ロシアNIS調査月報
2023年1月号
特集◆外交樹立30周年を迎えた
日本とNIS
 
特集◆外交樹立30周年を迎えた日本とNIS
イベントレポート
第11回日本アゼルバイジャン経済合同会議
イベントレポート
第16回日本ウズベキスタン経済合同会議
調査レポート
ウズベキスタン共和国におけるICT分野の状況
調査レポート
戦時下のウクライナを巡る
―ウクライナ国民の覚悟と強さ―
データバンク
日本の対NIS諸国貿易統計(最新版)
中央アジア情報バザール
中央アジアの日本への期待

調査レポート
変化を迫られるロシアのスーパー業界
―強まる外的要因の圧力―
データリテラシー
ロシア産原油の海上輸送と輸入価格制限
INSIDE RUSSIA
制裁下のロシア・米国貿易動向
ロシア極東羅針盤
揺らぐ石炭の圧倒的優位性
エネルギー産業の話題
EUのロシア産石油禁輸措置をめぐる動き
産業・技術トレンド
日本の産業への戦争の影響1 低炭素フェロクロム
自動車産業時評
2022年1〜9月期ロシア自動車産業の動き
ロシア政財界人物録
クドリン辞任劇とヤンデックスの分社化
デジタルITラボ
内製化で変わるロシアのITサービストレンド
ロシアメディア最新事情
報じられない不動産ニュースと住宅市場の行方
ウクライナ情報交差点
ウクライナ鉄鉱石輸出は活路を開けるか
ロシア音楽の世界
ラフマニノフの交響詩「死の島」
業界トピックス
2022年11月の動き
ロシアを測るバロメーター
2022年11月末までの社会・経済の動向
通関統計
2022年1〜10月の輸出入通関実績
おいしい生活
日本人の舌にも合うジョージア料理
記者の「取写選択」
モイセーエフ舞踊団来日


イベントレポート
第11回日本アゼルバイジャン経済合同会議

 日本とアゼルバイジャンは1992年9月7日に外交関係を樹立した。記念すべき外交樹立30周年に合わせ、2022年9月5日、アゼルバイジャンの首都バクーにおいて第11回日本アゼルバイジャン経済合同会議(以下、合同会議)が開催された。前回の第10回合同会議は2019年11月に東京で開催され、バクーでの開催は2017年2月以来、約5年半ぶりである。以下では合同会議の概要についてご報告する。


イベントレポート
第14回日本ウズベキスタン経済合同会議

 2022年10月25日(火)、ウズベキスタン共和国タシケント市のHilton Tashkent Cityにて「第16回日本ウズベキスタン経済合同会議」が開催された。第15回会議が2019年7月に東京で開催されて以来、コロナ禍を経て3年余ぶり、現地では第13回以来、実に6年半ぶりの開催となった。今回のテーマである「日本・ウズベキスタン経済関係の再起動〜激変する国際環境への対応と新たなる可能性」に沿って、活発な議論が行われた。以下では合同会議の概要についてご報告する。


調査レポート
ウズベキスタン共和国のICT分野の状況

(一財)国際情報化協力センター企画部 部長
岡田光太郎

  2014年4月にプライベートでウズベキスタンを旅行して以来、ウズベキスタンに魅了された筆者は、今回、我が国における新興国のIT産業へのアプローチにおいて空白地帯となっている中央アジア、特に最大の市場規模を持つウズベキスタン市場での日本企業進出の活性化を目的として、基礎データの収集、人的ネットワークの構築を図る調査を実施した(公益財団法人JKA補助金事業『ウズベキスタン共和国におけるITC政策とICT産業現地ヒアリング調査』)。駐日ウズベキスタン大使館の多大な協力を得て、2022年7月13〜22日の日程で、同国の情報化に関係する各種機関に面談、ヒアリング等を行った。この結果、同国の情報インフラやビジネス環境はコロナパンデミックの期間を含む直近3年で大きく様変わりをしており、また、ロシアのウクライナ侵攻に伴う地政学的状況の混乱も、同国の情報化の状況に大きな変革をもたらしたことが明らかになった。
 以下では、本調査で訪問したウズベキスタンのICT政策の策定、実施を所管する情報通信技術省(MiTC)、電子政府開発センター、対外企業進出の窓口となる対外投資貿易省の日本窓口部局、官民のICT人材育成を行う教育機関、IT産業活性化の拠点となるIT Park等での情報収集の結果に基づいて、ウズベキスタン共和国のICT分野の最新動向について概説する。なお、本稿は個人の見解に基づくものであり、組織の見解ではないことを予めお断りしておく。


