ロシアNIS調査月報2024年1月号特集◆グローバルサウスで |
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特集◆グローバルサウスで存在感を増すロシア・NIS |
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調査レポート |
インドのユーラシア外交 ―対ロシア・中央アジア関係の展開を読み解く― |
調査レポート |
ロシアの対アフリカ政策 ―軍事的関与と経済外交― |
調査レポート |
サウジアラビアの対ロシア関係 |
ロシアの二国間関係 |
出産ツーリズムでロシア人に人気のアルゼンチン |
中央アジア情報バザール |
中央アジアは「グローバルサウス」? |
コーカサス情報フォーカス |
コーカサスとトルコの経済関係 |
調査レポート |
ロシアのスーパー業界を取り巻く環境の変化 ―強まる節約志向への対応― |
調査レポート |
ロシア航空産業への制裁の影響 |
データバンク |
2023年版ロシア大企業ランキング |
INSIDE RUSSIA |
オーロラ社が担うロシア極東航空網の拡充 |
ロシア極東羅針盤 |
新現実が変えるウラジオ漁港 |
データリテラシー |
鉄道貨物輸送に見る「非友好国」離れと課題 |
エネルギー産業の話題 |
ロシアのガス分野の現状 |
ロシア政財界人物録 |
パトルシェフ安保会議書記と「技術主権」概念 |
ロシアメディア最新事情 |
ロシアのサブカルチャー:「待つ女」の禁断の恋 |
ウクライナ情報交差点 |
ウクライナ動乱の経済的背景を学ぶ | シネマで見るユーラシア |
オーケストラ! |
ロシア音楽の世界 |
プロコフィエフ 交響曲第5番 |
業界トピックス |
2023年11月の動き |
ロシアを測るバロメーター |
2023年11月末までの社会・経済の動向 |
通関統計 |
2023年1〜10月の輸出入通関実績 |
おいしい生活 |
ウズベキスタンのコーカンド産ミルクハルヴァ |
記者の「取写選択」 |
日本海海底ケーブル |
調査レポート
インドのユーラシア外交
―対ロシア・中央アジア関係の展開を読み解く―
岐阜女子大学南アジア研究センター 特別客員准教授
笠井亮平
2022年2月のウクライナ侵攻以来、インドとロシアの密接な関係は国際的にも大きな注目を集めてきた。国連安全保障理事会や緊急特別総会におけるロシア非難決議案の採決でインドは棄権票を投じたほか、ロシアから原油や石炭の輸入を急増させるなど、米欧日とは一線を画した対応を取り続けている。だがそれはロシア「一辺倒」ではなく、G7各国との二国間関係強化や「クアッド」を通じた日米豪との連携、グローバルサウスの「代弁者」としての姿勢のアピールといった全方位外交の柱の1つとして捉えられるべきだろう。特に2023年は、インドはG20議長国1)を務めたこともあり、ロシアとの実務的な関係を維持しつつも、対面での首脳会談は見送るなど一方で慎重な姿勢をとっていた。本稿ではまず、こうした2023年の印露関係について、その実態と背景を主にインドの視点から論じていく。
次に本稿が着目するのが、インドの対中央アジア外交である。(中略)インドは東アジア・東南アジア諸国を対象とした「ルック・イースト政策」(2014年からは「アクト・イースト政策」に改称)、中東・湾岸諸国を対象とした「ルック・ウェスト政策」があるが、北方を対象とした政策、つまり「ルック・ノース」はあるのか。ロシアとの二国間関係は重要だが、それだけに留まるのではなく、中央アジアも含めた広い範囲で捉えたとき、インドにとってこの地域はいかなる戦略的意味を持ち、いかなるかたちで関与しようとしているのか。当然ながらインドはこの地域における唯一のプレイヤーではなく、中国とロシアの存在を考慮する必要があるが、そこではどのような連携や競合関係が見られるのか。こうした作業を通じて、インドのユーラシア外交の現状と課題を明らかにしていきたい。
調査レポート
ロシアの対アフリカ政策
―軍事的関与と経済外交―
