ロシアNIS調査月報
2026年2月号
特集◆戦争長期化が映し出す
ロシアとウクライナの今
 
特集◆戦争長期化が映し出すロシアとウクライナの今
調査レポート
ロシアの貿易統計に見る東方シフトの虚実
調査レポート
ウクライナ戦時体制の危機
調査レポート
第二次トランプ政権下でのウクライナ戦争の行方
講演録
現下の状況における日ロ合弁企業に関わる諸問題
講演録
歴史認識問題をめぐるロシアの国際的取り組み
ドーム・クニーギ
西山美久著『現代ロシアの歴史認識論争―「大祖国戦争史観」をめぐるプーチン政権の思惑』
データバンク
Forbes版2024年ロシア100大企業ランキング
調査レポート
制裁下ロシアの工作機械市場と生産の現状
ミニレポート
ロシア政府と国際機関による経済見通しの比較
ウクライナ情報交差点
ウクライナで目立ってきた「戦後論」
データリテラシー
2026年はロシア経済にとって「試練の年」か
ロシア極東羅針盤
ロシアの対中ガス戦略の新段階
ロシア政財界人物録
「金融主権」イデオローグとしてのコスチンVTB総裁
ロシアメディア最新事情
「今年の総括」から見るロシアの国内問題
INSIDE RUSSIA
ウクライナ侵攻で一変したロシアの財政シナリオ

イベントレポート
第12回日本・モンゴル官民合同協議会
エネルギー産業の話題
CPCをめぐる喧噪
中央アジア情報バザール
権威主義国家化が進むキルギス
シネマで見るユーラシア
『バビ・ヤール』
ロシア音楽の世界
ショスタコーヴィチ ヴィオラ・ソナタ 遺作
業界トピックス
2025年12月の動き
通関統計
2025年1〜11月のロシア・NIS輸出入通関実績
おいしい生活
中央アジア産はちみつは美容にもおすすめ
記者の「取写選択」
祖国よ、マーシャが呼んでいる


調査レポート
ロシアの貿易統計に見る東方シフトの虚実

北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター 教授
服部倫卓

 2022年以降、ロシアは欧米との対立により、やむをえない戦術的適応として、東方シフト2.0と呼ぶべき路線を強行しようとしている。しかし、ロシアの少なからぬ研究者はそれがもたらす経済安全保障上のリスクを警戒している。貿易統計は、ロシアがグローバルサウス全般との多角的な取引の拡大には苦戦し、対中一極依存のリスクが顕在化しつつあることを物語っている。もとより、これらの現象は断片的には知られていたものだが、本稿ではそれを2023年までのロシア公式統計に基づいて体系的に検証する。


調査レポート
ウクライナ戦時体制の危機

慶応義塾大学法学部 教授
大串敦

 ロシア・ウクライナ戦争が始まってまもなく丸4年が経過する。ロシアはウクライナの酒精の前に大きな前進はしていないが、日々占領地を拡大している。本稿執筆現在(2025年12月20日)では、ポクロウシクとシヴェルシクがほぼ陥落し、ウクライナ側に残るドネツィクの主要都市であるクラマトルシクとスロヴャンシクが徐々に脅かされつつある。(中略) 戦争の主導権はロシア側に移った。守勢に回ったウクライナ側の戦時体制の現状を考察しよう。


調査レポート
第二次トランプ政権下でのウクライナ戦争の行方

笹川平和財団 上席研究員
畔蒜泰助

 第二次米トランプ政権が発足してから丸1年が経過しようとしている。この間、同政権が大きな時間と労力を割いている外交課題の1つがロシア・ウクライナ戦争の停戦・和平の仲介とその延長線上でのロシアとの関係正常化である。2025年11月、そのトランプ政権がロシア寄りと言われる「28項目の和平案」を公表したことを契機として、同戦争の停戦・和平交渉が新たな展開を見せている。本稿では、まず米トランプ政権の外交・安全保障戦略の大きな方向性とそこにおけるロシアの位置付けについて確認する。その上で、この「28項目の和平案」が作成された過程を振り返りつつ、これをベースに俄かに本格化し始めた米・ウクライナ、米・ロシアの交渉の行方を予測する。