調査レポート
戦時下のウクライナを巡る
―ウクライナ国民の覚悟と強さ―

ウクライナ研究会 会務
國谷光司

 私が今回ウクライナ行きを決断したのは1つの大きな後悔からだった。2014年のユーロマイダンの際、私はウクライナを訪れることができなかった。変わりゆくウクライナをこの目で実際に見ることができなかったことは、大きな後悔として私の心にできた染みのように残っていた。しかし今回のロシア政府によって引き起こされた戦争によって、私の考え方が変わった。ウクライナの本当の分水嶺、ターニングポイントは2014年ではなかった。2022年2月24日がウクライナの本当の分水嶺、ターニングポイントだった。国際社会においても安全保障政策を根本から考え直さなければいけない歴史的大事件になった。
 私はウクライナ人の戦時下での暮らしを肌で感じたいという強い衝動とウクライナにいる多くの友人たちと再会を果たすべくウクライナに向かうことにした。


データバンク
日本の対NIS諸国貿易統計(最新版)

 日本財務省発表の貿易統計にもとづいて、日本とNIS諸国との貿易に関し、最新のデータをとりまとめて紹介する。小誌では2022年6月号(2022年5月20日発行)で2021年の日本とNIS諸国の貿易統計を掲載した。ただし、財務省による3月時点の発表は前年の「確々報値」であり、1年分の修正を加えた「確定値」は11月に発表される(2021年分は2022年11月11日に発表)。したがって、図表1で2021年の確定値を一覧にてご紹介する。また、国別のデータでは、各国の統計機関が公表しているデータをもとに、(1)貿易額、(2)主要品目、(3)主要貿易相手国、といった基本的な貿易概況とともに、独立以降の日本との貿易動向や輸出入商品構成(2022年1〜6月期)のデータを紹介している。


中央アジア情報バザール
中央アジアの日本への期待

 2022年12月1日、EBRD主催の「Central Asia Investment Forum 2022(以下、中央アジア投資フォーラム)」が帝国ホテル東京で開催された。個人的に、かなり久しぶりの対面式一大イベントということで、どこか懐かしさを感じつつ、ワクワクしながら出席させていただいた。中央アジア5カ国にモンゴルを加えた6カ国の代表が一堂に会したフォーラムで、各国の代表が自国の投資魅力をアピールし、集まった日本企業の代表らに投資を呼びかけた。本稿では、各国代表の発言から日本への期待をご紹介する。(中馬瑞貴)


調査レポート
変化を迫られるロシアのスーパー業界
―強まる外的要因の圧力―

(一社)ロシアNIS貿易会ロシアNIS経済研究所 名誉研究員
坂口泉

 ロシアにセルフ方式の近代的スーパーマーケットが初めて登場したのは1990年代半ばのことであった。当初は中規模のスーパーマーケットが中心であったが、その後、小型のディスカウントショップやハイパーマーケットも登場し、今やスーパーマーケットはロシアの人々にとって欠かせぬ存在となっている。市場規模も順調に拡大してきたが、コロナ禍に見舞われた2020年以降は伸びが鈍化している。コロナ禍と「特別軍事作戦」の影響で可処分所得が減少した市民が多く、客単価が伸び悩んでいるのである。換言すれば、何よりもまず価格の安さを重視する客の数が増加しているといえる。
 そのような状況を受けて、スーパー業界に1つの異変が生じている。ある時期から地方でしか受け入れられなくなっていたハードディスカウントショップが、最近になって、大都市でも徐々に復活の兆しを見せているのである。また、「特別軍事作戦」開始後に多くの外国企業がロシア市場から撤退したことも、ロシアのスーパー業界にもう1つの異変をもたらしている。PB(プライベートブランド)商品を撤退した外国メーカーの商品の代替品と位置付け、そのラインナップの強化に取り組み始めるチェーンの数が目立ち始めており、どのチェーンでもPBのプレゼンスが強化されている。
 本稿では、コロナ禍と「特別軍事作戦」がもたらした影響に留意しながら、ロシアのスーパーマーケット業界の現状をご紹介する。