公益財団法人中東調査会 主任研究員
高橋雅英
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻に機に、国際社会がロシア包囲網を強める中、ロシアのアフリカでの存在感が際立っている。ロシアはソ連時代にもアフリカへの関与を強めたことがあり、西洋植民地支配からの解放を目指す民族運動を支援することで、ソ連を中心とする東側陣営に取り込もうとした。また、石油をはじめとする物流の大動脈である東地中海からスエズ運河を経て紅海・インド洋につながるシーレーン(海上輸送路)沿いに自国の拠点を設け、西側諸国に圧力をかけようとした。しかし、1990年にソ連が崩壊し、それに伴いアフリカへの関与は次第に弱まり、ソ連の支援を受けていたアフリカ各国の社会主義政権も政治的混乱や内戦に直面し、弱体化した。
こうした状況下、プーチン政権の誕生がアフリカにおけるロシアのプレゼンスを強める契機となった。同政権は武器供与や穀物輸出、エネルギー協力を軸に、アフリカ各国との関係を再構築した。また近年、ロシアの民間軍事会社がアフリカに積極的に展開し、ロシアの対アフリカ政策を下支えした。ロシアは現在、欧米や中国に匹敵するほど、アフリカ地域へのコメットメントを続けている。一方のアフリカ諸国側もロシアとの協力を必要とし、2022年のウクライナ危機以降もロシアとの関係を維持している国が多く見られる。
本稿では、ロシアとアフリカ各国(アルジェリア、南アフリカ、エジプト、エチオピア)との二国間関係について考察し、ロシアとアフリカ各国が関係を強める要因を分析する。また、ロシアの民間軍事会社がアフリカで活動地を拡大している点にも着目する。
調査レポート
サウジアラビアの対ロシア関係
一般財団法人日本エネルギー経済研究所 主任研究員
近藤重人
ロシアは2022年2月のウクライナ侵攻で西側諸国との関係が悪化し、それ以降はそれ以外のグローバルサウスという言葉で括られる国々との関係強化に活路を見出しているように見える。そうした中、グローバルサウスの代表的な国の1つで、石油生産を通じて密接な関係にあるサウジアラビアは、ロシアが最も重視している国の1つに挙げられるだろう。サウジアラビアもロシアを石油生産調整のパートナーとして重視している他、それ以外の分野での関係強化を模索してきた。本稿では、そんなロシアとサウジアラビアの関係が、特にサウジアラビアでサルマーン国王が即位した2015年以降にどのように展開されてきたかを、主にサウジアラビアの視点から検討していきたい。
ロシアの二国間関係
出産ツーリズムでロシア人に人気のアルゼンチン
2022年2月のウクライナ侵攻以降、ロシアが欧米との関係を著しく悪化させる中で本連載の原稿をなかなか執筆できず、事実上の休止となっていた。一方で非欧米諸国を中心にロシアとの関係を維持している国も多く、ロシアが「友好国」と称する国とロシアとの関係は、むしろ世界的にも注目されている。そこで、本連載を通じて、そうした「友好国」を中心に、ロシアの二国間関係に改めて注目してみたい。
本稿では、先日、大統領選挙で政権交代が決まったばかりの南米・アルゼンチンに注目する。アルゼンチンは2023年8月にBRICSの新規加盟国の1つとして承認された。ところが、日本でも報道されている通り、「アルゼンチンのトランプ」と呼ばれる極右派のハビエル・ミレイが同国次期大統領に決定して以来、BRICSへの加盟が危ぶまれている。
ウクライナ侵攻を背景にロシア批判も辞さないミレルだが、一方で2022年2月以降、多くのロシア人、特に妊娠中の女性がアルゼンチンに移住していると日本でも大きく報道された。モスクワに住む筆者の友人も、妊婦ではないが、小さな娘を連れてアルゼンチンに移住した。過去にアルゼンチンと全く関わりがなくても、スペイン語ができなくても、移住しやすく生活環境もいいと聞いていたが、政権が代わってどうなるのか。そんな個人的な関心もあって、ロシアとアルゼンチンの関係について調べてみた。(中馬瑞貴)
中央アジア情報バザール
中央アジアは「グローバルサウス」?
