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ロシアNIS調査月報2023年2月号特集◆世界が直面するロシア発の |
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特集◆世界が直面するロシア発の資源・原料不安 |
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調査レポート |
ウクライナ危機以降の世界の食料安全保障 ―持続可能な農業・食料システムの構築を求めて― |
調査レポート |
肥料輸出で制裁に楔を打ち込みたいロシア |
調査レポート |
ロシアの金属産業の現実と幻想 ―金属資源大国との根強い誤解― |
調査レポート |
「特別軍事作戦」とロシアの採金分野 ―制裁が及ぼした影響― |
ビジネス最前線 |
何度も転換期を経験してきた日ロの漁業関係 |
エネルギー産業の話題 |
プライスキャップのロシア産石油ガス供給への影響 |
データリテラシー |
ロシア石油ガス税収の現状 |
INSIDE RUSSIA |
天然ガスに見るロシア・中国の微妙な温度差 |
ロシアの二国間関係 |
エジプトの食料安定供給にロシアは不可欠 |
講演録 |
ロシアにおける配当支払と株式・持分処理の規制 |
日ロビジネス群像 |
『日露異色の群像』を引き継ぐ ―小川和男・ROTOBO研究所元所長@― |
ロシア極東羅針盤 |
制裁下の中古車輸出ブーム ―日ロビジネスの最後の希望― |
シベリア・北極圏便り |
北極海航路利用と最近のロシア国内議論 |
シリーズ・工業団地探訪 |
統制経済化の足音 |
ロシアメディア最新事情 |
マリウポリでもらった新聞を読んでみた |
ドーム・クニーギ |
世界と日本を目覚めさせたウクライナの「覚悟」 |
ウクライナ情報交差点 |
戦争によるウクライナの物的損害が1,400億ドルに |
中央アジア情報バザール |
第2期トカエフ政権始動 |
デジタルITラボ |
NIS諸国で創業されたユニコーン |
ロシア音楽の世界 |
グリンカ「ルスランとリュドミラ」序曲 |
業界トピックス |
2022年12月の動き |
ロシアを測るバロメーター |
2022年末までの社会・経済の動向 |
通関統計 |
2022年1〜11月の輸出入通関実績 |
おいしい生活 |
アゼルバイジャンの国民的ブランド・アゼルチャイ |
記者の「取写選択」 |
ロシア正教会の苦悩 |
調査レポート
ウクライナ危機以降の世界の食料安全保障
―持続可能な農業・食料システムの構築を求めてー
国連食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所 所長
日比絵里子
2022年2月に始まったウクライナとロシアの紛争から、まもなく1年が経過する。「食料安全保障」という言葉を、前例がないほど頻繁に耳にする1年でもあった。ウクライナとロシアの両国が主要農産物の輸出国であるだけでなく、ロシアが肥料の主要輸出国であることなどから、生産や流通の停滞が世界的な食料価格の高騰に繋がり、紛争当事国をはるかに超えるグローバルな食料不安をあおる結果となった。実際には、エネルギー価格の高騰、為替の変動、インフレと景気停滞、それに加え気候変動や生物多様性喪失など中長期的な環境要因など、様々な懸念材料が重層的に働きかけ、世界の食料安全保障に大きな影響を与えたと言える。
本稿では、国連食糧農業機関(FAO)が発表する報告書やデータなどをもとに、ウクライナ・ロシア紛争に限定せず、世界の食料安全保障に働きかける様々な要因を複眼的にご説明する。同時に、中長期的な世界の食料安全保障の課題に取り組むため、今注目を浴びる「持続可能な農業・食料システム」という概念についてもご紹介したい。
調査レポート
肥料輸出で制裁に楔を打ち込みたいロシア
北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター 教授
服部倫卓