データリテラシー
ロシア産原油の海上輸送と輸入価格制限

 本稿では、2022年12月5日に発効予定のEUによるロシア産石油禁輸措置、またG7他にて議論のロシア産原油に対する輸入上限価格措置導入を前に、海上輸送原油に関連するデータを整理して現状を示しておきたいと思います(本稿は2022年11月末日に執筆)。これらデータからは、様々な制裁が科せられているにもかかわらず、依然として活発にロシア産原油の取引が行われていることが分かります(関連数値は過去2回、本誌にて公開)。また、データの整理だけでなく、輸入上限価格措置の導入に関して実施した、欧州の専門家に対するインタビューの回答も紹介します。(長谷直哉)


INSIDE RUSSIA
制裁下のロシア・米国貿易動向

 ロシアが貿易統計を一切発表しなくなったので、最近筆者は、ロシアの主要貿易相手国の対ロ輸出入データを参照することによって、ロシアの貿易動向を探るという作業を試みている。それを眺めていて、実感するのは、先進諸国の中でも、とりわけ米国と英国が、ロシアとの輸出入を急減させているという事実である。米英は、政治的にロシアと敵対する急先鋒であり、対ロ制裁にも前のめりなので、合点の行く話だ。以前から欧米を敵視していたプーチン・ロシア大統領も、最近では特に米英を意識して、「アングロサクソン」こそがロシアの敵という具合に、若干発言のニュアンスが変わってきている。(服部倫卓)


ロシア極東羅針盤
揺らぐ石炭の圧倒的優位性

 ロシア東部方面(極東港湾)への鉄道貨物輸送で、石炭の圧倒的な優位性が揺らいでいる。アジア重視を掲げて東部地域の鉄道輸送力を拡張しているところに、ロシアによるウクライナ侵攻とそれに伴う西側諸国による経済制裁や禁輸措置が発生し、欧州に輸送してきた貨物の東へのシフトが起きているためだ。急速に進むロシアの貿易変化も、この流れを後押しする。(齋藤大輔)


エネルギー産業の話題
EUのロシア産石油禁輸措置をめぐる動き

 EUのロシア産石油の禁輸措置が2022年12月5日より発効することになっていますが、本稿を執筆している11月下旬時点で、すでに、当該措置をめぐる様々な情報が飛び交っています。本稿では、それらの情報の中から特に興味深いものを取り上げてご紹介することにします。(坂口泉)


産業・技術トレンド
日本の産業への戦争の影響1 低炭素フェロクロム

 本連載において、今後半年間、ロシアの存在感が世界市場で大きい金属について、ロシアによる対ウクライナ戦争の影響を分析していく。初回は、低炭素フェロクロムを扱う。戦争前、日本の輸入量の半分をロシアに依存していたフェロクロムは、戦争により最盛期には価格が2倍になったという。(渡邉光太郎)


自動車産業時評
2022年1〜9月期ロシア自動車産業の動き

 本稿では、ロシアの調査会社「ASMホールディング」とAEBが発表したデータをもとに、2022年1〜9月期のロシアの乗用車と商用車(トラック、バス)の生産と販売の状況をご紹介します。(坂口泉)


