終了後のことだ。ある集団は青いEU旗を手に欧州の結束を訴え、別の人々は離れた場所で鎌とハンマーが描かれた赤旗などを掲げ、何やら叫んでいた。(小熊宏尚)