中央アジアは「グローバルサウス」の一員だろうか?一般的に、グローバルサウスとは、アジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカに含まれる発展途上国や経済新興国の総称である。インド、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、南アフリカ、ブラジルなどがその代表格となっているが、どの国が含まれるのか明確な定義があるわけではない。しかし、あいまいではあるが一般的なグローバルサウスの定義に鑑みると、中央アジアは一致しない点が多い。一方で、2023年にインドで2度開催された「グローバルサウスの声サミット」に中央アジア各国の首脳が参加し、日本でも、中央アジアをグローバルサウスの一員とみなす報道が散見される。用語だけが独り歩きしているような感も否めないグローバルサウスと中央アジアの関係について考えてみたい。(中馬瑞貴)
コーカサス情報フォーカス
コーカサスとトルコの経済関係
グローバルサウスの一角として注目されるトルコ。このトルコによる積極的な支援を受けてアゼルバイジャンが約30年にわたるナゴルノ・カラバフ紛争で勝利を収めたことについては前号の本連載で述べた通りである。両国は民族的、宗教に非常に近いことから「兄弟国」としてその関係が注目されている。そしてともにアルメニアと歴史的に対立を抱えているためにナゴルノ・カラバフでの勝利は共通の目的でもあった。そんなトルコは、ただアゼルバイジャンと「兄弟国」としての関係を強化するだけでなく、経済関係においても関係を強化している。そこで、アゼルバイジャンを中心にコーカサスで経済的な関与を深めるトルコの勢いに注目する。(中馬瑞貴)
調査レポート
ロシアのスーパー業界を取り巻く環境の変化
―強まる節約志向への対応―
(一社)ロシアNIS貿易会ロシアNIS経済研究所 名誉研究員
坂口泉
我々日本人がイメージするような品揃えが豊富なスーパーマーケットはソ連時代のロシアには存在せず、同国にそれに類する店舗が出現したのは1990年代半ばになってからのことであった。当初は主として比較的価格の高い商品を取り扱う中規模スーパーマーケットが中心であったが、その後、ディスカウントショップやハイパーマーケットも登場し、今やスーパーマーケットはロシアの人々にとって欠かせぬ存在となっている。市場規模も順調に拡大してきたが、コロナ禍に見舞われた2020年以降は伸びが鈍化傾向にある。その背景には、コロナ禍とウクライナ戦争の影響で可処分所得が減少した市民が多く、節約志向が全般的に強まっているという事情が存在する。
そのような状況を受け、ロシアのスーパー業界にある異変が生じている。ある時期から地方でしか受け入れられなくなっていた内装や諸サービスにかかる費用を極力節約してひたすら商品の安さだけを追求するハードディスカウントショップが、大都市部でも徐々に復活の兆しを見せているのである。
その他2020年以降は、遠出して郊外のハイパーマーケットで買い物する客が減少する一方で、近場(住宅密着型店舗やオンラインショップ)で買い物を済ませる客が増加する傾向も強まっている。それもまたコロナ禍やウクライナ戦争がもたらした異変と言えるかもしれない。
本稿では、コロナ禍とウクライナ戦争が消費マインドにもたらした影響などに留意しながら、ロシアのスーパー業界の現状をご紹介する。
調査レポート
ロシア航空産業への制裁の影響
(一社)ロシアNIS貿易会ロシアNIS経済研究所 研究員
渡邊光太郎