講演録
現下の状況における日ロ合弁企業に関わる諸問題

SL Legal法律事務所
レオニード・ズバレフ、ゲオルギー・ダネリア

 11月26日(水)、ROTOBOはロシア情報提供セミナー「現下の状況における日ロ合弁企業に関わる諸問題」を東京都内で開催し、関係者を含めて24名が参加した。今回のセミナーでは、SL Legal法律事務所(モスクワ)より2人の専門家を講師としてお招きし、西側の制裁やロシアによる対抗措置という状況下での日ロ合弁企業の活動に関わる諸問題についてお話しいただいた。本号では、今回のセミナーの報告要旨をご紹介する。


講演録
歴史認識問題をめぐるロシアの国際的取り組み

東京大学先端科学技術研究センター 特任助教
西山美久

12月9日(火)、ROTOBOは「歴史認識問題をめぐるロシアの国際的取り組み」と題する報告会をリモートで開催した。今回の報告会では、東京大学先端科学技術研究センターの西山美久特任助教を講師としてお招きし、ロシアの歴史認識の特徴、欧州がロシアの歴史認識に異を唱える背景、プーチン政権による歴史認識の政治的利用と正当化、歴史認識をめぐるロ中協力とそえが日本に与える影響などについてご報告いただいた。以下では、今回の報告要旨をご紹介する。


データバンク
Forbes版2024年ロシア100大企業ランキング

 本稿では、『Forbes』誌ロシア版が2025年9月25日に発表した「2024年ロシア大企業ランキング100社」を、若干の解説を交えて紹介する。同ランキングは2024年通年のロシア企業の純利益に基づき、上位100社をランク付けしたものであり、2023年以降Forbesが毎年集計・発表している。前回版の2023年ランキングについては、『ロシアNIS経済速報』2024年11月5日号にて扱っているので、ご関心の向きはそちらも参照されたい。


調査レポート
制裁下ロシアの工作機械市場と生産の現状

(一社)ROTOBO ロシアNIS経済研究所 研究員
渡邊光太郎

 ロシアの工作機械生産や市場を精密に把握できるデータは存在しない。また、ロシアでは企業活動に関する情報公開のレベルは低く、公開情報から、工作機械の業界地図は描けない。とはいえ、通関統計やその他の数字を組み合わせていくことで大雑把な概要は描くことができる。西側からの輸入が途絶え、生産に力を入れ始めたが、きわめて微弱だったロシアの生産能力では全く対応できず中国依存を深めただけであることは明白である。本稿では日本との比較をしながらロシアの工作機械市場と生産の現状を描き出す。


ウクライナ情報交差点
ウクライナで目立ってきた「戦後論」

 停戦に向けた外交交渉が活発化しているためか、最近のウクライナの論壇では、「戦後」をにらんだ議論が台頭している印象を受ける。今回は、筆者の目に留まったものの中から、3人の識者による戦後論の用紙を紹介する。(服部倫卓)


データリテラシー
2026年はロシア経済にとって「試練の年」か

 今回は筆者がロシア現地で集めた経済専門家らによる2025年ロシア経済の評価、および2026年の見通しについて、マクロ、小売、物流に焦点を置いて整理しました。多くの専門家がロシア経済は現在、きわめて不確実かつ矛盾に満ちた状態にあると評価しています。ロシア政府や中銀は現状を「成長の減速」と表現しているものの、専門家はさらに踏み込んで実質的な「リセッション(景気後退)」局面に突入したとみています。(長谷直哉)


ロシア極東羅針盤
ロシアの対中ガス戦略の新段階

 欧米からの経済制裁で、ロシアのガス輸出は低迷が続いている。その一方で、ロシアは中国向けのガス輸出を拡大している。(齋藤大輔)


ロシア政財界人物録
「金融主権」イデオローグとしてのコスチンVTB総裁

 ロシア第2位の銀行であるVTBを率いるA.コスチンを単なる銀行家であると見るのは誤りです。彼はプーチン政権の金融戦略を代弁し、時に先行して提言を行う「国家資本主義」の主要なおイデオローグでもあります。2025年12月12日付『エクスペルト』誌に寄稿された論考は、過去30年にわたるロシア金融史の総括であると同時に、西側主導の金融システムに対する「完全なる決別宣言」と読み取ったとしても、穿ち過ぎではないでしょう。(長谷直哉)