筆者は2021年12月号の月報で、ロシアの肥料産業を取り上げた。肥料は本来平凡なコモディティのはずだが、世界的な価格高騰を背景として、ロシアの肥料は対外的にも国内的にもにわかに政治色の濃い商品になりつつあるというのが、その論旨であった。個人的に、最近改めてそれを実感したのが、2022年11月にV.プーチン大統領がクレムリンに肥料業界の大立者D.マゼピン氏を招き、会談を行った時だった。マゼピンはウラルヒム社の会長で、ロシア産業家・企業家同盟の肥料委員会の委員長も務める。実はプーチンは2022年1月にもマゼピンと二者会談を行っていた。ガスプロム、ロスネフチ、ズベルバンクのような国策企業ならともかく、プーチンが一民間企業の経営者と年に2度も会うのは、異例ではないだろうか。
くしくも、2022年2月の軍事侵攻開始以降、ロシアの肥料はかつてなく地政学的な駆け引きの目的に、そして手段になっている。世界最大級の肥料輸出国であるロシアだけに、プーチン政権には、国際的に供給不安が生じている肥料の輸出を通じて、欧米主導の対ロシア制裁網に楔を打ち込みたいとの思惑が見て取れる。本稿では、前回のレポート発表後にロシアの肥料をめぐって生じた劇的な情勢変化につき報告する。
調査レポート
ロシアの金属産業の現実と幻想
―金属資源大国との根強い誤解―
(一社)ロシアNIS貿易会ロシアNIS経済研究所 研究員
渡邊光太郎
ロシアは、地下資源大国であることは間違いない。実際、パラジウムを供給するノリリスクの鉱床のように、資源大国ロシアを象徴する立派な金属鉱床もある。日本もロシアの金属を大量に使用してきたので、別の連載で扱うように、日本の産業界に影響を及ぼしているロシア産金属もある。しかし、金属資源には様々な種類がある。種類によっては、ロシアが輸入に依存している金属も多種類ある。2022年2月24日の対ウクライナ戦争開始後、ロシア政府が「戦略的金属の確保」などと、まるで日本みたいなことを言い出しているほどだ。
資源大国としてのイメージが先行しているものの、実は、ロシアが弱い金属や、ロシアが強い金属でも、海外の資源に依存している場合がある。ロシアの金属は種類によって状況がまったく異なるのが現状である。本稿では、極力広い範囲の金属について、読
者がざっくりとしたイメージを持てるよう簡単に解説する。
調査レポート
「特別軍事作戦」とロシアの採金分野
―制裁が及ぼした影響―
(一社)ロシアNIS貿易会ロシアNIS経済研究所 名誉研究員
坂口泉
金はロシアの主要な輸出品目の1つであり、2021年の輸出額は174億ドルに達した。そして2021年時点で、ロシアは中国に次ぐ世界第2位となる金(二次地金を含む)の生産国でもあった。
しかし、その他の主要輸出品目と同様にロシア産の金も欧米諸国による制裁の対象となり、2022年3月にロシア産の金地金(インゴット)は、LBMA(ロンドン貴金属市場協会)の基準を満たしていることを証明するグッドデリバリー(受渡適合品)の認定を取り消された。その結果、世界最大の金の取引所であるLBMA経由でロシア産の金地金を販売することが困難となった。念には念をいれるような形で2022年6月から8月にかけて、米国、EU、スイスなどがロシア産の金地金を禁輸措置の対象にすることを発表しているが、2021年にはロシア産の金地金の約9割が英国のLBMA経由で販売されたという事実を勘案すると、2022年3月時点ですでにロシア産の金地金の輸出に大きな支障が生じていたと考えてよいであろう。
本稿では、金地金の禁輸措置に対するロシア側の反応、「特別軍事作戦」開始後の金の国際市場の動きなどに着目しながら、ロシアの採金分野の現状をご紹介する。
ビジネス最前線
何度も転換期を経験してきた日ロの漁業関係
北海道機船漁業協同組合連合会 常務理事
原口聖二さん
2022年2月のウクライナ侵攻に伴う対ロシア経済制裁の影響を受けて、日ロ貿易は全体的に低迷しています。ところが、そうした中で、魚介類のロシアからの輸入は全般的に増加傾向にあります。自動車、エネルギーなどが日ロ貿易の主力製品と考えられていますが、実は魚介類、水産物も主要貿易品目の1つです。こうした日ロ間の水産・漁業分野の関係について、北海道機船漁業協同組合連合会(KISENREN)の原口聖二常務理事にお話を伺いました。(中馬瑞貴)
エネルギー産業の話題
プライスキャップのロシア産石油ガス供給への影響
EUのロシア産石油の禁輸措置が2022年12月5日より発効しましたが、同日よりEUとG7によるロシア産石油を対象とする価格上限値(プライスキャップ)設定措置も発効しました。その後、12月19日にEUはガスに関しても2023年2月15日よりプライスキャップを設定することを発表しました。本稿では、石油とガスの価格上限値設定措置の概要を紹介すると同時に、それがロシア産石油ガスの国際市場への供給に及ぼす影響について考察してみます。(坂口泉)