2022年の開戦により、ロシアの航空産業に対する制裁は桁違いに強化された。旅客機の新規調達だけでなく、アフターサポートや現行リース契約の継続も規制された。普通の国であれば、航空路の維持が不能になるレベルであった。ロシアは、比較的強力な航空産業と航空インフラを持つ。極めて大胆な手段も含め、ロシアは制裁への対抗を試みた。結果として、現在のところは、曲がりなりにも航空路は維持されている。とはいえ、現在の手持ち外国製旅客機による航空路維持は、いずれ限界を迎えることが予想されている。さすがのロシアも、長期間、このまま突っ走るのは困難であろう。
本稿では、2022年以降のロシアの航空産業に対する制裁影響を、ロシアの対応能力とともに検証していく。
データバンク
2023年版ロシア大企業ランキング
本誌では、ロシアの経済誌『エクスペルト』が、毎年発表しているロシア大企業ランキングを抜粋して紹介してきた。ところが、2023年秋頃から同誌のサイトの更新が限定的となり、雑誌が廃刊となった。一方で10月半ばに『エクスペルト』の編集体制を引き継ぐ形で、『モノクリ/Монокль』(https://monocle.ru:ロシア語で「片眼鏡」の意)という雑誌が刊行となった。(ただし、『エクスペルト』のサイトもニュースサイトして運営が続いている。
そしてこの新しいロシアの経済誌『モノクリ』の第2号(2023年10月30日〜11月5日号)でロシア400大企業ランキングが特集されていたので、本稿では抜粋してお届けする。「2023年版ロシア大企業ランキング」と題してお届けしているが、かつての『エクスペルト』と同様に2022年の売上高に基づく2023年発表のランキングという意味なのでご注意願いたい。
INSIDE RUSSIA
オーロラ社が担うロシア極東航空網の拡充
ロシア極東のオーロラ航空は、極東の中心都市ウラジオストクと、北方領土の択捉島を結ぶ新たな直行便を12月から就航すると発表した。これに関し日本のメディアでは、「本土との往来を増やすことで北方領土の開発を進め、実効支配を強める狙いがあるとみられます」といった報道が目立った。ただ、今回の新路線開設は、確かに注意すべき動きではあるものの、V.プーチン政権が進めている極東振興策、その目玉としての航空ネットワークの拡充政策に沿ったものであり、その意図を過度に深読みする必要は必ずしもないと思われる。(服部倫卓)
ロシア極東羅針盤
新現実が変えるウラジオ漁港
9月、沿海地方ウラジオストク市の漁港を訪問した。取扱量は500万t前後と1,000万tに満たないが、コンテナの取扱では極東地域で3番目の規模だ。貨物の東方シフト、欧米コンテナ会社の撤退という変化の中で、漁港は新しい現実に適応していた。(齋藤大輔)
データリテラシー
鉄道貨物輸送に見る「非友好国」離れと課題
今回は鉄道貨物をめぐるロシアの現状やその問題点について、公開情報に加え、現地にて聞き取りを行ったロシアの物流専門家や関連企業の見通しや見解を中心に整理して説明します。(長谷直哉)
エネルギー産業の話題
LNGの輸出権をめぐる動き
制裁の発動にもかかわらず、ロシアの石油の生産量にも、そして、輸出量にも劇的な変化は生じていないようです。ところが、制裁の直接的影響が石油分野より少ないはずのガス分野の状況は楽観できるものではなくなっています。LNGの輸出は堅調ですが、PLガスの欧州向けの輸出量が激減しており、その結果、生産量も大幅に減少しています。今回は、不振に苦しむロシアのガス分野の現状(ガスの生産と輸出の状況)をご紹介します。(坂口泉)
ロシア政財界人物録
パトルシェフ安保会議書記と「技術主権」概念
今回は、2022年2月24日以降、外交や安全保障分野だけでなく経済分野においても注目すべき発言が目立つようになっているN.パトルシェフ・ロシア連邦安全保障会議書記について論じます。パトルシェフがプーチン大統領に近い人物であることは言うまでもありませんが、最近の政策文書や高官発言などに頻出する「技術主権」という概念と絡めて、その言動について説明したいと思います。(長谷直哉)