ロシアメディア最新事情
「今年の総括」から見るロシアの国内問題

 12月19日、プーチン大統領が生放送で内外のジャーナリストの質問に答える「大記者会見」と、一般市民からの質問に答える「直接対話」をミックスさせた毎年恒例のイベント「今年の総括」が行われました。質問のジャンルは多岐にわたりますが、ロシアの国内問題を中心に、日本のメディアではほとんど紹介されていない部分についてご紹介します。(徳山あすか)


INSIDE RUSSIA
ウクライナ侵攻で一変したロシアの財政シナリオ

 ロシア政府は2025年12月11日付の政府指令で、2042年までの連邦財政の見通しを策定した。ロシア政府は18年間という長期スパンの財政見通しを作成し、それを6年に1回改訂しており、今回その改定時期が巡ってきたモノだった。(服部倫卓)


イベントレポート
第12回日本・モンゴル官民合同協議会

 2025年11月26日(水)、東京の明治記念館において「第12回日本・モンゴル官民合同協議会」が開催された。協議会では、スマート物流、ビジネス環境整備、産学連携、砂漠緑化、経済連携協定(EPA)の利用促進、グリーン投資・デジタル投資をテーマに、今後の協力の可能性について協議が行われた。そして、合同協議会の成果として両国の民間企業が進める3件のビジネス文書が署名された。以下、概要を報告する。(原真澄)


エネルギー産業の話題
CPCをめぐる喧噪

 CPC(カスピ海パイプライン・コンソーシアム)の周辺が最近騒がしくなっています。2025年11月末に同コンソーシアムが保有する石油PLの出荷ターミナルを校正する3基のSPM(一転係留出荷装置)のうち1基がウクライナの無人艇による攻撃を受け使用不可能となるという事態が生じたからです。その関係でCPCのPLの輸送能力が低下し、同PLを石油の主要輸出ルートとして利用しているカザフスタンが困難な状況に直面しています。本稿では、CPCの概要とCPCのPL以外のカザフスタン産石油の輸出ルートの現状につき言及します。(坂口泉)


中央アジア情報バザール
権威主義国家化が進むキルギス

 キルギスは1990年代には「民主化の優等生」と呼ばれ、強権的・権威主義的な大統領制が象徴的な中央アジアには珍しく、大統領ではなく議会多数派によって首相が選出される議院内閣制採用してきた。しかし、その一方でキルギスは幾度となく政変を繰り返し、政治的な不安定さが大きな課題となっていた。そして、2020年にスタートしたジャパロフ大統領政権下では確実に権威主義的な政治体制に逆戻りしつつある。(中馬瑞貴)


シネマで見るユーラシア
『バビ・ヤール』

 突然、ウクライナの広い平原に爆音が響き、寄り添うようにして建つ民家は炎で燃え上がる。黒煙が大蛇のようにうねりながら広がるその上を戦闘機が飛んでいく。(芳地隆之)


ロシア音楽の世界
ショスタコーヴィチ ヴィオラ・ソナタ 遺作

 今年2026年は、ショスタコーヴィチの生誕120周年の記念の年。今回は彼の最後の作品、遺作となるヴィオラ・ソナタ作品147ハ長調をご紹介する。(ヒロ・ミヒャエル小倉)


記者の「取写選択」
祖国よ、マーシャが呼んでいる

 2020年12月16日、ブリュッセルの欧州連合(EU)欧州議会。優れた人権擁護活動をたたえる「サハロフ賞」授賞式の記者会見で、受賞者「ベラルーシの民主的野党」の1他人である反政権派指導者ヴェロニカ・ツェプカロ氏はこう切り出した。「素晴らしい賞に感謝する。(中略)ただ、何人かの仲間がこの場にいない」。ここでツェプカロ氏は真っ先にマリヤ・コレスニコワの名を挙げた。(小熊宏尚)