データリテラシー
ロシア石油ガス税収の現状
今回は、ロシア財務省が公開している石油ガス税収統計を整理して紹介します。(長谷直哉)
INSIDE RUSSIA
天然ガスに見るロシア・中国の微妙な温度差
2022年12月30日にV.プーチン・ロシア大統領と習近平・中国国家主席のリモート首脳会談があった。(服部倫卓)
ロシアの二国間関係
エジプトの食料安定供給にロシアは不可欠
エジプトは世界第1位の小麦の輸入国で、輸入全量のうち約50%をロシア、20%以上をウクライナに依存している。にもかかわらず、2022年5月、エジプトは穀物を積んだロシア船の寄港を拒否。エジプト当局は拒否の理由を「書類の不備」と説明したが、3月の国連によるロシア非難決議に賛成したエジプトによるウクライナへの支持・連帯の表れともとれる対応であった。一方、2022年6月に開催されたサンクトペテルブルグ国際経済フォーラムで講演したシーシー・エジプト大統領は、ロシアがエジプトにとって重要なパートナーであることを強調した。
小麦が不足すればパンの価格が上昇する、それによって国民の政府に対する不満が増大するリスクを考えると、エジプト政府にとって小麦の安定供給は体制安定化に直結する重要課題であり、その要となるのがロシアというわけだ。そこで本稿では、農産物貿易、特に穀物供給で密接な関係にあるロシアとエジプトの関係について概説する。(中馬瑞貴)
講演録
ロシアにおける配当支払と株式・持分処分の規制
BST Consulting
K・セリャコワ/A・マトヴェエワ
2022年11月24日(木)、ロシアNIS貿易会はロシア情報提供セミナー「撤退・清算時の配当等の支払いと株式・持分処分に関わる手続き」をリモートで開催した。本セミナーでは、Business Solutions and Technologies(略称BST Consulting、旧デロイト)の専門家2名を講師にお招きし、ロシア市場からの撤退に伴う法律上の問題につき報告を行った。とくに今回、2人の専門家には、過去2回の情報提供セミナー(8月25日及び10月20日)の際に参加者より多くの質問をいただいた、@配当、債務弁済、清算後の残余財産処理などに伴う支払い、A株式会社の株式及び有限責任会社の持分の処分に関わる制限と手順に焦点を当ててご説明をいただいた。本号では、その報告要旨をご紹介することとしたい。
日ロビジネス群像
『日露異色の群像』を引き継ぐ
―小川和男・ROTOBO研究所元所長@―
株式会社ロシアン・アーツ代表取締役であり、ロシア文化フェスティバル日本組織委員会事務局長である長塚英雄さんの責任編集による『日露異色の群像30』は2014年に出版された。政治、経済、文
化、スポーツ、学術など様々な分野において両国の交流に尽力した人々を紹介する書籍である。その後、『日露異色の群像30』は『続・日露異色の群像30』『続々・日露異色の群像30』『新・日露
異色の群像30』とシリーズ化され、ぼくは『続』で満州・ハルビンに設立された日露協会学校(後の哈爾浜学院)初代校長の井田孝平、『新』で哈爾浜学院の最後の入学生となり、後に丸紅で日本とソ連極東の貿易に携わることになる島津朝美氏についての原稿を寄せた。そして5巻目となる『総集編・日露異色の群像30』では、ロシア東欧貿易会・ロシア東欧経済研究所の所長を務めた小川和男さんを取り上げる準備をしていた。
ところが2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻。長塚氏によれば、日ロ関係は戦後最悪となり、寄稿を辞退する執筆者も出てきたという。さらには同氏自身が体調を崩されたこともあり、本シリーズの集大成となる『総集編』の出版は頓挫した。ぼくは、こんな時代であるからこそ『異色の群像』を出版すべきだと考えていた。23年間に渡って勤務したROTOBO(ロシアNIS貿易会)、そしてお世話になった小川さんへのささやかな恩返しとも思っていた。それから数カ月後、中居孝文・ロシアNIS経済研究所長より連絡をいただいた。そこには小川さんと旧知の仲で、朝日新聞編集委員だった白井久也さんが1981年4月24日付同紙の「ひと」欄で小川さんを紹介する記事が添付されていた。ぼくは、小川さんの功績を『ロシアNIS調査月報』に寄稿させてもらえないかとお願いした。ありがたいことに『調査月報』の中馬瑞貴編集担当ともども了承いただき、中居所長からは「小川さんに限らず、戦後の日ソ(ロ)経済関係に尽くした人々の足跡も複数回にわたって紹介できないか」との提案もお受けした次第である。