ロシアメディア最新事情
ロシアのサブカルチャー:「待つ女」の禁断の恋
ロシアに長く住んでいてこの国のことを知っているつもりになっていても、時々サプライズに出会います。最近衝撃を受けたのは、いつも見ているYouTubeチャンネル「編集部」で、刑務所で服役中の男性と交際・結婚する女性について特集していたことです。そういったカップルは犯罪を犯す前からの知り合いではなく、服役中に知り合い、交際をスタートし、獄中結婚まで進みます。これは、決して珍しい話ではなく、むしろロシアのサブカルチャーだというのですから、驚きです。それらの女性を総称した、専用の呼び方まであり、それを直訳すると「待つ女」となります。「Forbes」は、「待つ女」のことをユニークな社会グループだ、と定義しています。ロシア女性はなぜ、わざわざ囚人とのロマンスを選ぶのでしょうか。そこには、ロシア特有の社会的背景がありそうです。(徳山あすか)
ウクライナ情報交差点
ウクライナ動乱の経済的背景を学ぶ
2021年まで、我が国でウクライナに関する書籍は、数えるほどしか存在しなかったはずである。それが、2022年2月24日を境に、無数のウクライナ本が刊行されるようになった。ウクライナに関心を抱いても、類書があまりにも乱立していて、どの本を手に取っていいか分からないという向きも多いのではないか。そうした中で、筆者が迷いなくお勧めできる一冊に、松里公孝著『ウクライナ動乱 ―ソ連解体から露ウ戦争まで』(ちくま新書、2023年)がある。ウクライナ分析の深さが他を寄せ付けないだけでなく、本月報の読者にとっては経済面での含蓄にも教えられるところが多いのではないか。そこで今回は、『ウクライナ動乱』の概要をざっと紹介した上で、経済にかかわる重要部分を抽出してみることにする。(服部倫卓)
シネマで見るユーラシア
オーケストラ!
時は2010年、場所はモスクワ・ボリショイ劇場。ひとりのさえない中年の清掃員、アンドレイ・フィリポフが劇場支配人の部屋を掃除していると、一通のファクスが届く。それを盗み読みしたアンドレイはそのまま作業着のポケットへ。内容はパリのシャトレ座からの公演依頼だった。(芳地隆之)
ロシア音楽の世界
プロコフィエフ 交響曲第5番
ソ連の対ナチス祖国防衛戦のさなかに書かれたプロコフィエフの名曲を取り上げる。2つの大作、ショスタコーヴィッチの交響曲第7番「レニングラード」、ハチャトゥリアンの交響曲第2番「鐘」と並び、3大「戦争交響曲」と呼ばれることもある。(ヒロ・ミヒャエル小倉)
おいしい生活
カザフスタン・中国国境ホルゴスのピリ辛ラグマン
昨年、ウズベキスタンへの出張で会場となったヒルトン・タシケント・シティに宿泊した際、個人的に最も気に入ったのが、朝食会場にドライフルーツやナッツと共に並んでいた色とりどりのハルヴァだった。お土産にぜひ買って帰りたいと思ったものの、当時はブランド名も分からず現地で見つけることができなかった。しかし先日、カザフスタンへの出張に知人がタシケントから参加するということで、お土産として「ヒルトンのハルヴァ」をリクエストしたところ、ついにあのカラフルなハルヴァに再び会うことができた。(森彩実)
記者の「取写選択」
日本海海底ケーブル
冬には波しぶきが飛んできそうな海崖の上で、古びた低層施設が日本海と向き合っていた。「KDDI株式会社 直江津海底線中継所」(写真右上=2023年9月 筆者撮影)と刻んだ銘板がなければ、保養所か何かと勘違いしそうだ。新潟県上越市・直江津地区とロシア極東ナホトカの間の海底を通信ケーブルが這っており、施設はケーブルの揚陸拠点だった。(小熊宏尚)