ロシア政財界人物録
クドリン辞任劇とヤンデックスの分社化

 2022年11月29日、クドリン会計検査院長官が辞任の意思を表明し、自身のTelegramアカウントにて、「私は約25年間、そのキャリアの大半を政府部門にて過ごしてきました。今後は、広い意味で民間主導の発展へとつながると見込まれる、市井に大きな影響を及ぼすビッグプロジェクトに取り組みたいと思います。このため、私は会計検査院長官の辞任を正式に大統領に対して申し入れました」と投稿しました。クドリンの辞任申し入れは上院(連邦院)に即日受理され、翌11月30日にクドリンの期限前解任が決定されました。そして、同12月5日、クドリンは再び自身のTelegramアカウントの投稿にて、ヤンデックスの顧問職へのオファーがあり、それを受け入れたことを公表しました。
 長らく財務大臣を務め、同職退任後も会計検査院長として政権に残り続けてきたクドリンが政治の世界から去ることにより、プーチン政権において経済テクノクラートの影響力が失われることを懸念する見方が多いことは、日本での関連報道でも明らかです。ただし、それ以上に注目すべきは、この辞任劇がロシアIT最大手であるヤンデックスの再編と同期しながら展開してきた点にあります。本稿では、クドリンとヤンデックスの関わりに焦点を当てつつ、今回の顛末について説明したいと思います。(長谷直哉)


デジタルITラボ
内製化で変わるロシアのITサービストレンド

   西側諸国からロシアに経済制裁が課されてから既に半年以上が経つ。その間、ロシアはさまざまな国内産業を内製化させていくだろうと予想されてきた。今回は、ロシア国内ですでに内製化が進んでいるサービスと、これから内製化が進むであろうと思われるサービスの2つに分けて、ロシアのITサービスの今をご紹介したい。(大森貴之)


ロシアメディア最新事情
報じられない不動産ニュースと住宅市場の行方

 ロシアに住み始めた当初、ロシア人というのは本当にマンション購入やリモント(住居の改装、改築、修繕など)の話題が好きなんだなと思って驚いた記憶があります。自分自身が快適に暮らしたいと思うと同時に、ロシア人の資産運用の手段として住宅投資が最も一般的だからでしょう。また、若い層でも持ち家に住みたいという、マイホーム信仰がとても強いと思います。アッパーミドルクラスでは、子どもが大学入学時に、親がワンルームマンションを買ってあげるという習慣もまだ生きています。朱に交われば赤くなるもので、ロシアに住んで9年経った今、私も不動産ニュースを真剣にチェックするようになりました。11月は、不動産売買に関する重要なニュースが続きました。(徳山あすか)


ウクライナ情報交差点
ウクライナ鉄鉱石輸出は活路を開けるか

 ウクライナにとって鉄鉱石は、重要輸出品目の1つである。ウクライナの商品輸出総額に占める鉄鉱石の比率は、2012年時点では4.8%だったが、年々高まり、2021年には10.7%に達した。(服部倫卓)


ロシア音楽の世界
ラフマニノフの交響詩「死の島」

 セルゲイ・ラフマニノフ(1873〜1943年)については、このコラムでも2年程前に取り上げて、世界で一番大きな手をしていたピアニストとして紹介した。誰にもマネの出来ない技巧で一世を風靡したラフマニノフは、身長198cmの巨人で、大きな手を広げて長い指でもって、鍵盤の上で縦横無尽に活躍した、世紀のヴィルトゥオーゾ・ピアニストであった。
 今年は彼の生誕150周年、没後80周年の記念の年にあたり、彼の作品群の再評価が深まるだろう。(ヒロ・ミヒャエル小倉)


おいしい生活
日本人の舌にも合うジョージア料理

 最近、日本でも関心を集めるジョージア料理。本場トビリシのKOPALAホテルにあるレストランは、美味しいジョージア料理が食べられる上に、窓からの景色が最高。(斉藤いづみ)


記者の「取写選択」
モイセーエフ舞踊団来日

  緞帳が上がった瞬間、ステージから客席へとロシアの夏風が吹き抜けたように感じた。2022年10月21日、埼玉県和光市で行われた民族舞踊団「イーゴリ・モイセーエフ記念国立アカデミー民族舞踊アンサンブル」日本ツアーの最終公演。最高峰のダンサーたちに再会できた喜びと、彼らが幸せそうに見えたことへの嬉しさがこみ上げてきた。(小熊宏尚)