そこで「日ロビジネス群像」と題する連載をスタートすることにしたい。そしてこの連載をROTOBO在職時の小川さんとの思い出ならびに同氏が残した著作を振り返るところから始めたいと思う(芳地隆之)
ロシア極東羅針盤
制裁下の中古車輸出ブーム
―日ロビジネスの最後の希望―
極東中古車ビジネスは、日ロビジネスでも極めてユニークな存在である。日本とロシア間のビジネスとしては、サハリンでの石油ガス開発や水産取引などがあるが、中古車ビジネスの特徴は、静かに、したたかに、そして誰にも依存することなくビジネスを続けていることである。日ロの中古車業者は黙って静かにという「鉄則」を30年以上も前から実践してきたのである。(齋藤大輔)
シベリア・北極圏便り
北極海航路利用と最近のロシア国内議論
ロシアを取り巻く国際経済情勢が厳しさを増す中、当初計画通りの発展や投資誘致は見込めないものの、それでもロシアでの期待感が強いプロジェクトとして北極海航路関連案件があります。対ロ経済制裁により、ロシア発またはロシアを仕向け地とする輸送船舶を対象とした寄港制限、また船舶保険の提供停止などが科せられ、ロシアの輸出入業者は物流網の組み換えを迫られ、対応を急いでいます。この状況に対し、ロシア政府もスエズ運河を管理するエジプト、またボスポラス海峡やダーダネルス海峡のあるトルコとの関係維持に腐心するとともに、イランとは同国およびカスピ海沿岸地域を経由する南北回廊の発展について議論しています。そして、北極海航路の発展もこの文脈において展望が語られることが増えてきました(長谷直哉)
シリーズ・工業団地探訪
統制経済化の足音
2022年12月15日、筆者が顧問を務めるロシア工業団地協会では、歳末恒例の冬季会員懇親会が開催された。懇親会では協会の2022年の活動が総括されるとともに、2023年の事業計画が発表された。また、3社の工業団地管理会社が新規入会会員として紹介された。日本で報道されているウクライナ戦線におけるロシア軍の苦境と西側諸国による対ロ経済制裁の強化にもかかわらず、工業団地協会の事業活動は安定的に進行しているように見える。工業団地協会は2022年の秋から冬にかけ、ノヴォシビルスクで開催された産業インフラ振興フォーラム「インパルク」やモスクワで開催された輸出振興フォーラム「ロシア国産」などにおいて、ロシアにおける工業団地発展の新たな方向性や国際協力のあり方について積極的に提言・情報発信してきた。また、最近では国内の大手通信会社ロステレコムと共同で、ロシアにおける工業団地のデジタル・トランスフォーメーション促進に関する事業を進めている。
同時に筆者は、工業団地整備を含む、ロシアにおける経済開発の新たな戦略的な方向性に関する議論の流れにも注目してきた。ロシアではこの数カ月、経済の統制化(動員化)に関する議論がしばしば持ち上がるようになった。ロシアの民間企業は市場における需給関係と事業の収益性にもとづいた自由な経済活動を維持し続けるのか、あるいは企業は国策に従って生産内容や出荷先の優先度を強く要求されるようになるのか。ウクライナ戦争の長期化にともない、ロシアの経済・産業史は新しい段階に入るのだろうか。以下では、筆者に見えた統制経済化の議論の一部を概観してみたい。(大橋巌)
ロシアメディア最新事情
マリウポリでもらった新聞を読んでみた
12月、休暇を利用して2週間ほどマリウポリに行ってきました。ハンティ・マンシ自治管区(ユグラ)にあるボランティア団体のメンバーとなり、ユグラの住民 が集めた人道支援物資や食料品を届けるミッショ ンに参加しました。市内各所にある自治会と連携して、一人暮らしの年金生活者や寝たきりの人、老々介護の家、電気もガスも水も全く復旧していない家などをピックアップし、直接訪問しました。自治会の事務所には無料配布の新聞をもらいに来る人がたくさんいました。マリウポリには通話のための電波はあるのですが、インターネットがほとんど使えないため、好きな時間にネットでニュースを見る、なんてことはできません。電気も、復旧しているところはありますが、使える量に限りがあり、複数の家電を同時に使うと、自分の部屋だけでなく集合住宅全体が停電になってしまう状況です。電気が復旧したアパートの入り口には、近所の人のことも考えて電気を使うように、という貼り紙がしてあります。つまりは、ここでは新聞が昔のように、情報伝達の役目を果たしているわけです。。(徳山あすか)
ドーム・クニーギ
世界と日本を目覚めさせたウクライナの「覚悟」
本書の著者は、特命全権公使を含めモスクワの日本大使館に4度の勤務経験があり、また2019〜2021年には駐ウクライナ特命全権大使を務めた倉井高志氏で、読者の中にはモスクワやキーウで、著者にお世話になった方も多いのではないだろうか。(中居孝文)
ウクライナ情報交差点
戦争によるウクライナの物的損害が1,400億ドルに
2022年7月号の本コーナーでお伝えしたとおり、ウクライナ政府はシンクタンクと共同で、ロシアによる侵攻開始後に生じた物的損害を集計する作業を続けている。このほど、最新の11月時点のデータが発表された。(服部倫卓)
中央アジア情報バザール
第2期トカエフ政権始動
2022年がカザフスタンにとって激動の1年であったことは言うまでもない。エネルギー価格の高騰に反発する市民のデモが反体制運動にまで発展した「1月の騒乱」によってカザフスタンの代名詞とも呼べるナザルバエフ初代大統領の時代がいよいよ本当に幕を閉じ、トカエフ大統領は「新しいカザフスタン」、「公正なカザフスタン」の構築を公言。国民の真偽を問うべく、6月5日に憲法改正のための国民投票(詳細は『ロシアNIS経済速報』2022年6月15日号/No.1894)、11月20日に前倒しの大統領選挙が行われた(詳細は『ロシアNIS経済速報』2022年11月25日号)。81.31%の得票で再選を果たしたトカエフ大統領の2期目が幕を開けた。(中馬瑞貴)
デジタルITラボ
NIS諸国で創業されたユニコーン
今回はNIS諸国で創業されたユニコーンに焦点を当て、今後のNIS諸国におけるスタートアップ・エコシステムの発展の可能性について見ていきたい。ユニコーンとは未上場で評価額が10億ドル以上のスタートアップのことを言う。各国のスタートアップ・エコシステムの評価においてユニコーン数がその評価軸として活用されることもあり、ユニコーンランキングというレポートも発表されている。未だにNIS諸国のスタートアップ・エコシステムが世界的に注目される機会は少なく、それはユニコーンの存在があまり認知されていないというのも一因だろう。NIS諸国発のユニコーンを確認することにより、その地域におけるスタートアップ・エコシステム発展の可能性について見ていきたい。また、2022年にロシアのウクライナ侵攻が始まり世界中が波乱に飲み込まれた。特にロシアのスタートアップ・エコシステムにおいて、将来のエコシステムを牽引する有望な人材の流出が起こり、非常に厳しい1年となった。一方でロシアとの繋がりの深いNIS諸国においても、エコシステムの変動が起こっている。その変動についても見ていきたい。(大森貴之)
ロシア音楽の世界
グリンカ「ルスランとリュドミラ」序曲
ミハイール・イヴァーノヴィチ・グリンカ(1804〜1857年)は、「ロシア国民楽派の祖」とか「ロシア音楽の父」と呼ばれる。ドイツやイタリアの音楽が主流だった西欧音楽の影響を強く受けていた19世紀初頭のロシア音楽界にあって,ロシア独自の民族的基盤も踏まえたロシア音楽の創造を実現した作曲家である。ロシア楽壇の歴史を語る際には最初に登場する作曲家と言える。彼が深い影響を与えたチャイコフスキーにとっては36年先輩、「ロシア5人組」の一人、リムスキー・コルサコフにとっては40年先輩にあたる。(ヒロ・ミヒャエル小倉)
おいしい生活
アゼルバイジャンの国民的ブランド・アゼルチャイ
アゼルバイジャンはソ連時代から有名な茶葉の産地で、国内はもちろん、ロシア・NIS諸国の人々にもアゼルバイジャン産の紅茶が親しまれてきた。洋ナシのような形のガラスのカップ&ソーサ―で出される紅茶は異国情緒溢れ、目にも楽しい。(斉藤いづみ)
記者の「取写選択」
日本正教会の苦悩
「聖歌隊や楽隊の指揮者にもウクライナ人がいます。週刊誌にロシアの手先のように書かれましたが、違います。私たちは戦争に反対しています」。日本正教会の総本山%結桾怺大聖堂(通称ニコライ堂、写真)の有力信徒は12月24日、私にこう話し、正教を主要宗教とする国同士がクリスマス(日本正教会は12月25日と、ユリウス暦由来の1月7日の両方を祝う)期間にさえ戦っている現状を嘆いた。(小熊宏尚)